“遠き神々の炎 (上・下)” ヴァーナー・ヴィンジ (創元SF)
銀河は内側から層状に空間の性質が異なり、
外へ行くほど情報処理能力などが本質的に向上する。
外のほうへ行くと光速を越えて行き交うことも可能だ。
そんな宇宙で、人類は今、中の上の域に達している。
もう少しで、銀河の外の超越界に達せられるかもしれない。
そして、人類は超越界にちょっとかかったところの星系で、
パンドラの箱を開けてしまった…。
人類のいる銀河の中の領域 (際涯圏)には多種多様の種族がいて、
過去何億年というスケールで種族の盛衰が繰り返されている。
超越界へ行くことに成功したものもいれば、
失敗して自滅したものもいる。
昔から変わらずに長の年月を暮らしているものもいる。
そこでは、
インターネットの超大型版のようなネットワークが発達している。
さまざまな情報、憶測、嘘を含んだネットニュース
(何故か現代のネットニュースに似ている^^;)
がその上を飛び交い、太古の記録は各所のアーカイブに収められている。
今、人類の解き放ってしまった災厄は銀河規模で被害を与えつつあった。
そして、それに関してさまざまなニュースがネットワークを駆け巡る。
災厄の発生した星からは、かろうじて一隻の船が逃げ出していた。
その船には、災厄に対抗する手段が隠されているかもしれない。
しかしそのたどり着いた星は、際涯圏の奥底の、
犬型の集合知性の生物 (鉄爪族) が支配する、陰謀渦巻く中世の世界。
かくして一隻の船を巡る、多重の争いが繰り広げられることとなった。
設定は壮大だし、話は多重に進むしで紹介も長くなってしまいました。
基本的に、ネットワーク世界で進む話と、
鉄爪族世界で進む話とが並行して進むのでややこしいかもしれませんが、
「ひと粒で二度おいしい」話かもしれません。
広げた大風呂敷も、きちんと回収してくれます。
ラストは少し物足りない、っていう人もいるかもしれませんが、
ヒューゴー賞授賞もうなずける出来栄えです。
(12/23)
ワンポイント
ネットニュースの記事には何故か既視感を覚えます^^;。
ネットニュースは日本でもアメリカでも銀河全体でもおんなじなんですかねー。
“2061年宇宙の旅” アーサー・C・クラーク (ハヤカワSF)
Odyssey Three。
“2010年”が
(小説版)“2001年”の続きではないのと同様に、
これも“2010年”の直線的な続きではない (巻頭の覚え書参照)。
とはいえ
“2010年”が (映画版)“2001年”
の続きであるのと同程度のところかな。
いまや禁断の地となったエウロパを除いて、
元・木星の衛星群では探査がいろいろと進められている。
そして、とある事件が起こり、
探査のために飛んでいた宇宙船が禁断の地に不時着してしまう…。
“2001年”や“2010年”ほどの壮大なことは起こらないのですが、
違う意味でとんでもないものが現れるのがおもしろいところでしょうか。
さ、ビートルズでも聴こうかな(^_^)。
次(最後)は“3001年”という話ですが、さて、今度は何が起こるのでしょう?
(12/10)
“無伴奏ソナタ” オースン・スコット・カード (ハヤカワSF)
短篇集。SFというよりはファンタジーのほうが多い。
一番 SF っぽいのが“エンダーのゲーム”かな。
真中辺の話は僕の趣味に合わないのかいまいちに感じたが、
最初と最後が良いので全体の感想としてはまずまず。
以下、個々の収録作品についていくつか。
“エンダーのゲーム”… 長編で出ているものの原型。
いい作品です。だけど、エンダーがあまりにも可哀想(;_;)。
彼はその後目覚めるのでしょうか…。長編版 (& その続編)
は読むべきか? (長編版読みました (1998.6.27))
“磁器のサラマンダー”… んー、ファンタジーですね。
“無伴奏ソナタ”… この短篇集の取りにして表題作、さすがいい話です。
疑問点も幾つかありますが。
クリスチャンは勝ちました。が、本人は勝ったと思っているのでしょうか?
同じようなアイディアを、アシモフが書くと“プロフェッション”
(短篇集“停滞空間”所収) になるんだろうなぁ。
(10/10)