5−1 派遣研修員随想
今から2年前。伊勢原中学校で開かれた、ある研修報告会に参加しました。
報告をされた二人の中学校の先生は、とても素晴らしい体験ができたことを、異口同音に、まるで昨日のことのように語り、「帰りたくなかった」とまで、言い切られたのでした。その研修が、ラ・ミラダへの派遣研修でした。その報告会を境に、自分もチャンスがあったら行ってみたいと、強く思うようになったのでした。
残念ながら、その年の派遣は見送られましたが、その報告会から2年も経たないうちに、あこがれの地ラ・ミラダに行くことができました。再開された派遣の第1回目に応募をし、幸運なことに、その機会を与えていただいたのです。
今回の派遣に際しては、いくつか目的がありましたが、その1つが、報告書にある「総合的な学習を視野に入れた視察」であり、現在、障害児教育の担当をしていることから、「ラ・ミラダでの障害児教育の現状をしっかりと見てくる」ことも目的の1つでした。
そして、もう1つ「ホームステイでアメリカの家庭の雰囲気を体験してくる」ことも大きな目的でした。
私のホームステイ先は、先の10月に伊勢原を訪れたガーデンヒル小学校教諭のジェームス・スペッスさん(愛称ジム)のお宅でした。奥さんのオードリーさんは、やはり小学校の先生で、幼稚園に通うブレンダンくんと小学校に通うアンドリューくんの4人家族でした。4人とも私を快く迎えてくれ、すぐに打ち解けて話をすることができました。
ステイ先での最初の話題が、日本でも子どもたちに大人気の「あの」番組のことでした。事前に情報を得ていたので、お土産にトランプなどを持って行ったのですが、それはもう喜んでくれ、それまでに集めた関連商品を次から次へと見せてくれたのです。番組は、わずか2ヶ月前に始まったばかりだったのですが、その人気は、日本に負けず劣らずといった感じでした。番組の放映時間が日本とは異なり、月〜金の朝7時から。ということで、翌朝は「食事をきちんとさせようとする親」と「少しでも早く、多く、テレビを見たい子ども」との間での駆け引きがたっぷりと見られましたが、「アメリカは家庭でのしつけがしっかりとされている」そうイメージしていた私にとっては、「思っていたのとは違うな」という印象を持った朝の出来事でした。
しかし、結論から言うと、やはり「家庭でのしつけ(社会性の育成)」については厳しく、学校教育がそれに負うところが多いことを実感しました。ことに、
・人に迷惑をかけない(公共性と言ってもようでしょうか)
・役割分担をきちんとする(言い換えれば、義務・責任と権利でしょうか)
の2点について、家庭でのしつけ(教育と言っても良いでしょう)がきちんとなされているのです。具体的に例を挙げれば、学校では休み時間等に菓子を食べても良いのですが(昼食を菓子で済ませる子もいた)、校舎内や校庭に、ごみがほとんど落ちていないのです(街の中も)。
また、学校に行くのは「学習のため」学校は「教育をする場」ということが、子どもたち、保護者、教職員といった学校に関わる全ての人に理解をされているので、私語などによって授業が成立しないということが無いそうです。もし、他人に迷惑をかけるようなことがあると、その事実を保護者に連絡をし、保護者が子どもに指導をするのだそうです。見学に回っていて「behavior」という言葉を先生方から何度も聞きました。学習態度は親がつくるもので、それを前提に学校での授業が在るとのことでした。
もちろん、学校が保護者に要求をするばかりではありません。ノーウォーク・ラ・ミラダの教育事務所では「学校では、お子さんに対してこのような事をします」ということを冊子にして、就学時に保護者へ配布をしています。これにより、学校の義務・責任をはっきりとさせているのです。そのため、保護者はつねに学校のしていることをそれと突き合わせ、「学校はすべきことをやっていない」と判断すれば、時には訴訟を起こすわけです。
これは、学校や個々の教師に非常に厳しいことかもしれません。しかし、あまりにも学校が抱え込みすぎている日本の現状を見ると、うらやましくもあります。
皆さんはいかが思われますでしょうか?
随分と堅い随想になってしまいましたが、まだまだ語りたいことはたくさんあります。
ステイ先の子どもたちが、放課後通っていた各種の社会体育とその施設。体育館のようなドームの中でショーを見ながらした食事。などなど、柔らかい話もあります・・・が、またの機会にいたしましょう。
最後になりましたが、今回の派遣研修に際して、この機会を与えて下さった、伊勢原市・伊勢原市教育委員会・伊勢原市教育センターの関係者の皆さん。こころよく送り出して下さった学校長をはじめとする成瀬小学校の皆さん。そして、受け入れて下さったノーウォーク・ラミラダの皆さん。に心より感謝申し上げます。
さあ、次はあなたの番です。