インターネットで使う記号実践講座(不法引用付き)

 インターネットでは、様々な記号が飛び交っている。
 特にメールやチャット、掲示板に多い。
 こういうところでは話し言葉に近い言葉で書き込むのが普通である。しかし、身振り手振り表情や口調などマルチメディアな環境で伝達される実際の会話と違い、インターネットで伝えられるのは普通は文字だけである。
 「ばか」という言葉ひとつでも、可愛い女の子が頬を染めて俯きながら呟くのと高血圧のハゲ社長が思いっきり顔を真っ赤にして怒りながら怒鳴るのでは意味がまるで違う、ということは皆様実社会で体験されていることと思う。私は前の方は体験したことないけど。(号泣)
 ニュアンスが伝わりにくい文字だけの情報のため、パソコン通信やインターネットではよく、冗談のつもりで書いた発言を本気に受け取って怒りだす事件が起こっていた。このような情報伝達の齟齬ができるだけ起こらないよう、文字情報の中にできるだけのニュアンスを込めて発信しようと、様々な記号が発明された。

 古典的なところでは:-)や(^^)など。ひっくるめて顔文字と呼ばれる。
 横倒しの顔はアメリカ起源でインターネットと共に日本に飛来したものらしい。
 縦の顔は日本独自のものらしい。(;_;)、(-_-;)、(^_^)vなど、空恐ろしいくらいのバリエーションがある。
 ATOKやIMEなどというメジャーな日本語変換システムもこれを無視できず、フェイスマーク辞書などというものをわざわざ提供しているくらいだ。
 今調べたら、ATOK11では510の顔文字登録があった。恐るべし。

 こちらは雑誌の座談会などでよく使われていたものの流用だが、(笑)などと文の末尾につけることもある。
 これがパソコン通信の世界で(苦笑)(微苦笑)などと発展し、笑いのみならず(泣)(号泣)(涕泣)(怒)(激怒)(呆)(苦)(絶句)などと様々な感情を表す記号が発明された。
 この仲間に(爆)というのがあるが、おそらく漫画の影響だろう。ギャグ漫画の主人公がとんでもない発言をすると、背景で大爆発が起こり、他の人物が爆風で吹き飛ばされる、あれをイメージしているものと思われる。私の好みとしては、「ちゅどーん」という効果音を使用したいものだ。これも(核爆)(水爆)などという最上級が存在し、もっと強調したい場合は(木亥火暴)などという用例もある。効果音で表すと、(爆)はちゅどーん、(核爆)はどっかーん、(木亥火暴)はずんべれどどどがぼーんといったところか。

(用例)
 突然ですが、しばらく更新しません(核爆)
 はっきり言って再び更新する気力がわくかどうか分かりません。
 期間は無期限です。
 本当は全部手直ししてやろうとしたんですが、すでにそれも不可能です(号泣)。
 まぁ、やりたいことはたいていやれたので、自分の中では満足できてます。
 だけどこれ以上適当な更新続けるのも、なんか自分の中で自分が許せないようになってきました。
 だから新しいHP作ります(走召木亥火暴)。

 #という記号は、雑感のような文章の頭につけて表示する。「これは私の個人的な感想ですから、真面目な反論やツッコミはご遠慮ください」のような意味だということだ。
 似たような用例に、HTMLの文法の真似をしたタグでニュアンスを明示するやり方がある。最初は、フレームタグの<FRAME>をもじって、激論(FLAME)タグこと<FLAME>を誰かが作ったらしい。たちまち<LAUGH>や<SIGH>などの感情タグが流行し、日本にも輸入された。さらに、感情以外にも文章のジャンルを示すのにも使われる。<ネタバレ>や<怖い話>など。

(用例)
 今度、*ニーが社内のメールシステムを全面的再構築し、マイ*ロソフト社のExchangeでの運用に切り替えるそうだ。
<反MS>
 Excahngeサーバには安定性が微塵もない。同じくExchange(社内ではエくそチェンジと呼んでいるらしい)を導入したEPS*Nではあまりに頻繁にサーバが落ちまくるので、イントラネットで「今日のシステム稼働状況」を表示している有様である。管理者は会社に泊まり込んで落ちる度にリカバリ作業を強いられる。
 またセキュリティ面でも問題が続出。自分でメールのデータを壊し続けるバグや、インターネット接続された外部の端末からサーバをクラッシュさせるなど、クラッカーの格好の餌食。セキュリティホールというより、もともとセキュリティなんか無いので穴の開きようがない、というのが適切な表現である。
 おまけにトラブルが生じてMSのサポートセンターに電話しようとしても、MS製品のどこにもサポートセンターの電話番号は書いていない。何とか見つけて電話すると、「質問1件につき4万円です」と冷たく言われる。それでも質問すると、「そのような現象は報告されておりません」と突っぱねられる。しかも4万円はしっかり徴収される。泣きっ面に蜂である。
</反MS>

#しかし、よくこんな馬鹿なこと決定したな。こりゃ、完全なダウングレードじゃん。
#Exchangeサーバ落ちまくり→社内情報流通ぼろぼろ→セキュリティもぼろぼろ→クラッカーの餌食→仕事どころではない→業績急降下というフローチャートが見えているぜ。
#急げ!他社!打倒ソニ*の千載一遇のチャンスだ!

 メールの返信などで他人の文章を引用する場合は、先頭に>という引用符をつける決まりになっている。また、掲示板やメーリングリストなど不特定多数向けの書き込みの中で特定の人に呼びかけたい場合は、倍角の>という記号で呼びかける決まりらしい。これが本来の用途から外れ、自己の発言に対する自己ツッコミに使用されることが最近多くなっている。たとえば、

(用例)
 声の大きさが周囲の騒音の大きさを大きく上回れば、ハーフレートでもけっこうイイ音で通話できるのだ(ってさっきまでハーフレートをあれほどけなしていたとは思えない発言ですな>拙者)。

 などと。これはパソコンライターのスタパ斉藤氏が得意としている。(引用も同氏)
 このちょうど逆で、<で全文に対するツッコミ文章を書く場合。これは、Web日記読み日記という新ジャンルを創造した夜久氏が得意としている。

(用例)
「処女膜再生」はありやなしや・・・残念ながら処女膜をもった経験がないので判りません。破った経験は・・・きゃー。<やめておけ。

 また、このバリエーションとして←や<-などの矢印を使用する場合もある。これを重層的に駆使して果てしのない自己ツッコミを見せるのがWeb日記作家のねぎねぎ氏である。

(用例)
うまく書けたら送ってください。もれなくワタクシの書いたのを送り返します。←ソレじゃ 嫌がらせじゃないか←今ごろ気付いたのか←だからアンタはいつまでたってもダメなのよ← ああ、オレはダメなオトコさ←開き直ったな←おうアジの開きはうまいよな←ごまかすなよ← ごませんべいもうまいんだ←アンタとはもうやっとられんわ←失礼しました〜←んまっ失礼な 人ね←よく言われます←あながち

 記号ではないが、慣用句がなかば文字化しているものもある。「しくしく」「えへん」など末尾につけて感情を表す語句である。
 前出の夜久氏はまた、酷いことを書いた後の「きゃー」というフォロー(強調型は「ぎゃー」)と放言の後の「がはははh」(hがポイント)を得意としている。

(用例)
 そうそう、酔っぱらったかおりさんはバカ日記書きの資格十分というか・・・バカそのもの。きゃー。
すぐ眠くなって魂が抜けてしまうので「バカ日記」でいられる時間は限られているんですが、アルコールのピッチが上がって目つきがだんだん怪しくなるあの「ここにいるよ、」的瞬間はなかなか素敵なんですが、その後は一気に「バカ日記書き」に変身だからなぁ・・・「バカ掲示板書き」とも呼ぶようです。がはははh、

 「トホホ」という言葉は、小林信彦の「現代死語ノート」では死語扱いを受けているが、Webの世界では現役の流行語である。これは末尾につけて情けなさを表現する場合と、「東京トホホ本舗」のように題名に使用する場合がある。
 この仲間に「いやんいやん」というものがある。もともとは音楽家兼会社勤め兼Web作家のいっしょう氏がエッセイの中で頻りに使っていた。ところがこれはいろんな場合に使えて便利だということで他の人も盛んに使うようになった。ついには「いやんいやん普及推進委員会」が立ち上がるまでの盛り上がりをみせている。

(用例)
何故にごきぶりホイホイにしなかったのかといふと,あんなものを度々確認するのはいやんいやんだからです。
それはもう死んでもいやんいやんです。
一方的に俺が死んでしまっては死なばもろともにすらなりません。
かぶとむしでさえいやんいやんなのです。もういやんいやんです。
それはそれはいやんいやんなので,いくら書いても足りない位いやんいやんです。いやんいやん。
ああいう虫のどこがいやんいやんかというと,足がもういやんいやんです。
同じ理由で,飲み屋なんかででてくるちっこい川海老もいやんいやんです。
あああ。書いているだけでいやんいやん。

そういうわけで,またもや食費がなくなってしまいました。いやんいやん。

私信:クイズです。本文中にいやんいやんが何回出てきたでしょうか。
私信2:なんていったって数える奴なんかいないって。

 @もよく使われる。メールアドレスの表記法shimojo@tora.email.ne.jpから来ているのだろう。江島@ソニーのように、名前@所属を表すことが多い。
 中には所属でなく属性を表記して、下条@たわけもの、樫葉@えこえこ、ハラ@ギター弾きなどと書く人も多い。ちなみに、例の人物はすべて実在するが、アドレスは私の創作である。本人がそう名乗っているわけではない。ご注意を。

以上 みづちひであき@またオチがつけられなかった


戻る             次へ