晴耕庵の談話室

NO.44


QUESTION

2000/6/21

標題:英国修学旅行の宿題について


ロンドン憶良様

和歌山の私立中学2年生です。
学校の修学旅行でイギリスへ行きます。

宿題で「スコットランドには、どうして4種類もの紙幣が通用
しているのか」というものが出ました。判る範囲で教えてくだ
さい。
イングランドとスコットランドの昔からの歴史に関係あるので
しょうか?

スコーン石の返還した話しは参考になりました。メージャー
首相の時期ということでしたが、何年なのでしょうか?是非
教えてください。

他の人の宿題も書いておきます。

「スコットランドの国花はどうしてアザミなのか」

「スコットランドの人と仲良くするには、イングランドの悪口を
言うにかぎる。なぜか」

「スコットランドには、カレドニアと呼ばれることがある。これは
どういう意味か。なぜそういわれるのか。その歴史的背景に
ついて研究せよ。」

                               Y.M.



ANSWER

2000/6/24 

Y.M. 君

英国修学旅行の宿題についての質問拝見しました。

UKについて何でも知っているのではありませんが、分かる範
囲でお答えしましょう。
(しかし、インターネットで手軽に聞きまくる癖がつくと、自学
自習をしなくなりますから、あくまでも自学自習を心がけてくだ
さい)


Q 「スコットランドには、どうして4種類もの紙幣が通用して
いるのか」
Q イングランドとスコットランドの昔からの歴史に関係ある
のでしょうか?

A 関係あります。イングランドはスコットランドと長い間抗争
してきました。イングランドに統合されたとはいえ連合王国
(UK)の一国家という自治意識が大変強く、銀行制度も、ロイ
ヤル・バンク・オブ・スコットランドやバンク・オブ・スコットランド
などスコットランドの地場銀行が、独自に発券銀行になってい
ます。

驚くかもしれませんが、バンク・オブ・スコットランドは今から
300年も前(江戸時代鎖国完成の頃)の1695年に設立され、
またロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは1746年(江戸中
期)の設立です。両銀行とも設立の当初から銀行券を発券し
ていました。
(当時はもう一社ブリティッシュ・リネン会社という会社も発券
業務をおこなっていました)

バンク・オブ・イングランドは、中央銀行で、UK全体の発券額
を調整管理しています。バンク・オブ・イングランドの紙幣はも
ちろんスコットランドで通用します。
(日本では日本銀行のみが日銀券を発行していますが、アメ
リカでは12の連銀がドル紙幣を発券しています。)


Q スコーン石の返還した話しは参考になりました。
メージャー首相の時期ということでしたが、何年なのでしょうか?
是非教えてください。

A HPの「ロンドン憶良見聞録」の
君知るやスクーン石の嘆きと喜び「スクーンの石」遂に返還!!
をご覧下さい。マンガの中に書いて置きましたが、1996年7月
決定です。実際に返還した日時は知りません。


Q 「スコットランドの国花はどうしてアザミなのか」

A HPの「UKを知ろう」のスコットランドの項、
「Brave Heart」とアザミの花エドワード2世の紹介を追加
をご覧下さい。マンガの中に故事を書いて置きました。


Q 「スコットランドの人と仲良くするには、イングランドの悪口
を言うにかぎる。なぜか」

A このような考え方は問題があり、賛同しかねます。
スコットランドとイングランドは相互に抗争して来ました。たしか
にイングランドはスコットランドを抑えて来ましたが、どちらも誇り
高く、優れた文化を持つ民族と地域です。
相手の悪口を言えば仲良くなれるという感覚は危険です。

スコットランドの人と仲良くするには「イングランドの悪口を言う」
のではなく、「スコットランドの歴史や文化や芸術を学び、日本
の文化を語り、相互理解を深める」ことです。

(パブで一杯飲むとき、『イングランドはけしからん』『そうだそう
だ』というようなレベルでは真の仲良しとはいえません。低レベ
ルの観光案内書や体験談などにまどわされないようにしてくだ
さい)

日本では「イギリス」という妙な表現で、スコットランドもウェール
ズも、北アイルランドも、イングランドとごちゃ混ぜになっていま
す。
アングロサクソンとケルトの文明や歴史や伝統や芸術をきちん
と理解すれば、悪口を言わなくても尊敬され仲良くなれます。

これは、世界の他の国々との関係でも言えることです。
私のHPの目的は、この国際相互理解にあります。単なる知識
や観光や旅行経験の披瀝では国際親善になりません。

この点を宿題を出された先生によしなにお伝えしてください。

イングランドは長い間スコットランドを抑圧して来ましたが、悪口
を言う人は、スコットランドの人にも真に信頼されることはないで
しょう。
イングランドとスコットランドの抗争については、エドワード一世
の前後、映画「ブレーブ・ハート」は史実に忠実ではありません
がかなりよく描かれていますので参考にしてください。


Q 「スコットランドには、カレドニアと呼ばれることがある。
これはどういう意味か。
なぜそういわれるのか。その歴史的背景について研究せよ。

A カレドニア(Caledonia)とは古いケルトの言葉で「森林」を
意味しています。
今のスコットランドには鬱蒼とした森林は少なくなっていますが
昔は森林地帯だったでしょう。
ここにアイルランドからスコッツ族が移住してきて、スコッツの国
スコットランドとなりました。
この時持参したのがスコーン石です。(HPをご覧下さい)
アイルランドとスコットランドは祖先を同じにするケルトの子孫
なのです。
スコッツ族が来るまでは、カレドニアと呼ばれたいましたので、
「カレドニア」はスコットランドの古い国名といえます。

カレドニアの名前は、ネス湖などを経て北海とアイルランド海を
結ぶ『カレドニア運河』に残っています。運河自体は1803年
から44年かけて工事されたものですから、スコットランドの人々
が古い国名を運河名につけて残したことになります。

事前によく勉強され、実り多い英国修学旅行をしてください。

                        ロンドン憶良



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