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修羅の一族
MAHIRO MEMORIES
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大事な事実を一つ、
言い逃していました。
「8月6日に生まれて」の中で
S君は誕生日にファミコンとスペランカーを買ってもらったと書きました。
しかし、
ファミコン本体とカセットでは
本体14800円+カセット3800円
18600円。
いくらなんでも、
小学生の誕生日プレゼントとして高すぎはしないか?
そのことに気づいていただければ何かしらの結論が浮かんでくるはずです。
8月6日に生まれた人間が、
もう一人いる――。
そう、
つまり、
S君が
双子であるという事を。
双子の兄J君。
「一人分の能力を二人で分け合った」と言われるような双子で、
しかも、分け方が五分五分ではなく、
一人勉強ができればもう一人はできない。
一人絵が上手ければもう一人は駄目。
でも運動能力は二人分足しても1にならない。
1+1=2ではなく、1+1<1
宇宙の物理さえ否定した二人。・
S君を家に呼べば、
もれなくJ君が呼んでもいないのに勝手について来る。
たまには一人で来いとS君に言っても、
やっぱり勝手についてきたJ君。
それをS君に指摘すると、
S君とJ君で
マヒロ君の家の前で
無言の掴み合いのけんかを始めた二人。
その不気味な静寂に止めに入ることさえ出来ませんでした。

S君の家はマヒロの家の近くにありました。
その為もあり、学校帰りなどによく遊びに行きました。
S君の家。
祖父が元大工だったせいか、
マンチェスターハウスさながらの増改築。
玄関下駄箱の上には観光地の旅の想い出らしき
「網に入ったガラス玉の浮き」、「貝で作った置物」などが雑然と並べられており、
廊下には赤い絨毯が敷き詰められている。
漂う線香のかぐわしい匂い。
居間には豆炭コタツ。
そしてその家には、
元大工の祖父、
世話好きの祖母、
火鉢にあたる曾祖母、
婿養子の父親、
泉ピン子そっくりの母親がいる。
そして、現在。
妙に懐かしくなったマヒロはS君の家を見に行って見る事にしました。
もう15年ほど見ていません。
S君の家の界隈は交通の要所から外れており
用事が無ければ何年も足を踏み入れなくても良い場所なのです。
あの、S君の家がどうなっているのか。
高鳴る鼓動。
あった。

キレイに建て直してんじゃねぇよ。 |
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