スカイツリーの見える風景 業平二丁目交差点  2010.1


週刊墨教組 No.1585         2010.3.17

墨田教組は 学校五日制・完全週休二日制の破壊に 反対する

 各学校では、来年度の教育課程の編成が行われています。近隣の区では、区で統一して年間何日か土曜日に授業を実施する区もあります。墨田区内では、「授業時数確保」を理由に「土曜日に授業を実施する」ことを決めた学校もあります。
 私たち労働者の強い要求で週四〇時間労働が実現できました。そして、教員にも完全週休二日制が導入されました。完全週休二日制を教員数を増やさずに実現するには、学校五日制の導入がベターな方法でした。学校五日制と私たちの完全週休二日制は一体となっています。いかなる理由であっても、学校五日制を壊すことは、私たちの完全週休二日制を壊すことになります。「学力低下」→「授業数増」→「授業数確保」→「土曜日授業」は、私たち教員の完全週休二日制の破壊に行き着くものであり、墨田教組はあくまでも反対します。

無責任な都教委通知

 都教委は、一月一四日付け「小・中学校における土曜日の授業の実施に係る留意点について(通知)」を、組合・地教委に事前に協議することもなく、報道発表しました。その日の夕刊や夕方のニュースは、東京においては土曜日に月二回授業がなされるかのような印象を醸し出していました。いかにもポピュリストらしいやり方でした。
 都教委通知はまず、無責任です。「各学校においては、学校週五日制の趣旨を生かした教育活動が展開されているところですが」と言いつつ、この通知を出したのは、「土曜日に教育課程に位置付けられた授業の実施を求める学校が多いことから」だと、土曜日授業の責任を各学校にかぶせています。どの程度の学校がどのような理由で、またどのような内容で土曜日に授業をしたいと言っているのか、また、それは妥当なのかという分析を一切省いています。現状のマイナス面を恣意的に述べ立て、ただひたすら、学校五日制の悪口を言うという体のものです。
 「通知」を読むと、時間数が足りないから土曜に授業を行うのだということは、一切出てきません。「確かな学力の定着を図る授業」の言葉がそうかと思わされますが、あくまで「授業の公開」が目的です。土曜に行う授業は「確かな学力の定着を図る授業」で、平日の授業はそうではないということはありえません。そもそも「確かな学力の定着を図」らない「授業」などというものはありえないからです。
 通知では、土曜に授業を行うのは、次の内容に限られるのです。
@授業の公開 
A道徳授業地区公開講座やセーフティ教室 
B保護者や地域住民等をゲストティーチャーに招いての授業
 いわば「イベント授業」です。それも、これまで都教委が強制して来たものばかりです。強制されてきた「イベント授業」の土曜日をいくら増やしても、「留意点」の言う「授業時数確保」はできません。そのことを都教委もわかっているから、「通知」には「授業時数確保」という言葉を入れられなかったのでしょう。

歯車を逆回転させてはならない
 土曜日は日曜日とともに「週休日」です。週休日(労基法上の休日)は一定期間の労働によって蓄積された心身の疲労を回復させるために労働から解放される日のことであり、私たちが労働し生活していく上で非常に大切なものです。だから、週休日に正規の授業を実施することは原則として想定されていません。
 都教委通知が「各月二回を上限とする」などするのは、一体何を根拠にしているのか不明です。週五日制完全実施の前に隔週土曜が休みになったとき、土曜出勤の分を夏休みに「まとめ取り」したことを思い出しているのでしょうか。今は完全週五日制です。週休一日から週休二日に移行していくときにまだ条件が整わず、止むを得ず行っていたのです。二〇〇二年からは完全学校週五日制となり、いわゆる「まとめ取り」方式は廃止され、教員についても週休二日制が適用されているのを忘れてはなりません。月に二回も週休日に勤務をさせることは、これを否定することになります。
 歯車を逆回転させてはなりません。



「全国学力・学習状況調査」
 実施日・実施形態・処理方法など、「活用」の仕方は各校で決める。


 三月十七日(水)、墨田教組三役は、庶務課長・学務課長・指導室長・教育研究所長らから、二〇一〇年度予算要求に対する回答を受け取りました。その席上で、「抽出調査対象候補校以外」の「全国学力・学習状況調査への対応」について確認を行いました。

 その内容は 次の三点です。 
 @ 区教委からは、問題用紙を配布する。各学校では「やるやらない」を含め、実体に   応じた活用を決める。
 A 後日、各学校における活用方針について調査を実施する。
 B 実施する学校は、四月二〇日以降に実施する。(抽出校は四月二〇日実施)
  
 区教委は、「『平成二二年度全国学力・学習状況調査への対応について』(依頼)」の文章を校長宛に出しています。この文章は「依頼」です。ですから、「実体に応じた活用をお願いします。」となっています。抽出校以外の学校では、「やるやらない」を含め決めればいいことです。「四月二〇日に必ず実施しなければならない」ことではありません。実施の形式が「宿題」になってもよいのです。このようにトーンが下がったのは、実施に関する予算が着かなかったからと考えられます。実施するにしても、区から採点費の予算措置はありません。また、「B」問題には採点基準は明らかにされてはいません。抽出校以外の学校で、「『区教委は、四月二〇日に必ず実施しろ』旨のことを指示している」と校長が言っているなら、大きなマチガイです。



労働安全衛生体制を確立し、安全で快適な職場環境を!

 組合からの強い要求に応え、また「文科省による通達『労働安全衛生法等の一部を改正する法律等の施行について』を受けて、墨田区教委は今年度から「学校安全衛生委員会」を設置し、諸事業を行ってきました。二月一八日には、緑小学校を「職場巡視」しました。その内容は、@職場環境の点検、点検項目は資料1参照 A緑小全教員を対象にした、秋元産業医による「メンタルヘルス」を主にした講演と自己診断です。今年度は委員会を七月から始めたこともあり、一校だけの職場巡視になりました。来年度は四月から事業を具体化できることから、複数校への職場巡視を実施する方向で委員会では検討しています。緑小での職場点検項目を参考に、「安全に健康に働くため」、各職場でも項目チェックを行ってみてください。

職場環境の改善

 区教委・校長には民事上の「安全健康配慮義務」が課せられています。緑小学校は、全面的に建て直しが行われ、施設・設備が比較的新しい校舎です。また、管理職の配慮もあり、産業医による改善項目は一項目だけでした。(資料2)@廊下・階段には、ほとんど物が置いてなく、安全に歩行ができます。ロッカーや大型植木が廊下や踊り場に置いてあり、緊急時に安全に歩行ができない職場もあります。Aパソコン等の機器の配線が混雑していたことが改善指摘されました。職員室の床上電気配線がカバーされてない、カバーされていても一部破損していて危険な状態で放置されている職場もあります。B空調の吹き出し口の風に直にあたって仕事をしているようなことはありません。座席の直近後ろにストーブがあり、熱風が直に当たる、クーラーの冷風が直に当たる職場もあります。室温が快適に保たれていないのです。C机の下に足が入れ込めないくらいの書類等を置くことはない。机の下に足が入りにくく、姿勢を悪くしたまま仕事をすることはありませんか。悪い姿勢で仕事をせざるを得ない環境は、改善対象です。その他、産業医から改善指摘を受ける項目を多々抱えている職場もあり得ます。
 学校職場における教職員の労働安全衛生活動は、最も遅れをとっています。労働者の安全と健康に関する事業者責任については労働安全衛生法に規定があります。私たちもその規定の対象です。労働安全衛生法は、刑事罰を伴う法律です。
職場にいる私たちこそが、「快適で安全な職場」を創っていくのです。改善要望を校長に出していきましょう。

   学校職場安全衛生チェックリスト
チェックポイント
校舎内
□ロッカー、棚が固定されている。(地震対策など)
□電気配線、コンセント等が安全に管理されている。
□執務室内の段差につまづき防止が施されている。
□通行に支障がない程度の通路が確保されている。
□救急箱が常備され、所在・使用方法が周知されている。
□室温が快適に保たれている。(調整ができる)
□机・イスの破損・ぐらつきがない。

VDT作業
□VDT作業時の照度が適切である。(明るすぎず暗すぎず)
□VDT作業時、ディスプレイに差し込む光の反射防止対策がなされている。

共用設備
□階段・廊下が安全に歩行できる。
□トイレが清潔に保たれている。
□非常扉・非常口の付近に避難時に障害となるものを置いていない。
□手洗い場・給湯室が清潔で、換気も十分である。
□消火栓・消火器が、誰でも緊急時に使用できる状態になっている。

受動喫煙対策
□受動喫煙対策が十分になされている。(校舎内禁煙が徹底されている)
□喫煙場所が隔離されている。

健康管理等
□ストレス対策や腰痛予防などの情報が周知されている。
□健康診断等の積極的な受診がされている。診断結果が適切に保管されている。




週刊墨教組 No.1584         2010.2.24

墨田区教委二〇一〇年度予算案における主要事業
学校ICT化基盤整備 三億四二四〇万円 一億九三五一万円増
小学校英語活動の推進 予算縮減
  放課後学習クラブの実施
 校舎・体育館の耐震化


 墨田区の二〇一〇年度予算案における教育委員会の主要事業に関し、二月一〇日、区教委から説明を受け、その後若干の意見交換を行いました。主要事業に関 するプレス発表部分は資料の通りです。プレス発表部分以外にも、既定事業の予算増が明らかにされています。「放課後学習クラブ」「学校ICT化」・「小学校英語活動の推進」・「学力向上『新すみだプラン』の推進」・「国の学力テスト実施」などのように、事業の具体化にあたってかなり問題の多いものが、歯止めが利かないまま進行しています。今後、監視と是正を求めていきます。

学校のICT化の推進 混乱は必至

 区では、二〇〇九年六月当初の予定を大幅に前倒しして、小学校でも二〇一〇年四月「本格稼動」を指示しています。まず第一に、「仕事のやり方の変更は徐々に」であるべきなのに、第二次研修会の後一カ月半後に「本格稼動」というのは無理な話です。また、各学校から声があげられているように、「致命的なエラー」が頻繁に出たり、さまざまな不具合、大変な不便がたくさん出ています。一年かけて、そのようなエラーをチェックしていくべきです。
 研修会では、「通知表は『学びの扉』によらなくても良い」「時数は計算してほしいが、毎時の内容(いわゆる「週案」)は来年度は『学びの扉』に書かなくてもいい」と説明されています。台帳系と時数計算を「学びの扉」でやりたいというのが区教委の考えのようです。台帳系とは、学校日誌(副校長がつけているもの)・保健日誌(日計表・出席簿・疾病異常・・・)・要録のことです。また、将来的には電子的なものを「公簿」とする予定はあるが、当面は「プリントアウトしたもの」を「公簿とする」となります。つまり、「学びの扉」・パソコンの中に「公簿の内容」が入っていなくてもかまわないのです。
 児童生徒の個人データ欄には、必要のない部分・項目があります。また、プライバシー侵害の内容が含まれており、そのようなものがあること自体が人権上極めて問題です。速やかに削除すべきです。削除がないなら、各校でデータを入れるべきではありません。入れるなら児童生徒本人・保護者に、データ内容を知らせ、了解を得ることが必要です。
 来年度、そして来年度以降、各学校で、どこまで「学びの扉」で校務を処理することが妥当なのか、決めるのは私たちの「労働の仕方」と「学校ICT化の主旨」(資料1)です。私たちは、「主旨」に沿うものならば受け入れます。しかし、単なる管理強化のためのものであれば拒否します。強引な本稼動は混乱必至です。
 なお、区教委は、組合に対し、「出退勤」には使用しないこと明言しています。

校舎耐震化・改築等

 組合からも促進を強く要求してきた小中学校校舎等の耐震化については、「学校施設については、計画を前倒しし、統廃合の対象となっている一部の施設を除き、平成二三年度までに耐震化を完了させる」としています。
 向島中学校と鐘淵中学校の統合は、二〇〇七年度末計画では梅若小学校と堤小学校の統合と同じ二〇一一年度予定でしたが、その後、堤小学校跡地を新校とすることもあり、二〇一三年度統合になっています。

小学校英語活動の推進
   小学校五・六学年全児童、
  予算は削減

 今年度から、墨田区では、「平成二三年度の完全実施に向けて小学校第五学年及び第六学年を対象に時間数を拡大した区独自の英語活動を段階的に導入」し、来年度は授業数を年間三五時間再来年度は年間五〇から七〇時間とすることにしています。来年度、五・六年に一学級あたり三〇時間ALTを充てると、これまでの区教委文書には書かれています。しかし、大幅な予算削減(裏面表参照)により、ALTの時間が予定通り確保できるのか疑問です。ALTを確保できない場合、「英語活動」の指導がより大きく学級担任にかかってきます。そうならないように、区独自の英語活動の時数見直しも含めて、各校から強く要望を出しましょう。

「放課後学習クラブ」 
 「授業以外での学習時間に課題があり基礎学力に十分に身についていない児童・生徒の学習習慣の確立や学習内容の定着を図るため、地域人材を活用して放課後に学習教室を実施する区立小・中学校に対し、補助金の交付等による支援を行う」とすみだ教育研究所による事業内容説明がなされています。現在、緑小・三吾小で実施されている「放課後子ども教室」は、生涯学習課の事業ですので、一般教員の関与がないことは自明です。研究所所長は、「『放課後学習クラブ』への一般教員の関与はない」と説明しています。しかし、「放課後学習クラブ」の主催は学校です。この事業を実施するかは、各学校で決めることになります。事業内容趣旨から「土曜補習教室」の放課後版のようです。実施することになれば、一般教員が関与せざるを得ず、新たな仕事を負うことを恐れます。児童・生徒に対する直接指導は外部指導員があたるとしても、指導内容や運営方法、教材の準備や使用教室等一般教員が関与せざるを得ず、新たな仕事を負うことを恐れます。この事業所轄の所長が言明した「一般教員の関与はない」が厳守されるように、組合として監視していきます。

国の学力調査 希望校分の予算は0
  採点・データ処理等を私たちに押し付けるな

 来年度から国の学力調査は抽出調査になりましたが、墨田では区教委の強い要望で、抽出校以外の全校が「希望した」ことになっています。しかし、この希望分の予算は、計上されていません。
 その結果、仮に各学校でこれまで通りの厳正な「テスト」をしても、区で集めて統一した基準で「厳正に」採点することはできなくなり、データの解析もできない恐れが生じています。「希望」してしまったテスト用紙は、各学校に届けられるでしょう。無価値な仕事をこれ以上増やさないでください。強引にテストを実施するなら、採点等の作業は希望した校長がなすべきです。

平成22年度教育費 121億6648万円
 構成比 11.7%
平成21年度教育費 108億0371万円
 構成比 11.2%
  比較増減 13億6276万円増
 増減率 12.6%
【新規】
給合体育館の管理運営事業 約7億円
錦糸公園野球場整備事業  約6億円

資料1 昨年度予算のICT化主旨説明
「現在、小中学校の教職員は、日常の校務事務に追われ、児童・生徒に対する指導や教材研究等に十分に集中できる環境が整っていない。そこで、学校のICT(情報通信技術)化を推進し、教職員の校務事務負担を軽減させ、児童・生徒一人ひとりと向き合える時間を増やし、教育環境の向上を図る。」
 区のこの立場に変わりはありません


「君が代」処分にNo!
石原都政にもの言おう!
3.10都庁前
 アクション・アンサンブル
とき 2010年3月10日(水)
    午後4時半〜

ところ 都庁第二庁舎前
教育を強制から救い
  子どもによりそう教育の地平を

第29回 再び許すな東京大空襲
追悼碑巡り 江東・墨田
とき 2010年3月7日(日)
午前10時〜13時30分
 集合 午前10時
 菊川駅A3A4地上交差点
榎稲荷の立川地蔵尊・菊川橋夢違地蔵尊(橋本代志子さんお話)・重願寺のみまもり観音像・八百霊地蔵尊(老人会見守りに合流)・扇橋戦災地蔵尊・小松橋区民館(懇談)

週刊墨教組 No.1583         2010.2.17


反戦平和のとりくみを 東京大空襲をつたえよう
   特設授業と
   追悼碑めぐり・再び許すな東京大空襲


 今年もまた三月一〇日がやってきます。一九四五年三月一〇日、墨田・江東を中心とした東京下町は、米軍のB29による無差別絨毯爆撃で火の海と化し、一夜にして十一万五千人の尊い命が焼土に埋もれたのでした。東京大空襲は、広島・長崎の原爆とともに、戦争の悲惨さと非人間性を、平和と人間の命の尊さを教えてくれる大切な教材と言えるでしょう。下町の街かどに安置されたお地蔵さんや追悼碑に、花を供える方々も年々高齢化し、空襲の傷跡もほとんど無くなりました。しかし、私たちはあの「地獄の炎」を決して忘れません。
 「教育基本法」が改悪され憲法をも改悪されようとしています。敗戦から六五年、「戦争」とその反省が歴史のかなたに追いやられようとしている今日、「東京大空襲」を自ら学び、子どもたちへ語り継ぐことは、私たち教員の課題と責務です

いかなる口実があろうとも
  「殺す」という行為を否定する
 日米安保に基づいて、沖縄に驚くほどの軍隊と施設が置かれています。かつてここからはベトナムに多くの兵員や兵器を送り込まれ、また「共産圏」との最前線と位置づけられてきました。冷戦構造が終わったとはいえ、新たな戦争をアジアで繰り広げるアメリカは、沖縄という「安価な」軍事基地を手放そうとはせず、日本を巻き込んで再編強化をしようとしています。いうまでもなく、辺野古に建設しようとしている基地は、そのような軍事基地であり、人を傷つけ人を殺し、殺され、傷つけられるという現実と切り離すことはできません。
 「○○国の脅威」や「テロとの戦い」など、どのような理由をつけようとも、それは戦争の言い訳にもなりません。まして、「アメリカと仲良く」の理由など言語道断です。日本のアジア侵略も「正義の戦争」でした。私たちは、いかなる口実があろうとも「殺す」という行為を否定します。

教え子を再び戦場に送らない
 なによりも、まず、平和を。
 子どもは「お国のため」にあるのではありません。
 私たちの先達は、戦後、日教組を結成しました。そして、平和を希求して、「教え子を再び戦場に送るな」という不滅のスローガンが生まれました。これからもその精神を受け継がなければなりません。自分たちの職場で、『二度と戦争をさせない』とりくみを進めなければなりません。

組織的な平和教育のとりくみ
 墨田教組は、反戦平和教育の重要な課題として位置づけ組織的にとりくみを進めてきました。一九八八年からは、特に「三月十日」をひとつの節目に設定し、墨田の全学校で反戦平和教育の実践が行われることをめざし、墨田教組として統一的にとりくみを進めてきました。三月十日の前後には、特設授業や全校児童集会等々様々な形で、平和教育のとりくみが各学校で実践されています。このとりくみは、東京大空襲で壊滅的被害を受けた墨田におけるという意味で、地域に根ざした教育の一環でもあります。
 私たちは、これらの立場に立って、今年も三月十日を節目とした平和教育特設授業のとりくみを進めます。

 第29回 再び許すな東京大空襲
追悼碑巡り 江東・墨田

とき 2010年3月7日(日)

午前10時〜13時30分
 集合 午前10時 菊川駅A3A4地上交差点
追悼碑巡り順
榎稲荷の立川地蔵尊・
菊川橋夢違地蔵尊(橋本代志子さんお話)・
重願時のみまもり観音像・
八百霊地蔵尊(老人会見守りに合流)・
扇橋戦災地蔵尊・小松橋区民館(懇談)




反安保
 普天間基地はいらない! 
 辺野古新基地建設反対!
 全ての米軍基地の撤去!


 一月三〇日、日比谷野外音楽堂において、「普天間基地はいらない 辺野古・新基地を許さない全国集会」が開催された。一〇〇人の沖縄上京団を代表して山城博治・沖縄平和運動センター事務局長から、「われわれは、名護市長選挙で自民党市政を倒した。いま沖縄には普天間基地撤去・辺野古新基地建設の反対の炎が燃えさかっている。」との力強く報告がなされた。会場を埋めつくした六〇〇〇名を越える労働者・市民・学生等参加者は、熱烈な拍手でこの報告に応えた。名護市長選挙勝利により、辺野古新基地建設反対の闘いは新たな局面を迎えたものの、米軍基地の縮小・撤去を実現させるためには全国的規模での運動拡大が必要です。米軍基地を存在させている根源は日米安保条約です。墨田教組は、反戦反基地・反安保、改憲阻止の立場から、今後も積極的にさまざまなとりくみに参加していきます。

集会決議
 1996年日米両政府は、宜野湾市の1/4を占める普天間基地の全面返還を合意しました。普天間基地は宜野湾市の中心部にあり、滑走路延長上のクリアゾーン(危険性が高い土地利用禁止区域)が市街地に張り出し、そこには保育園や小学校もあり宜野湾市民約3600人が生活しています。5年前には基地に隣接する沖縄国際大学に米軍ヘリコプターが墜落しました。
 現在も米軍ヘリが頻繁に飛び交う普天間基地は一刻も早く無条件に返還されるべきです。
 しかし、13年経った今も返還は実現していません。その理由は、普天間基地返還の見返りに米国は辺野古新基地建設を要求し、これまでの日本政府もそれを容認してきたからに他なりません。この背景には、新基地建設に絡み1兆円ともいわれる基地建設事業の利権が見え隠れしています。
 新基地建設で沖縄は豊かになるどころか、危険と生活破壊を増幅し、ジュゴンが生息するたぐいまれなる自然環境を失うことになります。
 辺野古がある名護市民は、24日の市長選挙で、新基地建設に反対する立場を明確にしました。全国の市民、労働者はこの民意を守るため闘わなければなりません。
 のどかな島沖縄はかつて戦場となり、米軍た占領され、基地がつくられ、今も危険と基地被害にさらされる生活を余儀なくされています。
 日米安保50年、冷戦終結20年を迎える今日、米軍再編が進む中、旧来の核・軍事力を背景とした抑止力に頼る安全保障のあり方が根本的に問われています。日米地位協定や思いやり予算の根本的な見直し、米軍被害の徹底検証も取り組まなければなりません。
 安全保障に特化した日米関係を見直し、鳩山連立政権の東アジアの平和と共生に向けた基本政策を強めるべきです。
 鳩山首相は沖縄県民の痛みを受け止め基地問題の解決を図ろうとしています。これを孤立させることなく、普天間基地返還、辺野古・新基地建設反対、沖縄をはじめとする全国の米軍基地の縮小・撤去に向けより大きな闘いを目指そうではありませんか。 右決議します。

チェンジ 日米関係!! 普天間基地はいらない 
辺野古・新基地建設を許さない1・30全国集会参加者一同





週刊墨教組 No.1582         2010.1.27


夏季プールの変質は認められない
       夏季プール外部指導員謝礼問題


 昨年末の校長会で、「夏季プール外部指導員への『謝礼』(現行一日三時間以上の指導で八千円)を、一時間当たり千円にしたい」と、区教委から話がなされました。現行の制度は一〇年前、区教委と組合(都教組墨田支部と墨田教組)との間で合意がなされたものです。
 その時、区教委から出されたのが「夏季休業期間中における学校プールの利用について」(裏面資料)です。以後、この内容でずっと夏季プールは円滑に実施されてきました。夏季プール指導上の教員の責任、夏季休業中の私たちの勤務をめぐる極めて重要な問題だからこそ、現在の形をとるにも、組合との話し合いがあり、合意のもとにこの文書が出されたのです。
 しかし、今回の区教委の「考え」は、その経過を無視し、生徒・児童の希望制による課外活動に対する教員の責任を拡大し、教員の夏季休業中における勤務のあり方をも変える、極めて問題のあるものです。

教員には手当てが出ていた
 一〇年前まで、学校で夏季プールを実施していた区市町村では、「夏季プールは本来社会教育分野のものであって、学校教育ではない。したがって、教員の本務ではない」という位置づけがされていました。各教委は指導員等雇用の予算を組み、教員が関わる場合には有給職免として、教員にも手当てが支払われてきたのです。
 ところが、都教委は、「学校教育に位置づけるか社会教育に位置づけるか実施形態を明確にして行え」との指導(指示)を行いました。その本意は、夏季プールを学校教育に位置づけさせ、教員に「本務」として指導に当たらせ、教員にも支給されていた手当てを廃止させることにありました。経費を削減し、教員に責任を押し付けたのです。この都教委の手法はまったく今も(「土曜日授業」!)変わっていません。

夏季プールは教員の「本務」ではない
 外部指導員への謝礼は、夏季プールの位置づけと 不可分のもの

 都教委の「指導」を受け、多くの市区町村で夏季プールは「学校行事」と位置づけられました。
 しかし墨田では、社会教育への全面移行=教員は一切手伝わないという選択肢も配置しながら、両組合は区教委と協議をねばりづよく行いました。その結果、教員への手当て支給はなくなりましたが、夏季プールを、学校行事に準ずる=「学校行事ではない」と位置づけ、社会教育への移行を明確に打ち出す中で、現在の形で行われてきました。
 教員が中心になって行うものではないから、外部指導員を雇用して実施しているのです。現行では教員は「管理者(オカバン)」となっている場合が多いようです。指導員は、水泳指導に関わって子どもに直接責任を負う立場になります。判例の多くでは、事故があった場合、第一に「責任(瑕疵があったか)」を追及されるのは指導員です。また、損害賠償を求められるのも指導員です。このように指導員の責任は重いのです。
 ですから、指導員に「講師」と同様の謝礼(それまでの謝礼額以上の額)を支払うことになったのです。外部指導員への謝礼は、夏季プールの位置付けと不可分のものとなっているのです。

指導員が確保できなくなる
 もしも、区教委の「考え」のように、「謝礼」が「賃金」として実質半額になれば、指導力や実績のある外部指導員を確保することは今以上に難しくなることが予想されます。
 現在、指導員をお願いして柔軟に指導体制を組めているのは、墨水連をはじめとする協力団体があるからです。墨水連の協力で、指導員も紹介してもらい、夏季プールが実施できている学校も多くあります。学校のためだと、現在まで協力してくれている方がいることも事実です。
 謝礼の実質半額化はこれまでの長い歴史を無視したものです。指導員の確保は今以上に難しくなります。

夏季プールは授業ではない
 夏季プールは授業ではありません。課外活動です。「授業で水泳指導をやっているんだから夏だって同じだろう・・・」というのは、経過と実態を理解していない人の言うことです。この論理でいけば、中学校では体育の教員が指導員をやれということになってしまいます。
 校長の中には、「夏季プールは教員がやるのが当然だ」と平然とうそぶく方もいます。先に述べたように、他区ではそうなっているところもあります。この考えは、教員への手当て支給を止めさせる、一〇年前の都教委の論理と同じです。「常識の基準」が違うのです。墨田の常識は、一〇年前からの区教委文書です。教員がやるのが当然だというのは、独断に過ぎません。まずそう考える校長自身が率先して指導員をやればいいのです。
 墨田では、例えば移動教室や野外体験活動などの学校行事も、夏季休業中に行うことを、教委として勧めていません。希望参加制の夏季プールは課外活動です。「年間行事予定」に載せているのは、「児童生徒、教員等の事故への対応」のためです。

夏の勤務態様の変更=労働強化
 今回の区教委の「考え」は私たちの夏の勤務態様を大幅に改悪するものです。指導力や実績のある外部指導員が確保できなければ、教員が指導員として、夏季プールの中心とならざるをえません。さらには、外部指導員を確保することすらできず、指導員・管理員とも教員が負うことも考えられます。夏季プールの全ての責任を教員が追うことになります。NOです。
 夏季プールは、現行の形を維持して、労働強化を阻止しましょう。

資料

10墨教学据第822号  平成11年4月5月
各学校長様           墨田区教育委員会  教育長 近藤 舜二

夏季休業期間中における学校プールの利用について

 このことについては、これまで児童・生徒の泳力伸長や健康の保持増進のために、各学校に学校プール指導委員会を設置して実施してきたところです。
 しかしながら、これまでの社会教育的な形態では、参加する児童・生徒と指導に当たる教員・指導員それぞれの事故に対する補償や主催団体の責任性などが必ずしも十分に整備されていなかった面もありました。
 また、東京都教育委員会の平成10年2月24日付の通知でも、夏季休業期間中の学校プールについての考え方とガイドラインが示されております。
 そこで本区におきましても、これまでの課題を解決するために、平成11年度から当分の間は学校の教育活動の一環として実施することと致します。各学校におきましては、児童・生徒にとっての必要度や保護者からの要望、さらには地域や学校の実情やこれまでの実績等を考慮のうえ、下記の基準により、各学校が主体的に計画し実施するようお願い致します。
 なお、夏季休業期間中の学校プールの将来的な在り方については、中央教育審議会の答申などを踏まえると、社会教育に位置付けられていくものと考えられ、学校の教育活動の一環として実施する間に、この方向で見直し検討を行います。具体的には、現在、区教育委員会では「墨田教育指針策定委員会」を設定して検討作業に入っており、この中で平成12年度末までに一定のビジョンを示す予定としております。

1 基本的な位置付け
○学校の教育活動の一環であり、特別活動の「学校行事」に準ずる活動とする。
 従って、各学校の教育方針に基づき指導目標や内容、実施日数、実施時期、時間配置、教員や指導員の配置態勢や従事内容について十分検討すること。
なお、小学校では児童の泳力や保護者・地域の要望を十分配慮するとともに、中学校では部活動や諸大会への参加の状況や生徒の泳力などにも配慮する。

2 指導態勢
○管理者、指導員あわせて4名を原則とする。
 指導員は救助法や水泳指導法に熟知した者が望ましいが、水泳部所属者、指導員経験者等もこれを認める。
  外部指導員は原則として各校2名配置するが、小規模校(小学校7学級以下、中学校8学級以下)については、3名まで外部指導員を配置できる。

3 指導日数
○15日を標準とする。
  上記「1 基本的な位置付け」や「2 指導態勢」を勘案して、学校の方針や実態を踏まえて計画する。

4 外部指導員の報償費
○1人1日3時間以上 8000円とする。
  報償費の請求は、あらかじめ学務課に外部指導員の配置計画を提出し、計画が承認された後に所要の前途金を申請する。夏季休業期間中の学校プール開始前に前途金として受領する。

5 事故への対応
○児童・生徒は日本体育・学校健康センター、教員は公務災害、外部指導員はスポーツ障害保険をそれぞれ適用する。

6 児童・生徒の参加
○当該校の児童・生徒を対象にし、自由参加とする。
  参加する児童・生徒については、あらかじめ希望を募り、参加者名と人教を把握しておく。

7 心身に障害をもつ児童・生徒への指導
○現行のとおり、介助員を配置する。

8 その他
○学校のプールは、他の施設同様積極的に開放する。
  プールの有効活用を図るため、PTA、町会、町会子供会などの社会教育団体へのプール開放やプール活用を積極的に進めるようにする。

週刊墨教組 No.1581         2010.1.22


 普天間基地はいらない 新基地建設反対!
  全ての米軍基地の撤去!
  日米安保条約破棄に向けた闘いへ
 一・三〇集会へ参加しよう!


 日米安保条約改定から五〇年の今年、米軍普天間基地の「移設」をきっかけに、反戦反基地・反安保の闘いが、沖縄では力強く展開されています。周知の通り、先の衆議院選挙では、沖縄四選挙区すべて反自民の候補が勝利しました。日米安保条約の下、歴代自民党政府がアメリカに隷従してすすめてきた米軍基地の固定化に、沖縄県民は明確に「米軍基地はいらない」意志を示したのです。しかし、沖縄現地に比して本土での運動は極めて弱い状態が続いています。米軍基地の縮小・撤去を実現するために必要なことは、全国から湧き上がる運動の力です。平和フォーラムは「普天間基地はいらない、新基地建設を許さない」一二・一五緊急集会を開催し、沖縄に連帯して、首都東京でも闘いを強化していくことを提起し、一・三〇集会を圧倒的な人数の結集で成功させていくことを集会参加者全員で確認しました。墨田教組は、この呼びかけに応え、反戦反基地・反安保、改憲阻止の立場から集会へ積極的に参加します。

公約違反は許さない
 民・社・国は、「沖縄県民の負担軽減の観点から日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地の在り方についても見直し」の方向で臨むことで合意し、新政府を発足させた。「対等な日米関係」を公約し、「米国と交渉し直す」ことは、連立鳩山政権にとっては民意に支持されたものであり、前自民党政権からの路線転換は当然のことです。
 これに対し、メデイアは「日米関係の危機」と騒ぎ、連立政権に圧力をかけ、米国は、前自民党政権との「合意」の履行を求め、日本を、従前通り、「米国の意のままになる国」として、自発的に隷従するよう、「生意気なことを言うな」と恫喝をかけています。
 こうした中、鳩山政権は、結論を二〇一〇年五月まで先延ばしを図った。大衆運動の高揚により、結論があくまでも公約通り米軍基地の縮小・撤去の具体化という目に見える形で、六〇年に及ぶ対米従属を変化させるものとさせなければなりません。

反安保、改憲阻止
 日米安保条約では、「全土基地方式」により、日米政府代表による日米合同委員会がどこを基地として提供できるかを決めることができるため(地位協定二条)、国会承認なしで、日本全国どこにでも米軍へ基地を提供できることになっています。日本には、「米軍の大規模海外基地」の上位五つのうち四つ(横須賀、嘉手納、三沢、横田)が存在しています。今や、敗戦後の占領軍が、そのまま、基地費用の七割を日本が負担する形で、日本に駐留しているのです。米軍にとって、米軍を配備するうえで、最も安上がりの場所が日本なのです。
 日米安保条約は、そもそも東西冷戦を背景に「自由世界の防衛」という点で、暫定的なものとしてスタートしたのです。情勢が変われば、いつでも終了させることができる性格のものです。ベルリンの壁が崩れ、世界が冷戦後の時代に入って行った時点で日米安保条約は根本的に見直されるべきものでしたが、自民党政権は、それに逆行し、米軍の世界戦略に積極的に加担する形で、日米軍事同盟を強化し続けたのです。米国に隷従し、「ショウ・ザ・フラッグ」に呼応して、自・公政権はインド洋にイラクに自衛隊を派遣した。このことは、憲法を改悪し、日本を戦争ができる国へと変えることを視野にしたものでした。戦争好きのブッシュが、「イラク戦争は間違った情報に基づく戦争だった」と総括して辞めたが、自・公政権は、戦争への加担を何ら総括しなかった。自・公政権にとって自衛隊の派兵は、米国への隷従の証しであり、派兵そのものが目的であったからです。米軍基地の縮小・撤去の運動が、日米安保条約の見直し廃棄、憲法改悪阻止と一体のものであることは当然なのです。
 鳩山首相が「抑止力として米軍基地は必要」と言明していることは、在日米軍基地の固定化であり、米国との安保体制強化を意図したものと言えます。鳩山政権の限界を見極め、私達は、あくまでも反戦・反基地、反安保、改憲阻止の視点から沖縄の闘いに連帯していきます。



相変わらず不人気な管理職、主幹教諭選考
    都教委は謙虚になって反省すべき


 新規採用教諭選考の応募者があまりにも少なく、「東京都の教員に人気がない」ことで、東京都は昨年同様、全国ニュースになりました。また、今年度四月当初、小学校では、「管理職に欠員が生じれば、補充ができなくなる」とまで言われていました。
 平成二一年度、教育管理職選考、主幹教諭選考が発表されています。またまた、低倍率。(資料参照)全日制都立高校の受験競争倍率より低いのです。都立高校に合格することの方が難関?
 都教委は、受験資格を緩和し続けて「人材」確保を図ってきたのにこのありさまです。「職務遂行能力」が乏しい管理職がまたまた増えるのでしょうか。
 学校現場はまだまだ正常です。新自由主義路線=競争原理の徹底、成績主義による賃金差別を多くの教員が拒否しているのです。都教委のやり方を支持はしていないのです。
 都教委は謙虚になって反省すべきです。

第1回拡大委員会 2月5日 (金) P.5:30〜
場所 墨田教組会議室
・夏季プール問題
 ・「学校ICT化」をめぐる混乱と問題
 ・「土曜日授業」の問題
 ・反戦平和教育について
 ・人事考課制度に反対するとりくみ
・2010年度執行委員定数について

等、重要な議題がありますので、定刻にご参集ください。
 タクシーなど利用された場合は、領収証を受け取ってください。

2010年度 組合行事予定

組合総会 4月21日(水)
女性部交流会 5月26日(水)
教研集会 6月23日(水)
教研集会 10月27日(水)



週刊墨教組 No.1580         2010.1.8


すみだ春秋 38


水土への郷愁
    小野忠重の向島小梅(こんめ)


 昨年は小野忠重の生誕百年にあたり、町田市立国際版画美術館で、大規模な回顧展が開催された。
 展覧会の案内文には、つぎのような惹句がある。「東京下町に生まれ育った。やがて版画にたどり着き、市井のドラマを描いた。そして版の絵を徹底的に探求した。」
 小野忠重は、一九〇九年、本所小梅瓦町に生まれ、小梅尋常小学校を卒業している。
 一九三二年、小野は、版画の大衆化を目指して、藤牧義夫、柴秀夫らと〈新版画集団〉を結成し、本所小梅の自宅を発行所とする機関紙『新版画』を創刊している。

 小野は、『版画の青春』(形象社)のなかで、二十六歳で行方不明となった天才版画家藤牧義夫(前回参照)について、美しく悲しい回想を残している。二人は、「かなり長時間新版画集団展の会場に釘づけにな」った機会に話を交わし、藤牧も重い口をほどいていく。その時の様子を、小野はつづっている。
 「話題は、数年前に死んで、大形小形の遺作展示が行われている佐伯祐三にかわった。藤牧の木版独自な三角刀の動きに、ふと私は佐伯の線をみつけたせいだが、否定しない藤牧ながら、不充分な写真版で知ったキルヒナー、ディックスからコルヴィッツにおよぶドイツ表現派以降の感激を、ぽつりぽつり口にしていた。私と同じだったのだ。」
 「集団以前にプロレタリア美術運動に関係あった私は、生産労働の場だとか人間生活の場だとか、青くさい呼吸を彼にふきかけたが、彼は無口でうなずくだけで」あった。
 一九三五年六月二十五日から三日間、新版画集団の仲間たちが協力して、藤牧義夫個人展を開催した。その折、藤牧は会場で小野のプロフィールをスケッチしている。
 清廉・韜晦・含羞の小野忠重の風貌を、冴えざえとしてくきやかに伝えている。
 ほぼ二ヶ月後、藤牧は小野に別れを告げてのち、行方不明となったのだった。

 小野忠重の初期版画には、日々のくらしの身近にあった向島小梅の隅田公園を題材としたものがある。
 小梅小学校の隣りにある言問橋詰の小さなトンネル(図1)。リノカットの技法を追究しながら、枕橋を渡ってすぐの隅田公園の道のなだらかな勾配(図2)。言問橋の強固な橋台と青柳そよぐ墨堤に憩う人々(図3)。鉄と石の見事な造型の駒形橋(図4)。
 そして、「全版画作品目録」によると、最後の作品となった、はるかに首都高速六号線をのぞむ、うまや橋からの風景(図5)。
 小野忠重の身の中には、向島小梅という水土への郷愁が、終生、尽きることなく去来しつづけていたのだった。
(長谷川 政國)



週刊墨教組 No.1579         2009.12.9

都の「教育改革」NO!
 上意下達、成果主義がまかり通る学校NO!
 協力・共働を要とした職場


 二〇〇〇年四月から人事考課制度が教員にも強行導入され、二〇一〇年度で一〇年目になります。この制度は、「いじめや不登校、学級崩壊など課題が山積し、その解決には学校の活性化と教員の意欲や資質の向上が重要」とし、「教員のモラール(士気)向上のためには『業績評価』を給与・昇任・人事異動等、教員の人事管理一般に反映させるべきだ」、と都教委が結論づけて導入したものです。この制度がなくても、「いじめや不登校」等に直面している教員は、校長に指示されるまでもなく、子供と向かい合い、必死に解決に向けて努力してきています。個々の教員を競争に駆り立て、給与に差をつけ、校長の意に添わない教員を強制異動させる手法で、学校が抱えている課題が解決されてきたのでしょうか。教員のモラールが向上したのでしょうか。結果はNOです。人事効果制度導入以来、教員のモラールが低下していることが再三指摘されています。若年退職や定年前退職者の増加、「メンタルヘルス不調者」の増加は、教員が「生きるか死ぬか」まで追い詰められている現状を如実に表しています。東京都の教員に人気がなく、正規教員が足らない状況もこの結果の表れです。都教委は現状を直視し、総括すべきです。しかし、都教委は、今後も「東京都教員人材育成基本方針」(二〇〇八年一〇月)、「東京都公立学校教員研修体系の再編・整備にかかわる基本方針」(二〇〇九年二月)の具体化を図ってきます。
 各職場では、これから年度末反省に入ります。上意下達、成果主義がまかり通る学校ではなく、退職したくなる職場ではなく、教員が生き生きと自由闊達に子どもたちと共に授業等にとりくむことが保障される学校。協力・共働を要とした職場をつくるには、年度末反省も重要な場です。黙っていれば、学校は、職場はますます悪くなります。自分たちの職場を自分たちで創りましょう。


民間ではほとんどが失敗した「成果主義」

 「成果主義をやめたら社員も会社もハッピー」。これはある新聞の記事の見出しです。
 人事考課制度は、利益第一主義・金儲け主義の戦闘集団として企業を再編成するために一九九〇年代から日本企業にも導入されたものです。利益を確保・上昇させるにはコストを下げねばならず(その最大のものは人件費)そうした目的をももっていました。自己申告なる名のもとに、ノルマをあたかも自主的に設定したかの形をとりながら、実は、労働を質と時間の両面から強化しようとしたものです。働く者個々を競わせて評価し、処遇する業績評価制度は、働くものを限りなく孤立・分断させ働かせるものとなります。
 厚生労働省が発表した「二〇〇九年就労条件総合調査」によると基本給を決定する際に、「業績・成果」を重視するとした企業が四六・六%であり、一時は日本企業全体の八〇%が成果主義をとり入れていたことから比べれば、下落は甚だしいものです。
 「目先の利益にとらわれて長期的な仕事に手をつけない。目に見えないような仕事のプロセスは評価されないので同僚との相互のアドバイスや同僚の業務のカバーはしない。個人プレイーが横行し、チームワークがおろそかになる。職場がギスギスする。」など社員のモラールの低下と業績の悪化から、成果主義を見直した企業が増え続けているとのこと。日本企業の多くにとって、人事考課=成果主義は陳腐な過去のものとなっているのです。

上意下達体制の徹底に抗う 
 教育行政は、自らの組織を企画・運営部門とし、学校を実施部門と位置付け、上意下達により学校を徹底的にコントロールしようとするのが都の「教育改革」です。教育行政は
@「スタンダード」あるいは「ミッション」を設定し、
A設定した「スタンダード」等の達成状況の評価、
B達成度をめぐる競争の組織、
C達成度に応じた賞罰の実施
という四つの手法を駆使してコントロールを図るシステムです。都教委は、設定した「スタンダード」等の達成をより可能にするため、校長の権限を強化した。校長は設定された「スタンダード」等達成するため、副校長、主幹、主任、一般教諭にそれぞれ「自己申告」により自己設定させた形をとってノルマを決めさせ、その達成度の競争に組織化する。
 その結果、校長も含め達成度に応じて「一時金や本給に差をつける、昇任や異動等」賞罰が実行される。上意組織が下位組織を達成度をめぐる競争に組み入れ、成果のみを問う情け容赦の無い管理体制です。上意者は、下位者にノルマを課し、達成度アップを図る。「学力テスト」や「学校選択制」等は上意組織が設定した競争に学校を駆り立てる具です。異動を主とした一〇月の面接で、「あなたは人事構想に入っていない」と冷ややかに、情け容赦無く異動を強制した校長。本人の体調や家庭の事情を無視し、「あなたは異動させない」と自分の「成果」のために異動希望を封殺する校長。このままでは、こうした事例が頻繁に生じるでしょう。都教委が作成した「東京都教員人材育成基本方針」では、教員を六職層、教諭(基礎形成期)・教諭(伸長期)・主任(充実期)・主幹・副校長・校長に分類し、求められる能力や役割、育成方法を明示している。
 役割分担や分掌、学年運営方針など従来教員が話し合いで決めてきたことが否定されようとしています。学校運営に関し、特定の教員だけにしか意見を述べる機会が保障されなくなります。こうした状況を生じさせては、学校は崩壊します。民間で成果主義が失敗したように、いずれ都教委の主導している「教育改革」は誰も責任をとらずに破産するでしょう。「悪いことにはNO」と私たちは常に言います。私たちが学校をつくる、働きやすい職場をつくるのです。



卒業証書
 保護者からの申し出があれば西暦年号記載
ー卒業生の全保護者へ周知ー


 卒業証書の生年月日や発行年月日の年号記載にあたり、「元号」で表記するか、「西暦」で表記するかに関し、墨田区・墨田区教委の基本的な方針は、次の四点です。
1.元号使用が原則
2.保護者からの申し出があれば西暦記載が可能
3.外国籍の子どもについては、生年月日、発行年月日、氏名の表記について確認し、保護者からの希望があれば、その意志を尊重する。
4.このことについて、卒業生の全保護者に周知する。

 この方針は、思想信条の自由等の人権を尊重する立場、さまざまな価値観や文化を有する多様な人々と共生する墨田を築くという立場に基づいて明らかにされたものです。

人権尊重や国際理解は、具体的な実践が大切

 多くの小・中学校では、従来から各校ごとにお知らせや保護者会などで、当該児童・生徒や保護者に「西暦記載も可能である」ことを知らせてきました。
 区教委は、定例校長会で「卒業証書の元号使用について」墨田区・区教委の基本的な考え(上記四点)を例年明らかにしています
 人権尊重や国際理解教育は、具体的な実践こそが大切です。昨年度、保護者への周知がなされたか、疑わしい学校があります。「保護者への周知」がすべての学校でなされ、児童・生徒、保護者の意志が尊重されるとりくみを強めていきましょう。

2010年 子どもの権利条約カレンダー
 月毎に世界各国の子どもの写真
 墨田教組名入り  電話・ファックス番号入り
分会に1部ずつお届けしました。
分会で活用してください。
なお、ご希望の方には一部1000円でお分けします。

年末カンパにご協力を
「違憲教育基本法」実働化・憲法改悪阻止! 
反戦平和運動への協力支援!
争議組合支援!

  今年も一時金支給時にカンパを実施します。このカンパは、日教組、東京教組などの呼びかけにも応じて実施するものであり、権利擁護・反戦平和・護憲・生活擁護の闘いで、弾圧に屈せず闘い続ける人々・組織に対する支援・救援カンパとして使われます。

◆下町における反戦・平和運動への協力・支援として
★再び許すな東京大空襲 集会・追悼碑巡り賛助金
★沖縄の反基地闘争 -辺野古現地闘争支援-東部地区のとりくみ
◆都区内の争議組合に対する支援・救援のための資金(生活資金、年末手当、闘争費用、裁判費用など)として
★国労1047名解雇支援
★区内争議組合支援-すみだユニオン・墨田労組連支援
◆東部における人権を守る運動への協力・支援として
★日朝連帯集会  ★部落解放墨田区民共闘
◆東京教組「日の丸・君が代」強制処分撤回、人事委員会・裁判闘争支援カンパとして
★被処分者を支える会  
★都教委包囲・首都圏ネット賛助金・賛同金 
◆その他、
★国境なき医師団 ★アスベスト撤廃
★東京教組女性部夏のカンパ ★東京教組平和カンパ 
★広島長崎反戦反核集会 ★アイヌ民族の人権回復支援
★裁判員制度に反対する集会カンパ 


普天間基地はいらない
 新基地建設を許さない12・15緊急集会

 沖縄県では、11月8日に2万1000人が参加しての県内移設に反対する集会が開かれ、普天間基地の撤去と県内移設反対の大きな声があがっています。

1、日時 12月15日(火)18:30〜20:30
2、会場 星陵会館ホール
 東京都千代田区永田町2−16−2 電話03(3581)5650
 有楽町線・半蔵門線・南北線「永田町駅」千代田線「国会議事堂前駅」6番・徒歩3〜5分
3、内 容  沖縄からの訴え・国会情勢報告ほか
4、主 催  フォーラム平和・人権・環境

週刊墨教組 No.1578              2009.11.25

二〇〇九、賃金闘争 確定する
 最大の賃金引き下げ
 勤務時間短縮実現 一日七時間四五分勤務、
  学校現場は休憩時間四五分のまま、退勤時刻十五分繰り上げ実現
 年次有給休暇の時間休取得制限 教育職員等は従来通り


 〇九賃金確定闘争は、都当局が頑なに自らの主張に固執する中、年次有給休暇の時間休取得制限を重要課題として厳しい闘いになりました。
 「労働条件は労使合意で自主解決」の立場を双方が尊重する中、十一月十六日二一時四〇分から都労連委員長と都当局の交渉責任者である副知事が一時間四〇分という異例の長さで会談しました。
@年次有給休暇の取得単位の見直し、
A勤務時間の短縮、
B現業系職員の任用・メーデー職免の引き続き協議、
C義務教育等教員特別手当と「給料の調整額」の引き下げを四月に先送り、などの最終判断が副知事から示されました。その後、交渉で細部をつめ、一七日二時三五分、都労連は妥結することを確認しました。
 私たちにとっては、年次有給休暇の時間休取得制限について教育職員等は従来通り、勤務時間短縮=一日七時間四五分勤務実現、学校現場は休憩時間四五分のまま、退勤時刻十五分繰り上げ実現したとは言え、それらは、もともと、「理不尽な提案をされた」ものであり、それを押しもどしただけであるとも言えます。教員給与の大幅な引き下げは、基本的に反撃することはできませんでした。労働条件改悪はかろうじて押しもどしたとはいえ、旧自公政権の「総人件費削減」に追随した、大幅賃金引下げを許してしまったという今秋闘は、極めて不満なものです。

賃金
1.給料月額を平均1.2%引き下げ。
昇給カーブのフラット化、
初任給付近0.0%〜高齢層1.6%引き下げ
2.特別給 0.35月引き下げ、4.15月
  来年度から、3月期の期末手当を廃止
 今年度の特別手当は、
6月期 1.9月(2.1月分の0.2月分を凍結→削減)
  12月期 2.15月(条例通り)12月10日支給
   3月期 0.1月(0.15月削減)
3.所要の調整を行う。
4.教員の給与制度の改悪 2010年4月実施に押しもどす
(1)義務教育等教員特別手当 3.0%から2.2%に引き下げ。
(2)「給料の調整額」 6%程度から4.5%程度に引下げ

労働条件関係 
1.勤務時間の見直し 労働時間の短縮、 2010年4月実施
 1日7時間45分、
 休憩時間は、学校に勤務する職員の休憩時間は45分のまま
  =退勤時刻の15分繰り上げ
2.年次有給休暇の時間休取得制限  2010年4月実施 
 学校現場における勤務の特殊性により、
    学校職員のうち教育職員等は、従来どおり
3.赴任旅費の支給対象事由の追加 2010年4月以降に採用される職員から適用
 島嶼地域での臨時的任用職員の任期満了に伴う退職に引き続き正式任用職員として採用された職員がその採用に伴う移転のため旅行する場合。

福祉関連 
1.子どもの看護休暇の日数拡大 
2.短期の介護休暇新設  2010年7月1日実施  
3.再雇用職員および専務的非常勤職員の介護欠勤の取り扱い
その他
 退職手当制度の見直し 2010年3月実施
 在職期間中に懲戒免職処分を受けるべき非違行為があったと認められて時は、退職手当を支給しないことができるようにする。


賃金関係 
賃金の大幅引き下げ
 都人勧は旧自公政権の「総人件費削減」に追随したものであり、それをほぼ「完全」に実施させてしまいました。給与の公民較差(〇.三五%=一四六八円)是正のため、給料表を引き下げ、地域手当の支給割合の引き上げ(一六%から一七%)に伴う例月給引き下げ分と合わせて、給料月額を平均一.二%引き下げとなりました。
特別給引き下げ
 特別給は〇.三五月引き下げ、四.一五月とされました(再任用は一.六五月、〇.一五月引き下げ)。しかも、期末手当のみを引下げ、勤勉手当は据え置きということは、さらなる成績主義の強化です。
教員の給与制度の改悪
 二〇一〇年一月実施の当初提案を二〇一〇年四月実施に押しもどしたことは評価できます。しかし、教員の給与制度の改悪は実施されてしまいました。東京都はオリンピック招致の百億円など「大したことはない」と言うにもかかわらず、国庫負担金が縮減されたことを理由に、義務教育等教員特別手当と、「給料の調整額」を引き下げました。義務教育等教員特別手当は、「学校教育の水準維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法一九七四年」によっていますが、二〇〇八年度、義務教育等教員特別手当を三.八%→三.〇%に引き下げられ、今年度はさらに二.二%に引き下げられました。〇.八%分は、一三九〇円〜四〇八〇円に相当します。
 「特別支援学校に勤務する教育職員」・「特別支援学級の授業を担任する教育職員」等に支給(「教育公務員特例法」)されている「給料の調整額」が、国庫負担金が給料月額の六%程度から四.五%程度に縮減されるのを理由に引き下げられました。2級で六千円、約二六%(率は各級ほぼ同じ)減少です。「給料の調整額」は「手当て」ではなく、「給料の月額」に算入される=特別手当て(ボーナス)、退職金の基礎ともなるので、大きな収入減になります。
   
労働条件関係 
一日七時間四五分勤務
     休憩時間は四五分
 労働時間の短縮は、昨年度の課題でしたが実施が一向に進まなかった事項です。都当局は、全庁的に一日七時間四五分、休憩時間六〇分と提案をしてきました。交渉の結果、学校に勤務する職員の休憩時間は四五分のままとさせました。実態的に休憩時間がとれない状況の中で、休憩時間を一五分増やすことは、勤務時間の短縮にはなりません。休憩時間を四五分としたことにより、退勤時刻が一五分繰り上げられることになります。二〇一〇年四月から実施されます。勤務時間十五分短縮の職場実態を実現していきましょう。
一日は七時間四五分
 一日七時間四五分となると、休暇の処理などが複雑になります。現行の一時間八回で一日という単純な換算はできなくなります。また、「半日」という取得単位も全庁的に作られました。これが何時間に相当するかも単純ではありません。これらのことは、「今後、任命権者と単組との間において協議」されます。

年次有給休暇の時間休取得制限なし
 「時間単位の年次有給休暇の日数は、五日以内で取得。ただし、学校現場における勤務の特殊性により、学校職員のうち教育職員等は、従来どおり」
 都側は、人事委員会勧告にもないこの事項を、改正された労働基準法にそうあるという理由だけから提案してきました。
 この改正の趣旨は、厚生労働省が「五日分は、この通院等の事由などに対応して、時間単位での年休取得を可能とする」ためとしています。労働基準法は最低限度の基準であり、都側提案は権利の制限にしかなりません。
 都の調べによれば、四〇%の職員が五日(四〇時間)を越えて時間休を利用していました。時間単位で年休を取得して業務に支障をきたした例はないのです。法改定の趣旨から考えても、労働者の権利からしても、まったく認めることはできません。これが交渉の中心課題になったのは必然的なことです。
 結果的には、「全庁的に五日間に制限。ただし、学校現場における勤務の特殊性により、学校職員のうち教育職員等は、従来どおり」となりました。全庁的に半休を認め、半休は時間単位の取得日数に含めないことになりました。半休と学校の時間休制限なしで、影響を受ける人は四.二%と縮小しました。それでも労働条件が悪化する人がいることに違いはありません。
 学校現場では、休暇を日単位でとろうにも代替職員がいない限り、業務に支障が出てしまいます。労働条件を根本的によくするために、奮闘しようではありませんか。

福祉関連 
子どもの看護休暇の日数拡大
 九歳までの子が複数いる場合の付与日数を年十日に拡大(現行は年六日)。子一人について年五日を限度とすることは変わりません。また、養育家庭(里親制度)を対象に追加しました。時間単位でも使える看護休暇の日数や範囲が拡大したのは前進です。しかし、四年生になれば病気にならないわけでも、一人で病院に行けるわけでもありません。有給休暇が使われることになります。さらに拡大が必要です。
※十一月十七日付週刊墨教組速報版では、「小学校就学前の子が二人以上いる場合に限り年十日に」と交渉中に出てきた案を誤って記載しました。お詫びして訂正します。
短期の介護休暇新設 
 常態的には介護に携わっていない職員が、主に介護を行っている家族の病気等により一時的に介護する場合、一人につき五日を限度とし、二人以上の場合には十日までとれます。一日を単位としますが、任命権者が職務に支障がないと認めるときは、一時間を単位として使用可能です。
 これらの福祉関連は、二〇〇九年七月に制定された「育児・介護休業法」の改正(「就学前の子に年五日まで」を「就学前の子一人につき年五日まで、年十日を上限」に。介護休暇「家族一人につき年五日まで、年十日を上限」を新設)に伴う取り扱いの変更によります。

労働条件改善を求めて
 以上、今秋闘は極めて不満な結果に終わりました。このままいけば、賃金はいよいよ削られ、フラット化し差別賃金体系を強めていくでしょう。さらに、労働条件の改悪が目差されています。
 メーデー職免廃止、住居手当のあり方を検討などは引き続き協議事項です。都側は交渉の中で、「他団体の人事委員会勧告においても、道府県の三割、政令指定市の二割が国に準じ自宅に係る住居手当を廃止し」と、述べています。大都市を含めて今年度人事院勧告に追随している地方公共団体も多く、生活給排除の方向から、住宅手当廃止提案は確実に出てくるでしょう。私たちははっきりと否の声をあげなくてはなりません。
 賃金も労働条件も、与えられるものではありません。働く者が闘いとってこそ守られ、改善されていくのです。



人事異動関係 
11/30 (月) 異動か現任校にとどまるか、
   都→区教委→校長→本人に通知
12/1 (火) 不服申し立て (昼12時まで)



1) 中途採用者の経験年数の切り上げ
 これまで、「本人が希望する場合は、10ヶ月以上は切り上げ」だったが、
 「すべて、10ヶ月以上は切り上げ」となった。

2) 統廃合校での在職年数カウントリセットは、例外なし。

3) 各校でのパソコン研修で、終了時刻を「5:30」と連絡された学校がありますが、これはなにかの誤りです。多くの学校で管理職がその権限で正していますし、その後に連絡された学校では「4時半終了」となっています。


週刊墨教組    2009.11 17 速報版

都労連、労使合意で自主解決を重視
 不満! 最大の賃金引き下げ
一日七時間四五分の勤務時間短縮四月より実施 学校現場は休憩時間四五分のまま
年次有給休暇の時間休取得制限 教育職員等は従来通り
子どもの看護休暇の日数拡大、短期の介護休暇新設
  
十一・十七統一行動は中止


都の最終提案概要
@二〇一〇年一月からマイナス勧告実施
A年末一時金二.一五月分を一二月一〇日に支給
 (特別給は 四.一五月分)
B「所要の調整」は実施

C教員給与制度の見直し 実施時期は、二〇〇九年四月一日
 ・義務教育等教員特別手当の引き下げ 
 ・「給与の調整額」の引き下げ
D年次有給休暇の時間休取得を五日間に制限
  ※ただし、教育職員等は従来通り
E労働時間の短縮、一日七時間四五分(休憩時間は六十分)
  ※ただし、学校に勤務するものの休憩時間は四五分のまま
F福祉関連 子どもの看護休暇の日数拡大、短期の介護休暇新設
G島嶼職員の賃金・労働条件改善
Hメーデー職免については引き続き検討課題とする

〇九賃金確定闘争は、旧自公政権の「財政再建方針=総人件費削減方針」に基づく地方公務員賃金引下げ圧力が強まる中で、厳しい闘いとなりました。十五・十六日の交渉では、都当局が頑なに自らの主張に固執し、解決に向かうには困難を極めました。しかし、「労働条件は労使合意で自主解決」の立場を双方が尊重する中、内容的には極めて不満な部分を残しつつも、双方の歩みよりにより、自主解決を図るとして、十七日午前二時三五分に都労連は、実力行使を中止することを決定しました。
 これを受け、東京教組は、都労連との統一行動を前提にしていることから、四時、本日早朝の実力行使を中止しました。
 今賃金闘争は、昨年度の、教員給与制度を「職責・能力・業績」に応じた制度へと大改悪し、教員給与を大幅に引き下げるという攻撃に続く、「総人件費削減」路線に基づく更なる賃金の引き下げ・フラット化との闘いでした。さらに、年次有給休暇の時間休制限、休憩時間を六十分にするという労働条件改悪の攻撃との闘いでした。
 都人事委員会は、
@例月給平均一.二%、特別給〇.三五月、大幅引き下げ
A昇給カーブのフラット化と管理職の優遇
を勧告しました。さらに、都は
B義務教育等教員特別手当・「給与の調整額」の大幅引き下げ
C年次有給休暇の時間休取得を五日間に制限
と、教員給与の大幅引き下げ、労働条件改悪を提案してきました。これに対し、組合は、給与構造のあり方は、給与水準や人事給与制度の基本となるものであり、労使協議事項として位置付け、労使合意で整理・解決することを主張し、交渉を強化してきました。
 また、年次有給休暇の時間休取得を五日間に制限する必要性について、組合の追求に対し、都教委は何の具体的な根拠も示すことができないまま、労働基準法「改正」を根拠に、それも趣旨を曲解して、全職種に押し付けようとするばかりでした。
 労働時間の短縮については一年たっても具体的な交渉も始まらない不誠実を非難し、一日七時間四五分への都の決断を強く求めました。

賃金と労働条件は、労働者の闘いが決める
 今回交渉で押し戻した点は、C教員給与制度の見直しの実施時期を、当初提案の一月から四月に延期させた点(これにより、今年度退職者には影響は出ません) D年次有給休暇の時間休取得を五日間に一律に制限するものを、学校職場の特殊性により、教育職員等には適用させなかった(従来通りの取得)こと E労働時間を一日七時間四五分に短縮、学校に勤務する者には休憩時間を四五分のまま(退勤時刻十五分繰り上げ)にさせたこと F福祉関連要求で、子どもの看護休暇の日数を拡大(小学校三年生までの子が二人以上いる場合には年十日に。現在は年六日)、短期の介護休暇新設(一時的に介護する場合、一人につき五日を限度とし、二人以上の場合には十日まで)です。
 残念ながら、最大の課題である賃金引き下げは、撤回させることはできませんでした。率直に、闘う力が弱いのだということを認めざるをえません。
 今年度から導入された主任職制度は、主幹制度の破産を取り繕うためと、職階制を導入して上意下達の物言わぬ職場をつくることを目的としています。。賃金引下げを梃子に、働くということを、ポストの上昇と高い賃金の獲得に矮小化させようとしています。職場を分断していく攻撃が一層強くなります。これに屈することは、学校教育の破壊を意味します。
 共に抗し、闘っていきましょう。
(詳細次号)



週刊墨教組 No.1577              2009.11.9

二〇〇九年 秋季賃金確定闘争勝利!
墨田教組・東京教組は
11月17日(火) 早朝29分行動 を配置して闘う!

 東京教組は十一月五日の戦術委員会で、各教組の批准投票の結果を確認し、都労連・東京地公労に連帯して、十七日の統一行動を背景に闘う戦術を決定しました。

 都の提案は、賃金面においては、二〇〇六年度、小泉の「〇六骨太の方針」に基づく政治的なものです。国の財政再建を目的とし、総人件費削減でそれをまかなうという、労働者に犠牲を強いる政策に従っただけのものです。

 また、時間単位の年次有給休暇取得日数を 五日以内に制限するなど、これまで何の問題もないのに、労働条件の水準を引き下げようとしています。

 都の提案は、すべてにおいて不当なものです。不当な給与削減、権利剥奪には、あくまで抗していきましょう。自らの生活は自らの力で守るのです。

 私たちは、十一月十七日(火)に、早朝二九分の集会を組合事務所において行います。ともに闘いましょう。

私たちは次のことを要求します

教員賃金の引下げ反対

・給与の公民較差是正のため、給料月額を平均一.二%引き下げ反対

・昇給カーブのフラット化反対

・ボーナス〇.三五月引き下げ反対

・義務教育等教員特別手当(人材確保法による手当)のさらなる切り下げ反対

・「給料の調整額」(特別支援学級の教職員)の引き下げ反対

年次有給休暇の時間休制限(五日以内)は白紙撤回せよ

・時間単位の年次有給休暇取得日数を現行どおりにせよ。

住居手当の維持・改善

勤務時間短縮

・昨年人勧、一日七時間四五分を早期に実現せよ。

地域手当の本給繰り入れ実現

人事考課制度の抜本見直し実現


集会決議

 2009年地方賃金確定闘争は、政府の総人件費削減方針に基づく地方公務員賃金引下げ圧力が強まるなかで厳しい闘いとなっている。

 10月8日の特別区人事委員会の勧告に続き、10月9日には東京都人事委員会の勧告が行われた。改悪された公民比較方法をもとに、東京都においては公民較差が、△1,468円、△0.35%とし、特別区では、△1,605円、△0.38%となり、特別給はともに、0.35月分の引き下げとした。加えて、都区ともに地域手当の支給割合17%引き上げに伴い本給水準の引き下げを実施し、給与改定にあたっては昇給カーブのフラット化を図るとし、年間給与は過去最大の減額となるなどきわめて不満な内容となっている。昨年の秋以降における経済状況の悪化から、民間賃金の実勢が落ち込んでいるとは言え、大都市東京や区の実勢が適正に反映されていない納得性を欠く極めて不当な勧告である。

 これは、労働基本権制約の代償機関としての役割と責任を放棄し、政府の圧力に屈した都区職員の期待を裏切る極めて政治的な勧告であり、もはやその存在意義さえ失したものと断じざるを得ない。私たちは、賃金・労働条件決定制度としての人事委員会勧告制度が制度的・歴史的限界がより一層明確になったものと捉え、労働基本権を確立し、労使交渉で賃金・労働条件を決定することを中心とした自律的労使関係制度の構築に向けての取り組みを進めていく。

 国民不在の政治を続けてきた自公政権が終焉し、民主党を基軸とした政権が誕生して2ヵ月が経過した。この間、新自由主義による市場競争原理に基づき格差と貧困が拡大し、雇用情勢は正規・非正規を問わず労働者全体に波及し今なお一向に改善の兆しさえも見えない。そして公務職場においては、地域住民の生活に直結する公共サービスが解体されてきた。

 私たちは、公共サービス基本法を実行させる主体的な取り組みを強めるとともに、新政権のもとで基本法に則った政策実現を求め、国民生活・地域住民の安全・安心、そして格差是正に向けた勤労国民優先の政策の実現を求めつつ、労働組合としての社会的責任を果たす取り組みを一層強化する。

 東京地公労は、2009年秋季年末闘争を構成組織の総力をあげて全力で闘いを進めていくものである。右決議する。

2009年11月9日

2009年秋季年末闘争勝利!東京地公労総決起集会


週刊墨教組 No.1576              2009.10.28

二〇〇九 賃金確定闘争勝利!
    大幅賃金切り下げを許さない!
  不当な都当局の新たな提案
    年休時間単位取得制限!?
権利の後退は認められない
 闘い無くして生活は守れない


 二〇〇九年賃金確定闘争は、教員賃金の水準確保、休暇制度改悪阻止、
等を重要課題として交渉が強化されています。
 そうした中、都は新たに、
@義務教育等特別手当(人材確保法による手当)のさらなる切り下げ
A「給料の調整額」(特別支援学級の教職員)の引き下げ(資料2)

B時間単位の年次有給休暇取得日数を 五日以内に制限
C現給保障の削減
を提案してきています。
 労働条件は、労使交渉で決めるのが法的な大原則です。闘い無くして生活は守れません。

昇給カーブのフラット化

 今年の秋闘は、地域手当の引き上げ(一六%→一七%)分を含む例月給の平均一・二%引き下げ、特別給の〇・三五月引き下げ勧告を受け厳しい状況にあります。若年層、管理職層の引下げを緩和し、高齢層の引下げを一・八%と強くし、昇給カーブのフラット化を推進する給料表を勧告していることは前号でお知らせしたとおりです。(栄養士給料表参照)
 このことにより、高齢層では民間給与との均衡どころか、マイナス較差の拡大になります。また、本給を下げることにより、退職手当の額も、大幅に下がることになります。
 このまま強行されれば、退職手当は五年連続の引き下げとなり、認めることは到底できません。

新たな不当な都の提案
 二〇〇六年度、小泉の「〇六骨太の方針」に基づき、〇八年から〇九年の二年間で「教員給与の全体を二・七六%削減する」という、自公政府による不当な決定がなされました。都は、「国において、人材確保法に基づく教員給与の優遇措置の見直しが進められていることに伴い、国庫負担金の縮減」を理由に、二〇一〇年一月一日から「義務教育等教員特別手当」と「給料の調整額」削減を強行実施しようとしています。(資料1)。

「義務教育等教員特別手当」削減

 二〇〇八年度は、義務教育等教員特別手当を三・八%→三・〇%に引き下げ、義務教育国庫負担金を都道府県に交付しました。これを受けて、東京都では、この四月、義務教育等教員特別手当が〇・八%削減されました。
 今回の提案は、この延長線上にあります。さらに、三・〇%→二・二%に引き下げるものです。これに乗じて都当局は、これに相当する引き下げを二〇一〇年一月から行うと提案してきました。〇・八%の引き下げは、一三九〇円〜四〇八〇円にあたります。

時間単位の年次有給休暇取得日数を五日以内に制限
 都は、「労働基準法改正に伴い、時間単位の年次有給休暇の日数については、五日以内での取得を認めるものとする」と提案してきました。

労働基準法の改正
 現行の労働基準法では、年次有給休暇は「日単位で取得すること」とされています。年次有給休暇は一労働日を最小単位とするものです。従って、これまで、時間単位の分割は認められていませんでした。ただ、実態として、労働者が半日単位で有給休暇を請求したときに、半日単位で付与してきた事業所があったことも事実です(使用者側に、半日単位で付与する義務が発生していたわけではありません)。
 しかし「一労働日を最小単位」とするのでは、この制度の目的である「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ること」が十分達成できないとして、二〇〇七年、法が改正されました。改正後は事業場で労使協定を締結することにより、一年に五日分を限度として時間単位で取得できるようになります。所定労働日数が少ないパートタイム労働者なども対象となります。厚生労働省も、「五日分は、この通院等の事由などに対応して、時間単位での年休取得を可能とする」と説明しています(「事由」を言う義務は当然ありません)。

公務員は時間単位で取得してきた
 これまで私たちが時間単位で年休を取得してきたのは、人事院規則一五−一四「(年次休暇の単位)第二十条「年次休暇の単位は、一日とする。ただし、特に必要があると認められるときは、一時間を単位とすることができる。」によります。この規定により制限なく時間単位取得がなされてきたのです。時間単位で年休を取得して業務に支障をきたした例はありません。
 ところが、都側は、時間取得を制限しようとするのです。これはまったく理のない言いがかりのようなものです。どの地方公共団体も同じ条件でありながら、現に、今秋闘でこの時間単位の取得に制限をかけようとする道府県は、今のところ一つもありません。

理のない都教委提案
 そもそも労基法改正の目的は、有給休暇の時間単位取得を「一年に五日分」に制限することではなく、これまで原則なされなかった時間単位取得を可能とすることです。制度の目的「長時間労働を抑制し、労働者の健康確保や、仕事と生活の調和を図ること」、改定の趣旨「長時間労働者の割合の高止まり等に対応し、生活時間を確保しながら働くことができるようにするため、労働時間制度の見直しを行う」からすればそれは当然のことです。「一年に五日分を限度と」は、法制度上、初めての試みだからです。
 労働基準法は最低限度の基準です。法改定の趣旨から考えても、労働者の権利からしても、まったく認めることはできません。
 むろん、年次有給休暇の趣旨からすれば、日単位でとることがより望ましいかもしれません。しかし、現実に、時間単位でとれる介護休暇や通院休暇を認め拡大しない限り、年休の時間単位取得で対応せざるを得ません。このような現実を見ず、ただ機械的に法の条文を当てはめ、嫌がらせをする都当局の姿勢は、厳しく糾弾されなくてはなりません。

労働条件の水準を引き上げるためにも
 公務員が時間単位で年休を取れることを、「うらやましい」と多くの働く人は言ってきました。それは自分たちと同じように引き下げようとする言葉ではありません。働く人々の年休取得の自由を拡大し、労働条件の水準を引き上げるためにも、私たちはこれまでかちとってきた権利を後退させてはなりません。

「住居手当」
 今回の都人事委員会勧告では、、「住居手当は、制度が創設されて以来、ほとんど見直しが行われていないことから、本委員会は、国の見直しを契機に、現行制度の意義を、その根幹に立ち返って検証し、今後の制度のあり方を検討していく。」としています。東京圏の住宅事情を勘案すれば、国と同じように廃止することはまったく誤りです。今後の検討に対して、はっきりと否の声をあげていきましょう。

特別給の改悪
 都側は、特別給を夏と冬の年二回にし、三月特別給の廃止を提案しています。支給回数を減らすことは、基準日がひとつ減ることであり、育休や病気休暇等の取得をした方にとっては減額は小さくありません。「弱い者」に厳しい改悪になります。
 さらに都は、「勤勉手当の算定基礎額に、勤務成績とは関係のない扶養手当が含まれていることは、勤勉手当の趣旨に反している」と主張し、新たに特別給の削減を提案しました。こうした削減提案は、断じて認めることはできません。

闘いは十一月中旬に山場

 公務員制度改革により、私たちにも労働基本権を手にすることができるのはそう遠いことではないと考えられます。闘ってこそ労働者である、その基本原則に立てるのです。不当な給与削減、権利剥奪に抗してこそ、「与えられる」労働基本権は闘いの武器になります。ともに闘いましょう。



資料1
教員の給与制度の改正について(案)【抜粋】
1 趣旨
国において、人材確保法に基づく教員給与の優遇措置の見直しが進められていることに伴い、国庫負担金の縮減を踏まえた支給額の改正を行う。
2 改正内容
 (1) 義務教育等教員特別手当
   国庫負担金の取扱いが給料月額の3.0%から2.2%に縮減されるため、相当する引下げを行う。
 (2) 給料の調整額
   国庫負担金の取扱いが給料月額の6%程度から4.5%程度に縮減されるため、相当する引下げを行う。
3 実施時期
平成22年1月1日
教員の給与制度の改正について(案)【抜粋】
1 趣旨
国において、人材確保法に基づく教員給与の優遇措置の見直しが進められていることに伴い、国庫負担金の縮減を踏まえた支給額の改正を行う。
2 改正内容
 (1) 義務教育等教員特別手当
   国庫負担金の取扱いが給料月額の3.0%から2.2%に縮減されるため、相当する引下げを行う。
 (2) 給料の調整額
   国庫負担金の取扱いが給料月額の6%程度から4.5%程度に縮減されるため、相当する引下げを行う。
3 実施時期
平成22年1月1日


資料2
教員の給料の調整額について
 特別支援学級の授業を担任する教育職員


ただし、表に掲げる額が職員の給料月額の6.75%相当額を超える場合は給料月額の6.75%相当額とする。



自己申告 異動
自己申告の異動に関して変更点があります。
学校が統廃合されたときの勤務年数のカウントについて
○平成21年四月以降に開校した統合校の場合、実勤務年数の積算は、廃校となった母体校での実勤務年数を合算しない。
○平成20年度以前に開校した統合校の場合、実勤務年数の積算は、廃校となった母体校での実勤務年数を合算する。

職場の怒りを都庁に!!
東京地公労 2009年秋季年末闘争勝利11.9総決起集会
日時 11月9日(月) 4時30分開会
    5時30分よりデモ
場所 都庁第2庁舎前広場

  (できるだけ多くの方に声をかけてください。)
 今回の勧告は、過去最大規模の引き下げ勧告であり、私たちにとって、すでに我慢の域を超えています。さらに追い討ちをかけるような休暇制度の改悪も提案されています。組合員でなくとも、生活者としての怒りをこめて都庁前集会に参加しましょう。


週刊墨教組 No.1575              2009.10.14

二〇〇九 賃金確定闘争勝利!
  こんな給与改定には応じられない!
 例月給、特別給(ボーナス)ともに引き下げ

  年間給与は過去最大の減少! 平均十七.六万円減
   特別給〇.三五月引き下げ(四.一五月分)
   五年連続の例月給マイナス勧告
  初任給以外はすべて引下げ
  地域手当引き上げ、フラット化により、
  高齢層の本給は一.六%にも及ぶ引き下げ
        年間給与二五万円減も!
  住居手当は従来通り



 一〇月九日、東京都人事委員会は都知事と都議会議長に対し、都職員の給与等の勧告・報告を行いました。国家公務員に対しては、すでにお知らせしたように、例月給〇.二二%引き下げ、特別給〇.三五月削減、住居手当廃止という人事院勧告を、衆議院選挙前早々に閣議決定しました。
 各地でも名古屋市の例月給二.九九%一二、七四〇円削減をはじめ、静岡市では住居手当の廃止など、驚くべき勧告が出されています。
 これまで、都労連・東京地公労は精力的に人事委員会要請を重ねてきましたが、きわめて厳しい勧告が出されました。都人事委員会が、旧自公政府の「総人件費削減」政策に従った勧告であると言わざるを得ません。
 労働条件は労使交渉で決めるものです。二〇〇九年度賃金確定闘争が今後具体的に展開されます。全力をあげてとりくんでいきましょう。
 また、初任給だけは現状維持となっていますが、若年層給与も小幅ながら引下げがなされています。高齢者から多く削減するというさらなるフラット化は、「職階」=級を上がらせる競争を強いるものであり、それに乗らなければ低賃金のまま働かせる、さらには使い捨てるという傾向を強めることになります。都に働く職員全員の生活を向上させるためには、将来を見すえて、反対していかなくてはなりません。
 勧告・報告の骨子は次の五点です。

1.給与の公民較差是正のため、給料表を引き下げ。
  (〇.三五%=一四六八円)を是正。
  地域手当の支給割合の引き上げ(一六%から一七%)に伴う例月給引き下げ分と合わせて、給料月額を平均一.二%引き下げ。 《裏面資料「二〇〇九年度勧告」》
 ※ 引き下げにあたっては、例月給の引き下げとあわせて昇給カーブのフラット化の推進。初任給付近〇.〇%〜高齢層一.六%引き下げ(昨年は地域手当一.五ポイントをふくんで一.八%引き下げ)。
2.ボーナスは〇.三五月引き下げ、四.一五月とする。
  期末手当のみを引下げ。勤勉手当は据え置き。
3.四月からこの改定の前日までの公民較差相当分を解消するため、所要の調整を行うこと。
4.住居手当
  国では、自宅に関わる住居手当を廃止したが、都では、「手当ての趣旨や支給要件、職員の住宅事情等が異なることから、本年は見直しを行わないと判断」しました。
5.その他
・仕事と子育ての両立支援
 育児休業等について仕事と子育ての両立支援を一層推進するため、国の改正内容をふまえて検討をすすめて行くことが必要」と意見。
・職員の健康保持
  管理監督者は、精神保健について正しい知識を持ち、職場における予防や早期発見、問題への適切な対応に努めることが必要
 「パワー・ハラスメント」問題についても、職員の心の健康保持の観点から、研究や検討を進めていくことが必要



期末手当の削減・勤勉手当の据え置きは更なる能力主義の強化
 特別給(ボーナス)は〇.三五月と大幅に引き下げられました。しかも、引き下げられたのは期末手当分だけで、勤勉手当はこれまで通りの一か月分です。
 勤勉手当は、期末手当に比べて、欠勤等による減額の基準が厳しくなっています。さらに勤勉手当には、成績率が導入が目論まれています。さらなる能力主義の強化です。

賃金引き下げを許すな
 私たちの給料は毎年引き下げられ、今年は特別給も大幅に引き下げる勧告が出されました。昨年十月の給料に、十二か月と四.五か月分を掛けると、二−の七七号給では、六八一七八〇〇円でしたが、勧告によれば、六五六四九七五円となり、二五万円の賃金引下げになります。無論これに地域手当分がつきますから、手取りは地域手当増額分として年間六〜七万円が加わりますが、大幅な減額です。

経験のある二級・三級教員をねらいうち
 勧告は「昇給カーブのフラット化を重視した改定」と称し、成績主義の強化をねらっています。
 初任者の二の九号では現行と同じ額です。しかし、経験十年目ぐらいで、平均引き下げ率一.二%を超えます。その後は雪崩のように一.五%という大幅引き下げ(私たちの試算では一.六四%)をになります。平均引き下げ率を実現するために、二級の上位号給の方が「むしりとられる」のです。このように三級へ向かう圧力がかけられます。が、総人件費削減の下では、あるいは当局の意図は、希望者全員を三級にすることではありません。ここで選別をかけようというのです。
 主幹職(四級)では、最大でも平均一.二%の引き下げ率です。人気のない職種は金を出して集めるしかないのです。ちなみに校長職(六級)では、最大六三〇〇円引き下げで、その率はきれいに平均一.二%でした。管理職を優遇する勧告です。
 また、主任職(三級)では、給料表の下位一号給から四分の一の四一号給で引き下げ率平均一.二%を超えてしまいます。給料は確実にこの層も減らされています。
 再任用教員でも、二級では一.四%、三級では一.三%の引き下げです。しかし、四級以上ではきれいに平均引き下げ率の一.二%です。二級・三級は給料月額がもともと低いのですから、実質的に減らせる金額は多くありません。にもかかわらずこういうことをするのです。
 「高齢職員の活用 再任用職員の活用に当たっては、能力発揮に適した職場への配置を積極的に進めていく必要」と報告にありますが、「活用」とは低賃金でこき使うことではないはずです。
 札束(小銭袋?)でほっぺたをひっぱたくこのいじましいやり方に私たちはいつまで耐えなければならないのでしょうか。給与体系の細分化をやめさせるしか解決の道はありません。

闘わなければ どんどん悪くなる
 今後、組合は十一月中旬を山場に、「労使交渉による決定」を基本に都当局と交渉を強化していきます。例月給・ボーナスの大幅切り下げ反対、勤務時間の短縮、人事考課制度の抜本的改善、高齢者雇用制度改善等の要求実現に向けて、共に闘いましょう。闘わなければ、さらなる改悪が強行されることになります。若い方、一〇年先、二〇年先を想像し、自分の生活を切り拓くために、共に闘いましょう。

※現給保障については現時点で詳しい情報はまだ入っていません。


栄養士(医療職2)給料表
2009年10月9日 勧告
職務の級 2 級 3 級 4 級
号 給 給料月額 現行との差 給料月額 給料月額
1 202,300 -400 -0.2 225,200 -1,000 -0.4 259,500 -2,300 -0.9
13 224,600 -1,200 -0.5 249,600 -2,100 -0.8 286,100 -3,000 -1.0
25 248,300 -2,200 -0.9 275,400 -2,800 -1.0 314,200 -3,600 -1.1
37 272,600 -3,000 -1.1 302,200 -3,600 -1.2 343,400 -3,800 -1.1
49 295,600 -3,700 -1.2 329,500 -4,000 -1.2 370,500 -4,600 -1.2
61 317,600 -4,200 -1.3 355,000 -4,600 -1.3 393,300 -5,000 -1.3
73 337,200 -4,700 -1.4 375,500 -4,800 -1.3 407,500 -5,300 -1.3
85 352,900 -4,900 -1.4 387,600 -5,100 -1.3 415,300 -5,700 -1.4
97 360,900 -5,600 -1.5 395,600 -5,600 -1.4 421,400 -6,000 -1.4
109 366,300 -5,700 -1.5 401,800 -5,900 -1.4 426,800 -6,300 -1.5
121 370,900 -5,900 -1.6 407,500 -6,200 -1.5 431,900 -6,500 -1.5
133 412,900 -6,400 -1.5
再任用
職員
239,600 -3,200 -1.3 273,700 -3,600 -1.3 292,000 -3,800 -1.3


  教育研究集会
10月28日(水)午後3時〜
講演 教育免許更新制と全国学力テストを廃止するのは誰か
講師 大森直樹さん 東京学芸大学教員
場所 組合会議室


 「教員の免許更新制」は、教員の有期雇用化(不安定労働化)、政府による教員の一元管理・統制制度として極めて悪質な制度です。私たち墨田教組は、早々と9月から「教員免許更新制の早期廃止を求める署名」を各分会でとりくんでいます。非常に高い署名率で集まりつつあり、反対の声の大きさが伝わってきます。
 10月教研集会では、学芸大学の大森直樹さんを講師としてお迎えし、「教育免許更新制と全国学力テストを廃止するのは誰か」と題して講演をしていただきます。
 大森さんは、墨田の同和教育にとっても馴染みの深い方です。物柔らかな口調で、原則的なことをきちんと伝え実践する若い研究者(人)の話を多くの方に聞いてほしいと思います。どの年代の方にも、希望であったり指針であったりしうる講演会になると、確信しています。多くの方の参加を期待します。


週刊墨教組 No.1574              2009.9.28

なぜ、今、「知能検査」を強制するの!
   就学時健康診断実施要領は変わらず

 校長会は、就学時健診に全小学校同一の「知能検査」用紙を使用することを「決定」しました。しかし、校長会にそのような権限はありません。重大な誤りです。区教委は校長会の「要請」を受けて、希望していない学校にも検査用紙を配布しました。これも問題です。

 私たちは、これまで行われてきた墨田区教委の就学時健診のやり方を、このような誤った手続きで変え、「知能検査」用紙使用を強制することは、差別・選別教育のさらなる強化であると指摘せざるをえません。

 区の実施要領は何ら変更されていません。各校では、これまで行われてきたやり方を尊重すべきです。

さまざまな「知能の検査」の形

 就学時健診の「知能の検査」は、これまで各校で、その必要に応じた形でなされてきました。例えば、区配布の「知能検査」用紙を使ったり、絵カード、おもちゃ・・・などを使ったり、「おはなしの部屋」としてコミュニケーションを重視したりと、各校で工夫して実施してきました。

次年度から学校にうけ入れる子どもたちの様子を見、その子のためにどのような手立てを学校としてとったらよいのかを考えるためにです。

 その「検査」で出された数値で子どもにレッテルはり、数値を一人歩きさせ、子どもを差別・選別するためではありません。


縮小してきた「知能検査」

 かつて、東京でも、指導要録に「知能検査」を記入する欄(「標準検査の記録」欄)があるために、小学校二年生・四年生などで「知能検査」を行ったことがあります。

 「知能の検査」には、さまざまな問題があります。「知能検査」はビネーの意に反して、その出発点から人間を差別し選別するための具として使われ発展してきました。「この子、IQ低いんだからしょうがないよ」「このIQの子を伸ばすためには自動的に『障害』児学級!」など、「知能検査」の数値で子どもを見ていってしまうこともありました。

 それは、教師の姿勢として問題だ、よろしくない、差別・選別的だという理由で、多くの地域で指導用録に記載しなくなり、さらに「知能検査」も行われなくなりました(情報公開制度との関わりもあります)。

 かつて「標準化された知能検査」ということで、それを絶対視する傾向もありましたが、当時から都は「標準化した知能検査・学力検査は決められない」と私たちの質問に答えていました。要するに「知能を測定する標準」などないのです。

 現行の指導要録でも、「総合所見及び指導上参考となる諸事項」の欄に「知能検査の結果」を記載することができるように説明されています。「できる」ということは実施しなくてもよい、結果を記載しなくてもよいということです。現にしていません。


二〇〇二年 学校保健法施行規則改正

 「知能検査」の問題点が明らかにされ各校・各地域で見直されるなか、二〇〇二年平成十四年に学校保健法施行規則(二〇〇九年から学校保健安全法施行規則と改称)が改正されました。それまで「知能の検査」は「標準化された知能検査法によって」(第三条の十)行うとしていましたが、「標準化された知能検査法以外の方法によることも可能である」とし、「検査法を限定せずに、適切な方法であればよい」とされました。「標準化された知能検査を用いる」ことは、いよいよ必須要件ではなくなったのです。

 にもかかわらず、今回の校長会の「決定」(同一「知能検査」用紙使用)は、この人権の流れ、墨田の教育でどのようなことを大切にしてきたのかを無視したものといわざるを得ません。内容において、あまりにも安易過ぎないでしょうか。


確認された事実

 九月二日の締切日までに「知能検査」用紙希望数を0(=使わない)と、実施要領にのっとって回答した学校にも、「知能検査」用紙が配布されるという事態は、なぜ起こったのでしょう。

 墨田区教職員組合執行委員会は、九月二四日、区教委石井学務課長との間で、事実確認と意見交換をおこないました。その結果わかったことは、

@区の就学時健診実施要領に変更点はない。

A九月四日、校長会から区教委学務課担当者に、全小学校に「知能検査」用紙を送るよう、電話(複数)で要請があった。

B学務課担当者は予算上措置できる範囲であったので、それに対応した。

などです。


手続き上大きな問題

 そもそも校長会に、各学校で「知能検査」用紙を使うか使わないかということを決定する権限はありません。就学時健診は教育委員会が実施するものです(だから「実施要領」は区教委名で作成されています)。区教委は業務を委任して協力を要請しているだけです。業務内容は教職員も校長も本務ではありません。

 「校長会」は就学時健診の内容に言及し、何らかの変更をさせることのできる機関ではありません。「校長会」が各校の教育内容を決定したりする権限がないのと同様にです。

 学校の自由選択制が理由で「標準化した知能検査」が必要と考えるなら(「数値の一人歩き」を望むのならば!)、それぞれの学校で、「知能検査」の方法が提案、論議されていなければなりません。しかし、そのような手続きが、真面目にされた形跡はありません。

 校長会は「知能検査用紙を使うことを二〇〇八年度中に決定した」「四月に校長会で合意した」と言っているようです。しかし、その趣旨はすべての校長には徹底していないようです。これほど長い期間に準備したならばしっかりとした合意を取れるはずです。その根拠も含めて文書で提案がなされているべきです。しかしそんなものはありません。

 その後、何度校長会で「決定」しても、「確認の確認」をしても、この事実が変えられるものではありません。

 手続きにおいても杜撰・不誠実としか言いようがありません。

就学時健診は今までどおり

 以上の多くの間違いは正されなければなりません。これまで墨田で行われてきた各校での工夫や努力を大切にすべきです。それを無視して、全校同一「知能検査」用紙使用を強制することは、差別・選別教育を強制することになります。「知能検査」のような教育の根幹に関わる問題を、「便宜性」や「軽い気持ち」で扱ってはならないのです。

 「知能検査」用紙が送られてきたからといって、使われなくてはならないというものでもありません。

資料

@学校保健安全法

第三節 健康診断

 (就学時の健康診断)

第十一条  市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、学校教育法第十七条第一項の規定により翌学年の初めから同項に規定する学校に就学させるべき者で、当該市町村の区域内に住所を有するものの就学に当たつて、その健康診断を行わなければならない。

第十二条  市町村の教育委員会は、前条の健康診断の結果に基づき、治療を勧告し、保健上必要な助言を行い、及び学校教育法第十七条第一項 に規定する義務の猶予若しくは免除又は特別支援学校への就学に関し指導を行う等適切な措置をとらなければならない。


A学校保健安全法施行規則

第一節 就学時の健康診断

(方法及び技術的基準)

第三条  法第十一条 の健康診断の方法及び技術的基準は、次の各号に掲げる検査の項目につき、当該各号に定めるとおりとする。

一  栄養状態は、皮膚の色沢、皮下脂肪の充実、筋骨の発達、貧血の有無等について検査し、栄養不良又は肥満傾向で特に注意を要する者の発見につとめる。

二  脊柱の疾病及び異常の有無は、形態等について検査し、側わん症等に注意する。

三  胸郭の異常の有無は、形態及び発育について検査する。

四  視力は、国際標準に準拠した視力表を用いて左右各別に裸眼視力を検査し、眼鏡を使用している者については、当該眼鏡を使用している場合の矯正視力についても検査する。

五  聴力は、オージオメータを用いて検査し、左右各別に聴力障害の有無を明らかにする。

六  眼の疾病及び異常の有無は、伝染性眼疾患その他の外眼部疾患及び眼位の異常等に注意する。

七  耳鼻咽頭疾患の有無は、耳疾患、鼻・副鼻腔疾患、口腔咽喉頭疾患及び音声言語異常等に注意する。

八  皮膚疾患の有無は、伝染性皮膚疾患、アレルギー疾患等による皮膚の状態に注意する。

九  歯及び口腔の疾病及び異常の有無は、齲歯、歯周疾患、不正咬合その他の疾病及び異常について検査する。

十  その他の疾病及び異常の有無は、知能及び呼吸器、循環器、消化器、神経系等について検査するものとし、知能については適切な検査によつて知的障害の発見につとめ、呼吸器、循環器、消化器、神経系等については臨床医学的検査その他の検査によつて結核疾患、心臓疾患、腎臓疾患、ヘルニア、言語障害、精神神経 症その他の精神障害、骨、関節の異常及び四肢運動障害等の発見につとめる。

B学校保健法施行規則の一部改正等について

平成一四年三月二九日・各都道府県教育委員会教育長あて

文部科学省スポーツ・青少年局長通知

一 就学時の健康診断の方法及び技術的基準

 知能については、これまで、標準化された知能検査法によって知的障害の発見に努めることとしていたが、標準化された知能検査法以外の方法によることも可能であることから、検査法を限定せずに、適切な方法であればよいこととしたこと。なお、適切な方法としては、医師等の専門家による面接や行動観察等が考えられること。

3 就学時健康診断票の様式(第1号様式)

(7) 様式の(注)に記載された「その他の疾病及び異常」の欄の記入方法については、これまで、知能の程度についてその区分を記載することとなっていたが、就学時の健康診断は確定診断ではないため、知的障害の疑いがあり検査等が必要と認められる者については、その旨を記載するよう改めたこと。

C学校保健法施行規則 ※2002年以前

第一節 就学時の健康診断(方法及び技術的基準)第一条の十

・・・・知能については標準化された知能検査法によつて知的障害の発見につとめ、・・・

※下線は引用者による。

 私たちは、法・規則に、「知的障害の発見に努め」「健康診断の結果に基づき、・・・義務の猶予若しくは免除又は特別支援学校への就学に関し指導を行う」とある限り、基本的には「就学時健診には問題がある」、「反対である」という立場をとります。



週刊墨教組 No.1573               2009.9.14
個々の教員の希望実現に向けてとりくみを強めよう
  不当な異動を許すな!
  一〇年度定期異動作業始まる
組合は誰からの相談にも誠実に対応します


 異動は労働条件の大きな変更です。労働条件の変更は、交渉事項です。都教委・校長が本人の希望を無視して、一方的に異動させることがあってはなりません。現任校で、新たな職場で意欲をもって働くには、何よりも個々人の事情が配慮され、個々人の異動希望が実現されることが前提になるのは当然のことです。
 二〇〇三年に改悪された現行の「教員の定期異動実施要綱」は、校長の学校経営を最優先としたものです。その結果、「恣意的な判断や、差別的な扱い」・「遠距離勤務や健康状態に配慮しない等」人権無視の異動が強行された事例が、昨年度も東京教組に報告されています。不当な異動を許してはなりません。闘わなければ、現状を改善することはできません。
 墨田教組は、あくまでも強制異動に反対する立場を堅持し、異動作業が進行させられる中で、個々の教員の希望実現に向けてのとりくみを強化していきます。

異動作業
 日程が都教委から示されています。(資料)※一部墨田区教委の異動作業日程を加筆
十月二一日〜二八日
  校長ー地教委ヒアリング
  校長は人事構想を区教委に示し、具申書を区教委に提出します。ヒアリングは、小学校から行政順に実施。都合により校長間で順番を変更することがあります。各学校のヒアリング日程は校長から職員に知らされる場合が多いです。二八日以降も個々の事情でヒアリングが続けられることもあります。
  校長は、ヒアリングの日程に間に合わせるように、自己申告書の提出を求めます。
十一月三〇日異動検討結果地教委連絡
  「異動するかどうか」の結果が都教委から区教委へ連絡されます。当然、校長を通じて本人にも連絡されます。例えば、次のようなケースです。必異動対象者で、現任校に引き続き勤務を希望している人。現任校三年未満で異動を希望したい人。現任校に引き続き勤務したいが、校長が異動させたい人。異動を希望しているが校長が異動させたくない人。異種学校間異動等
十二月一日 異動検討、再検討受付
  前日の結果に対して、再度、都教委に異動検討を具申・内申する。
 
「異動」自己申告書、9自由意見欄 
 今年度から、自己申告書(異動について)を使用します。9自由意見欄に、異動に関する要望、異動にあたって知ってほしいことなどを記載します。
(1)異動を希望する人は、異動を希望する地区に順位をつけて記入します。@○○区△△線沿線、A◎◎区◇◇線沿線等。そのあとに、介護・保育・通院など異動にあたって配慮すべき事情を記入します。
 必異動(現任校6年以上)で現任校に引き続き勤務したい人は、この欄に、残りたい理由を記入します。昨年度より欄が広くなっています。必ずこの欄に記入してください。校長が作成する異動申告書に、職員が記入した「自己申告書(異動について)」のコピーが添付されます。
(2)次に、個々人の事情を校長に具申させるとりくみです。
 校長「具申」の具体的な方法は、校長が作成する「異動申告書」の【異動に関する意見と理由】欄に個々人の事情と校長としての要望・意見を書くこと。区教委のヒアリングの際にその事情・要望を出すことです。そこに向けてのとりくみが大切です。
 都教委は、組合に対して「区市町村教育委員会を通じて校長に対して、本人が事情等特に申し出た事項については異動申告書の校長所見欄、異動に関する意見欄に記載するように周知する。また、本人の異動について、その有無も含めて本人に伝えるよう周知する」と答えています。

島しょ地区、西多摩地区
町村公立小中学校教員公募
 都教委は、昨年度から、定期異動に際し、「島しょ教育に意欲と適性のある教員」を公募しています。今年度からは、檜原村、奥多摩町教育委員会も公募しています。希望する職員は、別途応募用紙等に記載し、応募します。異動の可否については、地教委・校長より知らされます。(日程は資料参照)



第六〇回 全国労働衛生週間 


 墨田区でも今年度から、「墨田区学校安全衛生委員会」が設置されました。組合側委員として、墨田教組、都教組墨田支部、都校職組墨田から各一名が、参加しています。
 教員の場合、「職場の安全・衛生」について民間の事業所と比較すると大きく立ち遅れています。特異な例ですが、「救助袋」が設置されている教室が常に施錠され、「救助袋」が実体的に使用できない違法状態にある職場もあります。「安全」に関する意識が極めて低い管理職の例でもあります。文科省は、再三「公立学校等における労働安全衛生管理体制の整備促進」を通知しています。それだけ、全国的に学校職場の労働環境が悪化している証しです。
 委員会では、@職員の安全・健康に関すること、A労働時間の適正な管理を主に論議をしています。「学校職場のメンタルヘルス」、「産業医との健康相談」については、具体化を始めました。さらに、今後、B職場巡視が具体化される予定です。C労働時間の適正な管理をいかに具体化していくかが、大きな課題となっています。
 @に関して施設・設備の改善が必要な職場は、校長に要望を出してください。また組合にも要望を出してください。集約して来年度予算への要求として、区教委と交渉します。


原子力空母母港化反対
全国集会
9月26日(土)  13:00〜
 昨年9月25日に原子力空母の横須賀母港化が強行され、まもなく1年がたちます。母港化により、40万kw級の原子炉が安全性を不問にしたまま、横須賀に存在し続けています。また、基地機能の強化とアジア太平洋からインド洋にかけての空母機動部隊の軍事力強化につながっています。さらに、原子力空母の修理や放射性物質の扱いについての内容が非公開のままで、政府・外務省や横須賀市も十分な説明責任を果たしておらず、地域住民の不安は解消されていません。
 地域住民の安全と東北アジアの平和の視点から、原子力空母の横須賀母港化撤回を訴えるため、抗議集会にご参加ください。

日時  2009年9月26日(土)
集会13:00〜 デモ行進13:45〜 14:45終了予定
場所  横須賀市ヴェルニー公園
JR横須賀線「横須賀駅」/京浜急行「汐入駅」徒歩2分
内容  集会:現地からの情勢報告・国会情勢の報告・
 各地の連帯あいさつ 等
  デモ行進:ヴェルニー公園→NTT横須賀
主催  フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)他



週刊墨教組 No.1572               2009.8.25


総人件費削減を許すな!
  〇九人事院勧告
最悪水準のマイナス勧告
  年間給与 平均一五万四千円の引き下げ


 人事院は八月十一日、政府と国会に対し、@民間給与との較差八六三円、〇.二二%を解消するため月例給を引き下げる、Aボーナスは〇.三五月の過去最高幅の削減、B住居手当(持家部分)の廃止、C超過勤務手当割増率の改定、育児休業・介護休暇等の改善、D六五歳定年制の実現に向けた検討、E採用試験の基本的な見直し、能力及び実績に基づく人事管理への転換等、給与や人事管理などに関する勧告と報告を行った。
 人事院は、本来、労働基本権制約の代償機関であり、中立・公正な第三者機関であるべきです。日本経団連は、〇九春闘の結果(定昇込み)として、大手五、七五八円・一.八一%、中小三、四八六円・一.三八%のアップであったことを明らかにしています。アップ率は昨年より低くなったとはいえ、本給は引き上げ傾向にあるのです。国家公務員の定昇率一.〇六%を考慮しても、月例給削減は意図的につくりだされたものと言わざるを得ません。〇九勧告は「公務員の賃下げを強行し、さらに民間の賃下げを狙う賃金削減サイクルを加速させようとする」財界・政府与党の人件費削減政策に従ったものと断ぜざるを得ません。このことは、人事院が政府の総人件費削減政策に従い、中立・公正な立場を自ら放棄したものと糾さなければならない。
 勧告・報告の主要点は次の四点です。

1.月例給・ボーナスの引き下げ
◆官民給与の較差(八六三円、〇.二二%)、マイナス較差。平均改定率〇.二%
初任給を中心に若年層は引き下げを行わない。
七級(高年齢層?)以上は平均を〇.一%上回る引き下げ。
◆ボーナス民間の支給月数四.一七月(現行公務の支給月数は四.五〇月)
 〇.三五月引き下げ、年間四.一五月。
◆住居手当自宅に係わる住居手当(新築購入後五年に限り支給、月額二.五〇〇円)の廃止。(住居保障を職員官舎と借家手当に限定)
◆超過勤務手当時間外労働の割増賃金率等に関する労働基準法の改正を受けて改定。民間ではすでに実施。
 月六〇時間を越える超過勤務に係わる手当の支給割合を一〇〇分の一五〇に引き上げと代替休暇の制度化。

2.高齢期の雇用問題〜六五歳定年制の実現に向けて〜
 公務員の六五歳までの無年金化に対する制度として、定年制の延長を検討する。準備期間も勘案すれば、
 二〇一一年(平成二三年)中には法制整備を図る必要。

3.人事管理
◆採用試験の基本的な見直し
二〇一二年度(平成二四年度)の新試験の実施に向け、早急に具体化を検討。

4.その他の課題
◆両立支援の推進
 育児休業法
 「配偶者が育児休業法により育児休業をしている職員について、育児休業をすることができるものとする」等の改正する意見の申し出
 介護休暇
 短期介護休暇の新設
◆非常勤職員の処遇
 休暇非常勤職員にも忌引休暇(有給)、病気休暇(無給)が適用。
 健康診断勤務時間・期間が一定の要件を満たす職員に適用拡大

賃金・労働条件の改善は闘いにより獲られる
 公務員連絡会(日教組、自治労を含む)は、〇九人勧期の取り組みを、@生活を守る月例給与水準の維持、A生活防衛に必要な一時金支給月数の確保、B非常勤職員等の処遇改善と雇用確保などを重点課題に設定し、運動を強化してきました。しかし、夏季一時金で〇.二月削減され、一九九八年から一一年間で一時金では一.一月、平均年間給与は六一.五万円(今年度は一五.四万円)に引き下げられ、ますます厳しい生活を強いられることになります。
 「霞ヶ関にワーキングプアが存在してはならない」との立場から、非常勤職員等の処遇改善にむけたとりくみを強化してきたにも拘わらず、若干の改善があったものの極めて不満が残る結果になった。今後政権交代をはじめ、政治情勢が大きく変化するとしても「公務員バッシング」を背景に、公務・公共部門を巡る厳しい情勢が継続することには変わりはありません。
 文科省は、来年度予算案で「教職調整額の改悪、義務教育等教員特別手当のさらなる引き下げ」を企図しています。昨年度、都は国の施策に追随し義務教育等教員特別手当の削減を強行しました。さらに、給与制度の大改悪をも強行しました。賃金改善を含め、労働条件の改善は、闘いでしか獲られません。組合は、都に対し、「フラット化の緩和、号級増設などの二級給料表の改善、勤務時間七時間四五分を早急に実施すること」等要求してとりくみを強化しています。闘わなければ労働条件は切り下げられます。闘いましょう。



「学習状況調査」「個人学力プロフィール」中止を強く求める
 教育長に緊急課題を提出


 七月二四日、組合三役は区教委に対し、総会や分会長会で各職場から出された諸課題と経年課題の解決を図るため、区教委との意見交換を行いました。区教委からは、教育長・教育次長・学務課長・指導室長・すみだ教育研究所所長が参加しました。
 冒頭、委員長から、@職場労働環境の改善、A「学習状況調査」「個人学力プロフィール」の中止などについて問題提起をし、解決を求めました。今後、課題ごとにとりくみを強化していきます。

職場の権利を守るのは私たち自身
 職場労働環境の改善について区教委は、「『気もち良く働くことができる職場』は当然である。校長は職員の意見を吸い上げ、相互理解を図ることが必要」、「『病気休職』者、『若年退職』者が増えていることは、教員にとっても、子どもにとっても教委にとっても不幸なことである。立ち上げた労働安全衛生委員会の場でも実態把握・解決に努めていく」との見解を示しました。
 今後、勤務時間・休憩時間、宿泊行事に関する相殺時間等も含めて、職場労働環境の改善をめざしてとりくんでいきます。

「学習状況調査」 「個人学力プロフィール」中止を
 組合は一貫して、「学習状況調査」の実施に反対してきました。さらに今年度打ち出された「個人学力プロフィール」にも教育をゆがめるものとして反対してきました。
 「『学習状況調査』は区としての施策であり、中止はできない」と教育長は回答しました。また、「『プロフィール』は、個々の児童生徒への手立てと年毎の変化をとらえるもの」と、実施に強い意思を述べました。あまりにも現場の感覚・受け止め方とずれています。
 序列化につながらないか、年一度のペーパーテストにそれほどの情熱を傾けるべきかなどのやり取りがなされました。

職場からの提起と闘いをもとに
 以下、「学校ICT化」「諸外国からの転入者・入学者の『学習を保障』する基本方針」「その他」についても、事実として区教委がとらえていないものについては事実を調べ、これまでと同じように組合と協議しながら進めていくことを確認しました。
 今後も、組合は、労働条件・教育環境について、職場からの提起と闘いをもとに、とりくみをを強めていきます。

資料 緊急重点課題提案 2009.7.24


1.職場労働環境の改善
(1) 気もち良く働くことができる職場
@ 合意形成を大切にし、職員の意欲を引き出す学校運営の推進
◇「一方的指示命令、権限行使がリーダーシップ」と考えている校長が少なからず存在する。
◇職員会議を軽視する傾向がある。
A「病気休暇」、「病気休職」者、「若年退職」者増に対する実効ある対策
 実態把握、原因究明、対策の検討
(2)勤務時間が適正に守られている職場
@休憩時間の実態的確保
 ◇ 休憩室の設置。
 ・休憩時間であっても、職員室、教室にいれば何らかの仕事をしている実態。
 ◇ 休憩時間の意義の徹底、休憩時間が確保されているかの実態調査
 ・校内での会議、区教研や区教委主催の研修会でさえも、休憩時間に大幅に食い込むことが多々ある実態。たとえば、「学習個人プロフィール」説明会の開催時間。
A勤務時間の厳正な運用のために、次のことを校長に指導すること。
 ◇4月当初に勤務時間の割り振りを文書で確認すること。
 ◇週休日の意義の徹底、週休日の「割り振り変更」を厳正に行うこと。
 ◇宿泊行事における相殺(調整)時間の算定を、勤務実態に合わせて行うこと。
B長時間労働の実態把握
(3)その他
 ・職員の心身を健康に保つため、諸施設の改善を図ること。

2.教育環境の改善
(1)区の教育施策について
@教育研究所の施策について
 ◇「学習状況調査」を実施しないこと。
 ◇「個人学力プロフィール」は、学校現場の実態にあっていないため、混乱が生じている。中止すべきだ。
A「学校ICT化」にあたっては、学校現場が必要とするものを、混乱なく行うために、十分に相談、協議していくこと。
B 諸外国からの転入者・入学者の「学習を保障」する基本方針
 1. 区南部の小学校と、中学校に日本語学級を設置すること。
 2.児童・生徒の実態にあわせて「通訳介助」を措置すること。
 3.転入者・入学者からの教育要求や、要求に対する学校対応の実態を把握すること。「すみだ国際学習センター」(錦糸小内)では、入級する生徒数の増加のため、指導スタッフが不足している。
(2)その他
@「学級崩壊」・不登校児童生徒、中学校での「荒れ」の実態を把握し、各学校でのとりくみを支援すること
A「いきいきスクール事業」においては、学校に負担を強いることがあるという実態を把握し、生涯学習課が責任をもって適正に運営すること。

3.その他
@初任研、宿泊研について
  勤務時間の厳守、参加者のプライバシーの保護
A免許更新にあたっては、昨年の免許調査を基に、もれることのないように該当者に周知されたい。

週刊墨教組 No.1571               2009.7.24

人事考課・業績評価による差別分断支配に抗う
 
最高号給者は、査定昇給から除外
  競争と格差の拡大は、学校を「頽廃」に導く


 二〇〇九年度の「勤務成績に基づく昇給」(以後査定昇給)の差額精算が七月給料で実施されました。昇給辞令が該当者に伝達されています。伝達された辞令は、「六号給昇給、五号給昇給、二号給昇給(五五歳以上)」となっています。教員の業績評価の期間が四月〜三月となっているため、都職員の昇給月は一律四月ですから、他職種の職員とは異なって教員だけが七月に差額を精算する形で四月に溯って昇給します。
 都は「査定昇給」をプラス二号給五%・プラス一号給二〇%、合計二五%以内の人数で該当者を決めています。「公平」なら、四年に一回は誰もが該当するのです。しかし、この数年、「査定昇給=特昇」に一度も該当していない方が多々存在していることが分会から報告されています。裏返せば、校長の抜擢により「査定昇給」が特定の方に片寄っていることになります。査定昇給の決定経過は、@校長が職員の二〇%の範囲内で区教委に推薦者をあげます。A区教委は、各校長から出された相対評価を基に、小・中別に職員を相対評価(順位付けをして)します。B都教委は、これを受けて、「査定昇給」者を決定します。その際、校長から推薦された者は必ず「査定昇給」に該当します。相対評価の根拠は、業績評価です。
 今年度は、四月から新給料表に移行した結果、最高号給(教育職二級一七七号)者が都教委により意図的に多数つくられました。最高号給者は上位号給がないため「業績評価が良くても」査定昇給からは除外になっています。しかし、校長が二〇%以内で推薦する際の、母数となる職員数にはカウントされています。この結果、今年度の該当者が、「主任」に片寄っているなら、差別によるさらなる「賃金格差」が拡大されたことなります。都教委・校長は「主任」の定着をこうした面からも推進しているのです。

抵抗があるところ闘いが続く
 業績評価に対する苦情申し出が四月になって行われ、五月には区教委による双方からの事情聴取がなされました。これを経て、「校長による評価」が妥当であるかどうかを検討する「苦情検討委員会」が六月に開催されました。その結果が、六月三〇日付けで、七月中旬に苦情申し出者に通知された。「評価」に対する苦情申し出者を配慮することなく、「査定昇給」の推薦・決定手続きが進められているのです。校長による「第一次評価」が「絶対正しいもの」として機能しているのです。「苦情」が「昇給」には反映されない、欠陥制度と言わざるを得ません。しかし、評価の「公正性、透明性、納得性」を求めて「苦情を申し出る」ことは、管理者の末端である校長に対して一定の圧力になることは事実です。
 都教委(権力者)が評価項目・基準を一方的に決め、基準に沿って業績作りに専念する教員を優遇し、基準に合わない者を排除することは、必然的に教員の同質化を図ることになるのです。その結果個々の教員の個性や創造性を封殺させることになり、学校を「頽廃」に導くことになります。人事考課制度を定着させないためにも、抵抗をつづけようではありませんか。
 自己申告書を提出しても「昇給」しないのなら、提出することを止めませんか。自己申告書から解放されると気分が随分楽になります。
 止むを得ず「主任」になった方、「主任」には降格制度がありません。「主任の研修」などほっとけばいいのです。やらなければいいのです。賃金は保障されますし、昇給もします。なぜなら、「主任」には降格制度がないからです。

紹介


改悪教基法の実働化と闘う 10.23通達撤回!
通達に基づく処分撤回!

主任教諭制度で、
さらに教育現場の協力協働を破壊する
都教委にNO!を
8月28日(金)午後3時〜
都庁第二庁舎2階玄関前歩道


杉並区の 「つくる会」教科書採択を  許さない集会
 前回から「つくる会」教科書が採用されている杉並区では、田母神元幕僚長の講演会が繰り返し開かれています。「杉並の教育を考えるみんなの会」主催の集会に、多くの方が参加されることを!
 8月5日(水)11時半〜13時
 杉並区役所玄関前
(丸の内線南阿佐ヶ谷駅1分)


第16回統一マダン東京
 朝鮮半島の統一、民族の和解、北東アジアの平和、差別のない社会をめざして、在日韓国朝鮮人と日本の人々が真の友好関係を築いていく場(マダン)として、開催されます。
8月9日(日)午後4時〜8時
荒川区旧真土小学校校庭








過労死をなくそう!龍基金

第3回授賞式と記念講演
 湯浅誠さん(反貧困ネットワーク事務局長・年越し派遣村村長)
「貧困も過労死もない社会へ」
8月9日(日)午後2時〜午後5時
葛飾シンフォニーヒルズ

別館5階レインボー



8.15集会市民による社会変革  その未発の契機と可能性
グローバル化を旗印にした歪みにたいし、市民が主体的に社会を変革する方法とその可能性を考えます。
8月15日(土)13時〜16時半
日本教育会館(神保町5分)

対談とシンポジウム
ノーマ・フィールドさん
広田照幸さん
小森陽一さん
市野川容孝さん
参加費1000円

都同教夏期学習会
日時 8月25日(火)〜26日(水)
25日9時受付開始
場所 墨田区社会福祉会館

内容 ・木下川フィールドワーク
  皮革なめし工場見学
・地域の方のお話
・実践報告、討論 部落、朝鮮、   「障害」児、授業創造をめぐって


第28回韓国・朝鮮人殉難者追悼式
 9月5日15時〜
 荒川河川敷木根川橋たもと

 今年は、追悼碑が作られます。多くの方の参加を。




第32回東京都同和教育研究集会
 10月1日(木)9時〜
 曳舟文化センター

 講演 関野吉晴さん
「グレートジャーニー
関野吉晴が見続けてきたもの」
 実践報告



週刊墨教組 No.1570               2009.7.13

夏季休業を有意義に過ごそう

「忙しい・疲れる」、休憩がとれない。こうした環境から、少しは解放されるのが夏季休業です。夏季休暇五日間と年休を使って、職場としばらく縁を切ることも保障された権利です。また、自主的な研修に意欲的にとりくめるのも夏季休業期間です。「研修の取り扱い」が改悪されて八年目になります。組合は、自主的、自発的、主体的に行うべき「研修」の機会を保障させていくとりくみをすすめています。民間の教育団体が主催する研究会への参加も当然保障されるべきです。

 教員の研修のあり方は、一般の公務員の研修(国公法七三条、地公法三九条)の扱いと異なって、教育公務員特例法(以下教特法)で特別に規定されています。創造的な教育活動を営むには、日常不断の研修(研究と修養)活動が必要不可欠であることを教特法二一条で保障しているのです。
 一般の公務員の研修は、その規定から明らかなように勤務能率増進上のいわばその手段として他律的に課せられたものです。しかし、教員の研修は、その職務遂行上不可欠なものとしてあり、他律的に課せられるものではなく、自主的、自発的、主体的におこなわれるべきものです。また、二二条2項で、いわゆる承認研修の機会を保障しています。
 研修問題を考える場合、、先ずこの点を押さえておく必要があります。

自主的研修を実現しよう 
 区教委は教特法を遵守する立場にあり、区教委には研修の機会を保障する責務があります。区教委が研修内容・方法に介入することはありません。私たちは、「自宅研修」も含めて、あくまでも自主的、自発的、主体的に行うべき「研修」の機会を保障させていくとりくみを、粘り強くすすめていく必要があります。

教育公務員特例法二一条・二二条

 研修
二一条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。
 2 教育公務員の任命権者は、教育公務員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。
研修の機会
二二条 教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
 2 教員は授業に支障がない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。(以下略)


  墨田教組六月教研
    アーサー・ビナードさんの記念講演
       「歴史のコピー機」を聞いて


 「午後から晴れてきたので板橋区の自宅から」と、ビナードさんは待ち合わせの両国駅に自転車で現れた。事務所へ案内すると、汗にぬれたTシャツを着替える。二十三区内ならたいていは自転車で行かれると言う。組合会議室は墨田教組組合員だけでなく、他地区の方、OB/OGの方で満員だった。こちらで用意したペットボトルには「僕は水道水です」と手をつけずに、会議室に入り、この講演を引き受けてくださることになったいきさつをユーモアを交えて語り、本題に入った。

二大政党の「からくり」
 アメリカ合衆国(以後合衆国)の二大政党「制」の「からくり」を、今の日本の状況に重ねて、具体的に話された。
 合衆国では現在、共和党・民主党以外にいくつかの政党が存在している。しかしながら、それらの政党は、大統領選挙に至る過程で、完全に抹殺されてしまう。つまり少数の民意は、反映されないのだ。
 日本も小選挙区制の前は中選挙区制であり、いくつかの政党がそれなりに民意を反映した形になっていた。それが現在は政権交代が焦点化されても、既に二大政党の袋小路に入ろうとしているという。合衆国がまさに陥っているように、いずれの政党も資本の思惑通りに動くために存在し、ニュアンスの違いに過ぎない。民主党か共和党かの「決闘」は、真の味方となる候補者・政党を消すことになってしまう。この袋小路に入らず、踏みとどまり、それ以外の道にいけるのか、今、私たちは試されている。

「一票の重み」は、合衆国の方が軽い
 日本でも選挙後話題になる「一票の重み」は、合衆国ではどうなっているか。日本では、「一票の重み」が三分の一から、四分の一になると、国民が違法性を訴えて、最後は裁判所が、「是正するように」と判断し、時々定数を是正している。ところが、合衆国の大統領選挙は、大統領を選ぶ選挙人は各州二名と決まっている。三千六百万人のカルフォルニア州からも、二百九十万人のアイオア州からも大統領を選ぶ選挙人は、二名なのだ。「一票の重み」は、日本など問題にならないくらい大きな差がある。アイオア州の人口を元にすれば、カルフォルニア州は、二十四人の選挙人が出せる計算だ。それを各州一律にして、大統領選挙に巨額の金をかけてお祭り騒ぎのようにして行われている。あの雰囲気の中で矛盾を正当に指摘する論調は、すべて封殺されてゆくのだ。
 また、当然だが、合衆国の軍事費は合衆国の人々の税金が使われている。ところが信じがたいことに、軍事予算は予算全体に占める割合も、どのくらい使われているかも、秘密のベールに包まれているというのだ。CIAの予算も非公開なのだ。
 レトリックにも巧みなごまかしがある。「戦争のための予算」がいつの間にか「国防のための予算」にすり替えることによって「戦争とは」という論議、判断をせずに軍事予算を増やせるのだ。アメリカは、半世紀以上戦争をしていない平和国家だというのと同じだ。アメリカの戦争はきちんと宣戦布告をしなくてはならないと憲法に記されている。しかし、この間アメリカは宣戦布告をしていない。なぜならすべて警察活動だからだ。だから戦争はしていないのだというのだ。戦争がなければ戦費は使えないので、国防費になる。膨大な国防費になる。

憲法九条は、血の通った法律だが
 日本の憲法には、九条で「武器を作らない。戦争をしない。」と書かれている。だから軍隊は作れない。それを巧妙に「警察予備隊」「保安隊」「自衛隊」と名を変え、現在に至る。かっては「ソ連脅威論」や「中国脅威論」をマスコミにあおらせ、現在は「北朝鮮脅威論」に行き着く。七月三日には、ソマリア沖の海賊出没を口実に、「海賊」対処法が強行成立した。これは、期限を切った「特別措置法」のようなものではなく、恒久法として成立したのだ。合衆国が、「戦争」を「国防」に変えたと同じようなすり替えが行われている。
 合衆国憲法は、憲法そのものはすばらしいのだが、内実を失ってミイラ憲法になってしまっている。
 このままでは、九条もミイラ化してしまう。幸いなことに「九条の会」が全国で立ち上げられ、平和憲法を守る動きもでてきた。そう簡単には「戦争への道」には行かせない。また、行かせてはならない。
 何か悪い法律を通すときは、国民の目をそらすために、必ず別な事件をでっち上げる。「海賊」対処法が成立したとき、「草g剛逮捕」のニュースが出た。昔「白装束集団」が、話題になっていたときも「自衛隊の海外派兵」が決まったのではなかったか。政府、マスコミの巧妙なごまかしには注意する必要があるだろう。

私たちは戦前を生きている
 「百年に一度の経済危機」とよく言われる。一九二九年の世界恐慌から数えれば、八十年目なのに、それを百年という曖昧な言葉でくくる。なぜ「百年」なのか。一人の個人の記憶では及ばない時間単位で表すことにより、現在の状況を、あたかも大地震や津波と同じような天災だと言いくるめようとしている。経済の破綻を修復するものとしての第三次世界大戦も考えられる。「ぼくらは戦前を生きている」という言葉が胸に突き刺さった。私たちは、未来から戦争責任を問われているのだという自覚を持たねばならない。
 「History repeats itself」 この言葉にふれて、ビナードさんは言う。「百年に一度」という修辞を弄して自然現象のように歴史を語ろうとするのはまちがいだ。この表現では、戦争はまるで天災であり、時のめぐりであるようにごまかしている。繰り返すには「原稿」が必要だ。
 「海賊」対処法は、まさに繰り返すための「原稿」である。さまざまな権力の思惑の法律が、三分の二という勢力で、通されてた。このような「原稿」がコピーされていくことにより、憲法から血が抜き取られミイラになってしまうことが危惧されている。
 「歴史のコピー機には、今や『お待ちください』の表示は消えている。今、ボタンを押させないこと、『原稿』そのものをコピー機から取り出し捨てることを私たちはしなくてはならない」。ユーモアをこめながら、最後の締めくくりを、表題とつなげて語られた。
 アーサー・ビナードさんの見識・造詣の深さと感性の鋭さ、そして人間としての暖かい視線に接することができた貴重な時間だった。

終わりに
 毎日の仕事の多さに忙殺され、ともすると目先のことだけに終始している私自身だが、アーサー・ビナードさんの言葉「戦前を生きている」を胸に刻み、責任を持ち、自分のできることを正しく見つめ行動していかねばならないと強く感じた。また、時間があったら、ひょっこり「別な問題」でも来てくれそうなお話ぶりだった。また。「こんな雰囲気で話が出来、とてもよかった。」とも言ってくださった。
 会が終わったあと、文化放送の「吉田照美のソコダイジナトコ」の打ち合わせに間に合わないのでと、組合の電話で打ち合わせをされた。次の日、木曜朝六時にラジオをつけると、「迂回政治献金」の話を「鵜飼い政治献金」にもじって語っていた。鵜飼いである政治家は、「政治献金」という金ずるを、うまく操りながら、ある時は「鵜」の首をゆるめて「違法に金を集めている」。さすが、ビナードさんと唸ってしまった。 


週刊墨教組 No.1569               2009.6.29


「教員の有期雇用化」を阻止しよう
「教員免許の更新制」
政治の場でつくられた制度は、政治の場で廃止を!


 遁走した安倍政権の下で制度化された、「教員免許の更新制」が今年度から、本格実施に入っています。この制度は、教育基本法の改悪を受け、具体化された新自由主義と国家主義が結びついた具体的な施策の典型です。しかも、教員免許の有効期間を一〇年とすることは、とりも直さず、「雇用期間を一〇年間」と有期雇用化するものです。また、「免許更新」により政府・国が教員を一元管理し統制する制度でもあります。政治の場でつくられた制度は、政治の場で廃止することが可能です。その意味において、来る選挙は極めて重要な選択です。

新自由主義の具体化  教員の免許更新制
 学校教育の様々な問題を、「自己責任」論に基づき、「教員個人の資質」に矮小化し、「教員個人の資質向上」によって解決しようとするのが、新自由主義路線です。条件付採用期間をそれまでの六ヶ月から一年に延長し、新採者に一年間の初任研を義務づけ、評価し、正式採用の可否を決めているのが具体化の始まりでした。都における昨年度の新採者(条件付採用者二五六四名)のうち、都から正式採用を不可とされた者九名、年度途中に自ら退職を選択せざるを得なかった者六九名でした。
 教員の免許更新制は、初任研と同質のものです。教員の資質・能力は「リニューアル」が必要であるとし、「資質向上」を自費で行い、認定された者が教員免許の更新ができ、雇用が保障されるのです。「免許更新講習の終了認定基準」を文科省の指導を受け、各大学は、HPで明らかにしています。評価の分布割合は定かではありません。文科省が分布割合を強制することになると、必ず不認定者を出すことになります。
 校長・副校長・主幹は講習が免除されています。教員が、有期雇用の者とそうでない者に分別され、差別と格差の拡大を固定するのが教員免除更新制です。廃止するしかありません。



シベリア抑留とは何だったのか
     ―詩人・石原吉郎のみちのりー


 なつかしい人の訃に接するたびに、よみがえる石原吉郎の詩がある。



まちがいのような
道のりの果てで
霰はひとに会った
ひとに会ったと
霰は言った
 (ひとに会うには
  道のりが要る)
会わなければ もう
霰ではなかったろう
霰は不意にやさしくなり
寄りそってしずかな
柱となった
忘れて行くだけの
道のりの果てで
霰は ひとに
道のりをゆずったが
おのれのうしろ姿が
見えない悲しみに
背なかばかりの
そのひとを
泣きながら打ちつづけた

石原吉郎 詩人。
(一九一五・十一・十一〜七七・十一・十四)
 静岡県生まれ。東京外語卒。一九三九年、応召。翌年、北方情報要員として露語教育隊へ分遣。四一年、関東軍のハルビン特務機関へ配属。敗戦後、ソ連の収容所に。四九年二月、反ソ・スパイ行為の罪で、重労働二五年の判決。スターリン死去後の特赦で、五三年十二月、帰国。五四年、「文章倶楽部」に詩を投稿し、詩作を開始。翌年、詩誌「ロシナンテ」を創刊。主な詩集に『サンチョ・パンサの帰郷』『水準原点』など、また評論集に『望郷と海』『断念の海から』など。(『石原吉郎詩文集』講談社文芸文庫)

   *

 丹念で丁寧な取材の軌跡が、一冊の本となって出版された。
 畑谷史代『シベリヤ抑留とは何だったのかー詩人・石原吉郎のみちのりー』(岩波ジュニア新書)である。
 畑谷は、「はじめに」で、つぎのように書いている。

「シベリア抑留は、日本の敗戦後に、およそ六十万人に上る旧日本軍の兵士らがソ連の捕虜となって、シベリアの強制収容所で強制労働に従事させられた歴史上の出来事です。
 厳しい寒さと、重労働と飢えは、抑留された人の一割に当たるおよそ六万人の命を奪いました。その悲惨な状況は、体験者の手記や記録でさまざまに伝えられています。
 石原吉郎のエッセーは、しかし、そうした手記とはおもむきが異なっていました。それは石原が、悲惨な体験の奥にあるものを見つめようとしたからなのでしょう。

 石原吉郎が、抑留体験のなかに見ていたものは何か。そして、戻ってきた戦後の日本に、何を思ったのか。石原の足跡をたどり、ゆかりの人々を訪ねた取材は、『石原吉郎、沈黙の言葉―シベリア抑留者たちの戦後』という題で、二〇〇七年十月から〇八年五月まで、信濃毎日新聞文化面で全三一回の連載となりました。この本は、その連載をもとにしています。」

 長野在住の友人は、この連載に衝撃を受け、ずっと記事のコピーを送ってくれていた。
 その反時代的ともいえる連載が、奇跡のように小さな本となって結晶したのだ。

   *

 石原吉郎は、「ペシミストの勇気について」のなかで、ストルイピンカ(拘禁車)に乗せられ、シベリア本線で囚人護送される情景と体験を、つぎのように書いている。

「暗い貨車の中に大きな樽が二つ用意されており、一つが飲料水、他が排便用であることを知ったときの私たちのよろこびは大きかった。〈走る留置場〉と呼ばれるストルイピンカでの経験から、人間は飢えにはある程度耐えられても、渇きと排泄にはほとんど耐えられないことを思い知らされていたからである。ストルイピンカでは、排便は二十四時間に一回という、忍耐の限度をこえたものであった。
 私たちは貨車に乗り込むや否や、争って樽の水を飲んだ。飲めるうちに飲んでおかなければ、いつ飲めなくなるかも知れないという囚人特有の心理から、飲みたくない者まで腹一杯飲んだ。便器があるという安心もあったが、その容量まで考えて自制するような余裕は私たちにはまったくなかった。仮にあったとしても、すでに始まった混乱と怒号のなかではどうすることもできなかったであろう。発車後数時間ではやくも樽をあふれた汚物が、床一面に流れはじめた。私たちは三日間、汚物で汚れた袋からパンを出して食べ、汚物のなかに寝ころんですごした。収容所生活がほとんど無造作な日常と化した時点で、あらためて私たちをうちのめしたこれらの経験は、爾後徹底して人間性を喪失して行く最初の一歩となった。」

   *

橋をわたるフランソワ

明日のないフランソワは橋をわたる
眉のあいだのしずかな距離を
とおくあるく
眉のあいだへ燃えおちる火を
とおくふりかえる
黄金と靴型であふれた日々
信じぬいたそのへだたりを
みずからの膝へおもみをかけ
信じつつはるかさかのぼる
やさしいフランソワ
生きのこるための兇器
明日のないフランソワは橋をわたる
フランソワ
どうするフランソワ
明日のないままで
橋をわたるフランソワよ

 この詩の韻律にこめられた深切な絶望と断念は、どこから来るのであろうか。
 石原吉郎は、エッセー集『日常への強制』(構造社)で、つぎのように書いたのだった。

「私は八年の抑留ののち、一切の問題を保留したまま帰国したが、これにひきつづく三年ほどの期間が、現在の私をほとんど決定したように思える。この時期の苦痛にくらべたら、強制収容所でのなまの体験は、ほとんど問題でないといえる。」

 畑谷史代は、帰国とそれにひきつづく三年ほどの期間の日本の情況について、次のように指摘している。

「冷戦の激化にともない、GHQ(連合国軍総司令部)は日本の民主化・非軍事化路線を転換させた。左派勢力への弾圧が強まるさなかに日本に戻ってきた抑留者たちは、強い反ソ感情にさらされた。おしなべて「アカ」「赤化分子」のレッテルをはられ、社会から疎外された。
 故郷に戻った後も警察官に監視され、居たたまれなくなって故郷を出た。「シベリア帰り」を理由に就職を拒まれたー。こうした目にあった抑留者は少なくない。
 生活のためには、抑留のことは口にしない。そう心に決めて、戦後を歩いてきた抑留者たちがいる。」

 そして、帰国直後、なによりも故郷の親族から受けた耐え難い屈辱の仕打ちを、畑谷は次のように記している。

「抑留中に父母を亡くした石原は、親せきの家に身を寄せる。江戸時代から代々、村名主を務めた旧家だった。当主のおじはその晩、石原がもし「アカ」ならば今後のつきあいはできない、物質的な親代わりはできないが精神的な親代わりにならなれるーと告げた。」

 全く理不尽で狂暴な外部にあらがうために、石原吉郎は、必死で詩にしがみつくほかなかった。

花であること

花であることでしか
拮抗できない外部というものが
なければならぬ
花へおしかぶさる重みを
花のかたちのまま
おしかえす
そのとき花であることは
もはや ひとつの宣言である
ひとつの花でしか
ありえぬ日々をこえて
花でしかついにありえぬために
花の周辺は適確にめざめ
花の輪郭は
鋼鉄のようでなければならぬ

   *

 畑谷史代は、つぎの言葉で、この本をしめくくっている。

「石原は、シベリアのラーゲリ(強制収容所)での体験と向き合い、生き延びた自分自身を深く問い詰めるなかから、戦争や強制収容所を生み出す存在としての『人間』を見つめた。
 ならば、戦争や強制収容所を出現させない『人間』になるには、どうしたらよいのだろう。
 『答え』はないのかもしれないけれど、石原の書き残したものを読み返していこうと思う。手がかりを探して、あの戦争を体験した一人ひとりの言葉に耳を澄まし続けていこう。その言葉の奥に、『語れない』思いがあることを、心に留めながら。」

   *


 付録として、元気の出る石原吉郎の詩。



いっぽんのその麦を
すべて苛酷な日のために
その証しとしなさい
植物であるまえに
炎であったから
穀物であるまえに
勇気であったから
上昇であるまえに
決意であったから
そうしてなによりも
収穫であるまえに
祈りであったから
天のほか ついに
指すものをもたぬ
無数の矢を
つがえたままで
ひきとめている
信じられないほどの
しずかな茎を
風が耐える位置で
記憶しなさい




週刊墨教組 No.1568           2009.6.9

中学校教科書採択に
学校・教員の意見を反映させよう
 採択権は教員にある これが国際的常識
  各学校での調査・研究は
「平成二一年六月九日〜六月二二日」


 今年度は、二〇一〇・二〇一一年度使用の中学校教科書の採択年になっています。墨田区教委は、四月一日付で「平成二二年度使用中学校教科用図書採択の方針について」(資料2で採択の基本方針を示し、六月一日に「学校における平成二二年度使用中学校教科用図書見本本の調査研究について」(資料1)を出し、具体化しました。
 私たち教員は、「主たる教材」としての教科書を使用・活用して、日々児童生徒の指導に当たり、その実態と課題を把握しています。故に、私たちこそが、どの教科書を採択決定することが「未来を切り拓くすみだの子ども」を育成するにふさわしいか判断できるのです。学校・教員の意見を無視して採択決定することは許されません。

「意見を付して」ということの意義
 誰にも打ち消すことができない厳然たる事実というものがあります。
 教科書採択にあたって、豊富な経験に裏打ちされ、子どもたちの現実をつぶさに熟知している教員の意見が取り入れられることは、自然なことなのです。
 久保孝之教育長は、二〇〇一年四月二十四日、墨田教組・都教組墨田支部に対して、次のような態度表明を行っています。
 「墨田区教育委員会は、教科書採択にあたり、各学校に教科用図書を調査研究させ、その結果を報告することを求めている。墨田の地域及び児童・生徒の実態・課題を把握し、日々教科指導をおこなう学校・教員の意向は尊重され、生かされなければならないと考える。学校から出された調査研究結果報告は、教育委員会が採択決定するにあたって重要な判断材料とされる。」
 資料2『教科書採択の方針』の「教科書の調査・研究及び審議」には、
「(1)各学校における教科書の調査・研究 各学校は教科書の見本本の内容等を教科指導にふさわしいかどうかを調査し、調査結果に意見を付して審議会に報告する。」と規定し、『教科用図書採択事務取扱要綱』の第六条にも、「各学校は、教科用図書を教科ごとに調査研究し、調査結果に意見を付して、・・・中略・・・審議会に報告するものとする」と規定しています。
 現場の教員による真摯な教科書調査・研究の意見は、審議会が判断を形成する上での重要な要素・要因となって、反映されるのです。
 墨田の教員の作風と伝統を継承して、しっかりととりくまなければなりません。

現場教員の意向尊重が
原則かつ時代の流れ
採択権は教員にあるー国際的常識
@「教員は生徒に最も適した教材および方法を判断するために格別に資格を与えられた者であるから、・・・教材の選択と採用、教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである」(ILO・ユネスコ勧告 項)
 この勧告は、授業の主要な教材である教科書の採択権は、本来、教員にあり、「児童の教育をつかさどる」権限の重要な一部を成していることを示しています。
 この国際的常識の立場に立つことが、何よりも重視されなければなりません。
 現行法規のもとでは、教科書の採択権限は教育委員会にあるとされていますが、その規定自体が、こうした国際的常識に反していると言わざるを得ません。少なくとも、現行法のこの規定は、こうした国際的常識に基づき解釈されなければなりません。つまり、採択権限が教育委員会にあるとしても、その行使に当たっては、本来的に教科書選択権を持つ教員個々の、あるいはその集団(その基礎単位は学校)の採択意向を十分に尊重して行うことが前提とされていると、解釈することが至当です。

調査・研究を形骸化させるな!
 教科書採択は、四年ごとに実施されます。二〇〇八年三月に、文科省は「新学習指導要領」を告示しました。この「新学習指導要領」は、二〇一一年度から小学校、二〇一二年年度から中学校で完全実施の予定です。中学校では二〇一一年度までは、現行学習指導要領に基づく教科書が使用されます。そのために、今回、調査・研究の対象となる教科書は現行と変わらない内容のものとなっています。現在の教科書はすでに五年間使用しています。その使用過程で、現行の教科書の善し悪しが児童への指導を通して、明らかとなっています。また、他区から転入された教員、この間に採用された教員の方にとっては、「新たな視点」での調査・研究に基づく意見があると考えられます。内容が変わらないことから、調査・研究を形骸化させてはなりません。二〇一二年度から、使用される教科書は、教科によっては大幅に内容の改訂がなされます。次回の採択は、遅くとも二年後になります。次回の採択に向け、「調査・研究」を十分に保障させる体制をつくり出す意義も含め、「より良い教科書」の採択をめざしてとりくみを進めましょう。

締切りが延期された理由
 延期されたのは墨田区だけではありません。「歴史・公民」の教科書をめぐって「つくる会」が分裂した影響で教科書が届かなかったことによると考えられます。無責任極まりない教科書出版社といわざるをえません。


資料1

21墨教指第132の2 平成21年6月1日
各中学校長様
墨田区教育委員会事務局 指導室長 仁王紀夫
学校における平成22年度使用中学校教科用図書見本本の調査研究について
 このことについて、下記のとおり実施します。
 つきましては、貴校における見本本の調査研究並びに各教科用図書の調査結果の提出についてご配慮くださるようお願いします。

1 見本本の調査研究について
   各中学校は、下記展示期間内に見本本展示会場において、すべての教科用図書見本本の調査研究をおこない、調査結果に意見を付して教科用図書選定審議会に報告する。
(1)教科書展示期間
  平成21年6月9日(火)〜7月3日(金)
(2)見本本展示会場 ☆住所・電話・表現など略
1 生涯学習センター 9時〜17時 6月21日は休館日
2 教職員研修室(横川小内) 9時〜17時 
3 教育委員会指導室
※ 2・3に行く場合は事前の連絡をお願いします。
(3)「平成22年度使用中学校教科用図書採択のための資料」の作成・提出について
@ 別紙1「調査用紙作成上の留意点」および別紙2「教科用図書採択に関する調査および選定基準」に基づき作成し、下記のとおり提出をお願いします。
・提出物 別紙3(1〜9)「平成21年度使用中学校教科用図書採択のための資料」各教科ごとに記入並びに提出願います。別紙3の様式は、ファイルサービスに掲載しております。
・提出方法 「電子データ」による。
・提出先 墨田区教育委員会事務局指導室長(単等指導主事小阪裕紀)宛
電子データ(☆アドレス略)
・提出期限 平成21年6月22日(月)※終了次第、早めの提出にご協力ください。
A 記入に当たっては、現在採択されている出版者の見本本については必ずご記入ください。その他の出版者についてはご意見がありましたら適宜記入願います。

資料2


平成22年度使用中学校教科用図書採択の方針について
平成21年4月1日  墨田区教育委員会
 墨田区立中学校が平成22年度及び23年度に使用する教科用図書(以下「教科書」という。)の採択について、下記のとおり取り扱う。

1 教科書の調査・研究及び審議
 墨田区教育委員会が教科書を採択するにあたり、必要な調査・研究及び審議は、以下のように行う。
 ただし、今回の調査・研究の対象となる教科書の内容が、前回採択された現行の教科書と変わらないことから、今回の調査・研究は、前回の調査結果を踏まえて行うことを基本とする。
(1) 各学校における教科書の調査・研究
  各学校は、教科書の見本本の内容等を教科指導にふさわしいかどうか調査し、調査結果に意見を付して平成21年6月5日(金)までに審議会に報告する。
※調査期間は、原則として平成21年5月1日(金)から6月5日(金)までの間とする。
(2)平成22年度墨田区立中学校教科用図書調査委員会(各教科別に設置する)による調査・研究
  教科用図書調査委員会(以下「調査委員会」という)は、前回の調査結果を踏まえて独自の調査を実施し、各見本本の調査内容を平成21年6月5日(金)までに平成22年度教科用図書選定審議会に報告する。
※調査委員会は、6月5日(金)までの間に、5回以内の回数で開催する。
※調査委員会の委員構成
・委員長(校長又は副校長)及び各教科の教員の代表〔各2〜3名〕
(委員長は、原則として中学校教育研究会各教科部長等から選出する。)
(3)平成22年度教科用図書選定審議会(以下「審議会」という。)による審議
  審議会は、調査委員会及び各学校からの報告を受け、地域の実情や区民の意向なども参考に審議し、各教科の見本本についての審議結果を平成21年7月3日(金)までに墨田区教育委員会に答申する。
※審議期間は、7月3日(金)までの間に4回以内の回数で開催する。
※審議会の委員構成(合計9名)
・中学校校長会代表1名、区立中学校教育研究会代表(校長)1名
・調査委員会委員長代表1名 ・調査委員会副委員長代表1名
・地域住民・保護者代表2名 ・指導室長1名、指導主事(統括指導主事)2名
 (審議会の委員構成は、年度により異なる場合がある。)
(4)審議会委員及び調査委員会委員の選出・委嘱
 調査委員会委員は、平成21年5月1日(金)までに選出し、墨田区教育委員が委嘱する。
 審議会委員は、平成21年5月26日(火)までに選出し、墨田区教育委員が委嘱する。
2 教科書の採択
  墨田区教育委員会は、審議会からの答申を受け、総合的に判断したうえで、平成21年8月31日(月)までに教科書を採択する。
 なお、採択にあたっては、審議状況などを審議会から聴取することができる。










週刊墨教組 No.1567           2009.5.27

労働基準法、勤務時間の遵守
 完全週休二日、週四〇時間勤務
  「土曜補習教室」へ強制的に従事させられない
   校長が一方的に決められない
     違反は、六ヶ月以下の懲役又は五〇万円以下の罰金


週休日(土・日)の変更
 学校公開や運動会(体育祭)等の学校行事により、週休日に勤務を余儀なくされるケースが増加しています。その際の、週休日の割り振り変更(代休等)は、「労働基準法」に基づき行われます。
@労働条件の変更は、校長が一方的に決められるものではなく、労使の同意が必要です。週休日に学校行事を実施する場合は、年間の行事予定を決める際に、週休日の変更も同時に決めています。無計画に突発的に週休日の変更をすることは労基法上許されません。
A週休日の変更は、完全週休二日、週四〇時間勤務の枠内で行わなければ、労基法・東京都勤務条例違反になります。一週間は、日曜日に始まり土曜日が終日と決められています。(カレンダーを参照)従って、土曜日に学校行事がある場合、その週に週休日の変更を行うことが大原則になります。いわゆる先取りの形になります。都教委は、例外として、業務の都合上、その週に週休日の変更ができない場合、例えば「行事の準備が効果的にできない」場合は、以後の週に週休日を変更することができるとしています。
 区の職員の方は、週休日の変更がなされても、土・日に勤務した場合、割増し賃金が支払われます。

「土曜補習教室」
 六月から、小・中学校で「土曜補習教室」が実施されます。
 「土曜補習教室」が実施されるにあたって、週休日の変更により土曜日に四時間の勤務をする場合、その週の別の日に週休日を変更するのが大原則です。週四〇時間勤務だからです。「長期休業中にしか、割り振り変更ができない」というのは過ちです。また、土曜補習教室に強制的に従事させることも過ちです。「土曜補習教室」の実施に際し、組合と墨田区教委とが確認した内容を再掲載します。新たに墨田に来られたみなさん、他区のやり方とは違うかもしれません。わからないままに、校長に半ば強制的に「土曜補習教室」に従事させられていませんか。
 これらをふまえないで勤務時間等、労働基準法に違反すれば、「六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金」となります。


資料 組合と墨田区教委とが確認した内容

    土曜補習教室事業について

 土曜補習教室事業の実施に当たっては、(1)週の勤務時間40時間、週休2日制という学校職員の勤務条件を維持する(2)児童・生徒にとっての学校五日制の趣旨を逸脱するようなことがあってはならない、の2点が原則であり、その立場に立って、実施する。
 その立場から次の諸点に確実に留意、実施すること。

(1)@教員が指導員として当たる場合(校長が勤務を割り振る場合)、本人の理解と納得のもとに行う。
 A土曜教室の指導に当たる教員には「勤務時間の特例」を設定することになるがその割り振りにあたっては、当該教員の意向を聞いて行う。
 B土曜教室実施日の勤務時間の割り振り(出退勤時間・休憩時間等)は、事業時程の関係から月〜金曜日と土曜日とで異なる設定とすることができる。

(2)@実施校が運営する土曜補習教室への参加者は、児童生徒が希望し、その保護者が同意した者に限定されるものである。したがって、必ず参加申し込み書を提出させ、それに基づき参加者名簿を作成して行うこと。
  参加申し込み書を提出し、名簿に記載した児童生徒にのみ参加を承認する(思いつき的に参加してくる者の参加は認めないこと)。
  なお、この申し込み書と参加者名簿に記載があるものが、学校管理下にあるものであり、事故ある場合の「日本スポーツ振興センターの『災害共済給付制度』申請」を行う等の基礎となる。
 A補習教室事業の時程設定は、児童・生徒の実態も勘案し、実施校が独自に決定する(月〜金曜日と異なる時程となることも有り得る)。
 Bこの教室の参加者は、何らの経費負担を必要としない。ただし、教材として市販教材を使用する場合は、その経費は参加者の保護者に負担させるものとする。

(3)土曜補習教室の指導員は、実施校に勤務する教員、地域住民、保護者、及び教職志望の大学・大学院生等とするが、下記の点に留意すること。
 @「実施校に勤務する教員」には、校長・副校長が当然含まれる
 A各校二名分の指導員手当が予算化されているので、その活用に努めること。その活用に当たっては、当該学校の保護者はできるだけ避け、教員免許状取得者や人材育成の観点からも教職志望者を指導員として採用、手当を支給することが望ましい。
 B指導員には、「守秘義務」(職務上知り得た秘密を外部にもらしてはならない義務)があることを明確にし、教員以外については、誓約書を提出させること。
      以上


二〇〇九年度教研集会

   六月二十四日(水)午後三時開会
   墨田教組会議室
 記念講演は
  アーサー・ビナードさん(詩人・絵本作家)

演題 「平和の問題と今の政治状況」 (仮題)



とにかく、ラジオが今、面白い。テレビは、クイズか歌番組と低俗番組が幅を利かせている。そんな時、朝の忙しいときに朝食を食べながら、ラジオをひねってほしい。昔は、TBSラジオの森本毅郎さんがよかった。最近は、「吉田照美のソコダイジナトコ」が面白い。特に毎日変わるコメンテーターが、みんな異色で個性派ぞろいだ。アーサー・ビナードさんもその中のお一人である。日々動いている世の中のニュースを、辛口で批評している。われわれが、マスコミに毒されて、体制順応型になっている思考回路を正常に戻してくれる。朝日新聞で好評連載エッセイが、一冊の本になった。

 「マスコミが流すニュースの寿命は短く、ちょっと前の出来事がすぐに忘れ去られる。半年もたつときれいに祭られ、その健忘症的サイクルを、もしや権力者が悪用してはいないか。、一昨昨年母国のブッシュ政権が『大量破壊兵器』の脅威を声高に叫び、イラクを侵略した。それがことごとく虚偽だと知れると、大義名分を『中東の民主化』にすり替えた。その大義もよれよれになってくると、『テロとの戦い』を隠れみのに再度すり替える。
 ニュースの歯車と一緒に回っていると、そんな真っ赤な矛盾も目に付かなくなる。去年、一昨年、一昨昨年まで見据えようとする社会の一員に、なりたいものだ。」

 「同じことが日本国憲法についても言えそうだ。今まで『正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し』本気で外交に取り組んだ内閣はあっただろうか。古くて手垢がついたどころか、憲法九条はまだ新品同然だ。(途中略)軍事予算とその関連事業に、アメリカ国民はざっと八十兆円の税金を吸い取られる。憲法九条は、少なくともそんな殺傷の数字から日本国民を守っているのだ。」
「日々の非常口」
  アーサー・ビナード著(朝日新聞)

 今回の教研集会の記念講演は、私たちのものの見方・考え方に大きな刺激を与えてくれると確信します。墨田教組が長年追求してきた平和教育の実践に、大いに勇気と希望を与えてくれるでしょう。
 日夜、自己申告書だ、面接だと忙しくさせられている今日この頃。一服の清涼剤ともなるでしょう。
 今回、アーサー・ビナードさんにはお忙しいところを快く引き受けていただきました。たくさんの方に来ていただきたいと、今から楽しみにしています。どなたでも、参加できます。

アーサー・ビナード(Arthur Binard)さん
略歴(小学館webより)
 1967年、米国ミシガン州生まれ。ニューヨーク州のコルゲート大学で英米文学を学び、卒業と同時に来日、日本語での詩作を始める。 2001年に詩集『釣り上げては』(思潮社)で中原中也賞、05年に『日本語ぽこりぽこり』(小学館)で講談社エッセイ賞、 07年に『ここが家だ――ベン・シャーンの第五福竜丸』(集英社)で日本絵本賞、08年には『左右の安全』(集英社)で山本健吉文学賞を受賞。
詩集に『ゴミの日』(理論社)、訳詩集に『日本の名詩、英語でおどる』(みすず書房)、エッセイ集に『日々の非常口』(朝日新聞社)、『出世ミミズ』『空からきた魚』(ともに集英社文庫)、絵本に『くうきのかお』(福音館書店)、『はらのなかのはらっぱで』(フレーベル館)、翻訳絵本には『ダンデライオン』『どんなきぶん?』(ともに福音館書店)、『あつまるアニマル』(講談社)、『ひとりぼっち?』(徳間書店)、『カーロ、せかいをよむ』『カーロ、せかいをかぞえる』(ともにフレーベル館)、『焼かれた魚――The Grilled Fish』(パロル舎)などがある。
「花椿」「マガジンアルク」などに連載中。文化放送と青森放送でラジオ・パーソナリティーもつとめる。967年、米国ミシガン州生まれ。大学卒業と同時に、来日し、日本語での詩作、翻訳を始める。2001年詩集「つり上げては」で中原中也賞を受賞。2007年「ここが家だベン・シャーンの第五福竜丸」で「日本絵本賞」受賞。
 根底に、「平和」の問題を常に意識して、あらゆる問題に鋭いメスを入れて本を著したり、マスコミで発言している。
 現在、ラジオ文化放送「吉田照美ソコダイジナトコ」(朝6時〜8時半)の木曜日のコメンテーターとして活躍中。

 現在、朝日新聞夕刊に、お連れ合いの詩人木坂涼さんと「詩のジャングルジム」を毎月執筆。





週刊墨教組 No.1566           2009.5.18

暴挙
またしても政府の圧力に屈す
    東京都人事委員会 勧告強行
    夏季一時金〇.二月凍結
    断じて許すことはできない!


都人事委員会は、公正・中立な立場に立つこと
 東京都人事委員会は、五月一五日、都知事及び都議会に対し、「夏季一時金を〇.二月凍結する」旨の勧告を行いました。
 例年、都人事委員会は、一〇月にその年の都に働く公務員給与について勧告を行ってきました。四年連続の賃金引き下げや、「主任教諭」職の給料表の新設など、内容はひどいものになってきました。こうした勧告内容は、都人事委員会が、政府の「総人件費削減」路線に基づく総務省の強い圧力に屈服していること、また、都当局の言いなりになっている結果です。人事委員会は、労働基本権制約の代償として、第三者機関として、公正・中立な立場から勧告作業を行うべきものです。
 都労連、東京地公労は、都人事委員会に対し、国が夏季一時金切り下げをねらって調査を始めた四月に、「臨時調査を行わないこと」=「切り下げを許さないこと」を強く要請してきました。都人事委員会は、この要請を受け容れ、臨時調査を見送りました。しかし、都人事委員会は、またしても、政府の圧力に屈したのです。都人事委員会が、もはや第三者機関としての存在意義さえ失したものと断じざるを得ず、今回の「夏季一時金〇.二月」凍結勧告を許すことはできません。

国家公務員への人事院勧告

 人事院は五月一日、政治の圧力に屈し、拙速な調査を行い、夏季一時金〇.二か月分の支給凍結勧告を行いました。
 事の発端は、自民党が議会で議員立法に拠って公務員給与を削減しようとする動きを示したことです。公務員叩きをしかけ、「公務員賃金を下げたのはわが党だ」ということで選挙を有利にすすめようとしているのです。中立であるべき人事院は批判を恐れるあまり政府のお先棒を担ぎ、先記のような勧告をおこなったのです。

人事院の勧告
「民間企業の春季賃金改定において夏季一時金が大幅に減少していることがうかがえる状況にかんがみ、民間企業における本年の夏季一時金の決定状況を把握するため、約二七〇〇社を対象に特別調査を実施(四月七日〜二四日)」しました。
「調査完了率七五.六%。夏季一時金決定済企業(決定済企業)三四〇社(企業割合・・・十三.五%、従業員割合:・十九.七%)」
「@現時点では、全体の約八割の従業員の夏季一時金が未定」
 これが調査した内容です。わずか二〇%の会社・従業員の夏季一時金の状況は次のようでした。
「A夏季一時金の対前年増減率は△十四.九%。製造業では△二二.〇%、非製造業では△六.〇%と産業別に大きなばらつき」
「B調査対象全企業従業員ベースで見た対前年増減率は△十三.二%」
そして、このたった二〇%ほどの、ばらつきのある状況から、人事院は、次の結論を出したのです。
「十二月期の特別給で一年分を精算すると大きな減額となることを考えると、本年六月期の特別給の支給月数について何らかの調整的措置を講ずることが適当」(余計なお世話だ!)。
「現時点において夏季一時金の全体状況を精確に把握できないことから」(ならば結論を出すべきではない)
としながら、暫定的な措置として夏季一時金〇.二か月分の支給凍結勧告を行ったのです。とにかく公務員給与を下げたという「実績」が大切だったのです。

賃下げのスパイラルを止めよう

 この十年、教員の給料は大幅に引き下げられています。ことに今年から、旧二級教員は、さらなるフラット化により給料が低く設定されました。新三級(「主任教諭」)になれば確かに「旧二級」の水準を維持できますが、それもフラット化により早いうちに頭打ちになります。次は新四級(「主幹」)にならなければ「旧二級」の水準を維持できません。そしてその給与も新五級(「副校長」)にならなくては・・・。給与を低く抑えて競争による上昇志向をかきたて、「主幹」「管理職」にならざるを得ないように仕向けようというのが、賃下げの一つの理由です。そして、このように関門を多くすればそこで教員を選別することができます(現にたくさんの方が「主任教諭」選考で不合格とされました、業績評価が使われたと考えられます)。管理強化を目論む当局にとってはたまらないうまみです。
 教員相互の協力共働を意識的に仕事の中心にすえなければ、選別されてなった「主任教諭」は、より上位の者に従う=「管理職の手先」や「反動的な役割を担わされる者」にしかならないでしょう。
今回の凍結勧告で、比較的年齢構成の高い組合員は約十万円前後の凍結となります。
公務員給与が下げられるのは民間給与が下がったからだと説明されています。しかし、公務員給与を引き下げると何か経済的な効果があるのでしょうか。
労働者の賃金を引き下げて「空前の長期好景気」を現出させてきたそのつけが今、経済の不全として回ってきたのです。庶民の、「マネーゲーム」には回せない、なけなしの金を奪い取る形で、株長者は生まれたのです。責任はここにあります。
公務員給与の引き下げは確実に民間給与を下げさせます。不安定公務労働者の賃金を引き下げさせます。私たちは労働者連帯の立場からも、このような理不尽な勧告を撤回させなければなりません。

人事委員会勧告の概要
〜 6月期特別給の支給月数を一部凍結 〜
 民間企業における夏季一時金の大幅な減少傾向がうかがわれることから、民間の実態を職員給与に速やかに反映するため、暫定的な措置として6月期特別給の支給月数を一部凍結(△0.20月)
 特別給における業績反映の度合いを高める観点から、支給月数の凍結はすべて「期末手当」で実施(国は「期末手当」と「勤勉手当」を一部凍結)
年間支給月数(4.50月)については、現在実施している職種別民間給与実態調査の結果を踏まえ、本年秋(10月)に必要な措置を勧告する予定


教育研究集会の記念講演者
  六月二十四日(水)午後三時より 組合会議室
アーサー・ビナードさんについて(一)


 六月二十四日の教研集会で、講師をお願いしたアーサー・ビナードさんについて、簡単な履歴を紹介します。
 一九六七年、米国ミシガン州生まれ。大学卒業と同時に、来日し、日本語での詩作、翻訳を始める。二〇〇一年詩集「つり上げては」で中原中也賞を受賞。二〇〇七年「ここが家だベン・シャーンの第五福竜丸」で「日本絵本賞」受賞。根底に、「平和」の問題を常に意識して、あらゆる問題に鋭いメスを入れて本を著したり、マスコミで発言している。現在、ラジオ文化放送「吉田照美ソコダイジナトコ」(朝六時〜八時半)の木曜日のコメンテーターとして活躍中。

偶然の出会い
 アーサー・ビナードさんとは、全くの偶然でつながりを持つことができた。
 四年ほど前に私の住んでいる川口で、映画監督の山田洋次さんとアーサー・ビナードさんの対談が催された。私は、山田洋次さんの話を聞くためにいった。失礼ながら、アーサーさんについては全く存じあげなかった。
 二時間近くの対談で、私の興味はすっかりアーサーさんに移っていた。
 日本に来て二十年あまりで、流暢に日本語を話され、しかも日本の古典から明治・大正・昭和の日本文学にも大変詳しい分析をされていたからである。また、日本の政治にも明るく、鋭い分析をされていて、びっくりもしたのだ。つねに「治められる側」の庶民・市民の目で、「治める側」の政治家・財界を切れ味鋭く、ぶった切っていくところにも、興味をそそられた。
 話の最後に、「私が歌で尊敬する師匠は、椿錦二先生です。」とアーサーさんは話された。驚いた。椿錦二さんは、歌人として有名であるが、それだけではない、
私が豊島区に勤務していた頃、クラスの子どもの保護者だったからだ。
 会が終わり、購入した本にサインを求めた折りに、椿錦二さんについて確かめた。すると、間違いなくそうであることがわかり、「私は椿さんのお嬢さんを、小学校二年生の時に、一年間だけだが担任した者です。」と伝えたのであった。
 あれから三十五年経ったのだということをその時改めて思い、家に帰ってから、すぐに椿錦二さんへ、昔お世話になったことを思い出しながら、手紙を書いた。すぐに返事をいただき、しばらく経ってからアーサーさんのサイン入りの本が送られてきた。「日本の名詩、英語でおどる」という本で、明治・大正・昭和の二十六人の有名詩人の詩を原文とならべて英訳したものであった。英語は苦手だが、懐かしい詩ばかりが載っていた。
 その後、アーサーさんの本を読み始めている。その中の一節を紹介する。

「イラク侵攻の世論操作
大まかな流れはこうだったー軍隊をイラクに侵攻させる前に世論をどうかしなきゃと焦り始めたブレアー政権は、ブレーンストーミングをして、急きょ、サダム・フセインに関する調書を作り上げることに決めた。できあがり次第すぐ公表するわけだから、本当は、シークレットではないのだ。あとは「確かな情報筋から」でごまかしても、出所について問い詰められずに済む。ところが、肝心な「確かな情報」の持ち合わせがなかったと見えて、とりあえずインターネットなどで「テロ」だの「サダム」だの「大量破壊兵器」だの、使えそうなテーマで検索、ついにドンピシャリのものを嗅ぎつけた。
カルフォルニア州のモンテレーに住むイブラヒム・アルマラシと言う大学院生が、フセイン政権のあの手この手について書いた論文。それは一九九一年の情報に基づいての研究だった。しかも、「スパイ調書」とするには、大学院生の口調は穏やかすぎたのだ。
英国のブレアーのブレーンたちは、そこで恥ずかしげもなく論文に手を加えた。たとえば、フセイン政権が各国の在イラク大使館を対象に「監視した」とあった箇所を、「スパイ行為をした」に変え、「反対派組織」を「テロ組織」に化けさせ、もちろんぬかりなく、十二年前の昔話であると言うことを伏せた。これだけじゃさびしいと思ったのか、ネット上「ジェーンズ・インテリジェンス・レビュー」という軍事専門誌から記事をダウンロードして、切ったりはったりで青年アルマラシ君の文とミックスさせた。
そんな「調書」が発表されると、まず最初に米政府のパウエル国務長官は「すばらしい資料だ」と賞賛した。それから興味のある一般人が読み出したわけだが、そのうちの一人、ケンブリッジ大学の政治学部の講師をつとめるグレン・ラングワラ氏が、「コレッテデジャビュ?」と不思議に思い、いぶかしがって調べだし、ブレアー政権の盗作がばれてしまった。(中略)
専門家とマスコミから追及されても、結局、ブレアー政権は「書いてあることが正しい」と開き直り、そのままブッシュ政権と手を携えて、イラク攻撃に踏み切った。(後半略)」
・・・「日本語ぽこりぽこり」(小学館)より

 日本でも話題になったが、時の小泉政権は、アメリカのイラク攻撃をいち早く支持し、自衛隊を出動させた。「安全なところに派遣させたのであって、私にもどこが安全か分かるわけない。」と笑いをとって、イラク攻撃に荷担していった。小泉氏は自民党をぶっ壊すと言って総理になった。しかし自民党ではなく、日本国民の最低限の幸せをぶっ壊したのだ。アメリカ人も五千人以上なくなり、イラク人はその十倍の五万人以上がなくなった。今も犠牲者が続いている。これが日本が加担した「正義の戦争」だった。

 アーサーさんの政治に対するコメントは、いつも読み手に大切な「ものの見方・考え方」を提示してくださる。

 今回、大変お忙しいアーサーさんを講師にお招きできるのは、ひとえに、椿さんとそのお子さん、つまり私の「教え子」さんのおかげです。執行委員会でアーサーさんを講師にとの話があった時、すぐに「教え子」さんに電話して連絡をとってもらった。お嬢さんとはあれから三十五年、年賀状のやり取りをしていた。

 どなたでも参加できます。どうぞ、お気軽にご参加ください。(続く)


週刊墨教組 No.1565           2009.4.30


憲法改悪阻止 
二〇〇九年度運動方針、予算を決定

墨田教組 第六四回定期総会
 「違憲教育基本法」の実働化を許さず!
 墨田の地で、
   労働組合としての機能と責任を果たし続ける


 
第六四回定期総会が、四月二二日、すみだ女性センターで開催されました。違憲教育基本法の実体化である教員免許更新制本格実施、「主任教諭」職導入の中、教職員組合の責務として、闘い続ける意志を確認しました。
 総会は三時一五分に加藤副委員長の開会宣言、「緑の山河」斉唱、議長を選出してすすめられました。役員紹介の後、執行部を代表して委員長が挨拶。
形は変わっても、闘いは続けられている
 「私が墨田教組にやってきた二十年前、管理職や地域保護者との間でかなり激しいやり取りを経験しました。たった二十年で時代は大きく変わりました。かつてあったような闘いだけを「闘い」と言うならば、今、「闘い」はかなり困難かもしれません。しかし、変わった時代・教育状況の中にあって、私たちの闘いはその形を変えながら続いています。さまざまな形態をとりながら、墨田教組は墨田の地で教育労働組合としての機能と責任を果たし続けています。
 
時代状況は急速に悪化しています。労働全体の場では、働く者の低賃金・無権利・大量失業状態があります。子どもたちにも経済的文化的な格差が広がってきています。「労働者派遣法」が多くの職種に適用され、これまで労働者・労働組合が営々と獲得して来た労働者保護・労働者の社会的権利が奪われてきています。一九九五年日経連「新時代の『日本的経営』」提言が、今、十四年目にその毒々しい「花」を咲かせているのです。これを良しとする者はほとんどいないでしょう。
 
私たちの職場でも、期限付き任用などという不安定雇用、本来ならば行政が直接責任をもたなくてはならない施策を民間委託の形で不安定で安価な労働力でまかなおうとしています。「主任教諭」職が全国に先駆けて導入されました。多数の教員を半分に引き裂けば、その半分は言いなりになり、主幹ー副校長ー校長の階段を昇るべく競争するだろう。万全を期するために、賃金の切り下げすら行ったのです。新自由主義政策は教育の場をもおおっています。上意下達、物言わぬ教育労働者をつくろうとしています。
 しかし、その苦しく絶望的に見えるときこそが反撃のときでもあります。二〇〇七年六月墨田教組教研に講師として迎えた反貧困ネットワーク事務局長湯浅誠さんは、日比谷年越し派遣村で、政府の新自由主義政策の不当性と、働く者の団結を力強く訴えました。苦しい時代こそ、その苦しさを集めて反撃する条件に満ちているとも言えます。
 
私たちの職場でもそうです。この四月からの「主任教諭」職導入は、三十年前の主任制度、これの失敗による主幹職設立、にもかかわらず主幹職が一向に充足しない・・・ところから出た窮余の策です。三十年前からの主任制度の失敗は、主任手当拠出による主任制度の無化などの私たちの闘いの成果であり、主幹が一向に充足しないのは職場の協力共働がまだ生きているからです。「主任教諭」職導入は打ち込まれてしまった楔であります。打ち込まれたことにおいては敗北ですし、「苦しい」ことです。しかし、そこから私たち一人ひとりがどう行動するか、によってこれを何度目かの当局の失敗にさせることもできるのです。主任教諭職の導入は結果ではなく闘いの始まりです。
 このような状況の中で、私たちの行動が、重要になっているのです。労働組合は労働者自らを守ります。職場の中で、これまで墨田でかちとって来たまっとうなものに拠って、静かにでも異を唱え、思うところを伝えることが、この時代だからこそ重みを持ってくるのです。
 喜ばしいことに、今年新しく私たちの組合に加入された方がいます。私たちはこれからも闘い続けましょう。
 墨田の地で、教職員労働組合としての機能と責任を果たし続けるために、これまでやってきたこと、地道で原則的で愚直な教育労働組合運動を、私たち一人ひとりが毎日行っていこうではありませんか。」と呼びかけました。

 来賓として東京教組委員長の激励の挨拶の後、議事に入り、書記長が二〇〇九年度運動方針案を提案。提案を受け、六人の方が討論に立ちました。いずれも自分や職場の闘い・とりくみを具体的に紹介しつつ、執行部に対する要望も含め、方針案を補強する立場から意見を述べ、ともにとりくみ、闘いを呼びかけるものでした。
 四時四〇分に討論打ち切り、運動方針案に対する挙手採決が行われ、圧倒的多数の賛成で可決・決定されました。その後、決算・監査報告が承認され、続いて予算案について審議がなされ、採決で可決・決定されました。次に「東京教組大会代議員選挙」が行われ、三人の代議員が決定され議事は終了。委員長の団結ガンバロー三唱を最後に閉会しました。 



裁判員制度異議あり
 五月二一日に裁判員制度実施と言われるなか、その一ヶ月前にあたる四月二一日に、「裁判員制度実施をみんなで阻止しよう!」の集会が、降りしきる雨の中、日比谷野外音楽堂で開催されました。二〇〇四年五月に参議院で可決成立して以来、「司法改革」「司法への国民参加」といかにも民主的な制度のように、宣伝されているにもかかわらず、各種の調査では、市民の参加意欲は一向に高まらず、「積極的な参加」を表明している人は二割にも満たないのが現状です。制度への理解がこれほど不十分な中、国家権力が実施を強行しようとしているのには、重大な意図があるからです。集会での発言者、呼びかけ人の代表者の誰もが、「『裁判員候補の通知』は、現代版『赤紙』であり、この制度は『徴兵制のようだ』。日本を戦争ができる国へと変質させようとしている動きと一体となったものだ」と指摘しました。特に裁判員制度実施を阻止するため、罰則を恐れずに「裁判員候補拒否」を公表された方が印象的であった。 

裁判員制度は違憲!
 「私は人を裁くということはしたくない。縁もゆかりも恨みも面識もないような人を死刑台や刑務所に送るようなことはしたくない」、「今、納期までに品物を納めなければ、工場が倒産する」。このような方も、裁判所から通知がくれば、自らの意志に関わりなく基本的に出頭しなければならない制度が、裁判員制度です。「国民すべてが等しく司法に参加する機会を与えられ、かつ責任を負うべきだ」との考えから、出頭を拒否すれば一〇万円以下の過料を科せられるかもしれない。憲法で保障されている個人の思想信条、個人の生活を否定するのが裁判員制度です。「義務」が「公の秩序」が「人権」の上に位置付けられているのです。この裁判員制度が違憲と言われる理由のひとつです。
 国民の自由と権利を保障する「立憲主義」が貫かれているのが日本国憲法です。裁判員制度は、「個人の人権」の上に「義務」「公益」「公の秩序」を位置させ、「個人」を国家的なものに従属させ、立憲主義を否定する自民党の「新憲法草案」と整合するものと言えます。改憲の地ならしのひとつとして、裁判員制度が導入されたと言えます。憲法改悪阻止の立場から、裁判員制度に反対していきましょう。

裁判員制度実施をみんなで阻止しよう
             4.21日比谷全国集会
    4・21 集会宣言


 裁判員制度の実施が、あと一ヶ月後に、強行されようとしています。私たちは、この制度の実施を決して許しません。
 裁判員制度は、国民が要求した制度ではありません。この制度をはじめに提案した政府の「司法制度改革審議会」には、国民の声を代表する人は一人もいませんでした。数ある問題点は、制度が成立した二〇〇四年の国会では全く議論にもなりませんでした。その後の度重なる世論調査では、この制度に消極、反対の声が常に約8割存在しています。
 裁判員制度は、思想・信条・良心の自由を侵害します。人を裁きたくない、という私たちの気持ちは無視され、裁判員になることが強制されます。参加を拒否すれば一〇万円以下の罰が待っています。評議で意見を言わない自由もないうえ、その秘密を漏らせば懲役または罰金が待っています。こんな義務は憲法のどこにも書かれていない。明らかに憲法に違反する前代未聞の悪法です。
 裁判員制度は、被告人の人権を侵害します。被告人は、裁判員による裁判を拒否できず、非公開の密室であらかじめ決められた争点と証拠に従って、しかもほとんどが3日から5日という超短期間の裁判を強制されます。まともな防御権の行使をする余地はなく、冤罪がますます増えるということになります。
 裁判員制度の狙いは私たちの意識を変えることです。首切り・賃下げ・大失業時代の治安強化に備え、「お上とともに社会秩序を守る」そうした意識と習慣を育てることが狙われています。人を死刑や無期懲役に処する国家活動に国民を強制的に参加させる「現代の赤紙」です。
 裁判員制度の実施は決して許されません。
 裁判員制度が実施されれば、取り返しのつかない幾多の犠牲を国民と被告人に強いることになるからです。
 裁判員制度は、即時廃止するほかありません。
 私たちは、5月 日の実施を阻止するため、全国津々浦々、すべての地域、職場、学園から、さらに声を高く強く上げ、ともに手を携えて闘い続けます。あと一ヶ月間、歴史に禍根を残さないため、国会に、法務省に、最高裁に、そして日弁連に対して、私たちの危機感と腹の底からの怒りを突きつけましょう!
  以上、宣言します。
                      二〇〇九年四月二十一日
      裁判員制度実施をみんなで阻止しよう!4・21日比谷全国集会参加者一同


週刊墨教組 No.1564           2009.4.16

苦情の申し出期間
四月十三日(月)〜 四月二四日(金)
  勤労意欲を低下させる人事考課
「不信・怒り・恨み」の増殖
  デタラメな「評価」を許すな!



 都は、人事考課制度の公正性、透明性、納得性の向上を図ることを目的として、「評価結果に係わる苦情相談制度」を設けています。この制度は、「三月に面接による開示を受けた者」に対し、「開示された当該年度の評価結果及び開示面接の際の校長の対応」について苦情を申し出ることができる仕組みです。年々、「業績評価」が昇給や昇任、異動等に使われてきていることから、「評価結果」による不利益も拡大しています。個々の教員を選別することを当然のものとしているのです。選別は、差別を容認します。それ故に、職員の不満は増幅され、「職場の和」が崩されていきます。苦情を申し出れば、「苦情内容」が公の場に出ることになり、苦情対象になったことで、校長はそれなりに影響を受けます。「苦情を申し出たことを理由として、教育職員本人に不利益が及ぶことはありません」と都は明示しています。デタラメな、ヤル気を無くすような評価を許してはなりません。納得できるまで、校長を追求し、「評価や校長の態度」を是正させるべきです。人事考課制度を暴走させてはなりません。

「業績評価は公平・公正・客観的で
 納得が得られるもの」でなかったのか?
デタラメな「評価」は許さない
 墨田では、ほとんどの学校で開示・開示面接が行われました。しかし、要求しなければ「開示申請書」を配布しない、「面接請求期間」を二日間に限定し、三月の多忙故に「請求」が遅れ、「請求を却下」するなど、相変わらず世故い校長がいます。
 都教委は、「客観的事実に基づいて評価する」、「教育職員の職務遂行状況を十分に把握し、その記録を整備した上で、評価する」ことを校長に指示しています。
 しかし、自分の評価を知って、「ヤル気を無くした」、「腹立たしい」など「校長に対する怒りや不満」が組合に寄せられています。デタラメの最たるものは、
@当人の職務内容を十分に把握せずに評価している、
A「評価基準・水準」を職員に一切示さず、五月・十月の面接時に、「授業観察結果」で
  →裏面へ続く
 も、指導・助言をせずに「C」評価つけた、
B区教委に評価を提出した後のできごとをマイナス評価の要因として示したなどです。
 「人事考課制度は人材育成、能力開発が目的」と都は再三説明してきましたが、「人材育成・能力開発」どころか、職員のモラールダウンを招く結果になっています。デタラメな「評価」を許してはなりません。




 @校長は、副校長の立会いで、第一次評価の本人開示を行う。苦情相談制度の内容を文書で教示する。
A教育職員は、所定の様式により苦情を申し立てる。(職員団体による苦情の取次ぎ等も認められる)
B人事主幹課長等は、原則として教育職員への面接及び校長への事情聴取を行い、事実関係等の確認をする。
C人事主幹課長等は、面接及び事情聴取で判明した事実確認等の内容を、人事主幹部長に報告する。
D人事主幹部長等は、不明な点がある場合は、校長への事情聴取を行い、事実関係等の確認をする。
E人事主幹部長等は、苦情相談事案についての取扱い案を、苦情相談検討委員会に提出する。
F苦情相談検討委員会は、検討結果を人事主管部長等に報告する。
G人事主幹部長等は、取扱いを決定し教育長に報告する。教育長は取扱いを東京都教育委員会教育長に報告する。
H教育長は、問題がある場合は評価者への指導・注意等を含む対応を、人事主管部長等を通じて評価者に通知する。
I人事主幹部長等は、取扱いについての指導室課長等を通じて教育職員に通知する。
※苦情相談の過程で教育職員の納得が得られた場合は、人事主幹課長等又は人事主管部長等までで相談を終了する。


勤務時間の割り振りは、交渉事項
 労働条件・勤務時間の割り振りは、
年度当初に書面で示されるもの

 墨田の勤務時間の割り振りは、区教委と3組合との合意にそって、各学校で決められています。二〇〇八年一月一日からは、都条例で「休息」時間がなくなりました。その際、組合と区教委は、「休息」をなくすこと以外には、「従来の勤務時間の割り振り」で合意しています。



週刊墨教組 No.1563           2009.4.1

異動特集