使われている動詞の分析(タンポポも含む)

  1 2 3 4 5 6 7 8 A B C D
見る・見つめる・見とれる              
言う・口に出す・伝える          
抱く・抱きしめる                  
Kissする                
愛する              
別れる・終わる                  
なる                  
いる            
行く・ゆく                
泣く            
叱る                    
お祈りする・祈る・願う                
気づく・知る・分かる              
学ぶ・おぼえる                    
れる・される              
してくれる                  
感じる                  
捨てる                    
続く                    
出会う                    

使われている名詞の分析(タンポポも含む)

この表から、興味深いことが判明します(解説参照)。

人称 1 2 3 4 5 6 7 8 A B C D
私・あたし            
あなた・あんた  
彼・あいつ                    
一人                    
二人            
恋愛関連語 1 2 3 4 5 6 7 8 A B C D
           
                 
恋愛                
失恋                    
抽象名詞(日本語) 1 2 3 4 5 6 7 8 A B C D
時間帯            
自然            
季節                  
         
場所          
抽象名詞(英語) 1 2 3 4 5 6 7 8 A B C D
時間帯                
感情              
人物                  
季節                    
情報/経済用語                    

歌詞から判断される時制(タンポポも含む)

  1 2 3 4 5 6 7 8 A B C D
現在                  
未来          
過去          

1:モーニングコーヒー

2:サマーナイトタウン

3:抱いてHOLD ON ME!

4:Memory青春の光

5:真夏の光線

6:ふるさと

7:LOVEマシーン

8:恋のダンスサイト

A:ラストキッス

B:Motto

C:たんぽぽ

D:聖なる鐘がひびく夜

■分析対象とした動詞・名詞は、歌詞中の主要な、または頻出するもののみです。

■歌詞の詳細については、CD添付の歌詞カードを参照してください。これらを参照しながらこの表をごらんになれば、各項目に対応する名詞が具体的にどれなのか分かるはずです。

[動詞の視点からの解説]

モーニング娘。

特に目立つのは、「言う」「いる」「泣く」といった動詞です。大雑把にいえば、娘。の曲はこの3要素が基本パターンになっているといえそうです。とすると「言う」型の典型は、「LOVEマシーン」、「いる」型の典型は、「真夏の光線」、「泣く」型の典型は、「Memory青春の光」ということになるでしょう。「言う」型の視点は未来にあり、これから始まる恋愛への期待感を、「いる」型の視点は現在にあり、本格的になりつつある現在の恋愛状況の喜びを、「泣く」型の視点は過去にあり、楽しかった日々の回想を、それぞれ歌っているといえます。

「言う」という動詞は、他のアーティストの曲でも頻出しますが、多くは「言えない」(=ことばが役に立たない、ということの象徴)という使われ方(Kiroro、小田和正、等々が典型例)です。これに対し、娘。の7曲には「言えない」という用法は全く含まれておらず、基本的にことばへの信頼の強さが感じられます。「モーニングコーヒー飲もうよ 二人で」「好き」という彼のことばを信じ、自ら「NICE BODY」と公言してはばからない、というのが娘。の曲に出てくる女性像です(しかし、一方では「-れる、される」「-してくれる」というような受け身な面もみられるのが特徴)。「抱いてHOLD ON ME!」で歌われている激しい感情は、こうしたことばへの信頼が出来なくなってきたということに他ならないのです。

「行く・ゆく」というのも多いですね。「ついてゆく」「去って行く」というような言い回しは、何やら運命的なニュアンスを醸し出しているように感じられます。

更に、「気づかない・知らない・わかんない」というフレーズが恋愛の始まりから進展中の状態でみられ、それらとは対照的な「学ぶ・おぼえる」というフレーズが恋愛の終わりの状態で用いられていることも分かります。


タンポポ

共通して用いられている動詞があまりないのが特色です。同じ動詞でも娘。の曲とは異なる意味や場面で用いられることが多いようです。まだ曲数の蓄積が多くないことに加え、やはり曲ごとに内容や女性像がかなり異なるためでしょう。動詞に関しては、こうした形での相互比較よりも、傾向を個別に検討して、その結果を比較するようにする方が適しているようです。

娘。の曲の基本パターン「言う」「いる」「泣く」は、タンポポの曲に関してもあてはまりそうです。但し、こういった動詞は直接明示されていないことも多いというところが娘。の曲とは異なります。また、「Memory−」で用いられている「捨てる」という動詞の主体は、別れた彼であるのに対し、「ラストキッス」での「捨てる」の主体は、この主人公の女性であるという点も対照的です。メモの後始末の判断を彼に委ねる女性と、思い出の写真を自身の判断で始末する女性の違いが見事ですね。

こうした「言う」「いる」「泣く」の直接の明示の代わりに、曲が醸し出す「映像美」や、「ことばの美」をより重視しているのがタンポポの曲といえるでしょう。これはプロモーションビデオ(特に「聖なる-」)の演出方法の違いからも分かると思います。特に「たんぽぽ」は、タンポポの基軸となる曲であり、映像美の構成要素の代表格である花をタイトルに据えて「花に託す」(こうした詞のアンソロジーが「詞華集」)という古典的な詩の手法を用いているということでも注目に値します。

[名詞の視点からの解説](2000.2.6増補)

モーニング娘。

「私」と「あなた」の恋愛関係が大部分を占めていることが分かります。「あなた」への語り掛けを基本パターンとし、「2人だけの世界」が展開されています。時の流れによる心理変化や状況変化を歌ったものが多いことも分かるでしょう。時間帯的には夜がほとんどであるのは、曲の状況上いうまでもありません。これらは多くの他のアーティストの曲にも認められる傾向であり、それぞれ聴き手の人気と共感を呼ぶ要因となっています。

但し、モーニング娘。(というよりはつんくというべきか)の場合は、「2人だけの世界」をベースとしつつも、「ふるさと」のように普遍的な親子愛や郷土愛を歌ったり、「LOVEマシーン」のように「日本」「世界」といったよりマクロな視点を導入したりもしている曲があることが、「2人だけの世界」のみで完結することの戒めにもなっているように思われます。このことこそ、モーニング娘。の曲を単なる「アイドル歌謡」として片付けられない最大の理由なのではないでしょうか。

「抱いてHOLD ON ME!」「LOVEマシーン」「恋のダンスサイト」、そしてプッチモニの「ちょこっとLOVE」(プッチモニの曲については2曲めが出てから分析を始めます)という大ヒット曲に知られざる(?)共通点があることが判明。歌詞に「恋」と「恋愛」の双方が含まれているということです。更に、100万枚を突破した「LOVEマシーン」「恋のダンスサイト」そして「ちょこっとLOVE」には、何といってもタイトルに最大の共通点があるということが一目瞭然。モーニング娘。大ヒットの法則は「タイトルに”LOVE”または”恋”を冠し、歌詞に「恋」と「恋愛」の双方を用いる」ということになるでしょう(勿論、これだけではないのはいうまでもなし)。


タンポポ

動詞とは逆に、名詞に関してはかなり明確な共通性があるようです。人称は全て「あなた」のみ。「たんぽぽ」は朝で、他3曲は夜。体の一部分(「腕」「胸」など)を表す名詞が全ての曲にあり、「恋」か「愛」という単語が必ず入っている(しかも1曲につきいずれか1つ)、更に英語がほとんど使われていない、といったことが判明しました。まだ4曲だからということもあるのでしょうが、なかなか面白い結果になりましたね。こういった傾向は娘。の曲にはみられません。「腕」は男性の包容力、「胸」は乙女心(ニョーニョーではない!)を暗示しています。いってみれば「体」を通して恋愛感情を語る、というのがタンポポ各曲の特徴なのです。それが最もストレートな形で表れているのが「Motto」なのはいうまでもありません。こうした傾向は今後も続くのでしょうか? 大いに楽しみなところです。