1998年7月17日 更新

電子出版

CD-ROM による書誌データベース出版の可能性について調査する機会があり、興味も手伝って、「CD-ROM 媒体を中心とした(日本語の)電子出版にはどんな規格や仕様があるか」、リストアップを試みたもの。
日本は、電子ブック (EB)、EPWING と、規格化に熱心。

規格、製品

データベース寄り

EPWING コンソーシアム
EPWING は、日本の 12cm CD-ROM 辞書事典の多くに採用されている電子出版データの統一規約。JIS 規格にも登録されている(JIS X4081「日本語電子出版検索データ構造」)。その EPWING 規約の策定および普及を推進する団体がここ。1991年発足。
この規約にのっとった出版物は、1987年の「広辞苑 CD−ROM」が最初とのこと。(「変遷 (略歴)」)
EPWING タイトル開発のためには、会員2社の推薦によりA会員(入会金10万円、年会費30万円)になる必要がある。(1997年現在。「会費と会員資格」による)
EPWING (図書印刷株式会社) というページもあり、こちらは EPWING のバージョン、製品、ビューア(商用製品のみ。フリーソフトの草本和馬さん作 DDwin などはなし)をわかりやすくまとめている。
電子ブックコミッティー (図書印刷株式会社)
電子ブック (EB - Electronic Book) は、8cm CD-ROM (音楽 CD の「CD シングル」のサイズ) に採用されている統一データ規約。種類として EB, EBG, EBXA があり、EB が基本的な規約(日本語対応)、EBG は EB の海外仕様、EBXA は EB に CD-ROM XA の音声サポートなどを追加したもの。
タイトルを出版するための方法については、同サイトの FAQ 集「「電子ブック」ってどんなもの?」中“タイトルを出版して発売するための手続きは?”以降を参照。
電子ブックの出版データベースに、永田 健児さんによる「電子ブック全情報」(日外アソシエーツ) がある。
Microsoft Multimedia Viewer Ver.2.0 (マイクロソフト株式会社)
日本語版はアスキーから書籍形態で1995年に販売されている。全文検索など、Windows 標準のヘルプより高度な操作性を実現する。Microsoft Encarta 1994 (英語版)、雑誌 SUPER ASCII Glossary Help (インターネット上には HTML 化した on Internet 版 が公開されている)などで使われている。

その他

Macromedia Director [English Page]
Macromedia 製品。機能的に Microsoft Multimedia Viewer (MMV) の対抗馬。MMV はこれに負けて製品としてはつぶれたらしい。(社内的には今も使われているとのこと) 調査当初の関心だったデータベース出版に利用できるかは、未評価。
日本語版エキスパンド・ブック - Expanded Book
ボイジャー(US の旧 URL は Voyager Company)提唱の電子出版規約。 当初は US 英語版を日本語にローカライズしたものだったが、現在は日本独自に開発保守しているらしい。Web ブラウザで利用可能なネットエキスパンドブックなど、多彩に展開している。
SF関連で有名な出版物に、永井 義人さんの『接続する社会』(1995)がある。
Adobe Acrobat, Adobe Acrobat Reader (アドビシステムズ社)
表示の美しさなどで、作家にも注目されているらしい電子ドキュメント。(私の趣味のSF関連だと、大原まり子、岬兄悟平井和正らがフリーや有償の PDF ドキュメントを配付している) また、インターネット上で公開されている企業の資料は、この形態に移行している所も多い。
Adobe Acrobat は、PDF (Portable Document Format) と呼ばれる型式の電子ドキュメントを開発作成するための環境。Acrobat Reader はドキュメントを閲覧するためのブラウザで、Web ブラウザに組み込み可能、かつ、無償配付されている。現バージョンは 3.0x。
個人的には、Acrobat Reader の日本語版が Windows, Macintosh 対応しかないところが不満。(英語版は1998年6月現在、Windows 3.1x, Windows 95, Windows NT, Macintosh, UNIX, OS/2 に対応している。英語版では日本語ドキュメントは読めないようだ)(1998年6月末追加)
98AP情報(デジタルブック編), デジタルブック (NEC)
Web ページは2つあるが、いずれも寂しい内容。NEC 提唱の、FD による電子ブック。印刷物に似せた、「読む」感覚を重視した仕様になっている。
ビューアート (富士通)
富士通による、ICカードを媒体とした電子ブック(だった?)らしい。Web では公式情報が見つからない。

関連団体

日本電子出版協会 (JEPA - Japan Electronic Publishing Association)

海外の動き

SoftBook Press, NuvoMedia, Inc., Everybook, Inc
新しい電子ブックをレビューしたコラム、Electronic books open new chapter (6-11-1998) (San Jose Mercury News Center) で紹介されていたもの。朝日新聞 asahi.com からのリンクで知った。(1998年6月追加)
infoPager (ZEBRA Pushware Solutions)
日経産業新聞1998年7月17日(金)の朝刊1面記事で知った。日本語の縦書きに対応して、日本へも売り込むらしい。(1998年7月17日追加)

参考資料

B12. 電子ブック(渡辺 敬紀)
中央大学社会情報学 斉藤研究室Bグループ調査研究「家庭におけるマルチメディア」所収。とても参考になりました。ありがとうございました。

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1998年4月上旬作成