9/23銀座オフレポート

 今回のオフは銀座にて行われる。関東在住者とはいえ、田舎者&貧乏人のことゆえ、銀座は久しぶりである。ちょっと早く来すぎて、時間を潰そうとするが、なにせ銀座、ブティックや宝飾品の店しかない。私が暇を潰せるような本屋やパソコンショップなど存在しない。外は雨が降っているので、できるだけおんもには出たくない。
 しばらく徘徊していると、サンリオショップがあったので入ってみる。おお、キティちゃん十二球団バージョンが出ているではないか。迷わず阪神バージョンのぬいぐるみと団扇を購入。レジに出すと、おねいさんに「プレゼントですか?」と聞かれる。小心者の私は「……はい」と答えるのがやっとだった。

 定時に待ち合わせ場所のソニービルに行くが、まだ知った顔がだれもいない。
 「みんな遅刻か……」と、とりあえず苦虫を噛み潰したりしてみるが、ふと思いついたことがある。
 今回、全員初対面だった。
 かろうじて知っているのは、MICKさんの似顔絵別バージョン)とrikoさんの似顔絵。これで銀座の雑踏の中から探すのは、子供の描いた絵で蒸発したお父さんを探すより難しいかも。
 携帯電話をかけてみる。ああ、やっぱりみんな揃っていました。
 まずMICKさんに挨拶。ヤクザとか強面とか、ひどいことを書かれているが、本人はいたって温和なイメージで安心する。弘兼憲史から自己顕示欲と松下精神を抜いたような印象。
「はじめまして、下条です」
「おお、君が下条君か。五反田に住んでるんやって?」
「いえ、職場が五反田なんです」
「懐かしいなあ。わし、バンド時代、五反田に住んどったんや。駅の西口に大崎橋があるやろ」
「はあ、妖しげな焼肉屋やラーメン屋が並んでるところですね」
「昔はあそこのへんにライブハウスがあってのう。ようあそこでライブしては、野次の汚い客をボコにしてあの橋から叩き落したもんやで。がはははは」
「……」

 他の人にも挨拶。今日の幹事を務めていただいた、rikoさんは似顔絵で大女のイメージを抱いていたが、実際は小柄でキュートな女性だった。「今日はスッピンで、眉を描いてないの」といって正ちゃん帽のようなものを目深にかぶり、決して目から上を見せなかった。北杜夫が「どくとるマンボウ航海記」で、辻邦生の奥様のことを、「Tの女房はホルモンが足りず、白人の女に比べればまったくの小娘で、防寒のためにエスキモーみたいな珍妙な帽子をかぶっている。そんなちっこい彼女がチョコチョコ店頭の雑踏の中を走り回っているさまは、日本人が見ても異様である」と書いて辻夫人の激怒を買ったことがある。別に意味もなく、そんなことが思い出された。眉がないのはホルモンのせいなのか、それは聞きそびれた。
 「あのMICKさんですら頭の上がらない女性」として知られる、みゆりんさんは、一見温和なレディ。やはり噂を信じちゃいけないか。と思っていたら、隣のきてぃさん、れいさんと一緒に、MICKさんをやりこめまくる。ううむ、噂は間違いでしたが、真実は「MICKさんはやたらな女性に頭が上がらない」でした。弟子のrikoさんにもやりこめられてたし。やはりMICKさんは、男性を威圧している反面、女性には承伏したがるという、会社社長とか校長とかによくある、或る種の性癖をお持ちなのでしょうか。
 娘さんのひとみちゃん同伴でやってきたかしこさん。この娘さんが、また可愛いのだ。じゅる……いかんいかん、また病気が。前回も雑文関係者とのオフで娘さんに手を出して要注意人物に指定されたばかりではないか。
 MICKさんのロゴマークや壁紙を一手に製作している飛鳥さんは、スレンダーな美女。MICKさん、やたらに手を出そうとしては、みゆりん・きてぃ・かしこ・れいの四女史にどつかれていた。
 MICKさんの「うそのようなホンマの話」での親父シリーズで知られる、ばっかすさんは弱冠二十歳という若さ。年齢を聞いたとたん、「若いわね−」「肌の張りが違うわねー」とオバサンくさい賞賛と羨望の声が上がっていた。
 神奈川界隈のラーメン食べ歩きで知られるぐにゃさんは、どこにそんな大量のラーメンが入っとんの? というような細身の青年。五反田にもある「一風堂」の評価を聞こうと思っていたのだが、ころっと忘れていた。

 五時から予約は入れているが、飲み放題は七時からということ。普通、そんな場合は七時まで若干セーブして飲むものだが、みんなもう、五時からがんがん頼む頼む。一番の凄い注文は、やっぱりMICKさんだった。
 若いおねいさんがやってくる。
「ご注文はお決まりですか?」
 MICKさん、おねいさんの手を取って目を見つめる。
「……キミが欲しい」 <実話
 おねいさん困惑の表情。
「ええと、あの、お料理やお飲み物を」
 MICKさんふたたびおねいさんに情熱トーク。
「キミの持ってきたものなら、なんだって美味しいさ」 <まったくの実話
 このあとでMICKさん、またもや四女史にケリ入れられていた。

 そのうち七時になり、EELさん登場。名前通りのノッポさん。登場早々、
「サッカー、日本が先制したんですが、いま同点に追いつかれました」
 と宣言。「凶報の使者は斬れ」のことわざ通り、MICKさんにどつかれていた。その後もEELさんは、ラジオを聞きながら、
「ロスタイム直前にPKでまた追いつかれました」
「PK戦に突入、いま中田が外しました」
 と相次ぐ凶報を伝え、そのたびにMICKさんにどつかれていた。
 女衒の達さんは、これほどHNと風貌が一致する人もいない。まさに「必殺」シリーズあたりで、作務衣を着て裏長屋で楊枝でも削っているのが似合う感じ。さぞかし女性にはモテるだろう、と思っていたが、このあとすぐその証拠を見せてもらった。

 光栄にもMICKさんの隣に座らせていただき、しばらくWeb談義など。
「ワシな、『今日の楽しみ』作った時な、全員にメール送ったんや」
「はあ……(勝手にリンク海賊版はまったくの無断なので、ちょっと冷や汗)」
「リンクフリーゆうとこが多かったけどな、まあそれが礼儀やと思ってな。やっぱ、Webの世界でも仁義を欠いたらあかん」
「ははあ……(ますます冷や汗)」
「だいたいみんな返事が来たわ。そやけどな、ひとりだけ、音沙汰なしの奴がおんねん」
「は、ははあ……(自分は返信しただろうか、と必死に記憶を辿るも、恐怖のため記憶は蘇らず)」
「●●ちゅう奴や」
「ほ、ほぉぉぉ……(安堵のため息)」
「こっちがせっかく仁義切っとんのにやで、無礼な奴ちゃ。いっぺんシメたらなあかんな」
「……」
「どないしてん、震えとるで。冷房利き過ぎか?」
「あ、いいえ」
「ほてからな、君の海賊版リンク、ワシの雑文な、『雑文の輪』やのうて、『ZAKKI』の方にリンクしてくれや」
「え、でも、雑文というから……」
「わかっとらんのか。ワシの雑文メインは『ZAKKI』なんじゃ!」
「ひ、ひひい」
「できるだけ早う頼むで。ワシ、大阪南港でも五反田の目黒川でもな、死体が絶対浮かんでこない場所、知っとんのよ」
「ははははい。すぐさま直しますです」

 かしこさんとひとみさんの母娘は、さながら一幅の絵のよう。ビールをかっくらうお母さんの横で、なにごとかをいっしんに描きつける娘。なにを描いているのかと思えば、飛鳥さんの似顔絵。なるほど、飛鳥さんはそのまんま少女漫画の登場人物のようだからなあ。憧れたんだろうなあ。ううむ可愛い。キティちゃん阪神バージョンのぬいぐるみを進呈する。年端もゆかぬ娘がぬいぐるみをぎゅっと抱きしめているのって、可愛いなあ。ううむ……いかん、病気が。

 九時で一次会を切り上げ、二次会のカラオケボックスへ。この道中でも、MICKさんはやってくれた。
 道ゆく若年女子の腕をいきなり握り、目をじっとみつめて、
「姉ちゃん、どないや今晩、ワシと」
 女性は例外なく、恐怖の表情もあらわに首を左右に振るのみ。おそらく声も出ないのだろう。弱気な女性なら、首も振れずにそのまま拉致されてしまいそうな雰囲気である。しかし、もっと上手がいた。女衒の達さんである。ようやくMICKさんから開放された女性に、
「ごめんね。あの人怖いけど、悪気はないんだ。どうかな、僕と」
 と甘いトークで誘惑。なんたる見事なコンビネーションか。
 さながらヤドカリとイソギンチャクの共生のようである。達さんはMICKさんとの落差でナンパを容易にし、MICKさんは達さんのおこぼれで生活する。残念ながら今回は四女史が睨みをきかせていたので、成果はなし。

 カラオケの最中、MICKさんに呼び出しの電話。「湘南から元気倶楽部」で活躍中のしおさんが、大阪オフから新幹線でとんぼ返りして、十二時頃こちらへ来るとのこと。凄いパワーだ。
 ここで夜明かし組と帰宅組に別れ、夜明かし組は十二時まで時間を潰すべく、三次会の居酒屋へ。ええと、なんかこのへんは眠かったせいか、あまり覚えてない。

 十二時に店を出て、有楽町のマリオンへ。さすが銀座、この時間でも人通りが多い。MICKさんと達さんは相変わらず「姉ちゃん、もう終電過ぎたやろ、どないやワシと」「ごめんな、悪気はないんだ。どう僕と」と片っ端からナンパしまくり。四女史からようく言い含められていたらしいrikoさんにケリを入れられていた。
 ナンパに精を出していたMICKさんが、マリオン前でいきなりダッシュ。びっくりして見ていると、見知らぬおじさんに突如殴りかかった。もしかして地元の抗争相手の組長と偶然銀座で鉢合わせか? はたまた恨みを抱く刑事か? と息を呑んで見ていると、やがて殴り合いを止め、
「この人がしおさんです」
 とわれわれに紹介。ああ、びっくりした。あれが「湘から」流儀の歓迎なのか?
 そして四次会のカラオケボックスへ。大阪オフから持続させてきたしおさんのテンションは高い。釣られてMICKさんのテンションも再上昇。沢田研二メドレーを振り付きで熱唱。他にもアリス、ダウンタウン・ブギウギ・バンド、森新一、ヴィーナスなど、さながら七十年代回顧歌謡メドレー。ひとりついていけないばっかすさんが寂しそうにしていた。ごめん。
 もうひとり気の毒なのが女衒の達さん。眠気でヨレヨレになってしまい、飛鳥さんの膝で介抱されていた。いや、あの時は眠いのだと思っていたが、いま思うとまさか仮病で……。
 ともあれ五時に店を追い出され、ようやく動き出した電車でめいめい帰宅。MICKさんは歩いてホテルへ。手を振って別れたものの、別れを惜しんでまた振りかえると、MICKさんは道ゆく女性に
「ワシな、こっから歩いてすぐのところにホテル借りとんねん。ごっつええホテルや。どないだ、ワシと一緒に……」
 と語りかけているところであった。


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