産地：フランス、プロヴァンス 年代：？
購入：ベルーナサンキュー福袋 価格：６本３９３９円
購入日：２００２年１月２１日 飲用日：２００２年２月６日
いっしょに食べたもの：スモークトサーモン、カマンベールチーズ
細長い三角形をした変わりボトル。こういうのはスペインあたりのワインに多いが、フランスでは珍しいような気がする。ところがプロヴァンス地方には、この手の変形ボトルが多いのだとか。地中海性南方気質のあらわれなのでしょうか。
ワインの産地がどーのこーのと調べていて困るのは、ボルドーだとかメドックだとかベネトだとか言われても、それがどこにあるのかいまひとつピンとこないこと。私などだと第二次世界大戦の激戦地で説明されたほうがわかりやすいのだけど。「このワインはダッハウの収容所から三十キロほど奥の農園でつくったものです。どうです、幾多のユダヤ人の血を吸ったように赤いでしょう」などと。それで飲む気が増すかどうかは別だけど。私なら増すね。
で、このワインを作ったコート・デュ・プロヴァンスとは、フランス南方、ローヌ川からイタリア国境にかけての海岸沿いの地方。マルセイユやニースなど有名な保養地を有している。フランス革命のとき反乱を起こしてナポレオンに鎮圧されたり、横須賀のモデル港になったり、第二次大戦でドイツと連合軍の奪い合いになったりした軍港ツーロンも、この地域にある。ちなみに、このローヌ川を北にさかのぼると、中流域がコート・デュ・ローヌ、上流域がブルゴーニュとなる。
プロヴァンスのワインはそういう保養地にふさわしく、「ヴァカンスのワイン」と呼ばれているのだそうな。ブルゴーニュやボルドーのように高級レストランでタキシード蝶ネクタイという姿でかしこまって飲むのではなく、港町のカフェテラスで開襟シャツの胸をはだけて気軽に飲む、ということなのだが、要するに安酒。辛口のロゼがもっとも有名らしい。
「Appellation Cotes de Provence Controlee」と書いているのはA.O.Cと言われているフランスワインの格付けで、「原産地呼称統制ワイン」と訳すらしい。ブドウの産地、栽培法、収穫量からブドウ品種、配合、糖度、アルコール度数、ワイン製法などなど政府の定めた基準に合致したものだけが表示できる、フランスワインの最上ランクらしい。
もっともA.O.C.にもいろいろあって、このワインのような「コート・デュ・プロヴァンス」という広い地名のものより、「バンドール」や「シャトー・ヌフ」のような村や葡萄園が書かれている方が上等らしい。「茨城ワイン」よりも「牛久ワイン」のほうが上等なわけですな。どっちももひとつ飲みたくないような気がするけど。（重要な注：牛久シャトーで作っている牛久ワインは、名前はともかく品質はまっとうなワインです。念のため）
さらに、A.O.C.だから上等とは限らない。なんでもコート・デュ・プロヴァンスを名乗るためには、カベルネ・ソーヴィニオン種のブドウを４０％以上使用してはいけないという決まりがあるのだが、「うちは昔からカベルネを６０％使っているんだ」と頑として変えず、そのためにひとつ格下のヴァン・ド・ペイ（地酒）に落とされたワインもあるとか。そういうワインは、むろんそこらのA.O.C.なんかより上等で値段も高い。むかし日本でも一級酒、二級酒という格付けがあって、税金対策や規格外という理由で地方のうまい地酒の多くが二級酒にランクされ、わけがわからなくなって格付けが廃止されてしまったことがあったが、フランスでも似たようなことがあるのですな。
とりあえずこの酒、A.O.C.でStephany Beaucaireという人が作るRigmoriという名前らしいが、わかるのはそこまで。年代もブドウ品種も不明。「A.O.C.なんだからお上を信じて飲め！」ということなんでしょうか。
コルクはかなり固めでごつごつした感じ。色は濃厚でややくすんだ紫。真っ黒な澱が沈んでいて、かなり濃そう。揮発性の、干しぶどうのブランデー漬けのような、チョコレートのような香りがする。
口に含むと、まずタンニンの渋味と甘味が強力な二面攻撃をしてくる。特にタンニンは、舌がしびれるほどの威力がある。その後、すっと酸味が舌の横をすり抜けてゆく感じ。むかしラミーチョコという、ラム酒漬けの果物を刻み込んだ辛口のチョコがあったが、ちょっとそれに似ている。これだけタンニンが多いのだから、プロヴァンスで多く栽培されているというシラー種のブドウをかなり多く使っているに違いない。
かなり強力な味なので、たいがいの食物には勝ってしまう。子牛のワイン煮込みとか、かなり濃厚な料理が必要となりそう。あるいは炭酸で割るのもいいかも。ちょっとレモンをたらしたら、けっこううまかった。
また買いたいかな度：４／５ 勝手に値付け：二千円くらい？