2009年度運動方針


T .昨年度の総括

1.「違憲教育基本法」の実働化である教育関連3法が改悪され、「教育の国家統制」「教職員の管理強化」がますます進行しています。今年度から本格実施される「教員免許の更新制」は、教員免許状を10年の「有効期限付き」としたものであり、講習が終了できなかった場合は「失職」=「排除」の可能性をも含んだものです。また、免許更新制は教員の個人データーの一元的管理をも狙ったものです。教員免許更新制を何としても廃止しなければなりません。政治の暴走によって生まれた制度は、政治的状況を変えることでしか廃止できません。来る衆議院選挙へのとりくみも、廃止に向けた具体的なとりくみの一つです。「公共の精神」・「愛国心」等の強制などを含む国家主義教育の強化と教育委員会や教職員、子どもへの管理統制は憲法改悪の動きと一体のものといえます。「憲法の理念」に基づく教育実践にとりくむと同時に、「教育再生」攻撃に反対するあらゆるとりくみをすすめます。

2.改憲手続き法である「国民投票法」は一昨年成立しました。その内容は、「過半数の賛成」を「有効投票総数の過半数」と規定し、改憲要件を極めて緩和した内容となっています。「国民投票法」により国家権力が容易に改憲できるようになったといえます。「任期中に改憲をなしとげる」と宣言した安倍が遁走したとはいえ、国会内では改憲を指向する勢力が多数を占めています。陸・海・空自衛隊の派兵拡大や「北朝鮮のミサイル」に対する日本政府の異常な反応は、改憲勢力の巻き返しといえます。改憲=憲法9条の破棄=「戦争ができる国」へとこの国を変えることが改憲の目的です。墨田教組は、憲法改悪阻止の旗を高く掲げ、あらゆるとりくみをすすめます。

3.東京地裁「予防訴訟」判決では、@卒業式等における国歌斉唱の際に、起立・斉唱・伴奏の義務がないこと、A起立・斉唱・伴奏をしないことを理由にいかなる処分もしてはならないことなど、「君が代」強制は違憲、違法であるとの劇的な判断を示されました。しかし、都教委は不当にも控訴し、卒業式・入学式において「君が代」斉唱時の不起立や、伴奏を拒否した教職員に対し、不当処分を強行し続けています。墨田教組は、処分を阻止するため、街頭宣伝や対都教委へのとりくみに参加してきました。免職は阻止したものの、この3月には、停職6月を含む不当処分が強行されました。こうした中、墨田でも分会では、抵抗のとりくみを続けています。私たちは、天皇を要とした国家主義に対する闘い、管理体制強化に反対する闘い、子どもたち・保護者・区民・教職員の思想・信条・良心・信教の自由を守る闘いとして、「日の丸・君が代」の強制にあくまでも反対してとりくみをすすめます。

4.都教委は、「人事考課制度」の実施=成績主義による管理体制強化を露骨にすすめています。査定昇給制度が導入されて以来、「定昇」に業績評価が反映させられることに対し、@「昇給延伸者」を出さないとりくみ、A「抜擢昇給」をさせないとりくみを強くすすめました。多くの分会で「抜擢昇給」阻止の校長交渉がとりくまれましたが、結果については不満が残るものとなりました。その後、業績評価に対し、「開示・説明」を校長に要求し、さらに、「苦情申し立て」を行い、あくまでも不当な業績評価を許さないとりくみが続けられました。こうした一連のとりくみは、管理職に対し一定の圧力になっています。成績主義は私たち一人ひとりの労働条件を異なるものにし、個々を分断・孤立させ、労働組合を機能させなくするねらいをももっています。職場での「共働」を大切にし、成績主義に断固反対する立場を堅持し、とりくみを強化していきます。

5.東京都人事委員会は、勤務時間の短縮について、「1日当たり7時間45分、1週間当たり38時間45分とすることが適当」、「実施時期については、都民へのサービス低下を来さないことを見定めて決定することが必要」と、勧告ではなく報告(意見)の中で、導入には消極的な意見を述べました。これを受け、交渉では、都は導入に慎重な態度とり、「勤務時間1日当たり7時間45分の早期実施にむけてすみやかに協議に入る」との回答で妥結しました。早期は、4月1日の含みであったにもかかわらず、未だ勤務時間の短縮は具体化できていません。学校職場では、1日当たり勤務時間が15分短縮されても、休憩時間が45分から60分になれば、メリットはありません。あくまでも退勤時間が15分早くなり、実態として勤務時間が短縮になることを強く要求して、交渉を強化していきます。

6.都教委は、上意下達による学校教育の権力統制を徹底することを企図して、「主幹」に加えて新たに「主任教諭」職の設置を一昨年強行決定しました。しかし、「主任教諭」職の給料表を勧告させなかったことにより、「主任教諭」職の導入を阻止することができました。昨年度も引き続き、教育関係7組合として、「主任教諭」職の給料表を勧告させない対都闘争がとりくまれたものの、2009年度から「主任教諭」職の設置を阻止することはできませんでした。「主任教諭」職の導入は、「職責・能力・業績をより反映した給与制度」と一体となっています。早期のフラット化や賃金切り下げを行い、より高い賃金を得るには、「主任」、「主幹」になることを条件にした制度です。「この給与制度は、差別賃金制度」であり、許すことはできません。「主任教諭職選考試験」の受験は、組合員個人の判断に任せざるを得ませんでしたが、今後も上意下達による学校教育の権力統制強化にあくまでも反対し、新たな賃金の切り下げを許さないとりくみをすすめます。

7.私たちは20数年来、「ひとりの子も切りすてない教育」創造のスローガンを掲げ、その内実を確立することをめざし、同和、「障害」児、在日朝鮮・韓国人、中国帰国の子ども、外国人、男女平等、反戦平和等の教育についてさまざまな運動と実践を展開してきました。その中で、被差別の側に立ちきることを通じて、差別、選別の能力主義体制と対決する基本姿勢を学んできました。新自由主義に基づく差別・選別教育のさらなる再編や「違憲教育基本法」を具体化した「新指導要領」との実践的な対峙は、墨田教組の運動の根幹をなすものです。長年にわたり蓄積した教育実践を次世代に繋いでいくことがますます重要となっています。今年度は中学校の教科書採択がおこなわれます。「自由主義史観」派の企図を貫徹させないとりくみを行います。


8.私たちが、提起してきた種々の教育課題の中で、区教委は、同和教育を重要教育課題とする「見解」をまとめ、全校にその推進を強く呼びかけています。また、在日朝鮮・韓国人や外国人教育についての「教育指針」を出し、教職員向け学習資料も改定版を作成し各学校に配布しました。「障害」児教育については「親の選択権尊重」を基本に、行事やケースにより介助者をつけています。堤小学校には日本語学級が設置され、また、昨年度からは、主に中学生を対象とした「すみだ国際学習センター」の設置、錦糸小学校・柳島小学校に教員が加配され、様々な国から来た子どもたちに「学習を保障していく」環境が整備されつつあります。区教委は男女混合名簿の導入を指示し、混合名簿の意義を表明しています。これらは、私たちが当事者と連帯し種々のとりくみ・実践を進めてきた結果です。後退を許さず、さらに豊かにするとりくみを強化します。

9.私たちは数々の困難の中、墨田における教職員組合の機能と責任を果たしてきました。それができているのは、組合総体として自立的・原則的に闘う伝統と態勢があり、教育現場において、また教育課題の推進においても歴史的・現実的に一定の位置を占めてきているからです。日常的に生起する教育条件、労働条件など職場におけるさまざまな問題(管理職の資質、姿勢、言動も含め)については、その都度問題化し、問題によってはその解決を区教委に要求し交渉するとりくみも続けてきています。近年では、「婦人科検診」の改善、今年度からは、安全衛生委員会を設置させることができました。このことは、職場に根差して解決に当たる作風が基盤にあるからです。今、こうした墨田教組の伝統、態勢、作風を堅持していくことが重要な課題です。

10.墨田教組なくば墨田の教職員の権利を含む労働条件も教育条件もさらに悪化の一途をたどるでしょう。また、私たちを中心に進められてきた先進的な教育運動、実践もしぼんでいかざるを得ないでしょう。それらは墨田の教職員にとって、墨田の子どもにとって、墨田の教育にとってきわめて不幸なことです。今後も退職による組織人員減は避けられません。組織の拡大が急務の課題としてあります。
  近年、新採や新採2年目の教員も含め病気休暇や退職が目立ちます。組合が相談を受け、そのような事態にならずに済んだケースも現実にあります。組織を拡大するためにも、教職員組合としての機能と責任を職場で、墨田で確実に果たすとりくみをすすめます。


U.運動の基調

 墨田教組は、60年の長きにわたって、墨田の地に在ってさまざまな闘いを展開してきました。この闘い・とりくみの歴史を通じて、墨田教組は独自の路線を築き上げてきました。それは、労働組合として自立性・原則性に基づいて闘うこと、「ひとりの子も切りすてない教育」のスローガンに象徴される教育運動の二つに集約されます。私たちは、今後もこの路線を堅持します。

自立性と原則性
 墨田教組は、いかなる権力からも、いかなる政治党派からも、いかなる組織からも自立し、自らの言葉で語り、考え、討議し、方針を立て、闘い、行動してきました。またその際、労働者、労働組合としての原則性を中軸に据えてきました。そうした姿勢とそれに基づく闘いによって教職員労働組合としての機能と責任を、私たちは果たし続けてきています。教職員組合の機能と責任とは、組合員の利益を守り、また、墨田における教職員全体の権利・利益を守るために闘うことです。つまり、不当なこと、問題あることには、必ず声をあげ、その不当性や問題点を明確にして、校長や教育委員会、政府に抗議し、交渉し、考え方・方針・態度・具体的施策を撤回させたり、改善させたり、予算化させたり、歯止めをかけたりすることです。

教育運動の推進
 同時に、私たちは、教育課題・教育運動の推進に当たっても先駆的に課題を提起し、具体的に実践をすすめる等、地道にとりくみ、その前進をはかってきました。私たちは、20数年にわたり、教育運動の理念として「ひとりの子も切りすてない教育」のスローガンを掲げ、その内実を確立することをめざし、同和、「障害」児、在日朝鮮・韓国人、中国帰国の子ども、外国人、男女平等、反戦平和等の教育についてさまざまな提起を行い、また具体的な運動と実践を展開してきました。その結果、これらの教育課題は墨田における重要な課題として区教委はもとより、多くの教職員に意識、認識され、さまざまな実践的展開がなされるにいたっています。この面でも私たちは、教職員組合としての機能と責任を果たしてきました。

墨田の教育に重要な位置占める墨田教組
 こうした中で、墨田教組は墨田の教育において重要な位置、地位を占めています。確固たる存在としてあります。私たちは今後も、教職員組合としての機能と責任を果たし続け、墨田の教育の中で確固たる位置を占め続けていきます。

すべての闘いは歴史を持ち生きている
 墨田教組の60年にわたる歴史の中で、墨田教組はさまざまな課題を担い、闘い続けてきました。それぞれの闘いは、だれに言われたのでもなく、私たちの課題、闘いとして意識し、自らの討議の中で独自的な方針、戦術を決定し、とりくんできたものです。「主任」制との闘いにせよ、強制研修体制反対のとりくみにせよ、指導要領との実践的対決の問題にせよ、「日の丸・君が代」反対の闘い、職員会議を中軸に職場の民主化を図り、その機能を充実させる闘いにせよ、あるいは「特昇」問題にせよ、「強制異動」反対の闘いにせよ、「人事考課制度」、「勤務時間」、「教科書採択」等の問題にせよ、墨田教組はどこよりも早く、それらの問題の重大性に着目し、どこよりも早く問題を提起し、具体的とりくみを進めました。独自的な、息の長いとりくみを続けてきました。どの闘いも数十年にわたる闘いの歴史を持ち、いまなお生きた闘いとして現にあります。
 墨田教組は60年にわたって作り上げてきた思想と態勢を守り続け、確立してきた基本的姿勢を堅持しつつ、しなやかに、したたかに、かつおおらかなる気概をもって2009年度も進んでいきます。



スローガン


・反戦・反核・反差別・護憲!
  憲法改悪・改悪教育基本法の実体化を許すな!
  自衛隊の海外派兵反対!
  メディアが煽る「拉致」問題を口実にした北朝鮮攻撃反対!
  安保廃棄・基地撤去!  在日米軍の再編・強化反対!
・排外主義に抗し、子ども・生活・地域にせまる民主教育創造!
・国家主義教育反対! 日の丸・君が代の強制を許さない闘いを!
・歴史修正主義による歴史教育を許すな!
・主幹・主任教員設置による、教職員の分断反対!
・「OJTガイドライン」反対! 
・人事考課制度・成績率導入拡大反対! 差別賃金制度反対! 
・異動要綱撤回、「希望と承諾」原則の再確立をめざそう!
・子どもと教師にゆとりある毎日を!
・ストを基軸に闘う労働者連帯を強め、労働条件・生活・権利の向上を!  
・自立して闘う地域拠点として、組織を拡大・強化しよう!