5分でまとまる国

(前頁より)



総選挙では、まぎれもなく労働党を支持するであろうと思われる彼らが、
保守党党首ヒースの演説に同意し、実践しているのだ。支店長や次長
の憶良氏の意向を伺うことも指示を受けることもしていない。
彼らにとって、どこに勤めていようと、どの党が天下を取っていようと、
国の危機に、首相に協力を求められれば協力するのが、国民として当
然の義務と心得ているようだ。

上司の鼻息を伺ってという意識はない。つまり国の大事な時には、会社
や支持政党などは二の次にすべきだという意識がきちんと出来ている
ようである。

ヒースの演説に、商店街も家庭も済々として節電に協力した。
午前9時、シティの各銀行がドアを開けた時、ものの見事に電灯が半分
になっていた。


家庭の主婦たちの行動やスーパーなどの対応も見事なものであった。
家に帰ると美絵夫人が、昼間の出来事を感激の面持ちで報告した。

「トイレット・ペーパーは一巻しか売ってくれないの。『無くなったら買い
に来てください。心配しないで政府を信用してください』とレジの小母さ
んが言うのよ」

日本では主婦達が血相を変えてスーパーに殺到し、トイレット・ペーパ
ーや砂糖を買い溜めしていたとか。




次頁へ

「ロンドン憶良見聞録」の総目次へ戻る

ホームページへ戻る