ノルマンディー歴史紀行

カーン逍遥(1)


車中親善



碁は5級のフランス青年

 ルーアン駅でも高齢者割引の乗車券は、パリの駅同様にクレディッ
トカードで買った。
 ルーアンを11時10分に発つとカーンには13時に着く。平日の午後
の下りであるせいか車中はかなり空いていた。

 通路を隔てた席に熱心に分厚い本を読みノーとをとっている青年が
いた。車掌が何か大きな声を出して歩いて行った。
 彼は顔を上げて「どちらに行くのか」と英語で話かけてきた。
「カーンだ」というと、それではこの車両でよいといった。車掌は訛りの
強いフランス語だから分かりにくいだろうと言ったが、こちらはフランス
語はからっきし駄目であるから訛りがあろうと無かろうと分からない。
切り離される方向だと乗換ねばならないので、親切に声をかけてくれ
たのだろう。

 流暢な英語なので英人かなと思って「どちらから?」と聞くと、
「ルーアンに住んでいてカーンに行く」という。大学ではエレクトロニク
ス・エンジニアリングを専攻し、将来は中国や日本に行ってみたいとい
う。碁は面白くて、5級だという。インターネットでも碁友と打っているそ
うだ。

 憶良氏の先輩に5段の碁打ちがいて、今年も欧州の方々と烏鷺を楽
しむという。碁は将棋よりも国際性が豊かなようだ。

 いろいろ話が弾んだが、「日本人から見ると、フランス人はlazy(怠惰)
に見えないか?」と質問してきた。
フランス人はバカンスを楽しむし、パリはファッションや絵画音楽演劇
など「遊び」の町である。
「いやそうは思わない。パリやルーアンの商店街などを見ると、個人企
業がしっかりしているような気がする。いい意味で個人主義(individualism)
が徹底しているのではないか」と答えたら、うれしそうな顔をした。
「メールアドレスを教えてくれ」というので交換した。
(帰国後われわれは世代を超えた交信を楽しんでいる)

 フランス人が英語を話さないとか、外国人に不親切だと決めつけて
はいけない。世界どこでも英語を駆使し、親切な、活発な若者は多い。

 

カーン逍遥(2)

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