長靴持って修学旅行
(前頁より)



一週間があっと言う間にたって、翠ちゃんが意気揚々と帰宅した。
綾ちゃんと次郎君が、翠ちゃんに纏い付いて、化石の入った紙箱が開
けられるのを、固唾を呑んで
見守っている。新聞紙にくるまれた化石は大事そうに開けられた。
中から風化した貝殻が出て来た。化石というには少し早いかもしれない
が、貝から石への中間過程ぐらいである。

「これがフォスルなの?」
小さい二人は、姉の解説が分かるのか分からないのか、首をかしげて
いる。


「農家の方も面白かったよ。トラクターに乗ったのよ。チキチキバンバン
のように跳ねたわ!」
「すごいなー」
「生まれたばかりの豚の赤ちゃんがングー、ングーと鳴いて、可愛かっ
たよ」
「僕も見たいな!」
「農家の小母さんと焼いたクッキーがとっても美味しかったよ」
「お姉ちゃん、いいなあー」

「翠ちゃん、お話は明日にして、もう寝なさい」
美絵夫人が三人を寝室に連れていく。



「ミドリはいい旅をしたようだね」
「作文を書くと張り切っていたわ」

風呂上がりにブランデーをちびりちびりと飲みながら、憶良氏と美絵夫人
は子供たちが、英国の生活に馴染んでいくのを喜んだ。初夏の夜は明る
く経っていく。


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