★アメリカ社会とは

アメリカ社会とは何か

米国社会の特徴
 米国は多民族国家で、日本や韓国とは、社会の特徴がまったく異なる。最近はラティーノ、ヒスパニックなどと呼ばれる中南米系が増えており、マナーや価値観が違うので何かと社会問題になっている。今でも、白人(中南米系以外)が6割以上だが、大きく分けて、白人、中南米系(Hispanic あるいはラティーノとよばれる、多くはメキシコ人)、黒人(African, American)、アジア系(日本人もその他もすべてまとめてアジアンとよばれ、書類にもAsianと書かなくてはならない)、原住民(Native American, アメリカインディアン)がいる。しかし、白人の出生率は少ないので、2040年には、白人以外が米国での多数派になると言われている。だが文化的には、今でも白人が正統派であり多数派(Majority)。多文化社会なので、お互い価値観が違うため、アメリカ人としての常識や、マナーや習慣を設定して他人に押しつけてくるようなことは少ない。そのため、あまり細かいことは言われず、自由である。日本人のように礼儀に関してうるさいことを言おうとしても、そもそもお互いに、あうんの呼吸や価値観は通じない。その意味で自由の国だが、白人が主流派であり、正統文化を持つ。レディーファーストとか、レストランや床屋でサービスを受けたらチップは必ず払うとか(けちることは恥知らずで良くないこと)、といったマナーやルールや価値観がある。また、都会で贅沢な生活をするより、大自然の中でカウボーイのように強くたくましく生きていくのが立派な人間であり、アメリカ的な理想である。つまり、アメリカなりの様々な理想像や礼儀や価値観がある。

 この十数年で、全米各地の都市は治安が改善した。ニューヨークやシカゴも、中心部ならば夜歩いても問題ない。日本人がよく誤解しているのだが、多くのアメリカ人は、白人のみの人口数万人以下の小さな町に住んで、あまり治安の問題もなく、とてものんびり暮らしている。多くのアメリカ人の生活は、peaceful and silentである。ニューヨークやロサンゼルスは、かなり例外的なアメリカである。大都市で慌ただしく生きているアメリカ人は、標準的な人ではないが、日本のテレビには大都市ばかり出てくることが問題。日本よりもかなり不平等は大きいため、社会を把握するのが難しい。統計では、平均的な世帯収入は日本とほぼ同じであるが、貧富の差が多きすぎる。また、社会の冨の蓄積が大きいため、実際には、日本よりもはるかに豊かな社会である。普通の中学の先生が、土日は自分の車に大きなモーターボートを牽引してボート遊びに行くようなことは、ごく普通である。住宅ローンと子供の教育費がある場合、生活が大変というのは、日本と同じだが、住宅については、多くの場合、日本よりも安くて大きな家を買うことができるし、あまり問題がない。大学の費用は、子供が自分で払うことが常識なので、教育費も、さほど問題ない場合が多い。なお、こちらで公立中や高校の教員というと、あまりクビにならず安定しているが、やや給料が低く、恵まれない仕事というイメージがある。田舎の町では、まあまあいい仕事ではあるが。日本のように、公立学校の教員に多めの給料を払うようなことはない。これは税金の節約という意味で合理的ではあるが、公教育の質の低下につながり、問題になっている。しかし、公教育に興味がないアメリカ人は多い。全般的に、教育への興味関心はあまりない。

 また、メキシコ人など中南米系の貧しい人達が移民労働者(migrant workers)として大量に入ってきたため、国内に先進国と途上国の両方の要素がある。彼らはこれからテレビや家をたくさん買いたいし、学歴が低いが結婚が早く、たくさん子供を産む人も多いので、経済成長の余地が大きい。そのための市場も大きく、テレビや家電製品も何でも単機能で安いものが売れる。出生率が高い部分もあるが、ただ、白人の高学歴者は、日本と同様、出生率は低く、結婚年齢は高い。その意味でも、複雑な社会である。貧しい原住民(Native American)もいるが人口はごくわずかである。

 人口の約2割は、家では英語以外の言語を使う。中南米系のスペイン語が多い。公用語を英語と定めた法律はなく、スペイン語や中国語しか通じない地域も多い。また出生する赤ちゃんの約4割は、婚外出産である。つまり、結婚していないカップルから生まれる子が多く、離婚も多いため、両親と接することが少ないアメリカ人も多い。また、普通の労働者やサラリーマンの雇用は一年契約であり、いつクビになっても文句は言えない。クビになったとしても、本人が優秀なら他の職場が見つかるし、一社にこだわる必要はない、という考え方なのである。だから、いつクビになるか分からないので、社内では同僚や部下とフレンドリーに接するとしても、フレンドになってはいけない、と言われる。突然クビになり、それっきり会わないことも多い。平均勤続年数は約4年。
 大学教員の雇用は例外的であり、准教授以上は終身雇用権(テニュア)を持っている。そのため解雇を気にせず、長期的な視点で研究してもよい。しかし助教授(asistant professor)以下は基本的に最大5年契約。1年でクビになっても文句は言えない。普通5年たつと業績評価があり、その時の評価が悪くて昇進できないと解雇予告となる(追加で1年の雇用をもらえるので助教授は計6年の雇用)。しかし一流大学をクビになっても、本人が優秀なら、他の大学でたくさん仕事はあるのだから、あまり気にしない人も多い。名門大学では、多くの人は昇進できないので、他の大学に移ることが前提であり、自分で職を探すことになる。超名門でなければ、そこそこの業績なら多くは昇進できる、ということもある。半分くらいは昇進するという大学もある。

 アメリカというと治安が悪いイメージがあるが、大都市内の一部地域を除き、多くのアメリカは平和である。また、2015年時点で、ニューヨークやシカゴ中心部も、劇的に治安が改善しており、夜に徒歩で移動しても問題ない場所も多い。ただしシカゴ南部など、いまだにかなり危険な場所もある。2002年にシカゴ中心部を歩いたら、かなりすさんでいたが、その後、警察の取り締まりや、都市再開発、米国の好景気などのため、町はかなりきれいになった。ニューヨークは、夜に徒歩で移動しても問題ない地区が増えたが、油断しない方がよい。マリファナ合法化のため、市場の麻薬価格が暴落し、マフィア組織が打撃を受けたことも、治安改善の一因と言われる。全米の多くの地域でマリファナは合法化されている。
 全般的な風潮として、日本人ほど教育熱心ではない。アメリカ人の7割は公立大に入るが、無試験で入れる大学がかなり多い。最近の公立大は授業料が上がり、年間1万ドル以上(100万円)のことも多い。ウィスコンシン大学マディソン校は、良い大学のわりに授業料は安めであり、年間1万ドルくらいだが、州外生はその2倍かかる。だが、公立大でも優秀な教授が多くノーベル賞を取っている人もいるし、大学のレベルは全般的に高いので、アメリカ人はあまり教育に不満がない。ただし、最近は、高額の学生ローンが社会問題になっている。大学以上は、学生本人が払い、親が負担しないことが多いので、生活費などを合わせ、4年間で400万円以上の借金を背負う学生も多い。しかし、ハーバードやスタンフォードなど一流大は、1年間で5万ドル以上の学費であり、結局のところ、金持ちの家庭の子のみで、親が学費を出す。本人が出せる金額ではない。ただ全般的に、受験競争は厳しくはないし、アメリカの多くの家庭は、あまり教育に興味がなく、塾通いをするような子供は少ない。ごく一部に、エリート大学を目指して私立中学に入るような子もいるが、これは少ない。大卒後に数年間、海外放浪などぶらぶらしていていも、とくに何も言われない。自分の進路を決めるために、大卒後に、色々な事を経験することは問題ない。徴兵制は事実上、停止状態なので、豊かな時代に、米国軍が兵隊を集めるのは大変。軍に入ると公立大授業料が4年間無料になるので、貧しい家庭の子は軍に入って大卒資格を得ることをすすめられる事が多い。平時はそれでいいが、有事にイラクに派遣され、大卒どころか死体になって帰国する結果になった。貧しい若者ばかりたくさんの死亡者が出ることになり、豊かな家庭の子や国会議員の子は軍にはもちろんいかない。これは極めて恥ずべき制度だと米国内でも左翼的な人には批判されている。マディソンは左翼的な町であり、戦争反対のデモなど見ることもある。10年以上にわたるイラク・アフガン戦争で4千人以上の死者が出たが、多くは貧しい家庭出身の若者である。全米には4千以上の大学があるが、私立大の学生で兵隊に行く人は少ない。大規模な公立大には戦死者もいるし、生還しても精神的問題があり、大学に復帰できないか、復帰してもすぐ退学してしまった人も多いと言われる。しかし、私立大のエリート教授や政治家は、そのような現実をよく知らない。

人柄の特徴
 性格は明るく、何でもはっきりものを言い、ダメもとで何でも交渉することが多く、自己主張がかなり激しい。しかし大声をあげて怒ったりすることは下品であり、あまりいらいらしないし、あまり怒らない。日本人はせっかちだが、アメリカ人は、店や空港や役所で長い行列ができていても、あまり気にしない。日本人のようにいらいらしないし、細かいことで怒ることは少ない。空港で予定の便がなくなっても、あまり気にせずあきらめる。国土が広いし、悪天候で機材のやりくりがつかなくなると、遅延や結構はたくさんあるが、仕方ないことである。
 アメリカ人は子供の頃から、何でも褒められて育ち、厳しく怒られることは少なく、何をしても親にGood job!と言われ、細かいことは言われず、自信過剰な性格に育つ人が多い。そのため、明るく元気だが、いざとなると逆境に弱く、鬱になる人も多い。もちろん、優秀で忍耐強い人もたくさんいるが、日本人の想像以上に豊かな社会で、とてものんびり育った人が多い。中流以下の家庭や、高卒以下の学歴でも、かなり豊かな生活ができるので、日本人のように教育に厳しく、いい大学に入っていい会社を目指すとか、常に上を目指す、などの価値観は少ない。まあそれは、高度成長が終わった日本でも、同様ではある。中学や高校はすべて、6月〜8月の3月間は夏休みである。金持ちの家庭は、サマースクールなどに入れるが、多くの子供は、その3月で勉強したことなど忘れてしまう。基本的な学力は低く、日本人には信じられないことだが、アメリカでは、かけ算の九九がまったくできない大学生がほとんどである。ただし、他民族国家なので、自分の意見を相手にはっきり伝えること、プレゼンテーション、文章の書き方などは重要なことであり、学校でもよく教育されている。そのため、日本人と比べて、分かりやすく説得力のある文章を書く能力が概ね高いし、討論や発表も上手である。大した能力もなくかけ算や割り算もできないのに、口だけ達者な人がたくさんいる。日本人から見ると、あきれてしまうことも多いが、何事も一長一短であり、文化の違いなのだから、仕方ないことである。アメリカ人から見ると、英語もできないのに米国の大学に来る日本人にはあきれているだろう。
 なお、アメリカ人も日本人も、大学生は酒を飲んでくだらない話しをするのが好きである。フランス人や中国人の学生は、哲学的な議論を好むという説もあるが、酔った大学生は大騒ぎが好きである。単なる飲み会のことをpartyというが、とくに、中西部の大学は、party universityと呼ばれる所が多い。飲み会のために授業料を払っているのかとよく言われる。学生はみな、くだらない話しをして盛りあがる。ただ、アメリカ人の多くは、日本人よりもかなり酒に強いしたくさん飲む人が多い。日本のように、酔って動けなくなる人は少ない。そのようなことは、恥ずべきことである。酔っぱらって粗相をすると厳しい目で見られる。日本の方が酔っぱらいに寛容である。アメリカ人は、酔ってもすぐさめるが、その分、大量に飲むので、アル中になる人も多い。また、酔っていても体が動くので暴行事件なども多い傾向がある。ふだん親切でも、酔っている時は凶暴になる人が、日本以上にいるので注意が必要。

価値観
 自由でマナーやルールに関してあまりうるさいことは言わない。他人に気を遣うことが少なくのびのびしている。しかし、困った人がいると、とても親切である。上下関係の序列や目上などは何も気にしないので日本と異なる。教授に対してでも、アダム、あんたの意見はそうでも、私の意見は違うんだよね、とはっきり言う。何をしても自由である。細かいことは気にしないが、仕事における時間や規則は、きちんとしていなくてはならない。仕事における遅刻は問題にされるが、パーティーでは約束より1時間遅れて行くのが普通である。
 人生は何事もdo your bestが重要。ただ、自分の能力以上のことを求めることはない。今よりも改善しようという気持ちがやや少ない。もちろん、優秀な人はとても努力するが、その意味で、全般的には日本よりもストレスが少なく、楽な社会である。だが最近は、不景気にともない、クビになる人や、就職できない若者も増え、日本よりストレスが多い部分もある。大学教員などは、研究成果を厳しく求められるので、日本よりもストレスが大きい。しかし、基本的には豊かな社会であり、人生を楽しむことが大切。Life is for fun! であり、人生は、楽しむことが大切。
 アメリカ人の頭の中はカウボーイであり、大自然の中で、一人でたくましく生きていく人間が理想である。都会よりも田舎を好むアメリカ人は非常に多く、ニューヨークなどのアメリカ人は例外的であり、成功すると牧場を買って田舎に住む人もいる。他人に依存しない、独立した人間が立派であり、個人主義というのは、独立した個人が自分で考えて強く生きていくという意味である。日本人のように、職場の同僚とぐだぐだと飲むようなことは少ないが、その分、とくに年を取ると、孤独な部分もある。老後に自分の子供とあまり接しないことも多く、夫婦で生活を楽しむことが大切である。
 社会全体において、女性の立場が強く働く女性も多い。夫婦はよきライバルであり、女性が男以上に稼いで出世することは推奨される。といっても、何かと女性が強すぎるので、表だっては言いにくいが、ひそかに疲れたと感じている米国人男性は多く、おとなしくて男性をたててくれる日本人女性にあこがれる人も多い。日本人女性はとてももてる。日本人男性は、男尊女卑で料理をしないというイメージが強く、デートの仕方や、おしゃれな生活も知らないし、もてない。アメリカ人男性は料理をすることが多いが、日本人が考えるような凝った料理ではなく、わりと簡単な料理である。家に換気扇がなく、フライパンで炒めるようなことはほとんどないのが普通。ハムやチーズやサラダを切るだけか、冷凍食品を電子レンジで温める、オーブンで何かを焼くか煮込む料理であり、簡単である。パンをあまり食べず、ジャガイモばかりの家庭も多い。クラッカー、ポテトチップ、トマトジュースなども、食事として十分。そもそも日本男性は、日本女性と結婚したいと考える人がとても多いが、日本女性は、アメリカ人との結婚にあまり抵抗がない。全米各地に、白人男性と結婚した日本女性がいて、かなりの田舎にも、老人を含め日本女性がいる。東京で働いていたエリート白人サラリーマンと知り合って結婚した日本女性が、米国に移り住んで米国で子育てすることもある。そのような場合、子供はのびのびとしているが、他人を気にすることがなく、日本人のような思いやりや細やかさがなく、戸惑うこともある。ただし半分以上は、アメリカ軍人と知り合った結果として、結婚してアメリカに移り住んだ女性である。高卒のアメリカ人男性と結婚した高卒日本人女性と、大卒日本人女性とは、社会階層が異なり、価値観が違うことも多い。アメリカ人の結婚観や恋愛観は、日本人とは異なり、わりと簡単に付き合って結婚し、日本人と比べて離婚も簡単に決断する。離婚が悪いという価値観があまりない。また、アメリカ人男性は、恋愛に関してとても情熱的で、女性に対して非常に優しいが、浮気も激しいといわれる。ただ、最近の日本の若者も、簡単に付き合って簡単に別れるので、あまり差はないのかもしれない。
 しかし、日本人男性は、彼女が妊娠した場合、責任を取って結婚することが多いが、アメリカ人は、結婚した上での出産ということに、あまりこだわらないので、妊娠しても結婚とは考えないことが多い。したがって、父も母も知らず、親戚やお祖父さんに預けられて育ったアメリカ人も多い。そのような子供は、学校での成績が悪いという研究結果もあり、米国での不平等につながっている。以前、映画のスパイダーマンを見た時もそうだったが、アメリカのドラマや映画で、さえない白人の若者の主人公が、両親がいなくて、親戚の家に暮らしており、成績が悪いというのは、よくある情景である。
 なお、日本人が最初にアメリカに住むなら、田舎の方がよい。日本でもアメリカでも、大都会で、見知らぬ外国人が親切にしてもらうことは少ない。日本の高校生が、米国のかなり田舎の高校に1年間住んだ場合、最初は英語もできず友達もいなくて毎晩泣いていたとしても、自分から積極的に話しかけると、とても親切にしてもらって、友達もたくさんできたとのこと。最初は誰でも、英語が通じず雑談の相手もいないし、様々なカルチャーショックがある。しかし、都会の高校へ行った日本人は、あまり友人もできず1年終わってしまい、その後の人間的交流もない。アメリカに住むこつとは、小さめの治安がいい街に住むことである。マディソンより大きいと、友達ができないし、生活が大変。なお日本人女子高生は、若くて頭が柔らかいし柔軟性があるので、現地に3月住むと英会話に問題なくなる。しかし、30すぎた日本人の男は、3年住んでも、英会話が不得意であることが多い。

勤労への価値観
 日本と同様、もはや農業従事者は全労働者の2%程度である。製造業も不振で、大金持ちの多くは不動産や金融で儲けた人。残念ながら、額に汗して働くような労働者を尊重しない風潮が最近はある。もちろん真面目な人もたくさんいるが、楽して儲けることが好きであり、金融やITで儲けたいと思っている人が多い。フェイスブックを立ち上げて大富豪になったザッカーバーグのような人にあこがれる学生が多い。ザッカーバーグという名前は日本ではあまり有名ではないが、アメリカの学生は誰でも知っている。なるべく楽して儲けることを重視する人が多く、日本人から見ると、勤勉さが足らなくて不真面目である。だが、いざとなると努力する人も多いし、とくに一流の人は勤勉で、仕事中毒の人も多い。大学での研究レベルは、日本よりもはるかに高く、もちろん勤勉な人もたくさんいる。
 ただ、多くのサラリーマンは、5時以降に長時間働く気はない。勤勉さへの価値観は日本人と違う。夕方5時以降に仕事をするのは、かなり良くないことであり、家族のための時間を毎日きちんと確保することが、人間としてとても大切なことである。5時以降も喜んで働くのは日本人、中国人、韓国人など、限られた人達。こつこつと努力して、あまり大口をたたかない日本人は、職場で信用されることが多く、結局のところ、クビになるのは普段大口をたたいていいた日本人以外、ということもよくある。どこの国でも、真面目にやっていれば信頼されるし、結局は同じ人間なので、こちらが正直に真面目にしていれば、気持ちは通じるというもの。ただ、5時以降は絶対に働かず、楽して儲けようという姿勢が強いアメリカ人の職場に、馴染めない日本人もしばしばいる。そういうことについて文句を言っている日本人に何度か会ったのだが、価値観の違いは仕方ないことである。アメリカの職場には、色々な価値観で、自己主張がとても激しく、やたらと文句を言う様々な人種がいる。ただ、日本人は、そのような人達を扱うのは不得意であり、管理職として出世するのがやや難しい。

日本イメージ
 アジア人というと貧しいイメージがあるが、未だに、日本人というと、比較的お金があり、おとなしくてマナーがよいというイメージがある。また、現在の世界において、日本は数少ない親米的な国であり、親日的な人も多い。日本人というと信用されるというのは、ありがたいことである。逆に、中国人やメキシコ人だと分かると、冷たい態度になるアメリカ人も多い。未だに、黒人差別、ユダヤ人差別もたくさんある。芸能界や、医者や大学教授にはユダヤ人が多いが、これは、差別があまり関係なく、実力で稼ぐ事ができるからである。日本の芸能界に在日が多いのと同様。ただし中国系アメリカ人など、日中戦争で祖先の土地を失い命からがら香港経由で米国まで逃げてきた人もいるし、蒋介石時代の台湾で反日教育を受けた世代もいる。それらの老人で反日的な人も少しいる。そもそも多くの日本人は、そのような歴史や、日中戦争が何年間あったかさえ知らないので、日本の教育にも問題があることは確か。アメリカに住む日本人の多くは恵まれた生活をしており、家賃が高くて治安のいい場所に住み、いい車に乗っている。ぼこぼこへこんだ車に乗っている日本人は少ない。金を稼いで、本土から家族を呼び寄せ、アメリカに永住する覚悟で努力している中国人や韓国人学生とは違って、日本人は恵まれている。ただ最近は、金持ちで努力しないアジア人留学生は、2010年頃の米国でかなり話題になった。ウィスコンシンでも、書類上は優秀なのに、入学後はまったく勉強できない中国人が問題になったことがある。途上国の留学生選考は、有力者とのコネや賄賂が重要で、選考試験の点数が重要ではないことはよくある。サウジアラビアなども、書類上の点数はデタラメであり、最近は、米国の大学への入学は厳しくなっている。そのため、日本等他の国の大学を探す人もいる。

 多くのアメリカ人は、アジアや日本にほとんど興味がなく、日本がどこにあるか分からない。日本車や日本の家電製品は故障しないので、わりと豊かで技術の進んだ国だが、狭い国土でみんな小さな家に住んでいる、というくらいのイメージがあるかどうかという程度。日本文化といえばアニメやニンテンドー、プレイステーションなどマニア文化のイメージが最近は強い。大学で日本学を専攻する学生は、最近はアニメマニアの男ばかりである。健康的というよりは、不健全なイメージである。あとは電気製品やバイクや自動車のイメージが強い。ただ、日本人は男尊女卑というイメージはかなりあるし、レディーファーストなどの習慣を無視するアジア人は多い。米国も、歴代大統領はすべて男性で、知事の多くは男性である。政治の世界では、日本と同様だが、会社や役所、大学、IMF、FRBなどでは、女性管理職も多く、女性の社会進出が進んでいる。その代わり、女性が料理や子育てに熱心である必要はなく、むしろ、日本人から見るとかなり手抜きでも問題にされない。

 アメリカ人は、歴史的につながりがあるヨーロッパやアフリカに興味がある。また、中東やイスラム文化に興味を持つ人もいるし、地理的に近い中南米もよく話題になる。だが、アジアは中東のさらに遠くというイメージで、よく知らない。最近、中国に興味を持つ人が増えてきたが、その程度である。米国のテレビニュースで、日本が出てくることはほとんどない。アジアのニュースも少なく、せいぜい、北朝鮮の核実験のニュースくらいである。ただし、米国の同盟国の中で、最大の経済力を持つのは日本である。日本のGDPはドイツやイギリスよりも大きく、軍隊も無傷で、高価な戦闘機やイージス艦をたくさん持っている。同盟国最大の軍事力を持っていると言ってよい。日本人は、日本を小さな国と思っているが、世界の中の日本は、米国と中国に次ぐ経済力があり、小さなものではない。多くの日本人には想像もつかないが、米国政府は、日本の軍事力に期待している部分も多い。できれば、自分が楽をして日本軍が中東で働いてくれれば合理的である、というのが米国政治の考え方である。オバマが日本政府に対して、自衛隊の海外進出を望んでいるのは、そのような事情である。米国政治とは、戦争に関する内容が多いが、日本政治には、戦争をするかどうかの決断という要素はなく、多くの日本人には想像もつかないことである。

住むときに気をつけるべきこと
 米国の大都市においては、値段が安い場所は治安が悪い。マディソンでは、ごく一部の貧困地区を除き、安くても治安にほぼ問題がないが、中心部の大学近くは、よい物件は少なく、あったとしても家賃が高い。大学近くは、高級マンションも増えてきたが、学生が多く、金曜や土曜夜は、深夜まで大量の酒を飲んで騒ぐ。とてもうるさいし、学生以外が住むのには向かない。大学近くに住むことはおすすめできないし、そもそもまともな物件が少ない。近くで家を探しても無駄であり、結局のところ、大学からやや離れた所で、ややきれいな賃貸アパートを探すしか選択肢がない。自転車で15分くらい行けば、1000ドルくらいで一人暮らしようStudioに住むことができる。あるいは、かなり離れて、まあまあの値段のアパート。古い物件は故障が多いし、日本よりも、設備の故障が多く、保守点検の能力が低い。というより、日本の労働者の技能が高すぎるのだろう。多くのアパートには、冷蔵庫と食器洗い機と電子レンジはついており、洗濯機と乾燥機は地下で共同ということが多い。しかし、古いアパートだと故障が多く、英語での交渉能力がないと、修理依頼がやや面倒である。新しい物件に住んだ方がよい。なお、1人用の小さなアパートは少ない。2ベッドルームのアパートとは、日本でいう2LDKであり、大きな今の他に寝室が2つあるが、日本の物件より面積はかなり広い。2BA 2BRとは、2バスルーム、2ベッドルームである。お客さん用に2つ風呂がついている物件も多い。賃貸用をアパート、販売しているものをコンド(日本でいうマンション)という。マンションとは大邸宅のことだが、あまり使わない単語。
 米国人はごみ処理や下水処理に、あまり予算を使わず、水の汚染は比較的多く、きれいな湖は少ない。マディソンの湖の多くも水質が汚い。大気汚染や排気ガス問題は現在の米国では少ないが、もともとロサンゼルスの大気汚染は有名だった。しかし、規制が厳しくなり最近は改善している。米国社会にも様々な規制がある。水道の質は日本の都市と同様であり、危険はないがおいしくはない。クリスマスはほとんどの店が閉まるので、日本人がイメージするような華やかなクリスマスはどこにもない。大晦日や正月は、普通に営業する店も多い。大都市で、人気が少ないところの治安は悪い。強盗や自動車泥棒も多い。自動車のガラスを割られ中のものを盗まれる事も多く、トランクは個別に鍵がかかるし、日本のような大きなカーナビはない。画面が大きめのスマートフォンの、グーグルマップアプリが、カーナビ(GPSとよぶ)になるので、それを使う人が多い。乾燥した土地が多く、薄いコーヒーや、コーラをたくさん飲む人が多いが、ミネラル不足で夏バテのようになるので、日本人は、なるべく麦茶とかミネラルウォーターを飲むようにした方がよい。住み始めの日本人は、乾燥、冷房効き過ぎ、ビタミン不足などで体調を崩す人が多い。ビタミン剤など、かさばらないものは、持って来た方がよい。

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