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修羅の一族
MAHIRO MEMORIES
「8月6日に生まれて」の巻 |
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マヒロ少年の小学生高学年時代から、新しい文化が子供達の間にひろがり始めました。
それはファミリーコンピュータ。
それまでトランプや花札を造っていた任天堂が発売した通称「ファミコン」は
日本の小学生の生活を完全に変えてしまいました。
誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントに、ファミコンソフトを買ってもらうのは当たり前になり、ほどなく、数々の企業が、ファミコン用ソフトの分野に参入してくる事となりました。
かく言うマヒロ少年も、小学校4年の春休みに、誕生日とクリスマスの前借ということでファミリーコンピュータを買い、その時、最初に買ったファミコンソフトはマリオブラザーズでした。
最初に買うファミコンソフトにより、その人がどの時期にファミコンを買ったのか、分かるのですが、
最初にドンキーコングやポパイを買う人は、いの一番にファミコンを買った、いわゆるファミコン第1世代。
最初にゼビウスやロードランナーを買ったという人は第1世代を見て買った人。
最初にスーパーマリオブラザーズを買った人はファミコンブームに乗った人。
と、いうように分類分けが出きるわけです。

そして、ファミコンソフトというのは、決して安い買物ではありません。小学生達にとってファミコンソフトを買うことは、自分の半年、一年を決める大事業。
そこで皆はソフトの貸し合いによる交換という、低コストでいろんなソフトが楽しめる合理的な方法を編み出したのです。
さて、ここに、「スペランカー」というソフトがあります。

このソフトは、「探検家がコウモリや毒ガスをかわして伝説のピラミッドを目指す」いわゆる横型アクションゲームなのですが、リアリズムを追求した結果、主人公の探検家がちょっと高いところから落ちただけですぐ死ぬという、当時の小学生達の間でも有名なつまらないゲーム(その時はまだクソゲーという言葉は存在しませんでした)になりました。
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しかし、ここに、ひとり――、
その当時でも有名だったクソゲーである「スペランカー」を――、
あろうことか人生で最初に買うソフトに選んでしまった男がいます。
彼はその誕生日、8月6日にファミコンを買い――、
それと同時にスペランカーを買いました。
その少年の名は

S君。
初めて買ったファミコンソフト「スペランカー」。
ワクワクしながら箱からクリーム色のカセットを出し、
喜び勇んでプレイした彼が、
あまりの内容に失望のどん底に叩き落され、
その後も、誰もソフトの交換をしてくれず、
少なくともクリスマスまでの間、
スペランカーだけで過ごさなければならなかったという事実。
ヒロシマ原爆投下の日に生まれた彼が、
その誕生日に
ヒロシマ型原爆数個分に匹敵する悲しみを背負ったことは、
一言で言えば彼の宿命。
そうです。

彼は修羅の星の下に生まれついた男。
いやさ、

波乱の神に魅入られた男。
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悪意があるわけでもないのに――、
ウケを狙っているわけでもないのに――、
注目を浴びたいわけでもないのに――、
彼はただ、平和な人生を送りたいだけなのに――、
知らず知らず修羅の道を歩んでしまう、その宿命。

神よ、貴方は何故、
彼にこれほどまでの苦悩を与えるのですか。
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そして現在、何故か、私の部屋には
買った覚えの無い「スペランカー」が存在するのです。
これは誰のモノなのか。
当時、スペランカーを買った人物は彼しかいません。
そして、当時、彼は私の家によく遊びに来ました。
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つまり、この「スペランカー」は、あの修羅の星の下に生まれついた男、S君のモノであると考えられるのです。

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スペランカー

それは、一人の少年に深い悲しみを追わせた、
クリーム色の小さな夢(ドリーム)。
軽快な音楽――。
すぐ死ぬ探検家――。
しかも

光るんです。

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