住友の総理事であった伊庭貞剛翁は、
「事業の進歩発達に最も害をなすものは、青年の過失ではなくて老人
の跋扈である」
と喝破され、58歳で大津石山に隠棲されたという。
資産のない憶良氏には、とても58歳での引退はできないが、幽翁と号
された彼の思想と行動にはまったく心服している。
惚けかかっているご老人や自信過剰な方々に、自戒と実践を求めるこ
とは難しい。
さりとて、猫に鈴を付ける勇気ある鼠サラリーマンはそうはいない。
よしんば直言しても、痼(しこり)が残ろう。あるいは、逆にすっ飛ばされ
よう。
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