『巫女の予言』  アーシュラ・ドロンケ編テクスト(全62節)に基づく jinn翻訳

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1節 予言の始まり 25節〜誓いの破戒
2節〜世界の始まり、時の始まり 28節〜ラグナロクについての予言
7節〜神々の黄金時代 35節〜巨人とドワーフの国の幻視
9節〜ドワーフのリスト 39スタンザ〜: 神々の敵の誕生からラグナロクへ
17節〜人間の創造 51節〜オージンとソールの死
19節〜神々の世界 56節〜新しい世界
21節〜最初の戦い(堕落の始まり)  






1. 私はすべての者に耳をかたむけよ、と求む
聖なる同胞よ
大きなる者も小さき者も
ヘイムダッルの息子たちよ。
死者の父よ、望まれるか?
私に語れと?
世界の古き知らせを
私の覚える最も遠き記憶であることを?

2. 私は巨人たちを覚えている
太古に生まれた者たちを
その頃はまだ遙か昔で 私を
育ててくれた。
九つの世界を私は覚えている
九人の樹の女巨人を
枝にて計る名高き樹を
地の下のことを

3. それは古き時のこと
そこにユミルが住んだ
砂浜もなければ海もなく
冷たい波もなかった。
地面はどこにも見られず
上に天もなかった
洞は大口を開け
しかし草はどこにもなかった

4. ブールの息子たちが
土地を引き上げる前に
彼らは名高き中つ国を
形造った
太陽は南から輝き
石の上の軒並みに光を射した
その時 地面は覆われた
緑なすニラネギに

5. 太陽は南から飛び上がった
彼女には月が
その右手にともにおり
空の辺を縁取った
----------
太陽は知らなかった
自分がどこに住まいを持ったかを
星も知らなかった
自分たちがどこに居場所を持ったかを
月も知らなかった
どんな力を自分が持ったかを

6. そのとき力ある神々は進み出て
自分らの運命の座に着いた
聖なる神々は
そしてこのことについて考えを巡らした
夜と彼女の子どもに
名前を授けようと。
彼らを「朝」と
「昼」と名付けた
午後と夕と名付けた
年を数えるために


7. 神々は集った
渦巻く河の平野にて
彼らは祭壇と聖所を
高く築いた。
鍛冶の竈を据え
富を造った
火ばさみを作って
道具をこしらえた。

8. 芝の上で将棋に興じた
彼らは陽気であった−−
彼らにはなにものも
黄金において不足はなかった
三人の女巨人が
やってくるまでは。
彼女たちは恐ろしいほど力が強く
巨人の国から訪れたのだ。


9. その時力ある神々はみな進み出て
己が運命の座に着いた
聖なる神々は
そしてこのことについて考えを巡らした
はたしてドワーフたちの
一族を作るべきやと、
ブリーミルの血から
またブラーインの骨から・・・。

10 モートソグニル(勇気を吸い込む者)がいた
すべてのドワーフたちの中で
最も偉いとされた
次に偉いのはドゥリン(眠る者)だった
彼らは多くの
人の形をしたものを造った
土から生まれたこのドワーフたちは
ドゥリンの語るところに依れば

11. 「ニーイ(新月)とニージ(朔)
ノルズリ(北)とスーズリ(南)
アウストリ(東)とヴェストリ(西)
アルショーヴル(盗人)、ドウァーリン(ぐずぐずする者)
ビヴォール(震え)、バーヴォール(ブルブル震える)
ボンブール(ずんぐり)、ノーリ(荷物屋)
アーン(友)、アーナール(戦士)
アーイ(父親)、ミョズヴィトニル(蜜酒の狼)

12. ヴェイグル(薬)、ガンダールヴル(杖のエルフ)
ヴィンダールヴル(風のエルフ)、スラーイン(切望)
セックル(素直)とソーリン(大胆な行動)
スロール(繁栄)、ヴィトル(智慧)、リトル(色)
ナール(死体)とニーラーズル(新しい忠告者)
さて、こうなれば
レギン(力)とラーズスヴィズル(計案者)を加えて
ドワーフを数えるのは間違えない

13. フィーリ(象の足)、キーリ(きしみや)
フンディン(発見)、ナーリ(針)
へプティ(柄)、ヴィーリ(苦労)
ハンナール(工匠)、スヴィーオル(堕落)
フラール(聡明)、ホルンボリ(角穴開け)
フレーグル(高名)とローニ(沼の者)
アウルヴァングル(湿原)、ヤリ(土)
エイキンスキャルディ(樫の盾)

14. ドワーフたちを数えて
ドワーリンの仲間まで遡るがよい
人間の種族は
ローヴァル(賞賛)にまで遡る
彼らドワーフたちは
サラルステイン(石の館)から、
アウルヴァングルのための住まいを
ヨーロヴォッルル(土の平原)まで探した

15. ドラウプニル(滴り)がいた
またドールグスラーシル(敢えて苦難を求める)がいた
ハール(背ぇ高)、ハウグスポーリ(墓を辿る者)
フレーヴァングル(護られた野)、グローイ(閃光)
スキルヴィル(岩場)、ヴィルヴィル(器用)
スカーヴィズル(曲がったひれ)、アーイ(年老いた父)

16. アールヴル(エルフ)とユングヴィ
エイキンスキャルディ
フャラール(隠れる者)とフロスティ(霜のような者)
フィンヌルとギンナール(有能な者)
世界が続く限り
この家系図も覚えられ
ローヴァルにいたるまで数えられるであろう



17. 三人がやって来た
自分たちの仲間から離れて
力ある、そして愛すべき
アースの神々が家を訪ねた
彼らは見つけた 地面の上に
力無く横たわる
トネリコの木とエンブラ(楡)の木を
まだ運命も定まっていなかった。

18. 彼らはまだ息も持っておらず
魂も持っていなかった
肉の肌もまとっておらず、声もなかった
よい血色も持たなかった
オージンが息を与えた
魂をヘーニルが与えた
肌のまといをローズールが与えた
そしてよい血色も。


19. トネリコの樹が立っているのを私は知っている
それはユッグドラシルと呼ばれる
高い樹で、輝く土壌で 濡れている
.
そこから露が垂れ 谷に
流れ落ちる
それは永遠に緑で聳える
ウルズの泉の上に

20. そこから乙女が来る
智慧に溢れた
三人は、湖からやって来る
その湖はトネリコの樹の下にある
1人はウルズ(なった)という
2人めはヴェルザンディ(なりつつある)といい
小枝を刻むのである
3人めはスクルド(なるべし)という
彼女たちは法を定め
彼女たちは我らの
人の子らの命を選ぶ
人間たちの運命を

21. 彼女は戦争を覚えている
世界の最初の戦争を
グッルヴェイグ(黄金の酒)が
槍によって突き刺されたとき
そしてハール(オージン神)の館で
彼女が焼かれたとき--
彼女を三度焼き
彼女は三度生き返った
そして今も彼女は生きている

22. 美しきヘイズと彼女は呼ばれた
彼女はすべての家を訪れ
予言をよくする巫女だった
彼女は口寄せを知っていた
彼女は魔法がよくでき
魔法を用いた
彼女は常に
悪い嫁のいとしい者なのだ

23. その時力ある神々はみな進み出て
己が運命の座に着いた
聖なる神々は
そしてこのことについて考えを巡らした
アースの神々は
この件について返礼をするべきかと
あるいはすべての神々が
賠償をもらうべきかと

24. オージンは飛ばした
人々の間へと槍を放った--
それが戦争であった
世界で初めての
木の壁は破れた
アース神族の町の
ヴァンル神族は 戦争の魔法を編んだ
野を歩いた


25. そのとき力ある神々はみな進み出て
己が運命の座に着いた
聖なる神々は
そしてこのことについて考えを巡らした
誰が大気に編み込みをして
毒を混ぜてしまい
巨人の輩に
オーズルの妻フレイヤを差し出そうとしたのか、と

26. ソールは1人 撃って出た
怒りにふくれあがっていた
彼はあまり座っていることはないのだ
そのようなことを耳にしたときには!
誓いには誓いが
言葉と誓いと
誓言はすべて重みがある
が果たされなかった



27. ヘイムダッルの
聴力が 置かれていることを彼女は知っている
輝くばかりの樹の下に
聖なる木の下に
彼女は見ている 一筋の流れが
豊かな流れが
死者の父の担保から流れていることを
汝はなお知りたいのか、否か?

28. 彼女は外にひとりで座っていた
アースの恐ろしき者がやってきた
そして眼の中を覗いた
「私に何をお尋ねか?
何故私を試すのか?
オージンよ、私は全てを知っている
どこにあなたの眼が置かれたか
かの名高き
ミーミルの泉の中だ
ミーミルは蜜酒を飲む
毎朝
死者の父の担保から
汝はなお知りたいのか、否か?

29. 戦の父は、彼女に選んでやった
腕輪と首飾りを
賢い知らせを彼は得た
そして魂の予言を
彼女は遠くを、遠くを見た
すべての世界を見通した


  *

30. 彼女はヴァルキュリアが
遠くからやって来るのを見た
いまにも馬を駆って
神々の国へと出立するところ
スクルドは盾を持ち
しかしスコグルも彼女と一緒だった
グンヌル、ヒルドル、ゴンドゥルがいた
そして槍のスコグルも
ヘリアンの娘たちの名前を今挙げる
今にも馬を駆っていく
地上を越えていくヴァルキュリアたち

31. 私はバルドルを見た
血塗られた生け贄を
オージンの息子を
運命は近づいていた
そこには充分に育った
地面よりも高い
細くて、非常に美しい
宿り木があった

32. その枝から作られたのは
細く見えるもの
わざわいをもたらす、危険な飛び道具
ホズルは投げた
彼の弟のバルドルは
早く生まれすぎた
オージンの息子は
まだ一晩の年齢だったが、殺しをなしとげた

33. 彼は手も洗わず
髪にくしもあてなかった
薪の上へと運ぶ前には
バルドルの仇敵を
しかしフリッグは泣いた
沼沢の館にて
ヴァルホッルの悲しみを嘆いた
汝はなお知りたいのか、否か?

34. 彼女はフヴェーラルンディ(大釜の森)の下に
捕らわれている者の姿を見る
わざわいを望む者がロキの姿でいるのだ

そこにはシギュンが座っていて
自分の夫の側にいながら
喜びは少ししかないのだ。
汝はなお知りたいのか、否か?

 *

35. 東から一筋の河が流れて
毒気のある谷に落ちてくる
短剣と長剣とを持っている
スリーズル(悪意ある)と呼ばれている

36. 北に立っているのは
ニザヴォッルル(朔の月の平原)の上の
黄金の館だ
シンドリの一族の館なのだ
その側にはもう一軒あって
オーコールニ(決して寒くない場所)にある
ある巨人の麦酒宴の館だ
彼はブリミルと呼ばれている

37. 彼女は館が建っているのを見た
太陽から離れて
ナーストロンド(遺体の岸辺)という地なのだ
その扉は北に向いている
毒気のある滴りが落ちてくる
屋根の天窓から入ってくる
その館は
蛇の背骨を編んで作られている

38. 彼女はそこで川を渡るのを見た
重い流れの河を
偽証する者ども、
人殺し
他の男の信頼する妻を
誘惑する者ども
そこでは、ニーズホッグルが
死体を飲み込むのだ
狼は男たちを引き裂くのだ
汝はなお知りたいのか、否か?




39. 東に1人の老婆が座っていた
ヤールンヴィズルに
そしてそこで産んだのは
フェンリス狼の血族
彼らの全ての中から
一頭が成長し
トロルの姿をした
月の追跡者になるのだ

40. 命にて満たす
死すべき運命の人間の命にて
力持つ者らの住まいを朱に染める
流れる血で
日の光は黒くなり
その後の夏に
天候はみな予測不能となる

41. 丘の上に坐って
竪琴を奏でる
女巨人の番人は
陽気なエッグセールだ
彼の上にいて時をつくるのは
絞首台の森の中にいる
真っ赤に輝く一羽の鶏
名をフャラールという

42. 神々の頭上でときをつくる
グッリンカンビ(金のとさかの雄鳥)が--
彼は起こすのだ
兵の父のもとにいる兵士たちを
しかし、もう一羽も鳴いている
地面の下で
赤さび色の鶏で
ヘルの館にいるのだ

43. 今やガルムルは大きく吼える
グニ−パ(先のとがった)洞窟の前で−−
足かせは壊れるであろう
そして狼は走るだろう。
彼女は古き知識を知っている−−
私はさらに見る
力ある者たちの黄昏を
勝利の神々のむごい運命を

44. 兄弟は兄弟に向かって争い
互いに殺し合う
姉妹の子供たちは
親族関係を汚す
世界は恐ろしいものとなり
姦淫が多くなり
斧の時代、剣の時代
楯は切り裂かれる
風の時代、狼の時代となる
世界が転倒する前に。
誰も人は
他人に憐れみをかけなくなる

45. ミームルの息子たちは遊んでいるが
運命の計りは火を灯す
音が鳴り響く
あのギャッラルホーン(鳴り響く角笛)が
ヘイムダッルが高々と吹き鳴らす
その角笛は空に向けて
オージンは語り合う
ミームルの頭と。
ユッグドラシルは震える
あの、そびえ立つトネリコの樹は
古い大木がうめき声を上げる
しかし巨人たちは放たれる

46. 今やガルムルは大きく吼える
グニ−パ(先のとがった)洞窟の前で−−
足かせは壊れるであろう
そして狼は走るだろう。
彼女は古き知識を知っている−−
私はさらに見る
力ある者たちの黄昏(ラグナロク)を
勝利の神々のむごい運命を

47. フリュームルは東からやって来る
楯を自分の前に掲げて
ヨルムンガンドル(大きな蛇)はのたうつ
巨人の怒りをもって
大蛇は波を打ち付け
鷲は響く声で鳴く
青白いくちばしは死者をついばむ
爪の舟はもやい綱を解かれる

48. 一艘の船が東から来る
ムスペッルの軍隊が
水を通って
しかし、ロキがその船の舵を取る
巨人の息子たちは進む
全ての狼たちとともに
ビューレイプトルの兄弟も一緒に
加わっている

49. 神々はどうなるのか?
エルフたちはどうなるのか?
巨人の国はすべてとどろきの音を響かせる
アース神族は話し合う
ドワーフたちはうめく
石の扉の前で
閉ざされた石の壁を見て。
汝はなお知りたいのか、否か?

50. スルトルは南からやって来る
枝に燃えたつ火を持って
剣は輝き
死者の神々の太陽は輝く
石の頂は砕かれ
そして女巨人たちは歩き出す
兵士たちはヘルから続く路を歩く
そして天は割れてしまう


51. その時フリーン(フリッグの別称)の
2番目の悲しみがやって来る
すなわちオージンが進み出て
狼と戦う
そしてベリの殺し手は
輝きつつ、スルトルの前へと進む
そのとき、フリッグの喜び(=恋人、夫)は
倒れるだろう。

52. その時、かの大物がやって来る
勝利の父の息子
ヴィーザルが、殺戮の獣を
撃ちに
 フヴェズルングルの子に
手でもって突き刺す
その心臓に止まるまで
この時に父は復讐を果たされる

53. その時かの名高き
フロズュンの息子がやって来る
オージンの息子は進み出て
竜と戦う
怒りを持って 彼は撃つ
中つ国の護り手は。
全ての者は捨てねばならぬ
この地の故郷の家を。
9歩進んで
フョルギュンの息子は
倒れた、 恐ろしき
蛇から。それは恥ずべき行為ではなかった。[緩叙法:誉れある行為ということ]

54.太陽は暗くなり、
大地は海に沈み
天からは
輝く星が消える
煙と火は
猛威を揮い
火炎は
天そのものを舐める

55. 今やガルムルは大きく吼える
グニ−パ(先のとがった)洞窟の前で−−
足かせは壊れるであろう
そして狼は走るだろう。
彼女は古き知識を知っている−−
私はさらに見る
力ある者たちの黄昏を
勝利の神々のむごい運命を


56. 彼女は見える
ふたたび
海から大地があがるのを
常緑の大地が
滝は落ち
鷲は上空を飛ぶ
その鷲は山にあって
魚を獲る

57. アースの神々は見出される
イザヴォッルル(逆巻く平原)に
大地の紐について
力ある者について話をする
そして思いだす
力ある裁きを
そして大いなる神の
古のルーンを

58. そこでは再び
驚くべき
黄金の将棋が
草地の上に見つかる
かつて古の時代に
彼らが持っていたそれを

59. 種を蒔かずとも
穀物は育つ
すべての傷は癒される
バルドルはやって来るだろう
ホズルとバルドルは共に住むだろう
フロプトルの勝利の町に
死者の神々の聖所に
汝はなお知りたいのか、否か?

60. その時、ヘーニルは手に取る
占いの枝を揮う
そして2人の兄弟の息子たちは
広き風の世界に住む
汝はなお知りたいのか、否か?

61. 彼女は見る 館の建つのを
太陽よりも明るく
黄金で屋根が葺かれている
ギムレーに
そこは住むだろう
諸侯たちが
そして、彼らの時代には
喜びを楽しむだろう

62. そこにかの暗い
竜が飛んでくる
光り輝く蛇が
朔の月の山脈からおりてくる
彼はその羽の中に
彼は平原の上を飛ぶ
ニズホッグルはその羽に死体を運ぶ

巫女はここで口を閉じるであろう