モーニング娘。プロフィール(4)石黒彩編

特別企画・Memory「鼻ピの人」彩っぺの軌跡

特別企画(メモ、と読んでちょ)は少し長いけど でも最後まで読んでよ ねえ

12月5日放送分の「ASAYAN」で電撃的に発表された彩っぺの脱退がファンに多大な衝撃を与えていることは周知の通りです。E.T.の顔真似、「LOVEマシーン」での踊りの面白さや「聖なる鐘のひびく夜」のソロバージョンなどで俄然注目され、今後の更なる活躍を誰もが待望していただけに、本当に惜しいことです。福田明日香ちゃんの脱退は1月に告知され、脱退まで3か月の時間がありましたが、彼女の場合はもう間もなくでしかも2人めということで、明日香ちゃんの脱退以上のインパクトがあります。タンポポはかおりん・真里っぺの2人になるようですが、一体どのような展開を示すことになるのでしょうか。

このプロフィールでは、彩っぺの脱退を目前に控えていることを考慮して彼女の言動の変遷などもたどりつつ、「鼻ピの人」・彩っぺの軌跡を振り返る試みをしたいと思います。彩っぺの言動の変遷をみることは、モーニング娘。がどのようにして団結力を高めてきたか、ということを知る手掛かりにもなり、ここから「モーニング娘。の心理学」を学べます。

彩っぺは1978年5月12日生まれで、改めていうまでもなく北海道出身です。服飾デザインへの関心はモーニング娘。になる以前からで、加入に伴い退学した短期大学でも既にこれを学んでいたことから、更に「趣味・服集め」としていることからも明らかです。「ロックおばさん」を理想としていた彩っぺは、「シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション」の「ロック」の部分に特に惹かれて札幌地区予選からこれに参加し、本選まで進んでいきました。

鼻ピアスは高校生の時分に自力で開けたそうです。この鼻ピアスに、彩っぺのセンスとエッセンスが集約されているといえるでしょう。なっちやかおりんが5人集合当初に用いていた「鼻ピの人」という呼称は、こういう意味でも実に言い得て妙だと思います。この「鼻ピ」は単なるアクセサリーにとどまらず、あるときはロックへの情熱を、またあるときには服飾への情熱を感知するという一種の感知器としても機能しているのではないでしょうか。

このオーディションでは一度落選しましたが、他4名と同様「愛の種」5万枚完売を成功させ、モーニング娘。の一員としてデビューを果たすことに。98年秋からはタンポポの一員としての活動も開始し、後述の発言からも分かる通り、これが彩っぺに大きな影響を与えることになります。そして、99年12月・・・

彩っぺの言動から分かる「モーニング娘。の心理学」

モーニング娘。は周知の通り、初期には5名、98年からは3名が加わりました。99年にはまた増減されますが、とりあえずこの5名と3名の相互関係を考えます(便宜上この旧メンバー群と新メンバー群を2つの「集団」とみなします)。この「集団」間の相互関係を左右するファクターが「競争(=刺激)」と「協力」です。そう、モーニング娘。の歴史は、この「競争」と「協力」の模索の歴史に他ならないのです。その歩みは決して平坦ではなかったはず。このことをよく示しているのが彩っぺの言動なのです。ここで具体的にみてみましょう。


COMMENT1:「最初に5人のメンバーが揃ったときは、正直な印象が<絶対、コイツらとはやっていけない・・・>(中略)やっとデビューできたときも、私がもともとやりたかったロックとは全然違う感じの曲で、どうやって歌ったらいいのかわからなかった。(中略)でもいつのまにか、目標に向かって、協力してがんばってるうちに、5人がしっくりくるようになってた。3人が加わったあとも、みんながウソみたいに仲よくなってる」(「Myojo」99年6月号、デビュー当時の「オリコン・ザ・一番」などでは、「モーニングコーヒー」への共感を語っていましたが・・・)

COMMENT2:「この1年で、私自身、歌に対する気持ちが変わりました。(中略)タンポポを始めて、自分の歌い方を見つけなくちゃって意識するようになりました」(「Duet」99年6月号)

COMMENT3:「モーニング娘。でいる時に、この3人で集まったことは一度もなかったし」(「Street Jack」99年8月号、タンポポの団結力が高まってきたが、最初は不安だったという話題で)

COMMENT4:「お互いに刺激し合って、その上で協力しながら進んでいく。その過程が私たちにとって、とても楽しい作業なんですよね」(「週刊プレイボーイ」99年9月28日号)


特に明日香ちゃんの脱退前後から、デビュー当時、或いは3名加入当時の番組・記事には(表向きは)みられなかったメンバー相互の微妙な心理状況が続々と明かされるようになってきました。「うたばん」のトークで特にそれが顕著だったのは周知の通りです。3名加入当初の5名+3名という対立の状況やタンポポ結成時のいまひとつしっくりいかなかった状況(これは「日経エンタテインメント!」98年12月号で、真里っぺが「石黒さん」「飯田さん」という呼称を用いているあたりからも窺える)から、様々な喜怒哀楽の場面を経て、相互の団結力が高まるまでの過程・・・

この過程は、まさに心理学の事例です。心理学者Sherifに「もし競争が衝突を生むならば、協力し、目標をメンバーが分け持つことで、融和が生まれるであろう」という仮説があるのですが、このモーニング娘。の事例でこの仮説が見事に実証されていることがお分かりと思います。ちなみに彼の実験は、少年から成る2つの集団が対象でしたが・・・

この実験の第1段階は「自分の所属集団のメンバーとだけ行動(=5人集合当初の状況や5人対3人の状況)」、第2段階は「野球などをさせることで競争的条件を与える(=「愛の種」5万枚完売、メインボーカルの決定、タンポポ新設など)」、最終段階は「2つの集団が協力しなければ解決しない事態の導入(=「抱いてHOLD ON ME!」1位獲得、明日香ちゃん脱退に際しての話し合い、「ふるさと」対「BE TOGETHER」戦?:これは残念な結果となりましたが・・・、など)」というもの。こうみると、一見場当たり的にみえるモーニング娘。の展開も、心理学的知見にかなり基づいていて感心させられます。つんく大先生の大先生たる所以は、曲の魅力は勿論のこと、このような部分にもあるといえましょう。

今回の脱退表明に通ずると思われる発言が、「Ray」9月号(なっちが表紙)にありました。「今まで<お前何がしたいんだ>って聞かれても何も答えられなかった。まずそこから自分を探していこうと思ってるんです」 その結果得られた決断がこの服飾デザイナーへの道を歩む、ということなんですね。いま読むとこの意味の重みをひしひしと感じます。ファンとしては、やはりこの決断を最大限尊重し、応援することが課題となるでしょう。