劇団四季「アスペクツ・オブ・ラブ」 四季・自由劇場

あらすじ

南フランスのある小さな劇場で公演後に売れない女優ローズ(保坂)とイギリス人学生のアレックス(石丸)が運命の出逢いをする。かねてからローズの熱狂的なファンだったアレックスは公演が行われない間、ローズを静かな別荘へと誘う。この別荘で愛を育んでいく二人だったが、あるときこの別荘の持ち主であるアレックスの叔父ジョージ(光枝)がやって来る。ジョージはローズに亡き愛妻ディリアの面影を見て惹かれ、ローズもまたジョージが気になる存在となる。やがてローズはアレックスと別れる。ショックを受けるアレックス。そして2年後、軍隊に入隊したアレックスは休暇に叔父の元を訪れそこでローズと衝撃の再会を果たす。ずっとローズを想い続けていたアレックスはローズと一夜を過ごすがローズの心はジョージに傾けられていた。衝撃を受けたアレックスは銃を暴発。これを目撃したジョージはローズをアレックスに任せ愛人のジュリエッタ(大鳥)の元へ旅立つが、これを追いかけていったローズはジョージと結婚する。そして12年後、アレックスは再び人気女優となったローズを訪ねる。彼女は喜び、家族の元へ案内する。二人の間にはひとり娘ジェニー(紗乃)がいたが、彼女は徐々にアレックスに惹かれていく。

9月1日 13時30分開演 
ローズ・ビベール:保坂知寿 /アレックス・ディリンガム:石丸幹二 /ジョージ・ディリンガム:光枝明彦 
ジュリエッタ・トラパーニ:大鳥れい /ジェニー・ディリンガム:紗乃めぐみ /
マルセル・リチャード:喜納兼徳 /ヒューゴ:青山祐士 / エリザベス:武木綿子  ほか
アンドリュー・ロイドウェバー作の大好きなミュージカルが6年ぶりに東京に帰ってきました!あれからもう6年ですか…時が経つのは早い(苦笑)。そのときは四季劇場・秋で上演され、あまりの心地いい音楽に何度か熱狂的に友人と足を運んだものでした(そのときの感想はコチラ)。今回の上演は主にストレートプレイを上演している自由劇場。ここは客席数も少なく、舞台との距離がものすごく近くに感じられる劇場でした。初めて行ったのですが、表に『自由劇場』と書いてあるわけではなかったので危うく通り過ぎてしまうところでした(爆)。ロビーはちょっとダークで大人な感じ・・・まさに『アスペクツ』の世界にはピッタリかも!秋劇場よりも舞台が狭いので移動距離がものすごく短いのですが(^-^;; 人間関係の濃密さがジンジン直に伝わってきてもう一気に集中して見入ってしまいました(途中まで瞬きしないで見ている自分がいたくらい 笑)。この作品てオペラミュージカルでありながら極めてストレートプレイに近いんだなぁと感じましたね。これも自由劇場の効果なのでしょうか。

『アスペクツ・オブ・ラブ』はアンドリュー・ロイドウェバーの作品ながら
興行的には失敗作とされているらしいです。たしかに、この作品は好きと嫌いがはっきり分かれるところだと思います。保坂さんの「マンマ・ミーア」なイメージを持って観に来た方は特に違和感を感じるようですし、ロイドウェバーということで『オペラ座の怪人』や『CATS』のようなエンターテイメント性を期待してきた方もその作品の色の違いに戸惑いを覚えるようです。それ、すごくよく分かるんですよ。音楽抜きの作品としてみると、まさにお昼のドロ沼ドラマな内容で(爆)とにかく人間関係が生々しい。ところが、基本的に昼の泥沼型ドラマは大の苦手な私なのですが(苦笑)『アスペクツ・オブ・ラブ』は大好きな作品なんですよ!!6年前に見たときよりも好きになったかもしれないくらい。その原因はやはりロイドウェバーの音楽の素晴らしさに尽きると思いますね。あのドロドロの人間関係を感じさせないほどの美しい音楽・・・あれは今はやりのヒーリングミュージックといってもいいくらい素晴らしいです!同じ旋律の音楽をテンポを変えたり違う場面で効果的に繰り返したりするので頭に残りやすい。ロイドウェバー本人も『一番好きな音楽』と自画自賛しているくらいですから(笑)、人間関係ドラマが苦手でためらっている人にもぜひとも一度劇場に足を運んで観てほしいと思います!
6年前に観た時は20代だった私も既に30代に突入したわけですが(苦笑)、ひと世代越えたところでこの作品を観るとあの頃とは違った場面でジーンとすることが多くなったような気がします。まさに熟成されたワインのような作品ですなぁ。アレックスを振り回してばかりのローズですがその女心に何となく共感できちゃったり、6年前まではただ「ダンディーだなぁ」と思っていた光枝ジョージに熱く感情移入しちゃったり・・・それだけ私も大人になったと言うことなんでしょうか(笑)。

保坂さんのローズ、6年前観劇した時よりもさらに激しくも脆い人間臭い感じが出ていて非常によかったです!これはやはり保坂さんがここにくるまでに『マンマミーア』で母親役を長いことやってきたというのが影響しているのかもしれませんね〜。これで更に感情表現が多様になったというか・・・彼女の発する言葉のひとつひとつがものすごい胸に迫ってきました。やってること自体は世間では『悪女』としか言いようがないことしてるんだけど(苦笑)、それでも保坂ローズはその時その時を全力で生きているのが分かるんですよ。ジョージと結ばれる為にアレックスを手玉にとっているんだけれども(^-^;; でもアレックスも愛する気持ちはずっとどこかでうずいていてそれがひょっとしたことで爆発しちゃうみたいな。ジョージをとても愛しているんだけれどもヒューゴという愛人とできてしまったのはもてあましている愛を埋めるため・・・。傍から見ていると同じ女性としてもかなり許しがたい自由奔放さではあるのですが(^-^; どこかで彼女を理解できてしまう・・・そうさせてしまうんですよ。これは保坂さんすごいですよ、ホント!クライマックスでアレックスに『行かないで』と迫るシーンで思わず涙が出てしまうのは、保坂さんのローズがいかに魅力的だったかということなんだと思います。この調子で千秋楽までガンガン惑わし続けちゃってください(笑)。
石丸さんのアレックス、実は最初「そろそろ若者アレックスは石丸さんにはキツイかも・・・」と失礼ながら思ってしまっていたのですが(爆)・・・蓋を開けてみればまだまだ全然OKでしたよ!!というか、1幕のローズに振り回されまくっている初々しい石丸アレックスのほうがものすごい印象的だったというか・・・めちゃくちゃ可愛くてカッコよかったです(^-^ゞ。むしろ6年前よりも「若さ(未熟さ)」が全面的に出ていて感情移入しやすかったですね。ジョージにローズの前で秘密を暴露されるシーン、未だにあれが何の秘密だったのか謎なんですけど(6年前、一緒に観劇した友人は「告白しようとしたら男だった』説をとってました 笑)、そのときの苦悩の仕方がめちゃくちゃ可愛くて「あ〜、アレックス・・よしよし」と慰めに行きたくなってしまったくらいでした。うぬぬ・・・まだまだイケますよ、石丸若アレックス!2幕に入った後、つまり12年後はまさに年相応になるわけですが(笑)ものすごい演技に余裕を持ってましたね。貫禄が出ていて、ローズ一家と食事を取っている時に椅子に寄りかかってワインを揺すっている仕草がものすごい堂に入っててビックリしました。もうすっかり落ち着いたいい大人・・・かと思うと未だにローズへの未練を引きずってて、彼女の娘のジェニーに接している時もローズを見ているようなそんな印象を持ちました。最後にはローズ親子を捨てる形になったけど、その先また戻ってしまうのではないかと言う危うさも秘めたラスト・・・大人〜な雰囲気の石丸アレックスがすごく素敵に見えました。
光枝さんのジョージ、実は前回観劇した時には『ダンディーなおじ様だった』くらいの感想だったのですが今回ものすごく感情移入して見つめてしまったくらい素晴らしかったです。1幕では『恋はいつかはいい思い出』とものすごく恋愛にはドライな考え方を持っていたジョージが2幕に娘が出来た時、その愛情のほとんどを彼女に注いでいくんですね。年を重ねてからの子供と言うこともありまさに目に入れても痛くないといったところで、『いつかは嫁に出さなければいけないのか』と歌うシーンでは哀愁が漂っていてこちらもジーンとしてしまいました(;_;)。ジェニーとのダンスシーンもよかったなぁ・・・。あのシーンを観るとジョージが本当に愛していたのはローズではなくてやはり元妻だったのかなぁと思ってしまうんですよね。それだけに彼の寂しさがすごく伝わってきて泣けます・・・。彼にとってジェニーは元妻の生まれ変わり的な存在だったのかも・・・。そんな大切な娘にアレックスが手を出そうとしていると知るやその嫉妬心は最高潮に。サーカスを見終わったあと、ヒューゴと密会中のローズとジェニーに手を出そうとしているアレックスの間に挟まれ一人孤独に立っているジョージの図がものすごく哀しかった…。光枝さん、この辺りの演技が本当に素晴らしかったです。
ジュリエッタの大鳥さん、この方、ついこの前まで宝塚のトップにいたんですよね。それがいつの間にか劇団四季に!?最近、宝塚から四季に流れてくる女優さんも多く見られるようになりました。ちなみにダブルキャストの方も元宝塚なんですよね。ジュリエッタってすごい清楚で背筋が正しいイメージがあるから当てはめやすいのかも。私が6年前に観た時はまだ井料さんが演じていた頃で、彼女のジュリエッタがものすごく好きだったんですよ。シッカリしているんだけどどこか頼りなさげで可愛いジュリエッタがとても素敵で・・・。そのイメージが未だに抜けきらなかったせいか、大鳥さんのジュリエッタにはやはりちょっとまだ抵抗がありました。カッコよくて大人なジュリエッタなんだけれども、やはりもうひとつ『可愛さ』が欲しいんだよなぁ・・・。ジュリエッタが男心をつかめるのはやはり『どこか弱いところが見える可愛さ』だと思うのでそのあたりをもう少し見たかったです。でもさすがは元宝塚と言うだけあって立ち姿はとても美しい!ローズとジュリエッタの「チュッチュ」シーン(爆)ではまるで宝塚を見ているようなドラマチックさがありました(笑)。アレックスと一緒になったけど、大鳥ジュリエッタだと逆にアレックスを将来捨てそうな気配があるかもしれないなぁ(苦笑)。
ジェニーの紗乃さん、とても可愛らしい方で特に少女時代の演技が秀逸でした!この役は6年前は堀内敬子さんが演じていたのですがそれに迫る魅力的なジェニーだったと思います。ただ、まだ少し段取りがたどたどしく、少女から女性へと変化する見せ場のシーンで帽子が上手く取れなかったりとちょっとドキッとしてしまうこともありました(^-^;;。あそこの早代わりは『おーっ』と思うところなのでもう少しスムーズに見たかったかな。ま、初々しくていいですけど。大人になってからのジェニーにはもう少しアレックスを惑わす色気が欲しかったかも。小悪魔的な魅力でアレックスに迫っている紗乃ジェニーも新鮮ですが、あれにもうひとつアレックスを悩ませるような色気が加わればもっと面白いかも(石丸アレックスの苦悩顔は見ているこちらも萌えるので 笑)。
ヒューゴの青山さん
はほとんどセリフが無いにもかかわらず、なぜかものすごく目が離せない存在でした。あの怪しい雰囲気をかもし出しているところがなんともたまりませんっ(笑)。マルセルの喜納さん、とてもお久しぶりだったのですが相変わらずの存在感!いい歌声も相変わらずでした(^-^)。

アスペクツはあと3回観に行く予定です。キャスティングを見ると今回はアレックスもローズもダブルキャストが組まれているのが気になります。
ローズには佐渡さん、アレックスには北澤さん・・・このペアもすごい興味ある!!特に佐渡さんはクリスティーヌよりもローズのほうが合ってる気がする(笑)ので一度お目にかかりたいものです。


9月24日 13時開演 
ローズ・ビベール:保坂知寿 /アレックス・ディリンガム:石丸幹二 /ジョージ・ディリンガム:光枝明彦 
ジュリエッタ・トラパーニ:大平敦子 /ジェニー・ディリンガム:紗乃めぐみ /
マルセル・リチャード:喜納兼徳 /ヒューゴ:鈴木聡 / エリザベス:武木綿子  ほか
この日は久しぶりの演劇友達との観劇でした。一人は出産後初めての復帰観劇ということでかなり気合入ってました(笑)。思い起こせば6年前・・・このミュージカルを一緒に通いつめたんですよ、彼女と。なんだかあの当時が一気に甦ってくるような気分でしたね。もう一人はアスペクツ初体験ということで、観劇前に『注目点はどこ?』と聞かれ、二人して『石丸が転がされるところ』と答えてました(爆)。

前回観に行った時よりも席が近く、思いっきり臨場感あって感動的でした!あの場面転換のたびにカーテンがサーッと音をたてるのとか妙にリアルに聞こえてきましたしね。役者さんの顔の表情も非常に分かりやすかったせいか、多少年輪を感じてしまった部分もあったのですが(笑)、それでも
お若くて美しいです・・・保坂さんも石丸さんも。やっぱり役者ってすごいよなぁ〜。今回の音楽は生オケではなくカラオケなのが多少残念なのですが、まぁその方が音も安定しているし(笑)カラオケでもやはりロイドウェバーの音楽は素晴らしいですよ。流れるような美しいメロディーが身体に染みこんできて心地よくなる・・・。ストーリーは昼メロでドロドロなのにあの音楽のおかげでそれさえも美しい物語に感じるからすごいよなぁ。

保坂さんのローズ、安定感がありますねぇ!どこも不安定さを感じさせないところがすごいです。序盤戦はちょっと若作りが厳しいかなと思うこともあったのですが(苦笑)中盤戦からはどんどん彼女の美しさが際立っていって、こちらもローズに引き込まれてしまいました。前回見たときも思ったけど、保坂さんのローズ、今回はなんだか何をしても憎めないんですよ。どんなにアレックスを弄んでいても『悪女』として疎ましく思うことができない。これはまさにアレックスの心境って言うんですかねぇ(笑)。それだけにラストの絶唱は泣けます・・・かなりジーンと来ます(T_T)。初めて見たという友人もここで涙流してましたしね。やっぱり保坂ローズは魅力的なのでした。
石丸さんのアレックス、相変わらず一幕の翻弄されっぷりが可愛くて好きです♪後半のしっとり落ち着いたアレックスもリアリティがあって素敵なのですが、やっぱり何度裏切られてもローズから逃れられずに苦悩している姿が一番萌えます(笑)。特に光枝ジョージが現れたあとの荒れっぷりが可愛いんですよ〜。ジョージがローズにアレックスの秘密を打ち明けてしまったときの頭を抱えて「グワーッ」となっちゃうところが個人的に一番萌え〜のポイントです(←そういえば、どこぞの動物園のクマさんの悩みっぷりに似ているかも 笑)。
光枝さんのジョージ
、味があって素晴らしい!特に2幕にジェニーを想いながら歌うシーンは感動的です。1幕では恋愛に関してかなりフワフワした状態なので、一定の安定した幸せを得たあとのジョージの穏やかな心境がじんわり伝わってきます。それがアレックスがジェニーに興味を持ち出したことで彼の幸せは一気に崩れてしまう。娘に対する愛情が並々ならぬものだった故のジョージの悲劇はやはり悲しいですね(涙)。
ジュリエッタの大平さん、彼女も宝塚出身の女優さんなのですが・・・うーん・・・いまいち好きになれないジュリエッタだなぁ。すごい素敵でカッコいいんだけど、そこが強調されすぎて可愛さが伝わってこないんですよ。ジュリエッタは強がっているけど実際は寂しがり屋だと思うのでそういう面を見せてほしいんですよね。なんか一人でも十分生きていけそうなジュリエッタはみたくないような気がするんで・・(苦笑)。
ジェニーの紗乃さん、前回に観たときよりもかなりよくなってました!なんとなくぎこちなかった動きも可憐になってたし、少女から大人に代わった時の女性としての色気も出ていたように思います。あれだったらアレックスもクラッときちゃうかも(笑)。今後がますます楽しみな女優さんですね。
ヒューゴは鈴木さんだったのですが、この方かなりイケメンですがな!!なんか彼が登場しているシーンはけっこう目で追ってしまった(笑)。

さて、次回観劇のキャストはどうなっているかな?