4月21日、24日、25日(東京楽)  世田谷パブリック劇場
「タン・ビエットの唄 〜美しい別れ〜」

出演者: 愛華みれ、土居裕子、畠中洋、宮川浩、沢木順、堀米聰、根本豊 ほか

あらすじ

ベトナム戦争から20年。イギリス人の養女となっていたフェイ(愛華)は生き別れになっていた姉のティエン(土居)の消息を訪ねるために祖国ベトナムに帰ってきた。戦時中に助けてくれた昔の仲間、トアン(畠中)ミン(宮川)は戦争での心の傷跡が未だ癒えずティエンの消息も教えてくれない。ビン(根本)の元を訪ねたフェイは彼の父親からビンがティエンのせいで自殺したと聞かされる。不安に苛まれたフェイは出家していたゴク(堀米)の元を訪ね、そこで衝撃の真実を知ってしまう。絶望したフェイはイギリスへ戻ろうとするがスリにバッグを盗まれ途方にくれる。しかし、それをきっかけにすっかり荒んでしまったハイン(沢木)と再会。フェイの跡を追ってきていたトアンとハインの会話からフェイは更に衝撃の真実を告げられることに…

TSの前公演で今回の公演のことを知って以来、ずっっと楽しみにしていたミュージカルでした。なんといっても出演者が私がお願いしたかのような方々で…(笑) 宮川さんと畠中さんのサイトからチケットを確保していただけることの幸せ(*^o^*) おそらくこの先こんな想いは出来ないのではないかと。とにかく「謝先生、ありがとう!」と言いたくなるほど私にとってのドリームキャストが実現してしまった作品です。こんな風に、ろくに話の内容も知らずキャストへの夢が膨らみ続けていた私でしたが、いざ幕が開いて色々な方の感想を拝見してみると・・・「とにかく泣きます!」というものばかり。え!そんなに泣けるのか・・・。でも以前にも「泣ける」と聞いてそのつもりで観に行ったらそうでもなかった、というパターンがけっこうあったので(^-^; 逆にちょっと不安になってしまいました。
で、私の初日、4月21日!・・・結果は
号泣状態に(T_T)。まさかまさか、こんなに感動する物語だったとは思わず… 自分がこんなに涙もろい人間だったとはと驚かされるほど泣きまくってしまったんです。24日二度目の観劇でも号泣・・・勢い余って予定になかった三度目の千秋楽では更に号泣・・・。千秋楽が寂しくて涙流しまくった公演は過去にもありますが、3度観て同じかそれ以上の涙を流しまくった作品はおそらく私の観劇史上初めてでした。
色々な意味で私にとっての特別なミュージカル『タン・ビエットの唄』・・・今回はかなり
熱くレポートさせていただきます(^-^ゞ

<開演前>
TSの公演はこれで3回目だったのですが、ロビーでの雰囲気作りが本当にうまいです。今回はベトナムが舞台ということで、出演者の女性キャストの皆さんが
ベトナム民族衣装を身にまといお香をたいてゆったりと歩いていらっしゃいました。もうチケットを切って入った瞬間からそこはベトナム〜な空気(^-^) 劇場内にもお香の香が漂っているしBGMもベトナム民族音楽。なんだか日本じゃないような気までしてしまいました(笑)。売店ではパンフのほかTシャツや関連雑誌、土居さんと沢木さんのCDも販売。実は私、沢木さんのミュージカルCDをどうしようかとずっと迷っていたのですが、楽に買おうと決意したときには既に売り切れてました(爆)。もう少し早く決断してればなぁぁぁ〜〜(苦笑)
ちなみに、今回パンフを購入して驚いたことが一つ。ミュージカルナンバーの作詞メンバーに、『天翔ける〜』や『レミゼ』『エリザ』などに出演していた大谷美智浩さんが加わっておりました!これにはけっこうビックリいたしました。今までもこういったお仕事されたのかな。本編における大谷さんの作詞されたナンバーは激しくも悲しいものが多く何度も涙させていただきました。

<オープニング>
平和だったベトナムの小さなハンティン村から物語は始ります。まず初めに登場したのが平和なベトナムの象徴ともいえる、
藤森美貴さん演じる『白い女』のダンス。いや〜、本当に観ているだけで美しかったです・・。彼女の踊りを見ているだけでベトナムの空気を感じることが出来たし、TSの女優さんって本当にダンスが素晴らしい・・・とのっけから感動してしまいました(^-^ゞ そして幸せそうなティエンとフェイ姉妹の登場。ここで面白いなぁと思ったのが妹のフェイに対する演出。20年前の出来事ということで土居さん演じるティエンの妹フェイの役は別キャストになっていました。観劇前までは愛華さんがずっと妹を演じ続けると思っていたので、なんだかとても新鮮でしたね。それに、この少女時代を演じていた長尾さんがすごく可愛い!!上手いなぁとこれまた感動。
その平和だった小さな村に突然アメリカが攻めてきて一気に緊迫した雰囲気へ。ココでの演出も実に上手く、アメリカ兵は
とても抽象的に描かれてました。平野さん演じる『黒い男』が激しいダンスを繰り広げ見る見るうちに村が壊滅していく様を表現していました。平野さんはもともとダンスのキレが素晴らしい俳優さんですが、今回改めてそのすごさを実感!平野さん一人の動きで狂ってしまった「アメリカ」が見えた気がしました。壊滅した村で唯一生き残った姉妹はベトナム解放軍の5人に命を救われます。この5人がまさに私の「待ってました!」なキャストの方々だったのですが、ハッキリ言ってそれを喜んでる余裕のない自分がいました(苦笑)。なんというか、今の時代も同じような争いが繰り広げられているし、中東戦争のことがかぶってしまって… ものすごく考えさせられてしまいました。

<シクロ 〜 タン・ビエットの唄>
20年後のベトナムでタクシー代わりの「シクロ」運転手をしている元解放軍のトアンが登場。ハイ、ここで
畠中洋さん登場です!始めに重苦しい気持ちにはなりましたが、やっぱり畠中さんが舞台上で歌っている姿を観るのはとても嬉しかった(^o^)。シクロの運転手で気ままに生活しているかのように思えたのですが、彼らの生活は決して豊かではなくむしろ荒んでいます。
そんな状況になっているとは知らずにベトナムへ20年ぶりに戻ってきた成人フェイ。いや〜
愛華さんとても大きく見えました(笑)。畠中さんがちっちゃくてなおさら細く見えてしまう(^-^;;; ちぃと衣装と髪型がイケてなかったような…(苦笑)。えっと、それはまた後程として…。トアンはフェイがすっかり貴婦人になって戻ってきたことに「たまげた〜」と連発し、半ば歓迎しているように見せているのですが実は今頃になって戻ってきた彼女を複雑な胸中で迎えます。このときの畠中さんの表情がイイ!!この辺りのお芝居は本当に上手いと思いました。フェイがティエンの消息を尋ねた瞬間の曇った表情ひとつで、ティエンの身に恐ろしいことが起こっていたのだろうということが私にも分かってしまった…。このシーンの辺りからなんだか胸が苦しくなってきたような(;_;)。
解放軍で戦ってきたトアンの暮らしも貧しく、何も変わらないベトナムに絶望している…。その
やりきれない想いをフェイにぶつけるように歌った『これがベトナムだ!』のナンバーはとても胸にグサっときました。戦争は終わっても、そこにあるのは悪くなった生活だけで作曲家になるという夢も諦めてしまった・・・その空しさが痛いほど伝わってきました。
胸騒ぎがするフェイは20年前にティエンの強い後押しでアメリカの残虐さを世界に伝えるためにヨーロッパ使節団に加わったことを思い出します。ここでは
土居さんと長尾さんの姉妹シーンが脇で展開されているのですが、長尾さんの代わりに愛華さんが言葉を発するといった演出になっていました。これが20年の時の重さを感じさせていてすごくいい効果を表してました。その思い出の中で聞いたのは姉ティエンの美しい歌声。この土居さんによる♪タ〜ンビエ〜ット♪のあまりにきれいな響きには本当にゾクゾクッッッときました。なんか、まさに、天上からの声といった感じで澄み切っていて…。2度目3度目に観劇したときには土居さんの歌声だけで涙出てしまったくらいです(T_T)。「また会うためのサヨナラ・・・タン・ビエット」この言葉の重さ、切なさが波のように押し寄せてきました(涙)。愛華さんとのデュエットもとてもきれいで美しく・・・涙涙。

<二十年の歳月 〜 タン・ビエットの唄>
はじめはティエンを探すということに難色を示していたトアンが、フェイの熱意に動かされて昔の仲間ミンの居場所へ案内します。ハイ、ここで
宮川浩さん登場です!宮川さん登場の前に幸村さん演じるボーイとトアンのひと悶着シーンがあるのですが、このときの幸村さんのチンピラっぽいアンちゃんぶりがよかったです(笑)。この雰囲気のまま黒いスーツに身をまとった宮川さん演じるミンが登場したので思わず「ウワッ!ヤクザのボス現る!」と初め見たときは変な衝撃を受けてしまった(爆)。いや、なんというか、すごい貫禄でけっこうビックリだったんですよ〜、宮川さんの20年後のミン(^-^;;。 しかし、その後からは「ヤクザ」な雰囲気すら感じさせない激しくも切ないミンの想いが明らかになります。これが泣けるのです・・・ホント(T_T)。
ベトナム人お断りのクラブの店長・ミスタージョーと名乗るまでに至ったミンもまた、
戦争の傷跡から立ち直れない一人だったのです。詩人になりたかったミンが「詩人になっていたらとっくに干からびて死んでいる」とトアンに語ったのがとても重くて切ない一言でした。目の前で親兄弟や仲間達が死んでいくのを目の当たりにし、それを笑いながら見ていたものを憎み、自由を手に入れたいがために必死に戦い続け、そしてついには夢を捨てるだけでなく人まで信じられなくなり「ベトナム」をも捨ててしまった・・・ミンの生きてきた20年もとても残酷なものだった。宮川さんの吐き捨てるかのような歌声がなんだか無性に悲しく心に響いてきました。それと同じような歴史を辿ってきたトアンの押し黙った様子も切ない・・・。一度帰国した使節団のなかにいなかったことを問い詰め、今頃になって観光気取りで戻ってきたフェィを激しく責めるミンの苦しさ、ベトナムの地獄のような生活へ戻ることの恐怖からイギリス人の養子になりながらそのことへの罪悪感から抜け出せないフェイの苦しさ・・・もう、ここでは様々な辛い過去や現実が一気に押し寄せてきて私まで苦しくなってしまったほど(T_T)。フェイを責めるミンやトアンの気持ちも、平和な生活にすがりたかったフェイの気持ちも痛いほど分かるだけに、戦争が生んだ心の傷跡というものについて深く考えさせられてしまいました。結局トアンもミンもフェイには真実を告げられなかった・・・それは二人の精一杯の優しさだったのだなぁと思います。「もしも自由を手にしたなら」…この詩を20年前に作ったミン、その詩が好きだったと告げたフェイ、その詩に曲を乗せたトアン・・・あ゛あ゛〜〜このシーンも思い出すだけでも涙出そうになるほど切なかったなぁ〜〜〜(T_T)。千秋楽ではこのシーンで宮川さんが涙を流していたのを目の当たりにし、私ももらい泣きしたのを思い出します・・・。ううっ・・・よかったよ〜宮川さん。 ちなみに、宮川さんと畠中さんがここで一度だけ二人きりになります。涙しながら二人の掛け合いに別の意味でも感動していた私・・・この瞬間がなんとも言えずに嬉しかった…(^-^ゞ
「もしも自由を手にしたなら」というミンのつぶやきの後に20年前の戦時中でありながらも希望に燃えていた頃のシーンが展開されます。現状の厳しさや虚しさを今まで見せられていただけに、固い土を耕しながら苦しい中でも
自分達の夢と希望を語り合い笑いあっている解放軍の若者達やそれを手伝うティエンの笑顔は泣けるほど切なく映りました。2度目と3度目観たとき、2幕で荒んだ姿のハインを知っていただけに「将来は医者になるんだ」という無邪気なハインの台詞に思わず落涙してしまいました…。詩人になりたいと語るミン、世界一の作曲家になると目を輝かせるトアン、軍隊に残って戦争のない世の中にするというゴク、ティエンと一緒に田舎へ帰ることを夢見るビン… この誰の夢もかなわなかった現実を知る私は、彼らの生き生きとした言葉が笑顔が逆に辛く感じてしまいます。戦時中でも希望を持てた時代のほうが荒んだ現代よりも尊いとは・・・あまりにも残酷(T_T)。このみんなが一番生き生きしていた時代のナンバー『勇気そして希望』がめちゃくちゃ活気に溢れていて見応えがありました。土を耕すための大きな木棒を使ったダンスもすごかったし、生きる活力を感じさせる歌声もイイ!!!こういうところでちゃんとミュージカルっぽい要素が観れるのもこの作品の魅力でしたね。 
ちなみに、宮川さん、ここでのダンスとても頑張ってました!ちょっと観ているほうはドキドキしたりしたこともあったけど・・・(笑)ってまるで
親の心境(爆)。でも棒ダンスでコンビを組んでいたのが沢木さんで、二人ともすごく楽しそうにやっていたのがとても印象的だったし嬉しかったです!宮川さんのコンサートでほとんど初対面の会話を交わしていた沢木さんと宮川さんの二人を目撃していた私は、まさかこんな日がすぐ来るとは思ってもみなかったもので・・・(笑)妙に感動してしまいました〜。畠中さんは本当に身軽!すごい激しい動きをしているのに息の乱れを感じさせないのが本当にすごいと思った!それにあの澄んだ歌声・・・ウットリ・・・。そして最後は宮川さんの先導っぽい歌声でみんなが一つに・・・ああああ〜〜感動的だった(T_T)。あ、それから畠中さんと宮川さんと沢木さんの三人が並んでいるシーンも個人的にすっっっごく嬉しかったです!まさに夢のゾーンてな感じで私の視線の中で3人の場所だけ一際輝いて見えてしまいました(笑)。
ティエンの夢は「美しいサヨナラの言えるベトナムにすること」。でも幼いフェイは戦争の恐ろしさに押しつぶされそうになっていて夢を持つことよりも
「死への恐怖」におびえています。どんなに辛くても凛として夢を持ち続ける姉のティエンはとても崇高で美しく見えましたが、実際に私がその場にいたとしたら・・・きっとフェイと同じ考えを持っていたに違いないと思います。ティエンも「死への恐怖」を抱き続けている、でも、それに立ち向かうだけの勇気がある・・・土居さんの演じるティエンは本当に魅力的でした。ここで歌われる土居さんの『タン・ビエットの歌』はそんな彼女の強い意思がヒシヒシと伝わってきて、またもや落涙(T_T)。きっと今戦争中で苦しんでいる人たちの中にも、こういった夢を持ち続けている人がいるのではないでしょうか。そう考えるとなおさら切なくて涙せずにはいられませんでした。

<自慢の息子 〜 運命>
フェイは昔の思い出の会話の中から、ビンの田舎を思い出し訪ねていきます。ビンの父親ビックはフランスとの戦いで片足を失いうつろな表情・・・。ビンは出かけていてすぐ戻るという言葉を信じたフェイに父親は息子への想いを熱く語りだします。このビンの父親ビックを演じているのがビン役の
根本豊さんですが、息子の勇姿を夢遊病者のように・・・それでも熱く熱く語る姿に圧倒されました。ビックにとってかけがえのない自慢の息子は実は彼の目の前で自殺をしてしまった・・・夢の中でしか生きられない哀れな父親像に思わず涙です(T_T)。戦場から逃げ戻ってきた息子をなじってしまったことの罪の意識もあったのかもしれない・・・なんて思うと尚更悲しみが増してしまいます。いつも手紙に書いてきたティエンの存在とビンの自殺を結びつけずにはいられなかったんでしょうねぇ…。このときの根本さんの熱演が本当に素晴らしかったです!そして、その父親を思いやるビンの弟役の川本さんもよかった!!「俺達が戦争を始めたわけじゃない」の言葉はあまりにも重く響いてきました・・・。やりきれない悲しみがヒシヒシと伝わってきて、彼らの重い歳月に胸をつかまれるような気持ちになりました。これは過去のことだけではないと思う・・・今現在もこの苦しみと戦っている人が世界中にもきっといる・・・そう思うだけで私はまた涙をとめることが出来なくなってしまうのでした。
ビンの父親からティエンのせいでビンが自殺したと聞かされたフェイは、あまりの衝撃に真実を求めることが恐ろしくなります。それでも知らなければ一生後悔する・・・ここのシーンで
愛華さんが自問自答する姿がすごくよかったです!!不安で押しつぶされそうになっているけどもう後には引けない、といった複雑な胸中が感じられました。諦めようとしたフェイの気持ちを変えたのはやはり思い出の中のティエンだった・・・。新しく生まれかわるベトナムを信じていた姉の清くまっすぐとした歌声はとても切なく聞こえてきました。
ゴクの居場所をつきとめたフェイは出家していた彼に会って驚きます。今までの仲間達は死んでしまったか荒んだ人生を歩んできている者ばかりでしたが、ゴクだけはとても静かで穏やかな印象をはじめに持ちました。
堀米聰さんのゴクは、なんというか、本当に俗世とは一線おいているような雰囲気があって感動的でした。解放軍にいたときに「軍に残る」という夢を強く語っていた頃とは別人のようで・・・その辺りが上手いなぁと。ゴクが静かに歩いているシーンでは宮川さんや沢木さん、根本さんもエキストラ要員として登場してました(笑)。みんなすぐ分かる・・・特に宮川さんはかなり目立ってました(笑)。その後に繰り広げられるダンスも迫力満点で見応えがありました!
静かで穏やかなゴクにもやはり辛い過去があった・・・。出家に至るまでの経緯はあまりにも
衝撃的な真実…。初めて観たときは私も恐ろしい衝撃を受けて涙を止めることが出来ませんでした(T_T)。姉のティエンは敵のスパイだった恋人を救うために逃がそうとした罪で銃殺されてしまっていた…そして、銃殺したのはその任に就かされていたビンとゴクだった…!ティエンは夢と希望を語り合ったビンとゴクの手によって殺されてしまったのです(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)。この真実を聞いて泣かずにいられようか〜〜(涙)。ティエンに恋焦がれていたビンはその現実と向き合いきれずに自殺し、ゴクはその現実から逃れるかのように出家した・・・そしてその現場に立ち会ったトアンもミンもハインも人生の歯車を狂わされていった・・・あまりにも残酷すぎです(T_T)。これが1幕ラストのクライマックスで美しい歌声を響かせながら上のほうにかけられた橋をティエンが渡ってくる、白い服を着たトアンたちが赤い血のようなリボンで次々に縛られていく、その真ん中でフェイは絶望に打ちひしがれている・・・といった場面が展開。残酷な現実と逆行するような美しい旋律がなおさら悲劇を映し出すようで、もう、幕が下りたというのに涙が止まらず状態に(T_T)。思い出しただけでも涙が…。幕が下りた後、どうやって涙を隠そうか苦労していたのは言うまでもありません(苦笑)。久しぶりに1幕から泣きまくりでした。
こんなわけで、公演中には感想アップできませんでした(^-^; 
ティエンの真実はとてもじゃないけど公演中には書けません…。

<ダナンの街 〜 存在>
1幕だけでもあれだけの衝撃を受けて泣きまくったのに、後半からはどうなるかと変な心配をしながら2幕目に突入(苦笑)。冒頭では衝撃の真実を告げられたフェイが絶望し、呆然と歌うところから始ります。蓮の燈篭が静かに光るなか、ティエンの幻と語らうフェイ…二人が歌う『タン・ビエットの歌』はとても悲しく響いてきました…。もう
姉はいないと分かっていて聞くと尚更物悲しく聞こえてしまう(T_T)。
すべてに絶望したフェイはイギリスへ帰国することを決意しますが、その最中に街の雑踏の中でスリにパスポート入りのバッグを盗まれてしまいます。このスリを幸村さんが演じているのですが、
アクロバットな動きが素晴らしかったです!ダナンの街のシーンはこのミュージカルで唯一の笑わせどころでした。竹笊に独特の顔の絵が描かれていて、それがまた一人一人全部違う!これは目を惹きました〜。この面を初めて見たとき「もしや宮川さんが美術担当!?」とか本気で思ってしまった(笑)。いや、宮川さんのコンサートチラシがすごいリアリティのあるイラストだったのでもしやその腕が買われたのかと(^-^;。えと、ちゃんと、いらっしゃいました、専門の美術の方が(笑)。ちなみに宮川さんのつけていた面の顔は「アザラシのタマちゃん」にそっくりで、発見したときには思わず噴出してしまいました(爆)。このミュージカルで唯一笑えたところだったかも(^-^;;。ほかにも、ここだけは皆さん本領発揮のアドリブが多く、客席を交えて『この人はヒマ人』『この人はイソジン』(苦笑)とか遊びまくってて楽しかったです♪ あと、警官の福永さんがすごい面白くて、フェイが尋問されているのをトアンが助けに入るシーンでお金を要求するような仕草を見せるのですが、それが妙にいやらしくて絶妙でした(笑)。畠中さんも愛華さんもここではけっこう笑をこらえていた感が…(^-^)。 でも『何でも写真に撮りたがるのがおたくの悪い癖』など、ちょっと皮肉めいた台詞もあったりして笑ってばかりはいられないといった一幕もありました。と、笑いの場面はここで終わりでした…。
トアンと再会したフェイは、ティエンが殺されてしまった悲しみを吐き出すようにトアンにぶつけます。逃げ帰ろうと思ってもパスポートを盗まれては帰れない・・・
自分はベトナム人であってベトナム人ではない…。フェイはイギリスで平和に暮らしてはいたけれど、心の中はいつも捨ててきたベトナムへの罪悪感でいっぱいで苦しんでいたんだな、ということがすごく分かる気がしました。それでもトアンたちが辿ってきた歴史はフェイ以上に過酷であったことも事実。逃げ続けようとするフェイに『ハンティン村へは戻らないのか』と問い詰めるトアンがまた痛々しい…(;_;)。数々の悲惨な運命を経験しながら、それでも生き続けているトアンの心情を歌い上げている畠中さんが本当に素晴らしかった!あの澄んだ歌声の中にはフェイだけではなく客席の私たちに訴えかける確かな『気持ち』がすごく感じられるのです。その言葉、歌声には心底感動いたしました(T_T)。
そんな二人の押し問答の最中にフェイのバッグを奪い取ったスリが現れます。『会いたがっている人がいるから来い』と…。

<私のちいさないのち 〜 ちいさないのち>
スリに連れられてやって来た場所に現れたのは、解放軍の時に『医者になりたい』
と言っていた面影も感じられずすっかり荒んでしまったハインだった・・・。ハインの沢木順さん、このあたりのお芝居が本当に上手いなぁと感動!世間に逆らっている上に人生投げてる感じがすごくよく出てました。しかも、ハインには戦争中の記憶で最も辛いものを抱えていたんですよね…。トアンに『あの子をどうした』と問い詰められるシーンで、ティエンがスパイ容疑のかかっていた男の子供を産んでいたことが判明してしまいます。あの衝撃の1幕結末にさらにここで驚愕の事実!(T_T) フェイじゃなくてもこちらも呆然・・・というか、どんどん話の波に飲まれていく感じがしました。正直、この辺りからラストまで涙が乾く暇もなかったくらい泣きが入ってました、わたし・・・(涙)
20年前、ティエンの恋人がスパイであることが発覚したときにはティエンはすでに彼の子供を身ごもっていたのです。おなかの子供に語りかける
土居さんのティエンの表情がとてもとても幸せそうで・・・その先の辛い運命を予感させているだけに、もう観ているだけで涙がボロボロ止まらず状態に(T_T)。そして、解放軍の仲間達はスパイの子供であることが発覚するのを恐れ、ティエンに降ろすことを勧めるのですが彼女は必死に子供を守ろうとします。その必死の姿があまりにも鬼気迫っていて・・・本当に辛い。不本意ながらもティエンに子供の始末を申し出ている仲間達も辛い。あ゛〜〜本当に泣けたよ〜〜(涙)。ちなみにこの展開は大作ミュージカル『ミス・サイゴン』とちょっとかぶっている部分がありますね。『ミス・サイゴン』初演に観た時も母親が子供を必死に守ろうとする姿に感動したけど、ひょっとしたら、今回のほうが現実味があるというか…ストレートというか… それゆえに泣けるのかもしれない。もう、このときの土居さんが本当にすごいんですよ!『どうしても憎めない、信じたい』と泣き叫ぶ姿にまた涙が止まらず(T_T)。
女の子を産んだティエンはジャングルの中を逃げ惑います。このときの美術がまたすごい!緊迫する音楽とも重なって本当にジャングルの中にいるかの感覚になりました。仲間達とジャングルで出会ったティエンは子供を彼らに託し、彼らもティエンの気持ちを汲んで子供を守るために駆け回るんですよね…。そしてティエンは恋人を逃がそうとするのですが、敵に見つかってしまい
恋人はティエンの目の前で銃殺されてしまうんです(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)。う゛う゛〜〜これが泣かずにいられようか〜〜…。しかも、そのすぐあとにティエンは捕らえられてしまい、銃殺隊に加えられていたゴクとビンの引いた引き金で…(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)。う゛う゛〜〜これが泣かずにいられようか〜〜(涙)。目隠しをされているティエンが最後に歌っていた唄は『タン・ビエットの唄』・・・その声があまりにも美しくて悲しくて、それを見守りながらどうすることも出来なかった仲間達の無念の表情・・・引き金を引いてから泣き叫ぶビン・・・もう、私の涙はノンストップ状態でした(爆)
そして残された子供について仲間達は激論を交わします。スパイの子供をかくまうことで銃殺になることをおびえるミン、どうしようも出来ずにわからないまま始末するしかないとつぶやくゴク、ただただティエンを想い続けて泣きじゃくるビン、そして『子供には罪はない』と涙を流しながら必死に守り抜こうとする意思をぶつけるトアン・・・。この
子供をめぐる仲間達の様々な想いが、みんなみんな分かるから、涙なくしては観れなかったです…。それでもティエンの面影を残す子供の笑顔を見つめる仲間達の想いは同じなんですよねぇ。だれもこんな議論をしたいわけじゃないのに…。そのとき、この泥沼の戦争から逃げ出したいと強く思っていたハインが子供を連れてジャングルの外へ逃れ、目立たないところに子供を隠すことを思いつきます。子供を助けるためにはその方法しかないなんて、本当に戦争は悲劇そのものだと改めて実感してしまいました。

<ハインの過去 〜 傷を背負い続けて>
子供の行方は知らないと言うハインを激しく責めるトアン。それに対してハインはティエンの子供を8歳まで育てたが、戦争から逃げ出してきたことの苦しみにもがき続け、仕事もろくに出来ず悪に手を染めていかざるをえなかったことを激白。ハインが牢獄に入れられている間に子供は行方知れずになってしまっていたことも…。
トアンは涙ながらに、20年後にティエンの娘に出会えることが自分にとっての夢だったことを告白します。ココは本当に息飲みました!!もう、畠中さんも沢木さんも涙ボロボロ流しながら魂をぶつけ合ってるといった感じで… う゛う゛〜〜これが泣かずにいられようか〜〜…(T_T)(T_T) 何のために戦ったのか・・・夢を信じることでしか生きる支えを持てなかったトアン、夢を信じたくても現実の厳しさに押しつぶされてしまったハイン、戦争が生んだ彼らの苦しみを思うとどうにもこうにも観ていてやりきれなかったです、ホント。
二人の間に
『夢は裏切らない』と割って入るのがフェイ。彼女の記憶の中の姉・ティエンは苦しい中でも未来を見据えていたことを思い出します。この思い出の中のティエンとフェイのエピソードがまた泣けるんですわ!(T_T)。アメリカ兵に村を壊滅させられ、父も母も殺されてしまい、それでも必死に逃げる姉妹・・・しかし、妹のフェイはその現実を受け入れられずに逃げることを諦めてしまいそうになります。そのとき、姉のティエンは親が殺された悲しみ、壊滅させたアメリカ兵への憎しみ、すべてを必死に受け止めようとしてるんですねぇ・・・。もう立てないと泣くフェイに向かって涙ながらに『立ちなさい!!!』と絶叫するんですけど、もう、私はまたしてもここで号泣(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)。 戦禍の中でも未来への希望を信じ生き抜こうと立ち上がる二人の姉妹は涙なくしては観れないっすよぉぉぉぉ〜〜〜! このシーンで、私は改めて戦争への憎しみを感じましたね。この姉妹と同じ思いをしている人が世界にはたくさんいると思うし、それが過去ではなく現在も続いていることにとてつもない悲しみと虚しさを覚えました…。戦争で傷つくのは始めた人たちよりも、何の関係もなく普通に生活していた人たちだということ・・・そのことの重みを、今戦争を起こしている国に訴えたい気持ちになりました。
この思い出がフェイに蘇ったことで、彼女の心にも変化が生じます。辛い過去の思い出しかない生まれ故郷のハンティン村へ帰ること・・・そして傷ついたかつての仲間達やベトナムの人たちのために立ち上がろうと決意するのです。ここの心境に至るまでのフェイの心の動きがちょっと足りないような気もしたけど、
辛い過去から立ち直ろうと決意した愛華さんのフェイは美しかったです。

<タン・ビエットの唄 〜 これからのヴェトナム>
姉の遺志を継いでベトナムで苦しむ人の助けになろうと決意してハンティン村に戻ったフェイ。このシーンになるときに、いままで舞台を囲んでいた縄がいっせいに上のほうに捌けていってバックにベトナムの緑の景色がバーッと広がるのですが、これがものすごくきれいで涙が出るほど感動しました。後ろには黄色い花が咲き乱れているし、
希望を感じさせてくれる音楽もいい!!ここに現れたフェイは黄色いベトナムの民族衣装アオザイをまとっているのですが、これがすごく愛華さんに似合ってました(^-^)。ハンティン村での残虐事件での辛い出来事を乗り越えようと必死に笑顔を作っている愛華さんもまた感動的…。
そんな彼女が姉を想いながら『タン・ビエットの唄』を歌っていると、そこに聞き覚えのある声が自然と重なる・・・振り返った先にいたのは姉の
ティエンに生き写しの娘のタオだった!!二人が泣きながら抱擁するシーンはもう、涙が滝のように流れてきて…号泣、また号泣状態(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)。『李香蘭』でも同じようなシーンがあっていつも涙していたのですが、今回はもうそれ以上にボロボロ涙が出てしまって前がかすんで見えなくなったほどでした(苦笑)。
そして二人が未来のベトナムのために想いを込めて歌い、後ろからはスローモーションで他の役者さん達が歩いてきますが、これがなんともいえない
幻想的で前向きで美しくて・・・もう、涙の止める余地なし(苦笑)。幕が下りてもしばらくはどうにも涙が止まらなくて本当に自分でもビックリでした(^-^;;;。カーテンコールが始ってようやく涙が治まったといった感じでしたが、その涙が毎回とても心地よくもあり、「本当に観てよかったな」と心から思える舞台でした。

はっっっっ!!!!気がついたら久しぶりにこんな長文に(爆)!!かなり深入りして観てしまったので感想も熱くなりすぎた気が…(^-^;;; スミマセン(苦笑)。えっと、でも、実はまだキャストについてと3日間の様子についてのレポートが残ってますんで…興味のある方は下の『next』アイコンから進んでくださいませ〜〜。