葱について  
ねぎの品種

葉鞘(俗にいう根)部をおもに用いる根深種は関東で多く栽培され、葉、葉鞘部ともにやわらかく両方をともに利用する葉ねぎ種は関西で多く栽培されている。国内で一般的に使われるネギは、加賀群、千住群、九条群の3群に大別される。

加賀群、千住群は白い部分を食べるネギで根深ネギと呼び、東日本において利用されることが多い。金沢で生まれた加賀群は、東北地方や北陸地方、山陰地方で多く栽培されている。現在の東京都江東区を発祥の地とする千住ネギの名は千住市場から出回ったために付いたもの

加賀群

寒さに強い耐寒性のネギで、冬は低温に遭遇すると休眠し、地上部は枯れるが、葉鞘(俗にいう根)部は長期の積雪に耐え、越冬する。一般に冬期寒冷な地域で作られ、代表は松本一本葱や加賀、札幌太などで、一本太と言う品種名が示す様に株別れが少なく、葉鞘が太いのが特徴。同じ加賀群でも、岩槻ネギ、会津太、青森地葱などの岩槻葱グループは、葉身はやや細く柔らかなので、葉ネギにも適する。上州一本ネギの名を持つ下仁田ねぎは、その名の通り、群馬県・下仁田町の特産品です。根深ネギと違って、葉部も太くて柔らかなため、すき焼きなどの鍋物に非常に適した品種です。甘みが強く、栄養価もタン、太く短足ネギもこのグループに属し、生で食べると辛みが強く、薬味向きではないが、熱を加えることにより、甘みとコクが出て、煮物や鍋物には最高です。江戸時代には将軍家に献上していたことから「殿様ネギ」の別名もあります。

千住群

千住群の中にもいくつかの系統が分化し、冬でもよく伸び葉が淡緑色で多少株分かれするものを千住赤柄(あかがら)、葉の色が濃緑色で、秋から冬の成長はやや劣るが夏から出荷できる一本葱を千住黒柄(くろがら)と呼び、両者の中間的なものが千住合柄(あいがら)と呼んでいる。現在、国内で栽培されているは根深ネギの多くは、千住系の流れの品種です。

この千住群の一種である金長(キンチョウ)と言う品種は、病気に強く、作り易い上に、見た目も好いと言うので、主産地の千葉、埼玉を始め関東一円で作られる様になりました。お陰で、微妙な香りや風味を持った、昔の曲がりネギや錫杖(シャクジョウ)ネギなどが廃れ、残念がるかたもいます。この他、吉川晩生、西田、石倉、深谷、伯州なども千住群の根深ネギの仲間です。

根深ネギの代表格は千住ネギであろう。何年か前にTBSラジオの午前の永六輔さんの番組でネギをテーマにした折り、関東近辺のネギ農家と中継しており、千住ネギのことにも触れていて、従来の千住ネギを出荷している農家は少なくなり、また、残った農家のほとんどが料亭等と契約しており、「千住ネギ」は一般消費者の手には入りづらいといっていた記憶がある。

千葉県松戸市の矢切産の矢切ネギ、埼玉県の深谷産深谷ネギが代表的なものですが、地元の矢切で現在使用されているねぎの種子は、その後に幾たびか品種改良がなされたもののようです。

 
千住ネギ

 葛飾区北部にあたる金町、水元、新宿区一帯は、昭和の中期までいわゆる千住ネギの産地として全国的にも有名でした。
 当地区の精農家たちは、もともと千住付近(現在の荒川区と足立区にまたがる地域)にあった古い「熊手ネギ」や「砂村ネギ」などから選抜改良して、良質な「根深一本葱」を競って作りだし、これらを総称して「千住ネギ」といわれてきました。中でも地元が生んだ「金町ネギ」は、その品質の良さから全国的に広く作られていきました。
 千住市場には、江戸時代から千住ネギの荷が集まり、当地では大正の頃、正月の初荷に1束150kgの巨大な荷姿のネギを出荷して祝うなど、当時の産地の勢いと、農家の心意気がうかがえます。

矢切ネギ

 

 いち早く優良品として東京市場で有名になったのは、矢切地区の「一本ネギである。従来その起源については、明治二十年ごろ東京府下砂村から種子を輸入し、松戸町の澁谷仁助という者がはじめて栽培したといわれていたが、実際には十五年以前から栽培されていた。澁谷仁助という人物を壬申戸籍で尋ねてみると下矢切村に発見され、父は重兵衛、戸籍面では仁輔(二十一才)と書かれ、残念ながら石高は記載されていない。
 仁助の伝記はこれ以外詳らかではないが、明治十五年の陸産会に出席した上矢切の渋谷保太郎も「抑葱の本場は東京府下砂村を以って第一とす、本員地方にても皆該村より購求して栽培するものなり」と述べており、種子は砂村より購入したものである。種子の代価は一合につき早種は十銭・中種は五十銭・晩種は七十銭位であった。しかし、矢切葱の名か高まるとともに、すでに「遠隔の地にては悪種をして我地方の種なりと偽り売却する」悪徳業者が現われるに至った。 
 松戸市史下巻(一)明治編p344 (明治前期の農業政策と江戸川流域の農村)

参考

 明治20年ころの「砂村」とは、東京府下の南葛飾郡砂村で、当時、葱の種子を近郷に出荷しており、砂村葱と称されていたようだ。ちなみに、【江東区史】p.796には、『根深葱は砂町方面が原産地で、他町村は種子の供給を多く同地方に仰いだものであった。』との記述されている。

当時の「南葛飾郡砂村」は、【角川日本地名大辞典 13 東京都】によれば、現在の江東区北砂・南砂・東砂・新砂にほぼ該当します。

九条群

九条群は葉が細く、通常軟白せず、青い葉を利用し、 関西で好んで食べられる葉ネギのことですます。太、細の二型があり、九条太は時には軟白することもあります。万能ねぎ(福岡)、奴ねぎ(高知)、シルバーステム(静岡)等は九条細の地域銘柄名です。ネギの青い所を捨ててしまう関東で、青みの美しい薬味用に使いだしてから人気が上がり、福岡県の朝倉町の葉ネギが「博多万能ねぎ」として九州から東京に空輪されています。この鮮度を保つための航空機利用から、「博多万能ねぎ」はフライト野菜とかジェットネギとも呼ばれています。

外国産ネギ
 リーキ(leek
 

 西洋ネギと呼ばれているリーキは、古代エジプトやギリシャ時代から栽培されていた。明治時代に日本に導入されたという。仏語ではポアロ、それが訛ってポロネギともいうのでフランス料理店でもメニューに見かけることがあります。ヨーロッパでは何故か、「貧乏人のアスパラガス」と呼ばれて広く使われている野菜のひとつです。このリーキの白い部分を長時間煮込んで、フランス人はサラダとして食べます。リーキの白い部分を縦に二つ割りにし、数本ずつ束ねて大鍋で、タマネギ、タイム、ローリエ、粒コショウ、塩を加えて一時間以上茹でます。柔らかくなったらザルに広げて冷まし、器に盛りつけて、ソースやドレッシングをかけ、トマトの角きり、バセリのみじん切りを散らします。まさにアスパラガスに匹敵する味となります。