週刊墨教組 No.1516     2007.2.20

戦争の記憶を風化させないために
三月十日を節目とした
特設平和授業のとりくみを進めよう



今年もまた三月十日がやってきます。六十二年前のこの日、墨田・江東を中心とした東京の下町は米軍のB による無差別絨毯爆撃で猛火に包まれて焼き尽くされ、一夜にして十一万五千人の尊い命が焼土に埋もれたのでした。東京大空襲は、広島・長崎の原爆とともに、戦争の悲惨さと非人間性を、平和と人間の命の尊さを教えてくれる大切な教材と言えるでしょう。
 「教育基本法」が改悪され、憲法をも改悪されようとしています。敗戦から六十二年、「戦争」とその反省が歴史のかなたに追いやられようとしている今日、「東京大空襲」を自ら学び、子どもたちへ語り継ぐことは、私たち教員の課題と責務です。
戦争の実相を伝える
 街を破壊し、人間の命を奪い、動物たちをも殺し、親子を兄弟姉妹を友人を恋人を引き裂く、これが戦争です。「広島」「長崎」「東京大空襲」の、語り部たちの体験談、手記、写真・・・・等々の貴重な資料は、今も戦争の悲惨や残虐、非人間性というその実相を伝えてくれています。
 私たち教員は、戦争の非体験者です。私たちは、戦争の実相を伝えるそれらの資料に学び、あるいは掘り起こし、自らの思想と言葉によって「戦争」を教材化し、その実相を子どもたちに伝えていかなければならないと思います。

侵略戦争に加担してはならない
 思い出してみてください。
 東京大空襲では、たった二時間半の爆撃で、十万人以上の死者がでました。人類史上に類を見ないジェノサイドです。人倫のかけらすらありません。生者ですら、焦がされた土地を逃げ惑い、さながらの生き地獄を体験したのです。
 イラク戦争下の人々の位相は、東京大空襲下の市民と同じ位相だったのです。繰り返されるアメリカによる常套の手口。現在のイラクの人々の境遇は、アメリカ・イギリスの不当な侵略に淵源しているのです。なによりもまず、冷静な洞察力をもって、侵略を告発し、断罪し、糾弾しなければなりません。
 自衛隊の出兵・、航空自衛隊派兵延長など、絶対に侵略戦争に加担してはならないのです。

教え子を再び戦場に送らない
 なによりも、まず、平和を。
 子どもは「お国のため」にあるのではありません。
 私たちの先達は、戦後、日教組を結成しました。そして、平和を希求して、「教え子を再び戦場に送るな」という不滅のスローガンが生まれました。これからもその精神を受け継がなければなりません。自分たちの職場で、『二度と戦争をさせない』とりくみを進めなければなりません。

組織的な平和教育のとりくみ
 墨田教組は、反戦平和教育の重要な課題として位置づけ組織的にとりくみを進めてきました。一九八八年からは、特に「三月十日」をひとつの節目に設定し、墨田の全学校で反戦平和教育の実践が行われることをめざし、墨田教組として統一的にとりくみを進めてきました。三月十日の前後には、特設授業や全校児童集会等々様々な形で、平和教育のとりくみが各学校で実践されています。このとりくみは、東京大空襲で壊滅的被害を受けた墨田におけるという意味で、地域に根ざした教育の一環でもあります。私たちは、これらの立場に立って、今年も三月十日を節目とした平和教育特設授業のとりくみを進めます。



具体的なとりくみ


身体的な戦争イメージ
 辺見庸は、自分自身が体験した「身体的な戦争イメージ」について、つぎのように語っています。
 「吐き気がするほどの恐怖感、底なしの虚無感・・・・・」「小銃弾が人の体を貫通したときの穴の具合も知らないでしょう。被弾した男はどういう風に悶え泣き叫ぶか。それから迫撃砲で吹っ飛ばされた人間の肉というのがどういう色をしているか。ロケット弾が宙を飛ぶときの空気の焼ける臭いがどういうものか。」
 戦場には、合理性や論理性は一切ありません。憎悪が憎悪を無限に拡大していく、それが戦争です。
 「戦争」は、時代や場所が変わっても、その本質が変わるものではありません。街が破壊され人間が殺されるのです。「東京大空襲」と同じように、さまざまな苦しみや悲しみが湾岸戦争・イラク戦争でも起きていたことを知らなければなりません。
 そして、イラクでは、今もなお、非人間的な惨状はつづいているのです。

ドキュメンタリー映画上映
人間の碑  〜90歳、いまも歩く〜
日時 2007年3月8日(木)
 18:00 開場 18:30 開演
上映後、杉山千佐子さんの挨拶があります。
場所 カメリアホール
江東区亀戸文化センター (亀戸駅北口2分)
主催 再び許すな東京大空襲!
反戦平和の集い実行委員会
※組合員の方は参加費1000円を補助します。


東京大空襲62周年
朝鮮人犠牲者を追悼する会

 3月10日の東京大空襲で壊滅した下町には、たくさんの朝鮮半島から強制連行された多くの朝鮮人が住んでいました。これまで遺族不明のまま東京都慰霊堂に納骨されていた朝鮮人と思われる遺骨を、2005年12月、東京都建設局公園緑地課の立会いの下、数十体を朝鮮半島出身者の遺骨と確認しました。
 この3月、空襲の犠牲となり長く放置されてきた朝鮮半島出身者を追悼する会を初めて開きます。多くのみなさんが参加されることを訴えます。

呼びかけ人 西澤清・金鐘(東京朝鮮人強制連行真相調査団共同代表) 早乙女勝元 山田昭次他

日時 3月3日午後2時〜4時(1時開場)
場所 東京都慰霊堂(横網公園)


墨田郷土文化資料館企画展
ー空襲体験者の記憶と表現ー

 区に寄せられた東京空襲体験画の作者数名にスポットを当て、新たに体験画の「下絵」「デッサン」などを展示します。一人の方の多様な表現を一堂に会し、それらを比較することによって、体験者が記憶を絵画作品に表現するまでの心の葛藤と軌跡をたどり、体験者の記憶の深層にあるものを考えていく企画です。

日時 2月10日(土)〜4月15日(日)
場所 墨田郷土文化資料館


第26回 下町追悼碑めぐり
森下〜立川

日時 3月10日(土) 午前10時から
場所 都営新宿線森下駅A2地上出口集合

 要津禅寺⇒弥勒寺⇒長慶寺⇒八百霊地蔵
⇒菊川橋夢違地蔵⇒竪四会館
※碑めぐりの最終の竪四会館で、町会の方々と
食事をはさんで交流をします。


主催 再び許すな東京大空襲!
反戦平和の集い実行委員会


週刊墨教組 No.1515         2007.2.15

人事考課制度にあくまで反対する
 点検しよう
  「評価は公平・公正・客観的で納得性をえられるもの」 
  「第一次評価」を全職員に開示
 デタラメな「評価」、差別昇給を許すな!


 都教委は、二月九日、「平成十八年度 東京都区市町村立学校教育職員定期評価本人開示実施要領」を組合に情報提供しました。「人事考課制度は人材育成、能力開発が目的」と都は再三説明してきましたが、この制度に対する職員の不満は強く、職員のモラールダウンを招く結果になっていることが指摘されてきました。また、人事考課制度は昇任・昇格・昇給・異動等労働条件に関する事項にリンクしたものであり、組合は「交渉事項」としてその改善を強く要求してきました。「評価の開示」は改善要求の一つです。「第一次評価」だけの開示では不満ですが、人事考課制度を暴走させないためにも、業績評価の開示を要求し、不当な評価、昇給を是正させましょう。

「デタラメ評価」を許すな
 二〇〇〇年度に、人事考課制度が強行導入されて以来、七年目して「開示」が実行されます。都は組合の開示要求に対し、その必要性は認めるものの、その実行を拒んできました。拒む背景には、「開示にたえられない評価」が少なからずあったものと思われます。特に「教育系では人事考課制度は成熟していない」と、二〇〇四年度には、都が制度の現状を分析しています。都の判断は、地教委からの聞き取り、評価者訓練での管理職の現状、私たち教員に対する評価結果からなされたものと考えられます。現在でも「デタラメな評価」がなされている可能性があります。こうした「評価」により、昇給や異動が決められることを許してはなりません。

 何とお粗末なこと
 「自己申告書」の最終申告、面接がなされています。最終申告では「A・B・C・D」による「自己評価」を記入します。「自己」とは「自分」、つまり自己申告書を書いている当人です。ところが面接で「自己評価」の訂正を強いる管理職がいるのです。そこまでも管理したい管理者とは何とお粗末なこと。

 「開示申請書」は全員に配布
 校長は、「開示申請書」と「……開示の実施について」を開示の希望有無に係わらず全教育職員に配布することになっています。その際、当然、校長から説明がなされることになります。机上に配布して説明をしない(できない)校長もいるようですが、説明を要求しましょう。都教委は開示の目的を「本人開示は、教育職員の人材育成、能力開発に資することを、目的としています」と述べています。説明をしない校長は、職務放棄と言わざるを得ません。




平成18年度東京都区市町村立学校教育職員
定期評価本人開示実施要領

東京都区市町村立学校教育職員の人事考課に関する規則第15条第3項に基づき、定期評価の結果について本人開示を行う。
 本人開示は、評価項目ごとの評価結果を教育職員が認識することで、優れている点についてはさらに伸ばし、十分でない点については今後改善していく契機とするとともに、校長及び副校長が教育職員の人材育成を進めていく基礎とするものである。開示の際には、評価者である校長と被評価者である教育職員とが、面接を通して十分な意見交換を行い、共通理解を深めるようにする。
 教育職員の人材育成、能力開発を一層推進していくため、平成18年度から、開示を希望する教育職員全員に対し、第一次評価(絶対評価)の結果を開示する。
 なお、開示された評価結果を継続的に人材育成に活用していく観点から、「業績評価結果を踏まえて実施する教育職員の指導育成」については、定期評価本人開示と合わせて実施する。
 また、人事考課制度の信頼性を高め、教育職員の人材育成、能力開発を一層推進する観点から、開示された評価結果に係る苦情相談の仕組みを設けている。


1 評価結果の本人開示
(1)目的
 業績評価制度における評価結果を教育職員本人に開示し、教育職員の人材育成、能力開発に資することを目的とする。
(2)開示の対象者
 被評価者のうち以下の教育職員とする(以下「被開示者」という)。
 @ 開示必須の教育職員
 ア 平成18年度の業績評価の第一次評価の総合評価が「D」のすべ ての教育職員
 イ 平成18年度の業績評価結果を踏まえ、校長が、特に指導育成の 必要があると判断した教育職員
 ※ 退職年度の教育職員、再任用職員を除く。
 A 開示を希望する教育職員
 ※ 平成19年3月31日現在、条件付採用期間中の教育職員を除く。
(3)開示者
 校長
(4)開示の対象となる評価結果の範囲
 第一次評価の項目別評価及び総合評価を開示する。
(5) 開示及び開示面接の実施期間
 @ 開示必須の教育職員(1(2)@に定める教育職員)
  開示及び開示面接期間:
平成19年3月12日(月)から3月16日(金)まで
の期間とする。
 A 開示を希望する教育職員(1(2)Aに定める教育職員)
  開示申請期間:区市町村教育委員会が定める期間とする。
   開示期間:平成19年3月19日(月)から3月30日(金)まで の間で、区市町村教育委員会が定める期間とする。
  開示面接期間:平成19年3月19日(月)から4月13 日(金)までの間で、区市町村教育委員会が定める期間とする。
  ※開示面接は、平成18年に実施することを原則とする。
(6) 開示及び開示面接の手順
 @ 開示必須の教育職員等(1(2)@に定める教書職員)
 「平成18年度教育職員定期評価本人開示申請書」及び「平成18年度教育職員定期評価本人開示面接申請書」による申請を要しない。ただし、1(6)Aイに基づく申請があった場合は受理すること。
 校長は、開示及び開示面接期間(1(5)@に定める期間)内に被開示者と面接を行い、原則として「平成18年度教育職員定期評価本人開示通知書」(要領様式1−1〜6)により評価結果を開示する。このとき、次のことを実施する。
ア 評価結果の本人開示
  校長が記入した「平成18年度教育職員定期評価本人開示通知書」(要領様式1−1〜6)により通知する(写し1部を保管し、原本を教育職員に交付する)。なお、教育職員本人の意向によっては、口頭説明のみでも可とする。
 また、評価結果に基づき昇給区分が下位(3号昇給以下)になる教育職員の場合は、併せて、昇給への反映について説明する。
イ 業績評価結果を踏まえて実施する教育職員の指導育成
  本人開示と同時に「業績評価結果を踏まえて実施する教育職員の指導育成」の面接を実施する。
ウ 苦情申出方法の教示
  校長は、被開示者に苦情相談制度の趣旨及び申出方法を説明するとともに、「平成18年度教育職員評価結果に係る苦情相談制度について」(要領別紙2)及び「平成18年度教育職員評価結果に係る苦情申出書」(要領様式6)を交付する。
A 開示を希望する教育職員(1(2)Aに定める教育職員)
 ア 「定期評価本人開示申請書」等の配布
  校長は、「平成18年度教育職員定期評価本人開示申請書」(要領様式2)及び「平成18年度教育職員定期評価本人開示の実施について(教育職員配布用)」(要領別紙1)を、開示の希望の有無に係わらず全教育職員に配布する。
 イ 開示の申請
  開示を希望する教育職員は、「平成18年度教育職員定期評価本人開示申請書」(要領様式2)に必要事項を記入した上で、開示申請期間(1(5)Aに定める期間)に、本人が直接、所属の校長へ提出し、開示を申請する。
 ウ 評価結果の開示及び開示面接の周知
  校長は、開示期間(1(5)Aに定める期間)に、被開示者に対して「平成18年度教育職員定期評価本人開示通知書」(要領様式1−1〜6)により評価結果を通知する(写し1部を保管し、原本を教育職員に交付する)。また、併せて「平成18年度教育職員定期評価本人開示面接申請書」(要領様式8)を配布し、開示面接について周知を図る。この際、被開示者のプライバシーに配慮し、開示通知書等は、原則として、本人に手渡しすること。
  なお、「平成18年度教育職員定期評価本人開示面接申請書」(要領様式3)の「開示面接申請期間」に校長は提出期限を記入の上、被開示者に配布すること。
 エ 開示面接の申請
  被開示者が開示面接を希望する場合、「平成18年度教育職員定期評価本人開示通知書」(要領様式1−1〜6)の交付を受けた後、「平成18年度教育職員定期評価本人開示面接申請書」(要領様式3)に必要事項を記入した上で、本人が直接、所属の校長へ提出し、開示面接を申請する。
  なお、開示面接は、開示の申請を行い、開示通知書の交付を受けた者のみ申請することができる。
オ 開示面接の実施
  校長は、面接申請者に対して、開示面接期間(1(5)Aに定める期間)に、開示面接を実施する。なお、開示面接は、平成18年度内に実施することを原則とする。
  その際、校長は、被開示者に苦情相談制度の趣旨及び申出方法を説明するとともに、「平成18年度教育職員評価結果に係る苦情相談制度について」(要領別紙2)及び「平成18年度教育職員評価結果に係る苦情申出書」(要領様式6)を交付する。
(7) 開示面接の方法
  開示面接に当たっては、十分に事前準備を行った上で、次の点を踏まえて行うこと。
 @ 制度の趣旨の説明
  校長は、被開示者に対して、人材育成、能力開発に資するという本人開示の趣旨・目的を十分に説明すること。
 A 職務実績に基づいた評価内容の説明
 校長は、自らが把握している披開示者の職務実績や具体的な行動等に基づき、当該評語を付与した考え方を説明すること。また、校長は評価の結果のみを被開示者に伝えるのではなく、その教育職員の優れている点や十分でない点について説明すること。
 B 今後の具体的な取組に関する指導等
  校長は、被開示者の人材育成、能力開発に資するよう、十分でない点については、どのようにしたら改善することができるのか、優れている点については、よりレベルアップを図るための方法について、できる限り具体的にアドバイスや指導を行うこと。また、日常の指導育成や自己申告の面接の場においても、開示された評価結果を踏まえ、継続的に人材育成を行っていくこと。
(8)開示面接への立会い
  被開示者に対する評価内容の説明等を充実させるとともに、開示面接の状況を把握することにより教育職員の指導育成をより的確に行うため、原則として、校長の評価へ関与する副校長は開示面接に立ち会うものとする。

以下略






週刊墨教組 No.1514    2007.1.30

墨田区教委二〇〇七年度予算案における主要事業

 小中学校への学校支援指導員、年間通して配置
 校舎・体育館の耐震強化、アスベストの撤去
 特別教室等の冷房化
 中学校七校、六十周年合同式典 
 小学校にもスクールカウンセラーの配置(週四時間)
 幼小中一貫教育の研究
 「若手教員指導支援室」の設置
 学力向上「新すみだプラン」の推進、増額


 墨田区の二〇〇七年度予算案における教育委員会の主要事業に関し、組合は、一月二九日、区教委から説明を受け、若干の意見交換を行いました。主要事業に関するプレス発表部分は資料の通りです。墨田教組が要求したものが部分的に予算化されているものの、事業の中止を強く求めた「学力向上『新すみだプラン』」に対する増額など事業の具体化にあたり、今後、監視と是正を求めるものも予算化されました。

小中学校への学校支援指導員、
       年間通して配置 
 昨年度事業化された「学校支援指導員」の配置が、十一ヶ月(八月を除く)に拡大されています。人件費の増額が難しい中、事業の拡大がなされています。指導員の確保や年間を通した活用計画など年度内に準備が必要となります。

アスベスト完全撤去
 アスベストにボール等の跡がついている所もあり、アスベストが損傷、劣化し、児童生徒・職員がアスベストを吸い込む危険な状況にあります。アスベストは「時限爆弾」と称されるように、吸い込んでから一五〜二〇年後に肺ガンや悪性中被腫等を発病する恐れがあります。飛散防止処置・撤去・撤去後の処置と作業にはかなりの日数がかかります。児童と職員の安全を確保することを第一に、各職場でアスベストを吸い込まない対応策を考えることが大切です。
 三寺小(廊下)、業平小(校庭トイレ)、東吾嬬小(給食室)、立花小(階段)、小梅小(階段 基準変更により新規)、本中(階段)、立花中(給食室)、墨田中(体育館への階段)、二中(給食室)

七カ年計画で校舎・体育館の耐震強化
 今年度は、二葉小の校舎、二寺小の校舎・体育館。寺中の校舎

中学校七校、六十周年合同式典
 組合は、周年行事の簡素化を要求し続けてきました。区長を含めた来賓等の式典への参加回数減だけに終わらせず、合同式典を機会に周年行事の簡素化が図られることを要求します。

特別教室の冷房化
 視聴覚室、図工室、美術室、家庭科室、理科室、少人数教室、技術科室

学力向上「新すみだプラン」の推進、増額
 国の「学力テスト」が予算化された中、都教委は「学力テスト」を止め、「意識調査」だけを実施することに変更しています。しかし、墨田区教委は、予算を増額し、事業の拡大を図っています。その拡大内容は「学習カルテの作成」となっています。詳細は未定ですが、個々の児童・生徒の何年間の「テスト」結果を「個人票」とするものと考えられます。「個人票」が更なる「学力」偏重に向かうことは明らかです。また、児童・生徒ひとりひとりの「学力データー」を業者が取得することになり、個人情報保護の面からも問題です。

小学校校庭の芝生化
 校庭の芝生化には課題があります。例えば、芝生への犬・猫等侵入防止対策。糞があれば除去と消毒が必要。芝生の維持管理のための地域の協力等。都は〇九年度までに全都の小・中学校の三〇%を芝生化する方針。〇七年度は七〇校を予算化。墨田は一校。様々なメンテナンスを保障させることを受け入れの条件にすべきです。

「若手教員指導支援室」の設置
 子どもと接し、互いの実践で同僚と意見交換できること。研究の自由。これらのことが保障されることが、教員が育つ条件と考えています。若手教員を学校現場から引き離し、「官製研修」浸けにすることには反対です。新採での退職、若手教員の病気休暇の増加を墨田区委は直視すべきです。

1月29日付プレス発表 墨田区教育委員会関係予算案

単位:千円
(教育委員会) 本年度 前年度 増減
1 隅田小学校の改築
  校舎改築工事(19〜20年度)
473,533 13,390 339,630
2 両国中学校の改築
  既存校舎を取壊し、外構整備
244,610 1,679,669 937,569
3 梅若小学校屋内運動場の改築
  実施設計、既存校舎解体
350,820 11,780 339,040
4 小中学校のトイレの洋式化
   各階トイレの洋式化
42,750 70,110 △ 27,360
5 特別教室の冷房化 (新) 66,103 0 66,103
6 小学校校庭の芝生化
小学校1校(北部地区)
34,500 0 34,500
7 旧学校施設の開放 44,667 47,098 △ 2,431
8 校舎・屋内運動場の耐震強化
   小学校 校舎2校 屋内運動場1校
   中学校 校舎1校
454,700 13,000 441,700
9 小中学校のアスベスト除去
  小学校5校、中学校4校
78,200 56,300 21,900
10 区立学校適正配置の推進
  第一吾嬬小学校と立花小学校の統合 (新)
  新統合実施計画の策定
72,938 1,047 71,891
11 区立中学校開校60周年合同記念式典の開催 (新) 1,000 0 1,000
12 新すみだ教育指針の策定 522 280 242
13 幼小中一貫教育の研究
  学習指導資料の作成
1,590 400 1,190
14 学力向上「新すみだプラン」の推進  (拡)
  学習カルテの作成
42,585 34,959 7,625
15 若手教員の指導・支援 (新)
  「若手教員指導支援室」の設置
3,918 0 3,918
16 通級型特別支援学級の設置 (新)
  小学校1校(柳島小学校)
18,436 0 18,436
17 全幼稚園・小中学校への(学校)支援指導員の配置 (拡) 80,101 35,500 19,756
18 外国籍等児童・生徒の支援 (新) 17,800 0 17,800
19 いじめ・不登校防止対策 (拡)
  「いじめ安心サポート室」の設置
34,382 14,626 19,756
20 コンピューター教育の推進 255,345 275,242 △ 19,897
21 児童・生徒のための食育推進 (新)
  食育講演会・講習会の実施
2,200 0 2,200
22 認定こども園(幼保総合施設)の検討 (新) 2,300 0 2,300
23 いきいきスクール(仮称)〜放課後子ども教室〜の実施 (新)
  小学校1校(モデル実施)
3,600 0 3,600
24 すみだ地域学セミナーの開催 (新) 4,500 0 4,500
25 図書館と学校図書館の連携推進 (拡)
  小・中学校10校
22,181 4,140 18,041
26 生涯学習センターの管理運営等
  教育相談、視聴覚ライブラリー、科学教室
  NPO法人「すみだ学習ガーデン」事業費
367,675 364,117 3,558
27 PFI手法による総合体育館の整備
  墨田区体育館を改築(22年4月オープン予定)
11,781 15,175 △ 3,394
28 総合型地域スポーツクラブの設立支援
  両国中学校地区(19年4月設立予定)
3,856 3,617 239
29 屋内プール体育館の補修 35,000 0 35,000




週刊墨教組 No.1513    2007.1.19

二〇〇七年度文科省予算案の概要

 教育基本法が改悪され、政治が教育に露骨に介入してくることが予想されます。財務省は、二〇〇七年度政府予算について原案内示をしました。また、都教育庁も来年度事業案を明らかにしています(都については次号で詳述します)。国会、都議会状況から判断すれば、それぞれの原案が可決されることになるでしょう。参議院選や統一選、知事選を意識した事業も予算化されています。 その具体化にあたり、組合は監視とささやかであっても抗っていきます。

教員給与財源の縮減は〇八年度に検討
 閣議決定されている「基本方針二〇〇六」では、教員の給与は一般公務員より高いとし、〇七〜十一年度までの間に給与月額の二.七六%(国庫負担分約四三〇億円、地方交付税八六〇億円)を削減すると記しています。予算案でその具体化を記していないことについて、財務省は、「人材確保法による教員給与の優遇分につき、二.七六%の縮減のみならず優遇分全体(七.二六%)を、教員給与のメリハリ付けと合わせ、〇八年度に一括して見直すことを大臣間で合意」と説明。賃下げと成績主義の強化を示唆しました。対国に対する賃金闘争の大きな課題となります。

全国学力調査六六億円
 〇七年四月に全国の小6・中3を対象とした「学力調査」のための経費として新規事業として六六億円を予算化しています。国が露骨に各学校を「序列化」し、各学校に介入しようとしているのです。改悪教育基本法の具体化の第一番でしょう。すでに実施されている区・都の「学力調査」は「序列化」と「学力」偏重等によるマイナスとして学校教育に現れています。
 「学力調査」は民間委託で実施されます。児童・生徒の個々の「学力」情報を企業が得るのです。「○○ゼミ」の形で勧誘され、さらなる「儲けの場」として学校教育が利用される恐れが多々生じるのです。墨田の子どもの「学力」情報を、三重に企業が得ていると言えます。「学力調査」は、企業にとって、個人情報の取得という、うま味のある事業なのです。
 「学力向上」なる美辞麗句はカモフラージュにすぎません。こうした視点から、組合は区教委に「学力調査」の中止と「国の協力要請」を断るように申し入れをしました。

放課後子ども教室設置五〇億円
 全国の小学校一万箇所を対象に、厚労省の放課後児童クラブと一本化し、余裕教室を活用した子どもの居場所や学びの場を設置するとしています。全国的に見れば、「学童クラブ」が普及していないことから、同様のものを小学校に設置することになるのでしょう。主旨からすれば、「生涯学習」の位置付けになるとことから、設置される学校では、当然教員はノータッチになります。都も約五億六千万円計上していることから、墨田でも設置される小学校がでるかもしれません。

その他
◇定数措置、特別支援教育・食育指導三年間で一五一〇人措置
◇いじめ問題対策六二億円
◇理数教育の充実七九億円
◇学校評価の推進八億円
〇六補正予算
◇校舎の耐震化対策
 小中学校一一三六億円 
◇いじめ対策(スクールカウンセラーの配置)三一億円









労働時間の短縮を求める

   勤務時間の改悪を許すな!
   休憩六〇分、昼にとれない

 休憩・休息時間の見直しに係わる人事院規則が「改正」され、二〇〇六年四月から、国家公務員の勤務時間では、休息時間が廃止され、休憩時間が六〇分とされた。総務省は、地方公務員法二四条五項「職員の勤務時間その他職員の給与以外の勤務条件を定めるにあたっては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。」を根拠に、各自治体に同様の改定実施するように指導した。これを受け、都当局は「休息時間の廃止及び休憩時間の見直し」を組合に提案した。〇六年賃金確定闘争の中で、この提案については「速やかに解決できるよう引き続き協議」でまとまった。都は、勤務時間の変更を、二〇〇七年度四月から実施するには、二月都議会で改定しなければならず、時間がないとして組合に解決を強く求めています。

拘束時間の一五分延長に反対
 現行休息時間は、午前・午後に各一五分、休憩時間は四五分、合計七五分となっています。提案されている休息時間の廃止と休憩時間六〇分では、一五分の差が生じます。結果的に拘束時間が一五分延長されるおそれがあります。現在、勤務時間が、八時一五分始業〜一七時退勤となっている職場は、休憩時間が六〇分に拡大されるとすると、退勤が一七時一五分となります。
 都の教育関係七単組は、勤務時間の短縮を求めて署名のとりくみをしています。この要求の根拠は、民間との均衡です。都区人事委員会は、都の民間事業所の所定労働時間に関し、都の公務員の勤務時間より週で一時間三〇分、一日あたり一五分短いとの調査結果を明らかにしています。都は、公民均衡の観点から、私たちの労働時間の短縮をすべきです。一五分の拘束時間延長は言語道断であり到底認められません。

本来、休憩時間は昼に割り振るもの
 民間も含め、多くの職場では、勤務時間の中間にあたる昼に休憩時間を設けています。これは、長時間継続勤務による健康被害や疲れによる職務能率の低下を避けるためです。学校職場では休憩時間の趣旨を生かした形で活用できていません。
 児童・生徒が学校にいる間は、休息・休憩が事実上取得できない現場の実態があります。都当局は、こうした学校職場の改善を先ず行うべきです。

第1回拡大委員会
1.日時  2月9日 (金) P.5:30〜
2.場所 墨田教組会議室
3.議題 
 @人事考課制度に反対するとりくみ
 A反戦平和教育について
 B2007年度執行委員定数について
 C教基法改悪後の闘いについて
 D2007年度区予算について  
 Eその他(東京教組役員選挙、人事異動について等)

改悪教育基本法の実体化を許すな!
    日教組東京4単組 1.29集会

                      
都高教 都障労組
                          
     都校職組 東京教組

 教育基本法「改正」案の成立は許してしまいましたが、わたしたちの闘いはこれで終わったわけではありません。改悪教育基本法の実体化である関連法の整備を許さないとりくみを強めていきます。
 教基法改悪反対の大きな流れを作ってきた大内裕和さんの講演があります。墨田教組も、教基法の改悪後の闘いを創り出してゆく今、決意を新たにしてこの集会に参加します。できるだけ多くの方の参加を呼びかけます。

1、日時 1月29日(月) 午後6時00分〜8時00分
2、場所 日本教育会館8F 第2会議室(地下鉄神保町下車)
3、内容 講演 大内裕和さん
       「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」呼びかけ人の一人

週刊墨教組 No.1512    2007.1.1

茨木のり子の詩を読みかえす

 茨木のり子が地上から去った。
 あとには、個人の尊厳がひかりかがやく詩が残された。
 いまひとたび、彼女の詩は読みかえされなければならない。

 詩集『倚りかからず』のなかに、つぎの詩がある。


   鄙ぶりの唄

それぞれの土から
陽炎のように
ふっと匂い立った旋律がある
愛されてひとびとに
永くうたいつがれてきた民謡がある
なぜ国歌など
ものものしくうたう必要がありま  しょう
おおかたは侵略の血でよごれ
腹黒の過去を隠しもちながら
口を拭って起立して
直立不動で歌わなければならないか
聞かなければならないか
   私は立たない 坐っています

演奏なくてはさみしい時は
民謡こそがふさわしい
さくらさくら
草競馬
アビニョンの橋で
ヴォルガの舟唄
アリラン峠
ブンガワンソロ
それぞれの山や河が薫りたち
野に風は渡ってゆくでしょう
それならいっしょにハモります

  ちょいと出ました三角野郎が
八木節もいいな
やけのやんぱち 鄙ぶりの唄
われらのリズムにぴったしで


 初出は、「櫂 号」(一九九四年十月)である。
 「櫂」は、川崎洋が茨木とはじめた同人詩誌で、大岡信や谷川俊太郎らが参加していた。
 この詩集は、書き下ろしの十二篇と、「櫂」に掲載された旧作三篇とで編まれている。
 詩集『倚りかからず』は、一九九九年十月に発行された。八月には、国旗国歌法が成立していた。
 「鄙ぶりの唄」を詩集に採ることで、詩人の社会的責任を自覚していた茨木は、つつましくもくきやかに時代への抵抗を示したのだった。

   *

 『詩ってなんだろう』という「詩の見取り図を書」いた本が、二〇〇一年十月に出版されている。
 「たんか」という項には、つぎの三首を「選び、配列し」ている。


あきののに さきたるはなを 
ゆびおりて かきかぞうれば 
ななくさのはな    山上憶良

わがきみは ちよにやちよに 
さざれいしの いわおとなりて 
こけのむすまで

かすみたつ ながきはるひを 
こどもらと てまりつきつつ 
このひくらしつ      良寛


 そして、つぎのような考え方を述べている。


たんかは、はいくよりながい。五、七、五、七、七のおとのくみあわせ。
こえにだしてよんでみると、いみはよくわからなくても、きもちがいい。
たんかも、はいくもにほんにむかしからある、詩のかたち。


 言葉と詩史についての無知・無恥と権力になびくずるがしこい居直り。
 著者は、谷川俊太郎である。


  *

 中田英寿は、自由な風にふかれて旅をつづけている。
 かつて中田は、「君が代はダサい」といって、世間から、したたかにたたかれたことがあった。
 それ以後の中田は、無表情に「君が代」を口パクでやりすごすようになった。中田の深い屈辱は、映像からも読みとれた。
 「君が代」をめぐる情況は、すでにファシズムそのものだったのである。
 二〇〇二年十月、その中田を、書き下ろしの詩で、毅然として讃えたのは、茨木のり子だった。



  球を蹴る人
    ーN・Hにー

二〇〇二年 ワールドカップのあと
二十五歳の青年はインタビューに答え て言った
「この頃のサッカーは商業主義になりすぎてしまった
 こどもの頃のように無心にサッカーをしてみたい」
的を射た言葉は
シュートを決められた一瞬のように
こちらのゴールネットを大きく揺らした

こどもの頃のサッカーと言われて
不意に甲斐の国 韮崎高校の校庭が
ふわりと目に浮かぶ
自分の言葉を持っている人はいい
まっすぐに物言う若者が居るのはいい
それはすでに
彼が二十一歳の時にも放たれていた

「君が代はダサいから歌わない
試合の前に歌うと戦意が削れる」
〈ダサい〉がこれほどきっかりと嵌った 例を他に知らない
やたら国歌の流れるワールドカップで
私もずいぶん耳を澄ましたけれど
どの国も似たりよったりで
まっことダサかったねえ
日々に強くなりまさる
世界の民族主義の過剰
彼はそれをも衝いていた

球を蹴る人は
静かに 的確に
言葉を蹴る人でもあった



週刊墨教組 No.1511    2006.12.20

教育基本法改悪に抗議する
  子どもはお国のためにあるのではない


「国家にとって有用な人材育成」に抗う
 一二月一五日、一七時五一分、参議院本会議で「教育基本法政府法案」が強行採決され、可決された。「教育基本法」が戦後六〇年近く一字もかえられることがなかったのは、この法が憲法と一体であるからだ。「教育基本法」が根本的に改定されることは、その改定内容が現憲法に違反する事態が生じる。このことは、下位法(教育基本法)が上位法(憲法)を否定することになり、許されることではない。
 何度も墨教組ニュースに掲載したように、近代憲法の本質は、個人の権利を尊重するために、国家権力へ歯止めをかけることにある。つまり、憲法は、国民を守るために、国家権力を縛る存在としてある。「教育基本法」は「個人の尊厳」や「個人の価値」をその基盤としている。それは暴走する可能性がある国家権力を法によって規制し、個人の権利を守るという立憲主義の原則とも対応している。しかし、可決された「教育基本法政府法案」では、第二条(教育の目標)で、「伝統と文化を尊重し、それをはぐくんできた我が国と郷土を愛する…態度を養う」など、二〇もの徳目を定めている。このことは、国家の側が個人の人格、思想、良心のあり方を教育によって統制することにほかならない。第二条(教育の目標)は、学校教育・家庭教育・社会教育の目標となり、すべての教育の場で強制されることになる。個人の内面を法律で縛ることは、近代法の原則から逸脱しているばかりか、現憲法の規定する思想信条の自由を侵害するものである。私たちは、現憲法を盾に、あくまでも「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成」を私たちの教育活動の立脚点とする。

自民「新憲法草案」と一体をなす改定「教育基本法」
 安倍首相は「教基法改正は国民の声」と言った。タウンミーテイングでの「やらせ」の発覚で「国民の声」ではなく「政府の声」であったことが暴露された。中・高校生にも「やらせ」を依頼していた。当時官房長官であった安倍は、一〇〇万円でこの問題をチャラにしようとしている。「やらせ」は八百長・イカサマと同義語。八百長・イカサマは、安倍と文部官僚の規範意識の欠如を如実に示している。
 この安倍が、「憲法改正」を宣言している。改定「教育基本法」前文に「ここに、我々は、『日本国憲法』の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立…」がある。ここでの『日本国憲法』は、現日本国憲法ではなく、自民「新憲法草案」と読むべきである。幻の新憲法なのである。自民「新憲法草案」前文には、「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し…」とある。なによりもまず国家。国民よりも国家が優先されるのである。憲法が国民を守り、憲法が国家を縛るという「立憲主義」が、根底から否定され、憲法の性格が一八〇度転換されている。 改定「教育基本法」と正に合致するのが『自民新憲法草案』である。ここにもイカサマが見え隠れする。
 今後、改憲に向けた動きが加速するが、私たちはあくまでも新たに生まれた全国の仲間と連帯し、改憲阻止の運動を展開していく。
 

06確定闘争継続協議事項
休息・休憩時間の見直しは労基法違反の拡大
病気休暇・休職制度の改悪を許すな!


 人事院規則改定で『休息は廃止。休憩時間は原則六〇分』とされた。人事院規則は準拠すべきものとして、各自治体は改悪案を組合に提案している。しかし、学校職場における休憩時間の現状=日教組調査二〇〇四年では平均一六分しか確保されていない=から考えると、休憩時間が六〇分になることは一五分の拘束時間の延長でしかない。現状でも労基法違反状態がまかり通っている。教職員の休憩時間の実質的な確保は、昼食時間の人的配置を中心とした条件整備がなければ実現できないのが現状である。職場が現状のままでは、「休憩時間は四五分」で継続すべきであり、拘束時間の延長には反対である。


休息・休憩時間・・・「休息時間(15分×2回)を廃止し、休憩時間を15分延ばす」という当初提案を、今次確定期においては「引き続き協議」とさせ、強行を許しませんでした。しかし都側は、「本確定後速やかに解決」としており、具体的には来年の第一定例都議会前の決着をもくろんでいます。

病気休暇・休職問題・・・今回、具体的な提案にはいたっていませんが、都側は病気休暇を「180日→90日」に削減する意図を持っています。早期の提案も予想されることから、休息・休憩時間の問題と並び、東京教組は取り組みを開始しています。



ドキュメンタリー映画上映
人間の碑  〜90歳、いまも歩く〜
日時 2007年3月8日(木)
 18:00 開場 18:30 開演
上映後、杉山千佐子さんの挨拶があります。
場所 カメリアホール
江東区亀戸文化センター (亀戸駅北口2分)
主催 再び許すな東京大空襲! 反戦平和の集い実行委員会

週刊墨教組 No.1510 2006.12.12
教育基本法の改悪阻止
 参議院での採決を絶対許すな!


 一二月一五日の臨時国会会期末に向け、教育基本法改悪反対運動は、最後の山場をむかえています。国会内での野党共闘、そして、この間の全国的な闘いにより、採決を二週間以上も引き延ばすことができました。しかし、教育基本法「改正」が安倍政権の最重要課題である以上、一五日の本会議での採決、あるいは会期延長による採決が企図されていることは間違えありません。野党は、麻生外務大臣、安倍首相の不信任案を提出し、採決阻止に向けたギリギリの闘いに突入すると考えられます。東京教組は、全国の仲間とともに国会前での座り込みを継続しています。政府案を廃案にするため、今こそ、「反対」の声を大にし、国会前集会に参加しようではありませんか。
 全国連絡会呼びかけ人で墨田教組とも縁の深い大内さんから緊急のアピールが出されています。紹介します。

緊急の呼びかけ
教育基本法の改悪をとめよう!
 十二・十二、十四国会前集会に、
今度こそ一万人の結集を!
 二〇〇六・十二・十  大内裕和


「教育基本法の改悪をとめよう!十二・五国会前集会」は、これまでで最多の二千人以上の人々が参加し、教育基本法改悪阻止を訴える集会として大成功しました。この集会の成功によって政府・与党による十二月七日〜八日の参議院での採決を阻止することができました。
 十二月十一日(月)から臨時国会最終週となり、政府・与党は今週中の採決を狙っています。教育基本法「改正」が安倍政権の「最重要課題」である以上、政権の命運をかけて採決を行おうとするに違いありません。これまで以上の闘いがなければ、改悪を阻止することは容易ではないでしょう。
 
 
安倍首相は急遽外遊予定を変更し、十二月十日(日)に帰国しました。十一日(月)に参考人質疑が行われ、十二日(火)に中央公聴会が行わることから、十三日(水)にも特別委員会での採決が行われる危険性があります。よって十二日(火)の院内集会と国会前集会は最も重大な時期に行われます。
   
 私は十二日(火)の午後、参議院での中央公聴会に公述人として参加し、この十二・十二院内集会と国会前集会にも参加します。全国の皆さんに、「教育基本法の改悪をとめよう!十二・十二国会前集会に今度こそ一万人の結集を!」呼びかけます。教育基本法改悪に反対するすべての労働者・市民の皆さん!「教育基本法の改悪をとめよう!十二・十二国会前集会」への参加をぜひともよろしくお願いします。ここを乗り切って十二・一四国会前集会につなぎましょう。

 
今日(十二月十日)、「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」呼びかけ人は「十二・一二&十二・一四国会行動参加の呼びかけ」を発表しました。一人でも多くの方、一つでも多くの労働組合・市民団体への連絡をどうぞよろしくお願いします。
 



卒業証書
保護者からの申し出があれば西暦年号記載が可能
―卒業生の全保護者へ周知―


 卒業証書の生年月日や発行年月日の年号記載に当たり、元号で表記するか、西暦で表記するかに関し、墨田区・墨田区教委は基本的な方針を明らかにしています。

1.元号使用が原則
2.保護者からの申し出があれば西暦記載も可能
3.外国籍の子どもについては、生年月日、発行年月日、氏名の表記について確認し、保護者からの希望があれば、その意志を尊重する。
4.このことについて、卒業生の全保護者に周知する
 この方針は、思想信条の自由等の人権を尊重する立場、さまざまな価値観や文化を有する多様な人々と共生する墨田を築くという立場に基づいて明らかにされたものです。
 私たちは、区教委のこうした方針を評価し、児童・生徒や保護者に対応してきました。

人権尊重や国際理解は、
    具体的な実践が大切
 多くの小・中学校では、従来から各校毎にお知らせや保護者会などで、当該児童・生徒や保護者に「西暦記載も可能である」ことを知らせてきました。
 区教委は、定例校長会で「卒業証書の元号使用について」墨田区・区教委の基本的な考え(先記四点)を例年明かにしています。
 人権尊重や国際理解は、具体的な実践こそが大切です。「保護者への周知」がすべての学校でなされ、児童・生徒、保護者の意志を尊重されるとりくみを強めていきましょう。

2007年
子どもの権利条約カレンダー
月毎に世界各国の子どもの写真


墨田教組名入り 

電話・ファックス番号入り

分会に1部ずつお届けします。
分会で活用してください。
なお、ご希望の方には一部千円でお分けします。
書記局へ申し込んでください。




週刊墨教組 No.1509     2006.11.29

教育基本法の改悪、
 参議院での採決を絶対に許すな! 
  改悪反対運動を一層高めよう!
  一二月六日 ヒューマン・チェーン 
  一二月八日 日教組全国集会



 自民・公明政府与党は、十一月十六日の衆議院本会議において、教育基本法政府改定案を与党単独で採決を強行した。法案内容への審議が極めて不十分のまま、「やらせ」タウンミーテイング等の新たな問題が未解明のままの強行採決は、様々な批判が噴出する中、政府与党の「あせり」を示したと言える。当初、十月中の採決と言われていた日程を、二週間以上も引き延ばすことができたのは、「改悪反対」の全国的な運動の高まりがあったからこそだ。場は参議院に移っているが、国会会期(十二月十五日)を延長する可能性があるとはいえ、臨時国会の日程は限られている。政府案を廃案にすることは可能だ。

教育基本法改悪は解釈改憲そのものだ

 憲法と教育基本法は一体である。教育基本法前文は「われわれは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。…… ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して…この法律を制定する」と宣言している。改憲は、教基法の改定を意味する。改憲が合意されずに、教基法が根本的に改定されることは、改定内容が憲法違反になることは当然の帰結である。言い方を変えれば、解釈改憲である。
 安倍首相は、「戦後体制からの脱却」を掲げ、教基法の改悪を最優先課題とした。「改憲には五年かかる。自分の任期中になしとげる」と宣言している。教基法の改悪は、改憲の地ならしである。
 衆議院安全保障委員会では、防衛庁を省へ格上げし、自衛隊の海外派兵を「本来的任務」に位置づけ直すことを内容とした「防衛省」関連法案の審議が始まった。『「非核三原則」の見直し、「集団的自衛権の行使」、個人の資格で言えばよい、論議するのはいいことだ』と意図的に「世論形成」がはからている。この国は「戦争をやれる国」へ変貌されつつある。教育基本法の改悪は解釈改憲そのものだ。改悪を絶対に許してはならない。全国規模の改悪阻止運動をさらに高め、政府案を廃案にしよう。



働く私たちの犠牲が支える「好景気」糾弾!
 政府与党の「総人件費削減」政策を打破できず
 〇六賃金闘争、労使合意を重視、都労連苦汁の選択


 私たちの中で、「好景気」を実感している人がどれだけいるでしょうか。
 政府が発表する「好景気」は、リストラ・賃下げ・サービス残業等、労働者を犠牲にした結果を反映したものだ。この「好景気」を継続するには、労働者のさらなる賃下げが必要なのだ。それを可能にするには公務員の賃下げが必要条件。なぜなら、公務員賃金を参考に給与を決定している企業が多いからである。
 二〇〇六年度の賃金確定闘争は、政府の「総人件費削減」政策に対する闘いであった。同時に、成績主義・競争による格差拡大阻止の闘いでもあった。

・二〇〇七年一月から勧告給料表で実施
・地域手当の導入(経過措置有り段階的に一八%まで引き上げ)
・昇給カーブのフラット化、
 あわせて〇・九%〜一・三%引き下げ 資料1
・一時金は据え置き年間四・四五月、年末一時金、条例どおり二・一二五月分、
一二月八日に支給
・所要の調整 
 四月にさかのぼった「マイナス精算」
・配偶者に係わる扶養手当の引き下げ
一〇〇〇円(一四、五〇〇円
        →一三、五〇〇円)
 二〇〇七年一月から実施
・三人目以降の子に対する扶養手当を
 一〇〇〇円引き上げ。二〇〇七年四月から実施
・退職手当、基本額と調整額を導入。調整額の支給対象を「主任級」職員まで拡大(教員は、大卒一二年以上)資料2 二〇〇七年四月から実施
・一般職員の勧奨退職制度 資料3

継続協議の主のもの
・休息時間・休憩時間の見直し(勤務時間改悪)
・一時金への成績率の拡大 
・メーデー職免
・病気休暇及び病気休職の見直し等

例 2-147号給
     給料表額   給料表額×1.04  地域手当12%→13%   合計
  現 443、600  461、344(給料 55、361  516、705
改定 437、800   455、312 月額) 59、190  514、502
■1ヶ月 マイナス 2、203円
■退職手当:給料月額×支給率+調整額 
  ※給料月額が下がれば、退職手当も下がる




週刊墨教組 No.1508 2006.11.13

二〇〇六賃金確定闘争勝利
  生活破壊を許さない! 
     闘わなければ、賃金は下がり続ける!
 「退職手当引き下げ」反対
 地域手当を本給に繰り入れろ!
 勤務時間・休暇制度等労働条件の改善!



高率で批准成立
 十一月十五日(水)を回答指定日として、実力行使を背景に、都と交渉を強化している。実力行使の戦術を決める批准投票を一〇月二六日〜十一月二日に実施した。その結果墨田教組は一〇〇%(投票者数比)、東京教組全体で九五・六二%という高率で批准が成立している。墨田教組は、都労連が一時間ストに突入したとき、都労連に連帯して、区役所前庭で決起集会を行う。

不当な政治的勧告を許すな
 「いざなぎ景気を上回る戦後最高の景気回復が続く」と言われる中、今年の民間賃金水準は、昨年比で明確に引き上げとなっている。しかし、都人事委員勧告では、例月給が昨年に続いて引き下げとなり、特別給は据え置きとなっている。勧告には、これら民間の引き上げ傾向が精確に反映されておらず、妥当性や納得性を欠く不当な内容となっている。今都人勧は、「総人件費削減」を至上命題とした総務省・人事院に追随し、都職員の期待を裏切る不当な政治的勧告と言わざるを得ない。「公務員の人件費削減」による歳出削減を許すなら、私たちの賃金は下がり続けることになる。今後の賃金引き下げを阻止するためにも、二〇〇六賃金確定闘争に勝利しなければならない。

「退職手当引き下げ」案を撤回せよ
 退職手当は、「給与の後払い的性格を持った手当」であり、しかも「老後の生活保障的手当」である。退職手当の減額は老後の生活設計の見直しを余儀なくされる。都が十月二五日に提案した「退職手当見直し」案(裏面資料)は、「在職期間中の貢献度を反映する」旨の国の方式に追随し、退職調整額(役職加算)を設け、一般職員には減額だけを押しつける内容である。
@地域手当の引き上げによる本給引き下げ、
A昇給カーブのフラット化による本給引き下げ、
B全職員の退職手当の引き下げ、
により、一般職の退職手当は三重の引き下げとなる。
 二年前には「支給水準の引き下げ」が強行され、さらに今回、減額により生じた原資を管理職に再分配する「管理職優遇」改悪案を到底認めることはできない。

勧奨退職制度の廃止
 さらに都は、十月三一日、「団塊の世代の大量退職により、今後、大幅なマンパワーの減少が見込まれる。このため、高齢職員をいっそう活用していく必要があり、退職勧奨等を積極的に促進していく意義が乏しくなってきた」として、勧奨退職制度について「一律的な取扱い」をしない提案をした。
 教員をマンパワーとしか見ない冷血な視点。これまで散々退職に追い込むような施策をとったことにはほうかむりする無責任。給与・昇給等を抑えておいて、こき使えるだけこき使おう、中途で辞める奴に余分な銭など払うものかという、なんとも強欲な提案。不許!

休憩・休息時間の見直し反対!
 都は、「休息時間を廃止して、休憩時間を一時間とする」という提案を行っている。休憩時間が増えれば、勤務終了時間が延びてしまう。今でも取ることのできていない休憩時間の現状を放置し、一日あたりの勤務時間だけを延長するような見直しは、休憩時間の確保どころか、一層の長時間労働と労働強化を押しつけるものである。
 組合は、地域手当の本給繰り入れ、勤務時間の軽減、育児、介護などの休暇制度の改善など、要求の実現を求めています。

要求実現に向けて、ともにとりくみましょう。 


専門委員会交渉(10.23)での項目整理から
   教育職の給与制度(人事委勧告関連、引き続き協議、都労連要求)

都側の主張
・人事委員会報告にもあるように、国において人材確保法に基づく優遇措置の縮減とメリハリのある教員給与体系の構築に向け、教員給与について様々な検討が進められている一方、教育委員会においても、これまで教員の給与制度、任用制度及び職のあり方について検討されている。
・教員給与については、こうした状況をふまえつつ、都内民間給与との精確な比較を行っている都の行政職との均衡を図ることを基本とし、職責・能力・業績をより一層重視する観点から、あり方を検討する必要がある。
・引き続き協議となっている主幹職導入に伴う給与上の措置について、早期に結論が得られるよう協議したい。
・教員の職務段階別加算制度については、職責に応じて加算するという制度本来の趣旨から、経験年数を基準とした加算制度の存続は困難であると考えている。教諭への措置は、教員の職及び給与制度のあり方についての今後の整理を踏まえ、平成19年度の給与改定交渉期までに結論が得られるよう引き続き協議していく。
都労連側の主張
・教員給与について、勧告では、級構成などの給与体系は基本的に維持されているが、行(一)給料表の引下げ率を基本的に横引きした結果、ベテラン教員については、大幅削減となっており、経験年数を基本とした給料表の構造を無視した不当なものである。
・教員給与については、労使協議事項であるだけでなく、職務にふさわしい処遇、人材確保、教員給与体系のこれまでの経緯から、現行水準・体系に基づく給与制度は不可欠である。この観点から、独自給料表における行政職との対応関係については、慎重な検討が必要である。給与や任用制度に関する文部科学省・都教委の動向も承知しているが、学校現場・教職員の実態を踏まえたものとは言いがたく、極めて問題のあるものと受け止めている。
・実習教員及び寄宿舎指導員の任用制度及び給与水準の抜本的改善を図るべきである。
・教員の職務段階別加算制度については、教員の専門性や経験の重要性を踏まえ、引き続き、経験年数を基準とした加算制度を存続させること。

          退職手当の調整額
1 基本的な考え方
  退職手当において、在職期間中の職責・能力・業績等をより的確に反映できるよう、勤続期間に中立的な形で一定期間の職務の経歴を勘案できるしくみとする。
2 算定方式
  退職手当の調整額は、職責等に応じて設定した各区分のポイントに基づき、在職期間のうち 退職前60月分の合計ポイントを算出し、その合計ポイントに単価を乗じた額とする。
3 ポイント
  ポイント区分は、行(一)係長級職相当以上を対象に、職務の複雑、困難、責任の度合い等を考慮し、以下の4区分の設定とする。
  ポイントは、月単位(在職一月でポイント換算)とする。
 行(一)以外の給料表適用者のポイントについては、上記の例により、期末勤勉手当における職務段階加算割合(6%以上)の適用区分を基本とする。  
4 単価
  1ポイントあたりの単価は3、800円とする。
 ※ 本単価は、地域手当が18%に改定されることを前提に設定。
5 休職期間等の取り扱い
  ポイント算定期間中の休職等については、一定の割合により算定期間から除算する。
  除算対象となる休職等の種類及び除算割合については、現在の退職手当額の算定の例による。




「上に厚く下に薄い」制度
  「調整額」による加算は、単純に計算してみても、課長級で、約342万円であるのに、係長級で、約136万円と2.5倍の格差が生じる









週刊墨教組 No.1507 2006.10.25

怒! 賃金引き下げによる「好景気」
  

  政府の圧力に屈し官民比較方式の見直しを強行
  例月給平均〇・三一%引き下げ、ボーナスは据え置き
  地域手当導入よる、本給水準引き下げ〇・九%程度


 一〇月一三日、東京都人事委員会は都知事と都議会議長に対し、都職員の給与等の勧告・報告を行った。国は官民較差が極めて小さいとして例月給の改定を見送った。しかし、都人事委は、例月給の引き下げ(〇・三一%)に加え、地域手当導入による、本給水準引き下げ(〇・九%程度)の勧告を行った。しかも昇給カーブのフラット化により、高齢層は最大一・三%の引き下げとなっている。ボーナスは、官民較差がゼロであり、四・四五月で据え置きとなっている。都人事委員会は、政府の「総人件削減」政策に追随し、「中立・公正な第三者機関」としての役割を放棄し、官民比較方式の見直しを強行した。その結果、従来の比較方式で実施した場合の官民較差四、一七九円(〇・九七%)を反故にした。今回の勧告は全く不当であるといわざるをえない。
 労働条件は労使交渉で決めるものです。二〇〇六年度賃金確定闘争が今後具体的に展開されます。全力をあげてとりくんでいきましょう。勧告・報告の骨子は次の五点です。

1.官民給与の逆較差(〇・三一%=一、三五七円) による例月給の引き下げ。
  比較対象企業規模の見直し
(一〇〇人以上〜五〇人以上)。
2.地域手当導入により、本給水準引き下げ
  ※引き下げにあたっては、例月給の引き下げと あわせて昇給カーブのフラット化を行う。
若年層〇・九%〜高齢層一・三%引き下げ。
3.ボーナスは四・四五月で据え置き。
4.配偶者に係わる扶養手当の引き下げ
  一、〇〇〇円(一四、五〇〇円→一三、五〇〇円)
  三人目以降の子に対する扶養手当を一、〇〇〇 円引き上げ。 (四、〇〇〇円→五、〇〇〇円)
5.四月からこの改定の前日までの公民較差相当分 を解消するため、所要の調整を行うこと。

二年連続例月給引き下げ
 例月給のマイナス勧告分と地域手当を現行一二%から一三%へ変更することにともなう給料月額〇・九%程度引き下げ分とを合わせて給料月額を引き下げるとしています。給料月額の引き下げに際しては、昨年同様昇給カーブのフラット化を実施するとしています。
             (資料1)

地域手当の改悪
 現行一二%を平成二二年度までに段階的に引き上げ、一八%とするとしています。今年度は、一三%に変更し、本給を〇.九%引き下げるとしています。地域手当の算出式(裏面資料2)から、支給率が大きくなっても、本給の引き下げ幅が大きくなると実質的には給料の引き下げになります。本給が引き下げられることは、退職金の引き下げに連動します(資料2)。本給が最高号給の方だと、約二四万円の減額になります。

賃金引き下げを許すな
 「好景気が継続している」と政府は発表している。なのに、私たちの給料は連続の引き下げが勧告された。多くの民間企業では、公務員の給料を参考に、給料月額を決めている。公務員の給料が引き下げられることは、民間労働者の給料が引き下げられることに繋がっていきます。その結果、公務員の給料の引き下げ勧告が出されます。今年度強行された、比較対象企業規模の見直しは、労働者の給料を引き下げることを意図した政策です。賃金を抑制することによる利潤増の政策です。
 今後、組合は十一月中旬を山場に、「労使交渉による決定」を基本に都当局と交渉を強化していきます。賃金引き下げ政策を許してはなりません。闘いましょう。
 
給与削減を許すな!
批准投票を成功させよう

 私たちは、この給与削減提案を断じて認めることはできません。2006賃金の早期確定をめざし、都労連とともに断固とした闘いを展開していきます。賃金確定闘争の山場は、11月中旬です。この山場に都労連はストライキを配置して、要求貫徹をめざし交渉と闘いを強化しようとしています。
 東京教組は都労連との共同行動として、対都闘争の山場には、都労連とともにストライキを配置して闘うことにしています。
 墨田教組は、これらの都労連・東京教組の戦術配置を受け、東京教組としてのストライキ行動に参加することとします。
 この 批准投票を10月26日(木)〜11月2日(木)の間に全分会、その成功をめざし確実に実施してください。


 資料1 現行と勧告    月例給対比表

小学校・中学校教育職員給料表

  2 級
号 給 現行 勧告額 改定額 (較差分) (地域手当分) 改定率
20 202,600 200,700 △1,900 0 △1,900 △0.9%
30 222,300 220,000 △2,300 △200 △2,100 △1.0%
40 250,500 247,800 △2,700 △500 △2,200 △1.1%
50 281,200 278,100 △3,100 △600 △2,500 △1.1%
60 313,900 310,400 △3,500 △600 △2,900 △1.1%
70 342,100 338,300 △3,800 △700 △3,100 △1.1%
80 365,100 361,200 △3,900 △700 △3,200 △1.1%
90 384,400 380,200 △4,200 △800 △3,400 △1.1%
100 399,900 395,300 △4,600 △1,200 △3,400 △1.2%
110 412,500 407,600 △4,900 △1,200 △3,700 △1.2%
120 423,300 418,200 △5,100 △1,300 △3,800 △1.2%
130 432,700 427,500 △5,200 △1,300 △3,900 △1.2%
140 439,400 434,000 △5,400 △1,300 △4,100 △1.2%
150 445,200 439,300 △5,900 △1,800 △4,100 △1.3%
160 450,200 444,300 △5,900 △1,800 △4,100 △1.3%
170 455,200 449,300 △5,900 △1,800 △4,100 △1.3%
177 458,700 452,800 △5,900 △1,800 △4,100 △1.3%
再任用 283,000 279,600 △3,400 △800 △2,600 △1.2%



資料2
地域手当  以前は調整手当と言っていました。この手当の目的は、都市部では物価や生計費が高いために、実質的な給与を確保することにあります。僻地手当が支給されている学校以外は、一二%が支給されています。
     手当額は、{給料月額+扶養手当+教職調整額
 (または三級加算額管理職手当)}×手当率 
教職調整額 給料月額の四%(二%、一%の人もいます)
退職手当額 最終給料月額(給料表額+教職調整額)×勤続期間に応じた支給率


教育基本法改悪阻止
 臨時国会での強行採決を許すな
   一〇月二六日 日教組緊急集会

 
 安倍首相は、「美しい国づくり」、「戦後体制からの脱却」を掲げ、今臨時国会で教育基本法改悪案の成立を最優先課題にすることを表明しました。政府与党は、十月二五日から、特別委員会を開会し、一〇月中に衆議院本会議で強行採決を企図しています。特別委員会の審議時間は六〇時間が目安と言われています。先の通常国会では、審議時間が四九.五時間になり、その結果継続審議にされたことから、臨時国会での審議は一〇時間強と政府与党は主張しています。審議が打ち切られ、今週中にも委員会強行採決が予想されます。日教組は国会前での一〇月一九日からの座り込みに加え、非常事態宣言を発し、一〇月二六日(木)には全国から一〇、〇〇〇人を結集し、緊急集会を開催、国会デモを行います。日教組は、日政連議員を中心に十分な時間をかけた審議が行われるよう、野党に働きかけを強化しています。衆議院での採決が遅れれば、それだけ参議院での審議が遅れることになり、廃案に追い込むことができるからです。来週が山場になります。 
日教組緊急集会
 ・一〇月二六日(木)
 午後五時四五分〜六時一五分
 ・日比谷野外音楽堂
 ・国会に向けデモ行進 六時一五分出発
墨田教組座り込み
 ・一〇月三〇日(月)午後四時〜午後六時
 ・衆議院第二議員会館前
  


週刊墨教組 No.1506 2006.10.4

差別昇給にあくまでも反対する
約三〇%人だけ
  一〇月給料で教員の査定昇給差額精算
 職場の協力・共働を崩壊させるな!


 教員には、一〇月給料で、昨年度の業績評価等に基づいた査定昇給該当者に、昇給差額が支給されます。同時に該当者には昇給辞令が伝達されます。約三〇%の方(資料1)が該当していると推測できます。昇給該当・非該当が明らかになります。
 学校は、特に協力・共働が礎になって成り立っている職場です。特定の人だけを昇給させることは、職場を差別分断することであり、学校の礎を破壊することに繋がり、しいては学校教育を崩壊せることになります。私たちはあくまでも差別昇給=査定昇給に反対します。

該当者の決定手順
@校長が在職教員の二〇%を推薦する。区教委から推薦数を指示。資料1・2
A区教委は、都教委から提示された数(約三五%)から校長推薦数を減じた数を独自推薦する。
B都教委は区教委が推薦した数(約三五%)から約三〇%の人を選別して該当者に決定する。
・校長による推薦者は必ず昇給する。(差額昇給は、二号・一号のどちらかに該当)
・独自に区教委から推薦された数から五%の数を減じた数の方が昇給する。(差額昇給は一号)資料2

都教委は「業績評価」にあくまでも固執
 「業績評価『等』に基づいた推薦」との実施要綱上から、単なる業績評価に基づくだけでなく、職場の協力状況や職員の能力の伸長や意欲を期待して総合的に判断して校長が推薦することが可能です。こうした視点から、推薦者を決定した校長もいます。しかし、都は七月実施のヒアリングで、校長・地教委の推薦者を強引に変更させたケースがあったと推測できる事例が東京教組に情報としてあげられています。開示に耐えられない業績評価、職員に不信感を増長させている業績評価に都教委はあくまでも固執しているのです。都教委が、推薦者の変更を地教委に強いることから、「校長の推薦」は単なる形式にすぎないと考えることもできます。「都教委に逆らうことは許さない」ということか。このような傲慢な都教委の態度は、教育には何のプラスにもなりません。管理強化は教育にとってマイナス以外の何ものでもありません。主幹・管理職選考に受験者が集まらない現実を都教委は直視せよ。学校現場は業績評価・上位下達を拒否しているのです。

差別昇給で職場の「士気」が
高まるはずがない
校長は、十月面接で、
業績評価を開示すべき
 今回の査定昇給は、不透明な、「公正」の保障が担保されていない業績評価に基づく抜擢昇給です。昨年度まで実施されていた「成績特昇」により、校長と職員との信頼関係が希薄になった職場が多々あります。そうした、職場では、職員の士気が低下しているのは当然です。「公正」・「公平」が具体的に見えてこそ、職員は納得し、士気が高まるのです。今、各職場では、「自己申告書」について「中間面接」行われています。査定昇給の該当・非該当が明らかになった今、校長は、業績評価を開示し、職員との信頼関係を深める努力をすべきです。

抜擢昇給・成績主義の徹底に
反抗する
 学校は、特に協力・共働が礎になっている職場です。職員間の競争がなじまない職場なのです。しかし、査定昇給制度は、個々を競わせ評価し、処遇するという競争原理の徹底を給与制度面からから推し進めようとするものです。「競争」は〈なかま〉〈ゆとり〉〈決定権〉を確実に奪います。これらの喪失は、人間的な感情、関係、いとなみ、感覚の頽廃、つまり人間の内面の頽廃を導き出さざるを得ません。だからこそ私たちは成績主義に反対してきました。
 あくまでも反対し、反抗します。

資料1

※在職人員とは平成一七年度(昨年度)に業績評価が実施された教育職員等で基準日(四月一日)に在職する者の数から最高号級者を減じた数。昨年度業績評価がない方は、昨年度の新採用者(現二年目の方)、育休や病休で勤務日数が少なく業績評価外の方、海外日本人学校勤務の方等です。教諭では、号級の足伸ばしがなされたために、現在最高号級者はいません。
※区分「教諭」以外(副校長・主幹)は、職場での人数が少ないので、区一括で推薦者が決められます。

資料2
ある職場の昇給該当者シュミレーション
 教諭一九人 内主幹一、新採用一、
昨年度新採用一 として
@教諭在職人員 一六人
A校長推薦数 一六×二〇%=三人
   必ず該当
B区教委独自推薦数
 (一六×35%―三人=二〜三人)
C昇給者  三人〜六人(二号昇給該当者がいる場合は校長推薦者枠内から)

墨田区の昇給該当者シュミレーション
 小学校
  二号昇給 二十人前後
  一号昇給 百人前後
 中学校
  二号昇給 十人前後
  一号昇給 五十人前後


成績主義の強化は健康を破壊する
  全国労働衛生週間の取り組み、墨田にこそ必要
 区教委・校長はなぜ無視する?

 「学校安全衛生委員会」の設置を
強く要求する
 四月〜九月の間に、墨田区内小・中学校教員の少なくとも一五人の方が病気休暇・休職に入っています。その内半数以上の方が「精神的な病」が原因で休まれています。ベテランの方も、墨田で新規採用された方も含まれています。今年の四月に採用された方が、すでに退職を余儀なくされたケースもあります。小・中三九校の内、少なくとも一五校に病気休暇・休職の方がおられるのです異常な状態です。人事考課・自己申告・業績評価による管理強化がすすむ中、病気休暇・休職者が増え続けています。
 一〇月一日〜七日まで、厚生労働省が主唱者となって全国労働衛生週間の取り組みがなされています。「働く人の健康の確保、増進を図り、また快適に働くことができる職場づくりに取り組む週間です。本年四月より施行された「改正労働安全衛生法」では、過重労働における健康障害防止対策及びメンタルヘルス対策、職場におけるリスク低減対策等、労働者の健康確保対策の充実強化が図られています。この機会に働き方を見直して、積極的に健康づくりにとりくんでみませんか?」 全国の職場に発せられたものです。なぜか、墨田には届いていない。前期末、各職場では過重労働の毎日です。
 墨田教組は、毎年、「労働安全衛生法」に基づく、「学校安全衛生委員会」の設置を強く要求してきました。設置されれば、この委員会では、当然、各学校職場の状況が報告され、「教員の健康障害状況、職場の労働環境」等について改善策が論議されることになります。ここで論議された改善策は、法的拘束力をもちます。
 例えば、墨田区の学校の耐震化率(資料1)も当然問題になります。兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)級の地震に遭遇すれば、墨田区の校舎一四二棟の約半数が崩れる可能性があるのです。各小・中学校は地域の避難場所にもなっています。それぞれの学校では、震災時の避難

資料1


教育研究集会
10月18日(水)午後3時〜
講演 
放棄された開拓団の邦人
   ―私の悲惨な逃避行―
講師 元満蒙開拓団 中国残留邦人
 
 須田 初枝さん
場所 組合会議室


 須田初枝さんは、小学校を卒業したばかりの昭和19年、家族7人で「満蒙開拓団」として中国にわたりました。「五族協和」「王道楽土」の「満州」は憧れの的だったそうです。まさに「美しい国」です。しかし、実際の開拓団生活は、つらく苦しいものでした。それだけでなく、その土地は、中国人が耕していたものを政府がとりあげて開拓団に与えた土地だったのです。
 終戦を迎え、関東軍が消滅する中、須田さんの開拓団員800余名は、逃避行を始めます。すぐに「暴徒」の襲撃を受けます。中国の人々にとっては、開拓団は「土地を奪った者」です。その中で開拓団員は、飢えと寒さにさらされ、「戦死」、自決と自決できないものの殺害を余儀なくされます。須田さんたち開拓団員が政府の行為の責任をとらされたといっても過言ではありません。
 当時13歳以下だった子どもを「残留孤児」それより上を「残留婦人・邦人」と呼びます。政府は前者にたいしては、やむなく残されたとみなし、比較的厚い保護を与えています。が、後者にたいしては、大人だから自分の意志で残ったんだという考えで臨んでいます。「自己責任」だというのです。歴史の責任を二重に負わせられたのです。
 墨田にもたくさんの「残留孤児・残留婦人・残留邦人」とその子どもや孫たちがいますし、教育の場でもたくさん出会ってきました。残留邦人である須田さんのお話をうかがい、今一度、歴史と、「引き上げの子どもたち」の教育を考えるための基礎としたいと思います。
 多くの方の参加を期待します。



 

週刊墨教組 No.1505 2006.9.26

日の丸・君が代 強制は違憲

  東京地裁判決 思想・良心の自由侵害

 四百一人の教員が、東京都と都教委に対し、卒業式や入学式で日の丸に向かって起立し、君が代を斉唱する義務がないことなどの確認を求めた訴訟の判決が、二一日、東京地裁でありました。
 難波孝一裁判長は、「通達及びこれに関する被告都教委の都立学校の各校長に対する一連の指導等は、教育の自主性を侵害するうえ、教職員に対し一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しく、教育における機会均等の確保と一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を逸脱しているとの謗りを免れない。したがって、本件通達及びこれに関する被告都教委の都立学校の各校長に対する一連の指導等は、教育基本法一〇条一項所定の不当な支配に該当するものとして違法と解するのが相当であり」「本件通達及びこれに関する被告都教委の一連の指導等は、教育基本法一〇条に反し、憲法一九条の思想・良心の自由に対し、公共の福祉の観点から許容された制約の範囲を超えているというべきであって、これにより、原告ら教職員が、都立学校の入学式、卒業式等の式典において、国歌斉唱の際に、国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する義務、ピアノ伴奏をする義務を負うものと解することはできない。」と述べ、起立、斉唱の義務がないことを確認し、処分を禁止しました。そして、一人当たり三万円の慰謝料の支払いを都と都教委に命じました。
 原告側全面勝訴の画期的な判決です。

史上最大の思想弾圧事件
 佐藤学は、くりかえされる都教委の愚行について、教育史の見地から、つぎのように書いています。(『世界』十月号)

「都教育委員会による『日の丸・君が代』の強制による教師の大量処分は、恐怖政治とも言えるファッショ的暴挙であった。総数三〇〇名をこえる教師の大量処分は、教育史上最大規模の思想弾圧事件である。教師に対する思想弾圧としては、一九三二年の『教員赤化事件』において長野県で約二〇〇名の教師の処分が行われた事件が知られているが、『日の丸・君が代』強制による都教育委員会の教師の大量処分は、その規模を超えている。横山洋吉教育長(当時)も、処分の徹底を再三、明言していた。」

 その都教委の「ファッショ的暴挙」への判決が下されたのでした。

日の丸・君が代の歴史的事実
 判決は、日の丸・君が代の来歴について、歴史の事実を直視して、つぎのように言及しています。

「日の丸、君が代は、明治時代以降、第二次世界大戦終了までの間、皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことがあることは否定し難い歴史的事実であり、国旗・国歌法により、日の丸、君が代が国旗、国歌と確定された現在においても、なお国民の間で宗教的、政治的にみて日の丸、君が代が価値中立的なものと認められるまでには至っていない状況にあることが認められる。このため、国民の間には、公立学校の入学式、卒業式において、国旗掲揚、国歌斉唱をすることに反対する者も少なからずおり、このような世界観、主義、主張を持つ者の思想・良心の自由も、他者の権利を侵害するなど公共の福祉に反しない限り、憲法上、保護に値する権利というべきである。」

 たとえ、少数者であっても、公共の福祉に反しない限り、個人の人権は保障されるべきだという憲法の理念に基づいた条理の展開です。

憲法は、相互の理解を求めている
 判決には、個人の人権を守るために、都教委の暴走をしばる立憲主義の立場からの、つぎの指摘があります。

「仮に音楽科担当教員が国歌斉唱の際のピアノ伴奏を拒否したとしても、他の代替手段も可能と考えられ、当該教員に対し伴奏を拒否するか否かについて予め確認しておけば式典の進行等が滞るおそれもないはずである。
 そして、原告ら教職員が入学式、卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して国歌を斉唱すること、ピアノ伴奏をすることを拒否した場合に、これとは異なる世界観、主義、主張等を持つ者に対し、ある種の不快感を与えることがあるとしても、憲法は相反する世界観、主義、主張等を持つ者に対しても相互の理解を求めているのであって(憲法一三条等参照)、このような不快感等により原告ら教職員の基本的人権を制約することは相当とは思われない。」

 大切なのは、ちがいを認め合うこと。そして、おたがいに理解し合うこと。
 ここにも、憲法の理念に基づいた条理が展開されています。

都教委を厳しく指弾
 判決は、つぎのように結論しています。

「起立したくない教職員、斉唱したくない教職員、ピアノ伴奏したくない教職員に対し、懲戒処分をしてまで起立させ、斉唱等させることは、いわば、少数者の思想良心の自由を侵害し、行き過ぎた措置であると思料する次第である。国旗、国歌は、国民に対し強制するのではなく、自然のうちに国民の間に定着させるというのが国旗・国歌法の制度趣旨であり、学習指導要領の国旗・国歌条項の理念と考えられる。これら国旗・国歌法の制度趣旨等に照らすと、本件通達及びこれに基づく各校長の原告ら教職員に対する職務命令は違法であると判断した次第である。」

 憲法と準憲法的な性格をもつ教育基本法は、個人の基本的人権を守るために、国や教育行政の暴走をしばる立憲主義の立場にたっています。
 判決文は、肥大化して暴走しはじめた都の教育行政の不当な支配を、あくまでも憲法・教育基本法の立憲主義にたって、条理を尽くして、厳しく指弾しています。
 昨今の改憲や教育基本法改悪の潮流に抗い、現行憲法や教育基本法の理念を体現した、清冽で見事な判決です。

都教委は強制をやめなさい
 ところで、都教委は、二二日、都立学校の校長を対象に臨時校長連絡会を開き、「今まで通り、通達に基づいて国旗・国家の指導を実施してほしい」と要請したと伝えられています。
 都教委による教育への「不当な支配」が認定されたのですから、日の丸・君が代の強制は、ただちにやめるべきです。
 都教委が態度を改めないかぎり、東京の教育現場の再生は困難です。





週刊墨教組 No.1504 2006.9.14

公務員総人件費削減攻撃反対
   教員賃金の狙い撃ち削減を許すな
   さらなる賃金削減とサービス残業に耐え続けるのですか、若い人達


 
二〇〇六年六月二日に成立した「行革推進法第五六条三項」で、「政府は、学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法の廃止を含めた見直しその他公立学校の教職員の給与の在り方に関する検討を行い、平成一八年度中に結論を得て、平成二〇年四月を目途に必要な措置を講ずるものとする」となった。
 これを受けて文科省は、《教職員給与の在り方等の総合的な検討を行い平成一八年度中に結論を得る》とし、その検討資料収集のため、全公立小・中学校を対象とした教員の《勤務実体調査》を七月三日から実施し始めた(資料3)。教員の《勤務実体調査》が行われるのは、一九六六年以来四〇年ぶりである。この《勤務実体調査》のねらいのひとつに、教職調整額(本俸の四%)の見直しがあることは明らかである。既に都は一部見直しを強行した。
 一〇月初旬には、都人勧が出される。国に先駆けて改悪を強行している都の方針を受けての勧告内容になるものと推察できる。今後、都に勤務する教員(校長・教頭を含め)の給与は、国と都の両方から削減を強いられることになる。賃金の改定は交渉事項である、闘う以外に、私たちの生活は守れない。


あなたのサービス残業は一カ月何時間?
 自民党政府は、一九七一年に給特法を強行成立させ(一九七二.一.一施行)、教員を労基法三六条・三七条(時間外勤務、割増賃金条項)の適用除外にした(資料1)。しかし、日教組は当時の文部省との交渉により、三六条適用除外でも、無制限に時間外労働が強いられるものではないことを確認した。これを受け、東京都では、超勤は資料2の四項目に限られている。「教員は四%が支給されているから超勤すべきだ」と暴論を吐く管理職が時にはいるが、誤りである。
 「教職調整額を廃止して時間外勤務手当を支給する」との報道が六月に一部マスコミで報道された。しかし、文字通り時間外勤務手当が支給されれば、人件費の削減にはならず、逆に増額になる。人件費の削減が前提であることから、廃止は、「さらなるサービス残業の強要」と同意語である。なお、本俸の四%は、一カ月五〜六時間の時間外勤務手当に相当する金額である。

資料1 給特法・《教職調整額本俸4%》の経緯 
 教職員は恒常的、慢性的に超過勤務を強いられているのが実情である。しかもこの超過勤務にたいして、当局側はまさに見て見ぬふりをして、教職員のただ働きをそのままにしておいたのである。
 そこで、1960年代から日教組では職員会議、修学旅行などさまざまなただ働き超過勤務のケースを選んで、あいついで超勤手当請求訴訟を提起し、次々と勝訴を重ねていった。そして最高裁でも勝訴判決が確定するにいたった。
 こういう情勢のなかで自民党政府は、1971年給特法を制定しようとしてきた。給特法は「教育がとくに教職員の自発性、創造性にもとづく勤務に期待する面が多いこと、また夏休みのように長期の学校休業期間があること等から、その勤務のすべてにわたって一般行政事務に従事する職員と同様な勤務時間管理を行うことは適当でなく、とりわけ超過勤務手当制度は教育職員にはなじまないと認められる」(公務員制度研究会編『全訂新版 勤務時間と休暇』)という前提にたって制定されようとしていた。
 これにたいして日教組は、夏休み等の長期学校休業期間は研修等にあてられており、現実に時間外勤務がおこなわれている事実がある以上、その対価としての超勤手当の支給は当然支給されるべきだとして,測定可能な時間外労働にたいして割増賃金、教育労働の特例にもとづく測定困難な労働にたいしては特別手当という要求を対置してたたかってきた。しかし、日教組や野党の反対にもかかわらず、1971年5月に、給特法は自民党の強行採決によって成立した。

資料2 限定4項目
 勤務条例16条は、学校職員にも超過勤務を命じ得るとしています。しかし、教員については1971年に給特法という法律とこれに基づく都条例が制定され、合法的に命じうる超過勤務は、下記に限られることになりました。これを「限定4項目」といいます。
@ 生徒の実習に関する業務
  生徒を直接対象とする実習指導で、農業実習における天候急変時の作物管理、家畜の出産及び水産指導を指すものであること。
A 学校行事に関する業務
  修学旅行的行事(修学旅行、移動教室等学習指導要領に定める学校行事)で宿泊を伴うものに限ること。
B 教職員会議に関する業務
  緊急事態の場合に必要なものに限ること。
C 非常災害等でやむを得ない場合に必要な業務
  児童・生徒の負傷疾病等人命に関わる場合などの業務であること。
 加えて、これらに該当する場合であっても、超過勤務を命ずるにあたっては「本人と教職員集団の了解をうること」という確認が、当時の組合との間でなされました。きちんと遵守すれば、超過勤務は通常はほとんどないものです。

資料3《勤務実体調査》
 全国小中学校から無作為に抽出
 何と墨田は、大当たり!
 毎月、全国の小・中学校、それぞれ百八十校、延べ二一六〇校が調査対象校として抽出されます。なんとほとんどの時期に墨田の複数校が調査対象校となっています。

調査時期 各4週間
@ 7月 3日〜 7月30日
A 7月 3日〜 8月27日
B 8月28日〜 9月24日
C 9月25日〜10月22日
D10月23日〜11月19日
E11月20日〜12月17日


広島原水禁大会八月四日〜六日に参加して     

(一) 初めての参加・全体会
 今回は墨田から三人が参加した。初めての参加である私が、個人的なレポートと言う形で報告させていただく。
 以前に、この時期ではなく、個人的に訪問したときと、雰囲気の違いを、先ず、ひしと感じた。気候のためだけではない熱気が感じられる。
 四日にはまず、各地域の参加者が一体となり、折鶴行進と名づけられたデモを行い会場に向かう。真夏の太陽がぎらぎらと照りつける時間、蝉時雨の声も東京の比ではない。
 去年から、原水禁大会は、原水爆禁止日本国民会議(原水禁)・日本労働組合総連合(連合)・核兵器禁止平和建設国民会議(核禁会議)の三者による実行委員会が主催している。先に同じ会場で原水協主催の大会が開催されていたために、私たちは、入場できるまで暑い中かなりの時間を待たされた。
 原水爆禁止という共通した課題で始められた運動が、ソ連の核開発問題をめぐって分裂した歴史は、今も解決されていない。組合運動もそうだが、分裂は権力にとってこそ有利であり、闘う側には大きな損失である。大衆運動はその自立性や原則性こそ大事にされなければならないと、改めて思いながら、暑い中をやっと開会を迎えた。
 各地からの折鶴の献納のあと、主催者の挨拶が行われたが、正直、がっかりする内容だ。北朝鮮やイランの核の脅威だけが強調され、世界一の核保有国、核廃絶の協定には何一つ参加していないどころか今なお劣化ウランを落とし続けている国、アメリカに対する非難は一つもない。
 唯一の救いだったのは、広島被団協代表委員の坪井さんのお話を聞いたことだった。当時学生で登校中に爆心地から一.二キロで被爆した坪井さん。何度も生死の境を越えそうになりながら、何度も手術に耐えながら、ガンや慢性再生不良貧血症などに、今なお苦しめられながら、凛とした声で、自らの体を通して知る原爆の恐ろしさを語り、世界平和を心から訴えられるその姿は、八〇歳を超えているとは思えない。死を超えて人間の罪を暴く証人としての役割を担う力が全身に漲り、聞く者の心に迫るものだった。坪井さんは二〇〇三年にアメリカで原爆投下機エノラ・ゲイ一般公開時に抗議のため渡米されたことも後で知った。全体会は全員の「原爆許すまじ」の歌で幕を閉じた。
 五月の大阪地裁での原告九人全員の被爆認定訴訟勝利に続き、この日、四日には、広島地裁での四一人の勝訴が報告された。被爆してから六一年たっている今、集団訴訟を行ってやっと勝ち取った勝利であるが、この後、行政がどう出るであろうか。

(二)分科会
 ヒバクシャを生まない世界に
 原爆訴訟・在外被爆者と被爆者援護法
 五日には、午前中七つの分科会等が開催された。私は、韓国・朝鮮被爆者の問題を知りたく、この分科会を選んだ。「韓国の原爆被爆者を救援する市民の会」の会長である市場淳子さんから基調講演がなされた。この会は、一九七一年に設立され、以来、全被爆者の一割をしめる朝鮮人に対して、何の援助も無い状態を変えるための活動を続けている。一九五七年に「原爆医療法」ができ、被爆者の無料検診と治療が開始された。しかし、一九六五年の日韓条約では、在韓被爆者の賠償問題には一切触れられていない。そこで、一九六七年に韓国原爆被害者協会が設立され、日本政府に賠償と援護を求める運動が始まった。一九六八年には「原爆特別措置法」が制定された。被爆者手当ての支給が始まるが、在韓・在朝被爆者には支給されない。以後十年たって七八年に在韓被爆者・ソンジンドウさんが最高裁で勝利し、在韓被爆者も日本に来れば日本滞在中のみ「被爆者」の適用を受けられるようになる。そして、二〇〇二年クァククィフンさんの大阪高裁勝利によって、やっと居住国に帰国後も手当ての支給が受けられるようになった。しかし、この後も裁判によって若干の進歩はあったものの、被爆者手帳は本人が来日しなければ受けられない。高齢化して移動することができなくなっている被爆者には困難だ。強制連行等で日本に来させた後、過酷な労働などに従事させ、戦後は外国人として権利外に置こうとする日本政府の身勝手さは実に恥ずかしい。しかも国交のない朝鮮民主主義人民共和国の被爆者は、海外における手帳交付を認めない限り援護法の適用は受けられない。在朝被爆者で作る「反核朝鮮被爆者協議会」は在朝被爆者は日本の朝鮮侵略の被害者であることの基本認識から日本政府に賠償責任を求めており、援護法の平等適用は求めていない。市場さんは報告の最後をこう締めくくっている。
 「結局、日本のアジア侵略の責任も、アメリカの原爆投下の責任も、不問にされたまま、戦後六一年の年月が流れ、その間、アメリカの核の傘に守られてきた日本の被爆者に幾ばくかの援護策が日本政府によってなされてきたが、それ以外の被爆者は全員切り捨てられたのである。なかでも、在朝被爆者は一番外に置かれ、未だに何の援護策も受けられずにいる。」
 市場さんの基調に続き、自ら裁判で在韓被爆者の問題を切り拓いてきた、前・韓国被爆者協会会長のクァクさんからの話を聞いた。クァクさんは、一九二四年生まれの八二歳。一九四四年朝鮮人徴兵令施行の第一期生として日本軍に召集され広島に配属、四五年に被爆した。帰国後、教職につく傍ら被爆者協会の設立に尽力し、日本政府に在韓被爆者の援護を求め、日本滞在中に手帳交付を受け治療も受けた。しかし、帰国すると権利が消滅することに怒り、裁判を起こし,
帰国後の手当て支給等が実現できるようになった。クァクさんは、韓国側からの戦争責任を問う裁判を八〇回以上も起こしたがことごとく負け続けてきた。わずかに被爆者裁判のみが勝利しているだけである。一八九五年のミンピ暗殺では、四八名の実行該当者が広島裁判で証拠なしとして三ヶ月で無罪になっている。これら、日本の侵略による不条理をひきながら、怒りをこめて語られた。また、韓国内の国民感情として原爆によって日本人が多数死んだことは喜びであり、それによって独立できたと考える人たちも多い中で、被爆者の運動は「運が悪かったのだ」と言われ、支援の無い孤立した茨の道であったことを語られた。
 在外被爆者としての証言として、ブラジルに移住した人たちの代表として、在ブラジル原爆被爆者協会理事である渡辺淳子さんのお話も聞いた。二歳で被爆したが、自分が被爆したとわからず、移住後に体調が悪くなっても、その原因がわからなかった。日本へ帰国したときに被爆したことを知らされ手帳交付を受けた。手当ても支給されるがブラジルの保険制度との関係で意味が無いとのことだった。
 戦後六一年たっても、まだまだ課題は解決されていない。今後は海外在住のまま、手帳の交付が可能になるように、今七名が起こしている裁判の支援が重要になるということだった。

(三)追悼碑めぐり
 八月五日の午後は、様々なイベントが行われる中で、この際しっかり追悼碑めぐりをしようということに決定。連合を始め、多くの団体の企画の中から、私たちはYMCA主催の碑めぐりに参加。暑い暑い中を、二〇人くらいのグループで出発。平和公園の中は土曜日でもあり、すごい人だった。「車いすの必要な方はどうぞ」というようなプラカードを持った人もいる。私たちを案内してくれた方ももちろんボランティア。平和のための行動に参加する人たちの優しさを感じる。公園内にはおよそ二百の追悼碑がある。もちろんすべてを回れるわけではない。
 貴重だったのは、現在、レストハウスになっている元大正屋呉服店の見学だった。被爆当時は呉服点は閉店しており県の燃料配給組合が使用していた。被爆時にいた三七人のうち、地下に書類をとりに行った一人だけが生存したという。地下まで入れていただいた。私が高校生だったときの担任の話を思い出した。中国戦線で歩哨を交代した直後に、交代したその兵隊が撃たれて死んだという。人の生死がどこで別れるか、恐ろしいことだ。ここもまもなく入れなくなるとのこと。
 追悼碑の中で是非見たいと思っていたのは、韓国人原爆犠牲者慰霊碑である。広島市の公式の被爆者発表の中に韓国・朝鮮人被爆者が含まれていない。今なお公式文書はそのままであるという。この碑も公園の外に置かれていたものがやっと一九九二年に公園内に移されたものだ。大きな亀の形をした碑にはたくさんの方がお参りした様子が伺え、「強制労働等により、広島で被爆した同胞の慰霊と、再び原爆の惨事を繰り返さないことを願うためにこの碑を建てた」ことが刻まれている。
 そして、誰もが知っている「原爆の子の像」である。クラスの子どもたちに「貞子さんて知っている?」と聞いたとき、「知ってる、井戸から出てくるすごい怖いの」と答えられて苦笑したことがある。今子どもたちに有名なのはホラーの貞子なのか。折鶴のいわれは、二歳で被爆した佐々木貞子が六年生のときに白血病になり、「鶴を千羽折ると病気が治る」と言われて毎日必死に鶴を折り続けたことから来ているのだ。貞子さんは、結局千羽以上折っても、帰らぬ人になってしまった。この話は、六年の国語・「道徳」の教材として載せられているので、是非、活用したいと思う。
 私たちのグループには、北海道からきた六年生四人、中学生四人、引率の先生二人も参加していた。町からの派遣である。そんな町もあるのだと、東京との違いをうらやましく思った。
 この他にも名前不明、一家全滅で引き取り手がない遺骨が納められた供養塔や教員の追悼碑なども見学した。奇しくも、葛飾で広島修学旅行を企画された江口先生と交流のあった案内の一人の人とお話しすることができたのも、嬉しかった。汗だくだくになりながらの二時間コースを終了したとき、この広島の持つ重さをまた深く受けとめなくてはと思った。

(四)広島市主催の祈念式
 八月六日は原爆が投下されたその日。今年は、これまでで最大の四七カ国からの参加があった。公式発表で四六〇〇〇人の人が平和公園に集った。用意された会場いっぱいの椅子にはもちろん座れない。周辺一帯立錐の余地なし。受け付け近くで声を聞くほかない状況だ。しかしここの良さは、やはりボランティアによって冷たいおしぼりや飲料水がいただけること。このような混雑をさけ、早朝静かなうちにお参りをする遺族の方等も多い。遠く聞こえる秋葉市長の声は、自分たちが受けた苦しみを世界から廃絶するためにこれまでに行ってきたさまざまな実績と自信がこめられていて、凛と響く。平和宣言の最後に「日本国政府には、被爆者や市民の代弁者として、核保有国に対して『核兵器廃絶に向けた誠実な交渉義務を果たせ』と迫る、世界的運動を展開するよう要請します。そのためにも世界に誇る平和憲法を遵守し、さらに『黒い雨降雨地域』や海外の被爆者もふくめ高齢化した被爆者の実態に即した人間本意の温かい援護策を充実するよう求めます。・・・」と発言した。
 続く、小泉首相の声は、全く何を言っているのか聞き取れないようなくぐもった、主張の伝わらないものだった。後で、新聞で読んだところ「・・・我が国は、人類史上唯一の被爆国として、その経験を国際社会に語り継いでいく責任があります。・・・私は、犠牲者の御霊と広島市民の皆様の前で、今後とも、憲法の平和条項を遵守し、非核三原則を堅持し、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に向けて、国際社会の先頭に立ち続けることを改めてお誓い申し上げます。」と言う内容だったようだ。「原爆の日」に首相が被爆者代表と直接会って要望を聞くということが三〇年前の三木首相の時から実施されて以来、二〇〇〇年森首相まで一五回続いてきた。しかし、小泉首相は二〇〇一年就任直後に一度会っただけで、今年も素通り。被爆者の怒りと失望の声は大きい。公園の片隅に追いやられ、自分たちよりはるかに多い警官・機動隊に取り囲まれながら「小泉にはこの式典に参加する資格があるのか」と声を上げている人たちがいたが、本当にそうだと思わざるを得ない。

(五)終わりに
 広島では、長い間広島県教組が中心となり、自主教材を使いながら、「平和の日」登校学習を続け、平和教育を実践してきた。今は、行政の介入でその実践ができなくなっていると聞く。
 朝日新聞八月一一日の「声」の欄に、「広島市内の小学生に聞いたところ、ほぼ半数以上が広島に原爆が投下された事実を知らないというのです。被爆国日本の歴史を過去のものにしてはいけないと思います。」と語り継ぐ努力の大切さを訴えてる投書が載っていた。また、三〇才の女性の投書もあった。広島で被爆した大叔母から、「・・・あんたあ、人の死んだにおいをかいだことがある?わたしゃあ絶対に忘れん。あのにおいだけは忘れられん」と聞いたという。戦争を語り継ぎ後世に伝えることがわたしたちの世代の役目ではないかと結んでいる。
 戦争や被爆の体験継承が弱くなっていることは事実だろう。一方でアメリカの中学生が学校で原爆のことを学習し、自分で調べ、二〇時間以上に及ぶ記録を編集した一五分のビデオをもって、各地で観賞会を開いていると言うことも知った。教研集会にお呼びした森達也さんは、「戦争によって被害者も加害者も苦しむ。」と言っていた。原爆によって多くの人が地獄の苦しみを経験し、今なお、苦しんでいることを、忘れてはならない。日本の侵略によってアジアの人たちをどれだけ苦しめてきたことか、も忘れてはならない。言葉だけの平和論が、いかに平和を求める具体的な運動にとって、また、世界の現実にとってむなしく、おろかなものか、私たちはきちんと見きわめなくてはならないと思う。

 広島の後、私は昨年に続き、八・一五をはさんで韓国に行って来た。小泉の靖国参拝の重い事実を受けて、緊張する日々だったが、新自由主義グローバリゼーションによってもたらされるさまざまな労働者・農民・教員などに掛けられる攻撃に、正面から闘う人たちに会うことができた。ピョンタクというソウルから一時間くらいのところでは、米軍の世界再編の中でソウル市内の指令部移転、基地の大拡張が行われようとしている。肥沃な農地に鉄条網が張られ、外部の支援者を閉め出すための検問が行われている。行っているのは、まだ若い兵士や警官だ。
 韓国の新幹線KSTの女性非正規労働者による正規雇用化の約束反故に怒る闘いは、駅構内での籠城ストライキを六〇日も続けている。その間、指導者が何回も逮捕されるなどの弾圧をはね除けて、合宿によって意思統一をはかり、家族支援会も結成された。全教組では、日本と同じような査定給の導入に対し、五五日間の座り込みや支給返上の一二万筆の署名を集めるなどの闘いを組んでいる。非合法から出発した全教組は、今や、三つある教員組合の中で最も加入者が多くなっている。平和を守る、ということはこうした厳しい闘いとつながる行為がなければ実現できないのだと思う。そのために自分が何をすべきか、できるか、教員生活最後の年になって、重たい課題をもらった旅だった。




週刊墨教組 No.1503 2006.8.31

総人件費削減を許すな!
  〇六人事院勧告
     人事院、政府の「要請」を受け入れ、官民比較方法の見直しを強行
     月例給で一.一二%、四二五二円、ボーナスで〇.〇五月分の官民較差を圧縮
 ボーナス、月例給とも据え置き

 八月八日、人事院は政府と国会に対し、比較対象企業規模の五〇人以上への拡大など官民比較方法を見直し、「ボーナス・月例給の改定を見送る」など、国家公務員の給与改定について勧告・報告を行いました。主要点は次の四点です。
 従来の官民比較方法(比較対象企業規模一〇〇人以上)で算出したなら、月例給で一.一二%、四二五二円、ボーナスで〇.〇五月分のアップとなる。しかし、人事院は政府の圧力に屈し、官民比較方法の見直しを強行し、公務員人件費削減を内容とした勧告を行った。到底容認できるものではない。

1.官民給与の較差(一八円、〇.〇〇%)が極めて小さく、月例給の水準改定を 見送り
2.ボーナスは、年間四.四五月分で据え置き   (昨年冬と本年夏、民間平均四.四三月分)
3.扶養手当における三人目以降の子等の支給月額を一〇〇〇円引き上げ (五〇〇〇円→六〇〇〇円)
4.給与構造の改革の計画的な実施
   ・広域異動手当の新設 ・俸給の特別調整額の定額化等

 人事院勧告制度の破綻
 今年度の勧告で、人事院は一九六四年以来、公務員給与水準決定の社会的枠組みとして確立されてきた現行の「比較企業規模」の見直しを強行した。このことは、七月七日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」の「公務員人件費削減」に向けた方策を人事院が受け入れ、具体化したことになる。人事院が、政治の圧力に屈して総人件費削減政策に荷担したのである。本来、労働基本権制約の代償機関であり、中立・公正な第三者専門機関であるべき人事院が、独立・中立性を自ら放棄したのである。公務員の賃金・労働条件決定制度としての人事院勧告制度は、本年の勧告でも限界を明らかにした。
 原点に戻り、団体交渉による決定システムとそのもとでの賃金闘争の構築、労働基本権の確立が急務である。
 賃金改善を含め、労働条件の改善は、闘いでしか獲られない。闘わなければ労働条件は切り下げられる。二〇〇六賃金確定の闘いは都段階に移った。東京都人事委員会は、総務省の圧力に屈し、「基本方針二〇〇六」に沿った内容の勧告を行うことが予想される。私たちは、あくまでも「労使交渉による決定」を闘いの基本に、二〇〇六賃金確定闘争に取り組む。
 
資料  「育児のための短時間勤務の制度の導入等についての意見」
 これは、公務におけるワークシェアリング実現に向けた公務員労働組合連絡会の五年間にわたる取り組みの成果である。介護に係わる措置が先送りされ、後補充を非常勤とするなど内容上の不満があるが、本格的な短時間勤務制度実現に向けた第一歩として受け止め、政府に早期の法改正と実施を求める。

  平成18年8月 人事院
 「育児のための短時間勤務の制度の
       導入等についての意見」の概要

 少子化対策が求められる中で、公務においても、職員の育児を支援するため、人件費や定員の増加を伴うことなく、@育児のための短時間勤務、A後補充としての任期付短時間勤務、B並立任用の仕組みを導入し、長時間にわたる育児と仕事の両立を可能とするとともに、男性職員の取得拡大にも資するよう育児休業法を改正。

1.育児短時間勤務
(1)任命権者は、職員が小学校就学始期に達するまでの子を養育するため請求したときは、公務運営に支障がない限り、短時間勤務を承認するものとすること。
(2)1日当たり4時間(週20時間)、週3日(週24時間)等の型から決定。
(3)同一の常勤官職に2人の週20時間勤務の育児短時間勤務職員を任用(並立任用)し、空いた官職に常勤職員を採用できること。
(4)俸給、地域手当、特別給は勤務時間に応じた額。

2.任期付短時間勤務職員
(1)任命権者は、育児短時間勤務職員が処理できない業務に従事させるため、任期付短時間勤務職員(非常勤職員)を任用できること。
(2)勤務時間は週10時間から20時間までの範囲内と定めること。
(3)俸給表を適用し、俸給、地域手当、特別給は勤務時間に応じた額。月例の手当は原則として非支給。

3.実施時期
 公布の日から起算して1年を越えない範囲内の日から実施。


2006.7.21
 都教委「再発防止研修」を許さない




教育委員会


週刊墨教組 No.1502 2006.7.28

公務員総人件費削減反対
教員給与の狙い撃ち削減を許すな!



賃金・定数等、労働条件は労使交渉で決めること 
国の不当介入を許すな
 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」が七月七日に閣議決定された。その中で、「公務員人件費」削減に向けて、@給与の比較対象規模を見直す(一〇〇人→五〇人)、A地域の民間給与の更なる反映を図る、Bボーナスの支給月数の地域格差の反映、C特殊勤務手当の削減、D互助会への補助金の削減、E級別職員の構成の是正(定数削減)、F知事等の高額な退職手当の適正化などを指摘している。これは本来、地方自治体の自主的な取り組みが尊重されるべきことに対する国の不当な介入である。また、八月上旬に出される人事院勧告、一〇月に出される各県での人事委勧告に対する圧力でもある。日教組、自治労を含む公務員連絡会地方公務員部会は、地方自治に対する介入を阻止するため総務省等に対し交渉を強化している。
 
教員給与の大幅削減を許すな
人材確保法の廃止を含む教員給与のあり方の検討を求める「行革推進法」の成立、人材確保法に基づく優遇措置の縮減・国立大学運営費交付金削減などを記した「基本方針二〇〇六」が閣議決定されたことを受け、日教組は六月二八日文科省要請に引き続き、七月一三日に財務省に対し要請を行った。「基本方針二〇〇六」では、教員給与は一般公務員の給与より四%高いとし、人材確保法にもとづいて措置された本給と義務教育教員等特別手当(給与等支給明細書では教員特別手当)について〇七年度から十一年度までの間に給与月額の二.七六%(国庫負担分約四三〇億円、地方交付税分八六〇億円)を削減すると記しています。政治的に財政論から教員給与を引き下げることを企図したものです。労働条件である賃金を、人事委員会制度をないがしろにして、政治が引き下げを決定し、具体化することを許してはなりません。

2006年7月14日
総務大臣 竹 中 平 蔵 様
公務労協公務員連絡会地方公務員部会

「基本方針2006」に関する申入れ

 貴職の地方分権の推進・地方自治確立と地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 政府は7月7日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(基本方針2006)を閣議決定しました。
 その中で、歳入歳出の一体改革を進めるとして地方財政の削減を求め、とくに地方単独事業や地方公務員人件費の大幅な削減をうたっています。しかも、自治体に住民サービス提供の仕方や、地方公務員の定数・給与の細部まで指図するものであり、このことは地方自治を侵害するものであって到底容認できません。
 この間、自治体においては、主体的な行政改革努力を行ってきており、他方で地方財政計画圧縮、地方交付税削減等により自治体財政は危機の度を深めています。
 「基本方針2006」により、地方分権とそれを支えるべき地方税財政基盤が後退し、人件費削減による人材確保の困難と相まって、地域公共サービスの大幅な低下が懸念されます。国は、地方自治を尊重すべきであり、自治体の行政施策を強要することがあってはなりません。
 つきましては、「基本方針2006」にかかわって下記事項を申し入れますので、その実現にご努力頂きますよう要請します。



1.職員定数については、自治体が自主的・主体的に決定するものであることを明らかにするとともに、住民サービスの低下につながることとなる、「集中改革プラン」を超える新たな純減を求めないこと。
  また、2007年度の地方財政計画における給与関係費の引下げは行わないこと。
2.地方公務員の給与決定については、労使交渉を踏まえた自治体の自主的な決定を尊重するとともに、地方公務員人件費の給与に関する指摘を強要しないこと。
3.公立学校教職員の給与については、文部科学省による教員給与の在り方の検討を基本に、関係労働組合との交渉・協議、合意に基づくこと。
  また、措置の具体化に当たっては、人事委員会等自治体の権限を侵害することのないよう対応すること。




「黙っていれば一〇〇年後にも基地の町」
 ー神奈川反基地バスツアーに参加してー

  「沖縄の闘いに連帯する東京東部実行委員会」主催の神奈川反基地バスツアーが、七月一日総勢四十一人の参加で行われ、墨田教組からは三人が参加した。
 神奈川平和運動センター副代表で相模原市議の金子ときおさんの説明を受けながら、一日かけて、相模補給廠、キャンプ座間、厚木基地、横浜ノースドック(横浜港にある米軍専用埠頭)と「国道一六号線」沿いに並ぶ神奈川の米軍基地を回り、日米軍事再編「最終報告」をめぐっての現状や闘いについて学習した。


 まず初めに、知らなかったのは私だけと思うが、基礎知識を確認しておきたい。
 米軍基地が「日本に返還される」とき、誰に返還されるのかということだ。七二年当時大蔵省が決めた方針は、「有償三分割」。
 本土の米軍基地は、軍病院等も含む元日本軍基地だったから国有地だ。従って米軍基地が返還されるのは国に対してだ。その基地が、戦前、安くあるいは軍票で買い上げたものだろうと、国有地なのだ。有償三分割で、三分の一は国有地。三分の一が、有償で地元自治体へ。残る三分の一は留保地だ。地元の分も、地方自治体に予算がなければ対応できない。これは、今現在に続く原則だ。
 基地と財政という観点から。国有地だから、基地からは固定資産税が入らない。基地交付金は全国の基地を抱える地方自治体で分けるから、県の一%が米軍基地である神奈川県でも、微々たるものである。相模原市の場合、相模補給廠とキャンプ座間の一部があるが、市税の〇.二%分に過ぎず、返還されたところでは、七七〇倍の税収があるそうだ。
 米国が唯一、海外に母港を置いている横須賀基地には、在日米海軍・第七艦隊司令部があり、キティーホークの退役に伴って、原子力空母が配備されようとしているが、空母が横須賀基地に入るということについて。
 空母が横須賀に来ると、艦載機が厚木基地に来るため爆音被害が大変大きいということは知っていた。私は、なぜ空母に止めておかないのだろうと思っていた。そんなに毎日訓練しないと、すぐ腕が落ちるのかと。違っていた。艦載機は、時速六〇q(空母では全速力)で進んでいる空母からでないと離発着ができないのだという。だから、横須賀港に停泊中の空母に艦載機を止めておくと、攻撃を受けても飛び立てないと。だから、横須賀港に入る前に艦載機は厚木基地に飛来するのだ。
 反基地を闘っている市民は、基地の監視活動を行っているのだが、そのために周辺にあるマンション等を利用してきた。ところが、軒並み「不法侵入」ということで逮捕されるようになっている。これがこの国の現実である。

 東京駅前を出発したバスの中で配られ資料に目を通すことから、学習が始められた。地図を見ながら「国道一六号線」沿いに、神奈川から東京西部には米軍基地があり、埼玉から千葉には自衛隊基地が並ぶことを改めて知る。この日は行かれなかったが、神奈川県には、横須賀海軍基地があり、池子住宅地区、本牧埠頭・大黒埠頭(軍事物資輸送のコンテナ化による「隠れた米軍基地」)があり、上瀬谷基地がある。
 米軍の世界的再編と米軍・自衛隊の強化のための、中間報告から最終報告、閣議決定があり、再編実施のための日米ロードマップが明らかにされている。

ロードマップから
 在日米軍司令部が横田。横田には空軍司令部もあり、ここに航空自衛隊航空総隊司令部が府中から合流する。横須賀には米海軍司令部、海上自衛隊艦隊司令部があり、原子力空母の母港化が示されている。キャンプ座間には陸軍司令部があり、ここに陸上自衛隊中央即応集団司令部が新設される。沖縄には、在日海兵隊司令部がキャンプコートニーにある。米軍と自衛隊の一体化は、ここまで進んでいるのだ。

相模原補給廠
 まず私たちが行った相模原補給廠はベトナム反戦運動と結び付いて記憶される基地だ。一九七二年、ここで修理された戦車がベトナムに送られるのを阻止しようと、大勢の市民が一六号から基地までの市道沿いにテントを並べ座り込んだ。そして、戦車の搬出を一〇〇日間阻止したという歴史がある。今でも年に一回、この時の支援に感謝してベトナムから人が来るという。その市道の桜並木の下を歩いて、相模原補給廠の正面ゲート前に行く。私たちの姿が見えると、すぐゲートの詰め所にいる日本人ガードマンが、どこかに電話をする。彼らは、ショットガンを携帯している。私たちが写真を撮ったり説明を聞いたりする姿を、ガードマンも写真に撮る。長くいると、MPが来て、日本の警察が来るとの話だったが、バスの方へ歩き始めた頃MPの車を見ただけだった。
 相模原補給廠も広いから、正面ゲートからだけでは何もわからない。バスでJR相模原駅に行き、六階建の駅前駐車場の屋上に上がり、基地の監視活動等の中で作られた平面図を見ながら金子さんの説明を聞いた。 (続く)

キャンプ座間
 私たちは次に麻溝公園に行った。ここは戦前陸軍士官学校の練兵場があったところだ。相模原市に一部返還されたところに麻溝公園があり、そこにはゴミ焼却場もある。公園のグリーンタワーとゴミ焼却場の煙突のため、キャンプ座間にあるミニ飛行場は使用できなくなったという。タワーの上から遠く見えるキャンプ座間の北側を見ながら、説明を受けた。その後、ゴミ焼却場に付属する健康文化センター会議室で昼食をとり、映像を見ながら話を聞いた。
 二〇〇一、九、九の米軍新聞の一面には、日本と韓国の基地がテロ攻撃を受けるだろうという情報が載せられており、米国内でのテロ攻撃は予想できていなかったらしい。
 九月十二日朝のキャンプ座間のゲートの写真を見る。ゲートは閉ざされ、土のうで守られた「陣地」がつくられ、そこから門の外に向かって大砲が構えられている。基地外にいた人は、日本人従業員はもちろん米軍人も一切入れず、いつもはあげられている「旗」もあげられていない。テロ直後の混乱の様子が伝わってきた。横田基地では、塀の中から国道一六号に飛行機のタラップが突き出され、その上には銃を構えた狙撃兵がいる。
 この後バスで移動し、キャンプ座間を正面ゲートから見ながら更に説明を聞いた。キャンプ座間は、半分以上が相模原市に属し、戦前陸軍病院があったところだ。
 相模原市は、基地の下での七十年間に、もう我慢の限界だと、市として「黙っていれば一〇〇年後にも基地の町」との横断幕を歩道橋や学校のフェンスに掲示している。また、相模原市は、米軍基地内に自衛隊が駐屯することにも同意していない。だから座間キャンプ内の自衛隊駐屯地は座間市内の部分だけにある。

厚木海軍飛行場
 次にバスは厚木海軍飛行場に向かった。バスを降りて基地の正面ゲートに行く。ゲートに入る道路上にイエローラインが引かれている。このラインより基地側は治外法権だ。ゲートにいるのはここでもショットガンを携えた日本人ガードマン。イエローラインの手前には日本の警察の車両が一台止められていた。写真を撮ったりしてから、シュプレヒコールを始めると、警察官が「警告」と書かれたカードを黙って掲げ始めた。
 この厚木基地には、マッカーサーが日本占領の第一歩を記したことで有名だが、七〇年代から日米の共同使用がなされていて、周囲で六二機が落ちていることや、東名高速等の大和トンネルは、厚木基地の飛行機が落ちた場合にそなえてのトンネルであることなどを知る。二重に張り巡らされたフェンス沿いに歩いて、海軍の輸送機や戦闘機F18などが飛び立つところを見る。その騒音をほんの少し耳にしながら、横須賀の空母の母港化と同時期に戦闘機のジェット化があり、爆音被害が一気に激しくなったことなどを知る。
 日米軍事再編「最終報告」に、この艦載機を岩国基地へという内容が含まれている。が、地元で反基地闘争を闘う人たちは、これで爆音被害は減少しないという。なぜか。岩国基地に付属する訓練海域で米軍の艦載機の訓練ができるのかということだ。だから、艦載機は岩国基地から厚木基地に飛来し、従来の訓練海域で訓練を続けることになるとしか考えられない、その往復に給油のために厚木基地に寄らざるをえないというのである。だから、結果的に爆音被害にあう人たちが増えるだけだと。
 ところで、第三次厚木爆音訴訟の控訴審判決が七月十三日に出され、将来分の損害賠償は認められず、過去の被害に対して、四十億円余の賠償が国に対して命令された。一次も二次も違法爆音とされながら差し止めにはならず、母港横須賀がある限りなくせない爆音被害。第三次は、飛行差し止めを求めた二次までと違い、損害賠償を求めて九七年に提訴したものだ。防衛費から数十億を取れれば、その分だけ使える防衛費を減らせるのだからと。この爆音被害の中には、例えば爆音で車や電車の気配が感じられないための交通事故が多発するということもある。

一日の学習の最後に
 厚木基地を後にして、横浜港ノースドックへ向かうバスの中で、ビデオを見ながら相模原市、座間市、横須賀等々での「中間報告」反対集会の様子や、戦前からの歴史などを学習した。そして最後に行ったのは、横浜港の大桟橋。ノースドックの様子を遠目に見る。上陸用舟艇が陸揚げされて並べられているのがわかった。
 改憲の軍事面での整備である日米軍事再編。最終報告が出され閣議決定がされても闘いは終わっていない。神奈川や東京の基地について、厚木基地の爆音被害については生活の問題として知っていたけれど、何も知らなかったと思い知らされた。
 教育基本法と憲法改悪の動きについては、結び付けて理解していても、世界的な米軍再編の動きの中で、これ程日米の軍事的一体化が進んでいたとも知らなかった。
 日本という国は、どこに向かおうとしているのか。先制攻撃を口走る政治家が、そのまま受け入れられるこの国は、どこへ向かおうとしているのか。
 忙しい中を一日私たちの案内をしてくださった金子さんに感謝したい。

参加者の感想から
・緑と有刺鉄線に囲まれた広大な基地、思いやり予算によって光熱費を使いたい放題つかっている軍の人たちのことを考えると、平和を脅かす基地はどう考えても必要ないと思いました。
・アメリカが中心の地図を見ると日本はアメリカから見るとアジアの端っこにあり、基地としては最適の場所だと言う実感と、ますますアメリカの言いなりになっている日本政府の暴走を食い止めなければと思った。そして、一人でも多くの人たちにこの現実を知らせていかなければ、日本は本当に住みにくい国に転落していく。



7月5日 教研集会 講師   森 達也さん(映画監督・ドキュメンタリー作家)

多くのみなさんの参加で、にぎやかに、森さんのお話をうかがうことができました。  
 「私」が多数の発想に靡かない、染まらないためには、それほどの努力はいらないのだということ。これまで、やっていたようで、今はやらなくなったようで、今もやってもいいような、今こそやらなくてはならないようなこと・・・のような気がしました。  




刊墨教組 No.1501 2006.7.12
労働条件の改悪
週四〇時間、一日八時間労働のなし崩し的破壊を許すな!


 都教委は、引き続き協議事項であった「週休日に行う部活動指導の取り扱い」について、交渉を打ち切り、「学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例等の解釈及び運用について」(七月四日付け通知)により、二〇〇六年八月一日から強行実施することを地教委、校長へ通知しました。「部活動指導」を、勤務時間割り振り変更の側面から整理した今回の通知は、「部活動振興専門委員会報告」と併せて見るなら、週四〇時間勤務をなし崩し的に破壊することであり、「日常の部活動指導」を今後、勤務と見なすことに連なり、一日八時間勤務をも破壊していくことになります。しかも、小学校にも部活動指導を想定しています。中学校だけの問題ではありません。私たちの勤務時間の有り様を大きく変えていく問題を含んでいるのです。

部活動指導を週休日(土・日曜日)の変更、休日の 代休日の対象業務とする
 従来は、週休日や休日に行われた公式試合等の部活動指導のみ、「勤務」と見なし、 「代休」処理することが可能でした。今回の変更は、練習や練習試合をも「勤務」と見なし、週休日の変更、半日勤務時間の割り振り変更の対象としたことです。
 休日に一日単位で部活動指導を行った場合は、代休が与えられることになります。
 教員特殊業務手当支給か、週休日の変更かの選択は、部活動指導教員の意向が尊重されます。また、練習試合を他校等で行う場合、「出張」扱いとなり、交通費の支給対象となります(旅費がさらに足りなくなる!)。、
 
週休日の変更には条件がある
 都教委は、「週休日が設けられていることの意義は、勤労による疲労の解消を図り、家庭生活の面でゆとりを与え、生活週間を確保することにある。」と述べています。本来、週休日は毎週確保されなければならないのです。週休日の変更は、「異例」なのです。そのため変更には、当然条件があります。その主な条件は次のものです。
◆補習や補講については、予め年間計画を作成したうえで行い、部活動指導にあたっても予め月間の実施計画を作成したうえで行うものとする。また、実施計画を作成する場合、実施日、従事する教育職員名、具体的な実施及び実施時間等を明記するとともに、週休日の変更等を確実に行うことができるように計画する。
◆週休日の変更及び教育職員の半日勤務時間の割り振り変更の手続きは、必ず事前に行われなければならない。
◆週休日の変更等を行った後において、週休日が毎四週間につき四日以上となるようにし、かつ、勤務日及び半日勤務時間の割り振り変更により新たに勤務時間が割り振られた日が引き続き二四日を越えないようにしなければならない。

 管理職は勤務を命じた以上、勤務している職員を監督するため、管理職もまた出勤するのは当然です。

墨田の小学校には部活動は存在しない
 「部活動」の規定があいまいのまま、墨田の中学校では慣行として部活動が行われてきました。しかし、部活動実施については、「部活動手当(補助金)」を区教委が各中学校に支給するにあたり、部活動実施要項等を各中学校で作成し、実施することを条件としています。この面からも、また、常盤指導室長との確認においても、小学校には部活動は存在していません。 

関東大震災83周年、
朝鮮人殉難者追悼式のご案内


 
暑い夏がやってきました。今年も忘れてはいけない、あの9月1日の関東大震災時の悲劇を再び繰り返さない誓いを立てながら、追悼式に参加したいと思います。
 そこに住む人々の悲しみや飢餓状況の中、繰り出されたミサイルの影響で、朝鮮学校の子どもたちが、また、ひどい目にあわなければと憂いつつ、そして、過去に向き合わずに、不安社会の敵として、在日の人たちへの差別や攻撃が起きなければよいが、と願いつつ。やる前にやればよいという政府高官の恐ろしい発言に、とうとうそこまで言う様になってしまったのか、と本当に危機感を募らせながら、参加しましょう。冷静に、事実を見つめる目をもって・・・。

日時 9月2日(土)午後3時より
場所 荒川河川敷木根川橋下手(京成線「八広」駅下車徒歩5分)
主催 「グループ ほうせんか」
関東大震災時に虐殺された朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会」


 
夏季休業を有意義に過ごそう
研修の扱いは変更なしー研修権を保障させるとりくみ

 

 「研修の取り扱い」が変更され、五年目になりました。この変更には、様々な問題点をもっていますが、私たちは、あくまでも自主的、自発的、主体的に行うべき「研修」の機会を保障させていくとりくみを、粘り強くすすめ、現実化させて行く必要があります。


教育公務員特例法二一条(旧十九条)・二二条(旧二〇条)

      条文は何ら変更されていない
 
 研修
二一条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。
 2 教育公務員の任命権者は、教育公務員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。
研修の機会
二二条 教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
 2 教員は授業に支障がない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。(以下略)
 
 教員の研修のあり方は、一般の公務員の研修(国公法七三条、地公法三九条)の扱いと異なって、教育公務員特例法(以下教特法)で特別に規定されています。創造的な教育活動を営むには、日常不断の研修(研究と修養)活動が必要不可欠であることを教特法二一条で保障しているのです。
 一般の公務員の研修は、その規定から明らかなように勤務能率増進上のいわばその手段として他律的に課せられたものです。しかし、教員の研修は、その職務遂行上不可欠なものとしてあり、他律的に課せられるものではなく、自主的、自発的、主体的におこなわれるべきものです。また、二二条2項で、いわゆる承認研修の機会を保障しています。
 研修問題を考える場合、、先ずこの点を押さえておく必要があります。

前回の変更点は二点
@ 教員の自宅を研修場所とすることは、原則として認めない
A 研修承認願、研修報告書の様式を変更する

 様式変更についての区教委の態度

 今回の様式の変更は、研修願・研修報告の書式整備を通じて、教員の自主的、自発的に行うべき「研修」を教育行政として奨励しようとすることが趣旨である。個々の教員の自主的、自発的な「研修」を規制するものではなく、そうした意図もない。


自宅での研修
 文部科学省は、二〇〇二年七月四日、「夏季休業期間等における公立学校の教育職員の勤務管理について」を各都道府県教育委員会へ通知しました。
 この通知について、そのとき、一部マスコミが「『自宅で研修』認めず」との見出しでとり上げ、あたかも文部科学省が「自宅での研修」を一切認めないかのような報道をしました。これは全くの歪曲です。
 文部科学省は、「研修を自宅で行う場合」「自宅で研修を行う必要性の有無等について適正に判断すること」と述べているのです。


「原則」の意味
 二〇〇二年度に区から出された通知文には、6―(1)―ウ、「研修場所については、研修内容からみて妥当な場所であり、合理的かつ必然的な理由を有すること。なお、教員の自宅を研修場所とすることは、原則として認めないこと。」とあります。
 後段部分「教員の自宅を研修場所とすることは、原則として認めないこと」にあります。
 行政用語として「原則として」は、「例外」があることを意味しています。「原則として認めない」とは、「認める場合がある」ことです。
 その例として、区教委は、自宅にある蔵書、パソコン等の機材(ソフト)の利用を挙げていました。
 研修をするにあたって、研修の成果がよりあがることが期待できるとすれば、それで十分な理由になると考えられます。


自主的研修を実現しよう 
 区教委は教特法を遵守する立場にあり、区教委には研修の機会を保障する責務があります。区教委が研修内容・方法に介入することはありません。私たちはあくまでも自主的、自発的、主体的に行うべき「研修」の機会を保障させていくとりくみを、粘り強くすすめていく必要があります。

8.30 都庁包囲に
集まれ!
15時集合 新宿柏木公園 

 都教委が2003年秋に「10.23通達」を出して「君が代」斉唱不起立の教員たちを処分して以来、学校現場では、校長の権限がますます強化され、「日の丸君が代」の徹底や管理・統制が強められています。しかし、屈服しないでがんばっている教員や生徒、保護者・市民はたくさんいます。
 秋の臨時国会では、教育基本法の改悪案が継続審議されます。 これは絶対に止めなければなりません。「 教育改革は東京から」というのですから、教育「 改悪」は東京から始まっています。 石原都知事と都教委の横暴に抗しなければなりません。

 石原都知事と都教委に抗議し闘いたい人は、今年も集まり、都庁包囲抗議デモに参加しましょう!

石原・中村都教委の暴走を止めよう!
教育基本法の改悪を止めよう!




週刊墨教組 No.1500  2006.6.19

職場の協力・協働を崩す
   差別昇給=査定昇給に反対!
   六月十五日、都教委、実施を通知



 都教委は、「平成十八年度教育職員等の勤務成績に基づく昇給における昇給者の推薦について」を通知しました。その特徴的な内容は次の四点です。
@「業績評価等に基づいた」推薦により都教委が決定

A都教委が区教委に提示する推薦者数の割合は、原則、在職人員の三五%とし、推薦者数として提示する。 
B校長推薦は在職人員の二〇%。
※区教委は、都教委から提示された数から校長推薦数を減じた数を独自推薦することになる。
C校長、副校長、主幹、教諭、の四区分で推薦する
※在職人員とは平成一七年度(昨年度)に業績評価が実施された教育職員等で基準日(平成十八年度四月一日)に在職する者の数から最高号級者を減じた数。
  昨年度業績評価がない方は、昨年度の新採用者(現二年目の方)、育休や病休で勤務日数が少なく業績評価外の方、海外日本人学校勤務の方等です。教諭では、号級の足伸ばしがなされたために、現在最高号級者はいません。
※区分「教諭」以外は、職場での人数が少ないので、区一括で推薦者が決められます。

「士気」が高まるはずがない
 今回の抜擢昇給は、未だ開示できる状態ではない、不透明な、校長による評価が昇給に反映されるのです。「公正」の保障が担保されていない評価に基づく抜擢昇給なのです。昨年度まで実施されていた「成績特昇」により、校長と職員との信頼関係が希薄なものになった職場が多々あります。そうした職場では、職員の士気が低下しているのは当然です。「公正」・「公平」が具体的に見えてこそ、職員は納得し、士気が高まるのです。

 抜擢昇給・成績主義の徹底に反抗する
 学校は、特に協力・協働が礎になっている職場です。職員間の競争がなじまない職場でもあります。しかし、査定昇給制度は、個々を競わせ評価し、処遇するという競争原理の徹底を給与制度面から推し進めようとするものです。「競争」は〈なかま〉〈ゆとり〉〈決定権〉を確実に奪います。これらの喪失は、人間的な感情、関係、いとなみ、感覚の頽廃、つまり人間の内面の頽廃を導き出さざるを得ません。だからこそ私たちは成績主義に反対してきました。
あくまでも反対し、反抗します。

学校職場も 今年度から「査定」は他部局と同じ

 教員の業績評価の期間が四月〜三月になっているため、この時期に昨年度の業績評価による査定昇給が実施されます。他部局は、四月一日に実施されました。実施時期を学校職場も他部局と同じにするとのこと。そうなれば「査定昇給」の作業が今年度中にもう一度実施されることになります。

資料1は、査定昇給制度導入に際して示されたものです。このことから、校長の推薦者から最上位(2号昇給)、上位(1号昇給)者が決定されます。また、区教委独自推薦者から上位(1号昇給)者が決められます。


枝川朝鮮学校を応援する集い
 −映画 トーク 歌と踊り−
日時 6月25日(日) 12時30分から16時30分
会場 江東区文化センター大ホール
 東京都から土地明け渡し請求裁判を起こされている、東京朝鮮第二初級学校を応援するために開催されます。当日は、映画「パッチギ!」上映、井筒監督と弁護団によるトーク、子どもたちの歌と踊りもあります。
 前売り券1000円、参加される方は書記局にご連絡ください。


二〇〇六年度教研集会
七月五日(水) 午後三時開会
墨田教組会議室
記念講演は、
森 達也さん
      (映画監督・ドキュメンタリー作家)

 森達也さんが論じるテーマは、多岐にわたります。どんなテーマに対しても鋭く肉薄することによって、現在の時代と社会の危機を、明瞭な輪郭で抉り出します。
 とりわけ、「どこまでも無自覚に報道し続ける」メディアに対して、怒りをこめて、最も鋭く告発しつづけています。
 その縦横無尽の健筆の一端は、『世界が完全に思考停止する前に』(角川書店)に最もよく表れています。
 この本の帯には、次のような三人の賛同文が寄せられています。

森達也は問い続ける。
「ちょっと待って、それって変じゃない?
ジャーナリズムが本来持つべき
この批評的な視座と、
私たちはこの本の中で出会う。
あとは自分で考えよう。
是枝裕和(映画監督)

気がつけば常識は常諦でなくなっており
モリタツこそが「今どき、まっとうな人」
としてみんなの救いになっている。
私の救いになっちゃったりもしていた。
 斎藤美奈子氏(文芸評論家)

森達也さんは、「僕たち」を
押し流そうとするものに抗い続ける。
スジガネ入りのひとりぼっちの
「僕」だから、信じられる。
重松清(作家)
 その、ひるむことのない、まっとうに抗う姿勢。
 しかし、森さんの風貌と語り口は、とても自然体でやわらかです。
 『世界が完全に思考停止する前に』より、森さんの人となりと心根がうかがえる文章を引用します。
 なお、『いのちの食べ方』(理論社)は、同和教育の教材としても活用できます。

まえがき
 「過ちは繰り返さない。その決意はもちろん間違っていない。でも過ちを繰り返さないためには、何をどう誤ったのかを知らなければならない。記念日には涙を流し、線香を供え、過ちは繰り返しませんと墓前や記念碑に誓いながら、いつのまにか僕らは、同じ過ちを繰り返している。なぜなら過ちを犯したのは「誰か」ではなく、「自分たち」一人ひとりなのだということを、僕らはいつのまにか忘れてしまっているからだ。
 誰だって知っているはずだ。世界があるから自分がいるのではなく、自分がいるから世界があるのだということを。
 人は皆が思っているほどに賢くはない。でも皆が思っているほどに残虐でもない。だからこそ過ちを繰り返す。心が弱くて、優しくて、善意溢れる生きものだからこそ、人は互いに殺し合う。
 これを本気で認めることは辛い。。主語を一人称にしなくてはならないからだ。」

あとがき
 「時代は急速に転換している。思い出して欲しい。たとえば八年前、武装した日本の自衛隊が海外で米軍の武力侵攻への支援活動を行うことなど、誰が想像できただろう。学校で国家斉唱の際に起立しなかった教職員が大量に処罰され、公園のトイレに「戦争反対」の落書きをしたら、建造物捜壊で有罪になる社会が現出することなど、いったい誰が予想できただろう。」

 「間違いなく今、世界は壊れかけている。思考を停止しつつある。その責任は、僕たち一人ひとりにある。なぜなら同時代にいるからだ。事後に特定の誰かを論(あげつら)うための責任論は、空しいし意味がない。僕らはいわば、この世界を壊し続けることの共謀共同正犯だ。」

 「八年前にオウムの映画を作って以降、ずっと不安だった。オウムによる一連の犯罪の動機や背景には、凶暴な殺意や暴力への衝動が働いていたのではなく、彼らの愚直なほどの善意や優しさが主語を失うことで暴走したのだと主張しながら、自分はもしかしたら、とんでもない勘違いをしているんじゃないかという懸念を、ずっと払拭できなかったからだ。でも今ならもっと、自信を持って断言できる。
 世界の思考を停め、僕らの身を現在も脅かし、そして僕らが本当に対峙すべき相手は、悪意ではなく、一人称の主語を失った善意や優しさなのだ。」

略暦  森 達也
   映画監督,ドキュメンタリー作家
1956年,広島県呉市生まれ.立教大学法学部卒業
1998年,自主制作映画『A』を公開.ベルリン映画祭など世界各国の映画祭に正式招待される.2002年,続篇『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭にて,審査員特別賞,市民賞をダブル受賞.著書に『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫),『A マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(以上,角川文庫),『ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー』 『世界が完全に思考停止する前に』(以上,角川書店),『世界はもっと豊かだし,人はもっと優しい』(晶文社),『下山事件』(新潮社),『いのちの食べかた』(理論社),『池袋シネマ青春譜』(柏書房),『言論統制列島』『戦争の世紀を超えて』(以上共著,講談社),『ご臨終メディア』(共著,集英社新書)ほか

『悪役レスラーは笑う』(岩波新書より)


刊墨教組 No.1499 2006.5.31
教育基本法の改悪を許すな! -2-


 「憲法が国民を守る、憲法が国家を縛る」という「立憲主義」がより強く貫かれているのが現行憲法です。この「立憲主義」を根底から否定しているのが自民党が昨年決定した「新憲法草案」です。その前文には、「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し、…」とあります。憲法が「国民が国を愛情をもって守る責務」があるといっているのです。国民より国家が優先されているのです。国家が国民を縛るのです。
 「個人の人権」を国家的なものに従属させようとする政府「教育基本法案」は、自民党「新憲法草案」と一体です。「国家及び社会の形成者として必要な資質」の育成という第一条の教育の目的を実現するため、「必要な資質」を第二条 教育の目標で規定しています。まさに暴挙です。

現行の第二条(教育の方針)を削除し
第二条 教育の目標新設
 「教育目標=内容」を法定化し、国家権力をもって「国民に必要な資質」を強制する。ここに教育基本法改悪の意図が現れています。その「資質」をまとめると以下になります。
一、個人的資質(知識と教養、真理、豊かな情操と道徳心)
二、個人の能力(個人の価値、能力の伸長、創造性、自主的精神、職業・勤労の重視)
三、社会性(正義と責任、自他の敬愛と協力、公共の精神) 
四、自然(生命の尊重、自然・環境の保全)
五、国家・国際(伝統と文化、国と郷土への愛、他国の尊重、国際平和) 
 法律で徳目を定め個人の内面を法律で縛ることは、近代法の原則から逸脱しているばかりか、憲法の規定する思想信条の自由を侵害するものです。第二条は、憲法違反と言わざるを得ません。

「伝統と文化の尊重」の意図
 週刊墨教組一三八五号より再録

現行教育基本法には
なぜ「伝統」が入っていないのか
 その「真の愛国心」という言葉と等価の同義語として、素案に頻出するのが、「伝統、文化の尊重」という紋切りの決まり文句です。なぜ、かくも「伝統、文化の尊重」にこだわるのか。
 佐藤秀夫は、『教育基本法はどんな法律か』のなかで、「伝統」という言葉が教育基本法に入らなかった経過について、つぎのように語っています。(『世界』十一月号所収)

「教育刷新委員会の第一特別委員会が決めた最初の案では「伝統」という言葉はなかったんです。ところが、最年長の故に特別委員会の委員長に推された羽渓了諦という仏教学者が、非常に保守的な人で、おしまいの方の会議の中で、突然日本の伝統を生かすという提案をするのです。それに対して、天野貞祐すら反対したんです。「個性を重んじ」というところに、「伝統を重視する」というのは含意されているはずだから、あえて言う必要はない、と。羽渓がいう「伝統」というのは、「忠孝の伝統」のことなのです。あの時代に「伝統」と言えば、天皇に対する忠誠を軸とした戦前・戦時中の古い国家主義的なことを重視する伝統のことです。
 こうして「伝統」という字句が第一特別委員会の案に一旦は入った。それを中間報告という形で、総会に報告しますと、南原さんを初めとして猛烈な反対が出ます。特別委員会で、まるで法律案のようなものをつくるのはよろしくない、もっと大綱的なことでいいんだ、つくり直せということになった。そして大綱的な文案になり、「伝統」という表現は消えてしまうのです。教育刷新委員会としては、伝統とは戦前への回帰を意味するのだから、新しい教育理念に入れてはならないという発想でつぶしたわけです。ところが、文部省が国会に教育基本法の法案を提出するときに、第一特別委員会で羽渓が提案した案の表現を採用した。国会へ提出する文部省の案は、事前にCI&Eがチェックします。そのCI&Eのチェックで「伝統(トラディション)」を削れとなって、最初の教育刷新委員会案にもどる。」
熱い初志
 「伝統」という言葉をめぐる攻防を見れば、「伝統」に込めた守旧派の深意が奈辺にあるかがわかります。
 現在では、口当たりのよい「伝統」という言葉は、戦前戦中の軍国主義・国家主義をまといつかせた亡霊のごとき不易の言葉なのです。

現行教育基本法
一九四七年三月三一日

第二条
(教育の方針)
 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。
教育基本法案 二〇〇六年四月二八日

(教育の目標)
第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。


「部活指導」を職務とすることに反対する
  さらなる勤務条件の改悪は許さない!


 都教委は、「部活動振興専門委員会」報告書にて、「部活指導を職務と位置付け、その指導を業績評価の対象とする」としています。中学校では、社会教育の整備が不十分な下で、止むを得ない条件下で、教員が自主的に顧問となって、部活動が行われています。部活動指導が「職務」であるかは、勤務時間等の問題(労基法違反)が解決できず、労使で合意が得られず、曖昧なままにされてきました。墨田では、「課外クラブ指導手当」が各中学校に補助金として下ろされ、部活顧問に支給されてきました。このことは、「部活動が職務ではない」ことを裏付けているのと同時に、部活動指導が強制されものではないことを示しています。都教委が経過を無視し、「部活動指導を職務」と決めつけることは、部活動指導の強制を可能にすること、そして、勤務時間等の改悪を意味します。教育課程外の活動を職務とすることは、中学校だけの問題ではありません。このことが強行されるなら、小学校での教育課程外の活動も「職務=業績評価の対象」とされ、強制されることにいずれなります。

資料

部活動振興専門委員会  報告書について(概要

1.部活動振興専門委員会の設置と検討内容の整理
(1) 設置の目的
 部活動を実施する上で、これまで部活動指導と顧問教諭の勤務をめぐって様々な課題が指摘されてきた。今後、部活動を振興していくためには、顧問教諭の勤務と部活動指導に係る課題について具体的な解決に向けた検討を行う必要がある。

(2) 現状
1. 学校教育における部活動の位置付けについて:部活動は、学校の教育活動として位置付けられているが、根拠規程等がない。
2. 部活動指導の職務としての位置付けについて:部活動指導は職務として行われているが、曖昧なとらえ方がなされている。

2.検討内容、今後の方向性及び具体策 (右表)

3.今後の部活動振興計画
・「都立学校の管理運営に関する規則」を改正し、学校教育における部活動の位置付けを明確にする。
・「課外活動振興協議会」を設置し、施設・設備や活動経費の財源等の課題や既存の部活動の在り方に加え、これまでの形態や内容にとらわれず、生徒のニーズや時代の変化に応じた新たな課外活動モデルの開発等、個別具体的な課題解決を図る。




週刊墨教組 No.1498 2006.5.24

教育基本法の改悪を許すな! -1-

 政府が、四月二八日に国会に提出した「教育基本法案」は、全文を読むなら、「愛国心の強制」のみならず、現行教育基本法が示す教育理念とは根本的に異なる理念に基づいて作成されています。メディアの注目は第二条・教育目標の五「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、…」=「愛国心の強制」にあります。自民党が昨年決定した「新憲法草案」と併せて読むなら、さらに問題点が明らかとなります。このような「教育基本法」の成立を許してはなりません。
 
前文の問題点
@日本国憲法の理想の実現と教育基本法との関係を明示化した部分を削除。
A「個人の尊厳」をそれに続く「徳目」と同列化することにより、「個人の尊厳を重んじ」の精神を変更する。
  「個人の尊厳を重んじる基礎の上に教育を行う」を「個人の尊厳を重んじる人間の育成」に変更。
B「真理と平和」を「真理と正義」とし。「平和」を削除。憲法の理念に根ざした「平和」への志向を否定。
C「公共の精神を尊び」。自民党「新憲法草案」の「公益及び公の秩序に反しない精神を尊び」の意。
  憲法では、「個人の尊重」を最も上位においている。しかし、自民党「新憲法草案」では、個人の人権を、国家的なものに従属させようとしている。憲法の改悪を前提にしたものと言わざるをえない。
D「豊かな人間性と創造性」。「心の教育の充実」と「平等主義教育の否定」(文科省教育改革プログラム) 
E「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造」を「伝統を継承し、新しい文化の創造」へ変更。国家主義的伝統文化の強調。
F「日本国憲法の精神にのっとり」は文言として残ったにすぎない。戦前の帝国日本との決別を意味する「新しい日本」を削除。
G「その振興を図るため」 教育振興計画の導入。理念法である教育基本法に行政施策法としての性格が付け加わる。第一七条教育振興基本計画により、予算措置を伴った政府による具体的な施策を可能にした。その内容は、国会に報告するだけでよい。政府による教育内容への介入が容易にできるようになる。 

最大の問題点の一つ、
   第一条(教育の目的)の改悪
 現行の教育基本法の理念を一八〇度転換させ、教育のなかで国家政策を貫徹させる内容となっている。
H「人格の完成をめざす」を、国家形成者として「必要な資質」と結合させている。
I「個人の価値…自主的精神に充ちた」を削除
 そして、「必要な資質」は第二条教育の目標で、「国家有用の人間像」として、事細かな徳目として規定している。教育が、国家有用の人間を育てる教育に一八〇度転換させることをこの条文で明記している。  

現行の教育基本法
一九四七年三月三一日

前文
 われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。 この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
 ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。

第一条(教育の目的) 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
教育基本法案
二〇〇六年四月二八日
前文
 民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
 我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
 ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。

第一章 教育の目的及び理念
(教育の目的)
第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
自民党新憲法草案
第十二条(国民の責務) この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。国民は、これを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。
第十三条(個人の尊重等) すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

虎の威を借りる愚かな人

 四月一三日付で都教委が都立学校長宛に通知した「学校経営の適正化について」が、四月一八日、区教委から各小・中学校長に資料として送付されました。この都教委の文書は、区立の小・中学校には単なる資料でしかありません。区教委の送付文書(資料1)でその性格は明確です。しかし、一部の管理職は、学校運営に関して、新たな指示がいかにもあったかのように職員会議で話しました。「誰からの指示か」との職員からの質問にしどろもどろになった愚かな管理職。力量のない管理職は「規則」「通知」「通達」の威を借りてしか学校運営ができないものです。この文書は、単なる資料ですよ。区の管理運営規則は何も変わっていません。職員会議の扱いも従来通り、何も変わっていません。
 内容に不満があるものですが、墨田区教委の従来からの見解(資料2)を再録します。

資料1


事務連絡

平成18年4月18日
各小・中学校長様
墨田区教育委員会
指導室長 常盤隆
学校経営の適正化について
 このことについて、平成18年4月13日付け17教学高第2336号により都立学校長あて通知がありましたので、参考までに送付します。
資料2
墨田区立学校の管理運営規則の改正について
(墨田区教委見解) 1998.10.13
 今回の管理規則改正は、従来から今回改正した内容で実施されてきた職員会議、主任制、教頭の職務などの位置づけ、性格、役割を文書上明確にしたものであり、今までの在り方を変えるものではなく、新しく権限を付与するものではない。
 この改正に当たって新たな管理強化を意図したものでもない。
  
 学校におけるさまざまな課題に対応していくためには、校長のリーダーシップを中心として一致協力して事に当たることが必要である。
 学校運営をして行く上で、全く職員の意見を聞かず、合意も得られないでやるのでは、うまくいかない。円滑な学校運営を進めていく上で、合意形成は重要である。
 権限行使、一方的指示命令が、すなわちリーダーシップではない。合意をつくる上でのリーダーシップが重要である。独断専行・権限の振り回しは、教育の場として望ましくない。これらをリーダーシップと勘違いする校長がいれば、十分指導していく。
 
職員会議 
・合意形成をつくる場として職員会議はあり、学校運営上、重要な役割・機能を持っている。
・職員会議は、学校運営の責任者としての校長がその職務を全うするための機能も持っている。したがって、校長の専横によってないがしろにされることがないよう指導していく。
・職員会議は基本的に所属職員で構成されるものである。例えば当該校に配属されているスクールカウンセラーの意見を聞く必要があると思われる場合、それを可能とするために規則上は「所属職員等」としたものである。 



週刊墨教組 No.1497  2006.5.8

二〇〇六年度運動方針、予算を決定
墨田教組 第六一回定期総会
墨田の地で、労働組合としての機能と責任を果たし続ける



 第六一回定期総会が、四月二六日、墨田女性センターで開催されました。自公両党で合意がなされ、教育基本法が改悪されようとしている中、教職員組合の責務として、改悪を阻止する意志を確認しました。
 総会は三時五分に副委員長の開会宣言、「緑の山河」斉唱後、議長を選出してすすめられました。
 役員紹介の後、執行部を代表して委員長が挨拶。

教基法・憲法の改悪を阻止しよう
 「墨田区教職員組合は結成以来六十年を越えようとしています。ひとりひとりの組合員の支えと、さまざまな闘いにより、墨田教組は独自の路線を築き上げ、労働組合としてその立場を確立してきました。
 今年の一月早々、『東京大空襲を教材に平和教育の実践にとりくむ』準備のため、北海道教組、平取中学校分会の方が墨田教組に来られました。執行部でフィールドワークのお手伝いをいたしました。東京での平和教育の実践といえば、『墨田教組』。平取中分会の方と交流し、互いに日教組の組合員であることを実感した半日でした。
 全国隅々にわたり労働組合として分会が存在しているのは、現在、日教組と自治労です。ご存知のように、国労は民営化にともない厳しい攻撃を受け、全逓も郵政民営化にともない、さらなる攻撃を受けています。組織で決めたことを、全国津々浦々で労働運動として展開できるがゆえに、自民党を中心とした政治勢力にとって、自らの政治戦略として、何としても日教組と自治労を解体しようと執拗な攻撃を加えているのです。憲法を改悪し、『戦争ができる国』に変えようとするには、『戦争に協力しない日教組と自治労』の解体が急務なのです。憲法と一体である教育基本法が改悪されようとしています。いや、教育基本法と憲法が同時に改悪されようとしています。それは、『進んでお国のために死ぬ子の育成』という形で、私たちに戦争への協力を強いることになります。改悪をゆるすなら、個の尊厳が第一ではなく、国が、公共が第一となるのです。個の尊厳、それは、例えば差別を許さないことであり、自らのものとして自分の人生(命)があることです。それらが、否定される社会を許してはなりません。状況は大きく変化しつつあります。一層厳しくなるでしょう。厳しくても、この墨田の地で、教職員労働組合としての機能と責任を果たし続けようではありませんか。ともにがんばりましょう。」と呼びかけました。

 来賓として、東京教組委員長の激励の挨拶の後、議事に入り、書記長が二〇〇六年度運動方針案を提案。提案を受け、堤小、八広小、四吾小、三寺小、曳舟小、一寺小、文花中夜間分会から、一〇人の方が討論に立ちました。いずれも自分や職場の闘い・とりくみを具体的に紹介しつつ、方針案を補強する立場から意見を述べ、さらに闘いの決意を表明し、ともにとりくみ、闘いを呼びかけるものでした。
 四時三〇分に討論打ち切り、運動方針案に対する挙手採決が行われ、圧倒的多数の賛成で可決・決定されました。その後、決算・監査報告が承認され、続いて予算案について審議がなされ、採決で可決・決定されました。次に特別決議の採択に移り、「教育基本法改悪に反対する決議(案)」が執行委員から提案、拍手で採決し、議事終了。会計部長が「総会宣言」を提案、採決を経て、委員長の団結がんばろう三唱を最後に閉会しました。



緊急要請! 「共謀罪」に反対しよう!

 新聞・テレビ報道などで、すでにご存知の方も多いと思いますが、今国会では、この国の行方を左右する大きな法案が検討されています。その一つは「教育基本法」の「改正」ですが、この法案とその重さにおいて引けを取らないのが「共謀罪」の創設です。この法は一言で言うならば、戦前、国民の思想信条や言論の自由を奪い取り、戦争への国民総動員を容易にした「治安維持法」の現代版と考えるとわかりやすいと思います。以下に、この法案の概要と反対運動の緊急性について、記述します。

(1) 法案の提出契機の問題点
 この法案の正式名称は「犯罪の国際化および組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律」案です。二〇〇二年、国際テロに対抗するため、国連で提起された通称「国連国際組織犯罪条約」に批准した日本政府が国内法整備の名目で、当時の森山法務大臣が法制審議会に「共謀罪」「証人買収罪」などの親切を諮問したことから始まります。国連では「締約国はこの条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って必要な措置をとる。」と規定しましたが、日本の刑法は、利益を侵害する行為を処罰する行為原則をとっており、法益侵害の思想が存在するだけでは処罰することはできません。
 したがって、条約批准国に対して、国連は国内法の基本原則に反する、意思を処罰するような「共謀罪」の新設を要請してはいません。

(2)「共謀罪」の内容の問題点
 共謀罪の対象とされるのは、「四年以上の刑が科せられるような犯罪行為に対して、一緒に話し合った(実行されなくても、話し合っただけで)」ことに対して、二年から五年の刑で処罰されるというものです。日本の法律で四年以上の刑が科せられる罪名は、約六百以上もあります。対象範囲は、殺人罪から傷害罪、消費税法から相続税法、道路交通法、水道法など市民生活のすみずみまでかかわる法律が対象になります。冗談も言えないような、内心の自由、言論・表現の自由が侵害されてしまう日々をすごさなければならなくなります。さらに、共謀したことを立証するには、常に何人かの集まりが盗聴されたり、(すでに「盗聴法」は成立しています。)密告を奨励されたりするようになるでしょう。こんな恐ろしい法を成立させられますか。

(3)「共謀罪」を成立させないために
 ざっと見ただけでも、この法の持つ恐ろしさに改めて気づかれたと思います。政府は、この法律を今国会で成立させようと強行に進めていますが、日弁連は二一日に反対声明を出し、京都・大阪を始め各地域の弁護士会も、反対声明を出し、弁護士さんたちのデモも行われています。民主党や社民党は三日間の審議拒否で抵抗しました。また、強行採決の危険を察知して、二八日衆議院で行われた超党派の議員や市民による院内緊急集会には二百人以上が集まりました。反対署名も十万人以上集まりました。こうした力で、二八日強行採決はなんとか回避されましたが、連休明けには、委員会で強行採決される危険は依然として残っています。緊急を要します。「共謀罪」に反対する多くの人の意思を、衆議院の委員に届けましょう。

(4)委員内メンバーの一部紹介
 次のメンバーを紹介しますので、ぜひ、反対のメールやはがき、ファックスを送りましょう。なお、メンバーは与党二三人(うち公明党二人)野党十一人(民主七、社民一、国民一、無所属二人)です。
 なお、これらの情報は、インターネット「共謀罪」の市民連絡会を検索すると得られます。あのとき・・・、と後悔しないために、できることを追求して、「共謀罪」を廃案にしましょう。

5月19日 18:15から
教育基本法改悪反対!
日教組東京4単組
総決起集会
場所:日本教育会館7F

5月16・17日13:00
国会前座り込み行動
5月27日 13:00
教基法改悪ストップ全国集会場所:芝公園



 総会宣言
 教育基本法「改正」案と、改憲のための「憲法改正国民投票法案」が、今国会に上程されようかという中で、私たちは、第六一回墨田区教職員組合定期総会に結集し、真摯な討議を経て、二〇〇六年度運動方針を決定した。

 小泉自民党は、昨秋の総選挙における大勝以来、「戦争のできる国」づくりを一層進めている。日米同盟の強化そのものである米軍再編を無原則に受け入れ、ブッシュ米大統領の足元からさえ疑問が出され始めたイラク侵略に、主体的な判断のカケラもなく自衛隊を送り続けている。

 「国のために死ねる」国民を育成するための方策は、今やオブラートに包まれることもなく、あからさまに強化されている。「日の丸・君が代」の強制から始まった教職員への思想統制。過去の歴史を歪曲し基本的人権を個々人の持つものではないとする歴史や公民の教科書を採択させようとする圧力。そして、教員への「人事考課制度」導入による管理体制強化は、主幹制度・差別昇給制度の導入と、教職員の分断をはかりながら進められている。都教委は、都立学校に対して、職員会議での採決を「禁止する」通達を出すという暴挙にまで及んでいる。物言わぬ・批判性を持たぬ教員を求めていることは明らかだ。私たちはこのような動きを決して容認することはできない。

 小泉「改革」によってもたらされた弱肉強食の社会は、セーフティネットをズタズタにされ、自死を余儀なくされた人々が毎年三万余人もいることから目をそむけている。若者は、将来への希望を奪われ、職業に就く見通しも持てず、自己責任だと決めつけられ、追い詰められている。そのような中で行われている都や区による一斉「学力テスト」は、子どもたちへの管理強化を生み、学校は許容量を狭めている。学校は、まるで、他者への想像力を欠如させることが、このような学校や社会の中で生き延びていくための道であると教えようとしているかのようだ。学校は、子どもたちに生きる勇気や力を与える場であることを止めてしまうのか。

 けれども、私たちは、どのように絶望的に思える状況であろうと、まだ本当の「絶望」がきたわけではないと確信する。私たちは、どのような攻撃の前にも屈しない。日教組をつくった先輩たちが、その出発点にした「教え子を再び戦場に送るな」の思いを受け止め、憲法・教育基本法への思いを共有しながら、闘い続けている。「日の丸・君が代」の強制への抵抗は、処分の連発によっても押さえられてはいない。私たちは、職員会議で筋を通した発言を続けることで、同僚たちに問題を提起し連帯を求め、考え、ものを言う教員であることを続ける。それが、目の前にいる子どもたち、これからの時代を生きる人達と連帯する道だからだ。被差別の側に置かれた子どもたちに寄り添う教育実践を続けていく。それが、学校を再生させうる唯一の道だからだ。

 状況は厳しいが、組合があったから、仲間を信じることができたから、この仕事に誇りをもって働き続けてこられたのだということに、確信をもとう。かつて、当時の内田委員長が「日教組の闘いに勝利がないのは当然だ。国家権力を相手にしているのだから。問題は、負け方だ。闘いの芽を残さず屈服してはいけない。回れ右をして逃げ出すようなまねは、してはいけない」と語っていたことがある。今、改めてその言葉を噛みしめる。

 どんなに厳しい状況の中でも、あるときは笑い飛ばし、あるときは本気になって怒り、したたかに闘い続けよう。自分のできる場で、できる範囲で、仲間とともに歩み続けよう。
 私たちは、仲間を信頼し団結し連帯して、自立的・原則的に闘い続けることを宣言する。

二〇〇六年四月二十六日

墨田区教職員組合 第六十一回定期総会


教育基本法改悪に反対する決議

 四月十二日、自民、公明両党は、「与党教育基本法に関する検討委員会」で、協議の焦点となっていた「第二条(教育の目標)」の「愛国心」の文言について、「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」とすることで合意しました。また、前文案には、「伝統の継承を目指す教育の推進」が盛り込まれました。

 「我が国」を「個人の尊厳」よりも優先させ、「国を愛する」とか「伝統の継承」が、新しい理念として教育基本法に明文化されることになるのです。この改悪が、文言にとどまらず、どんなに暗く恐ろしい実体を現出するかについては、東京都の教育行政の「日の丸・君が代」強制が先取りしています。

 また、四月十九日には、自民、民主などで作る教育基本法改正促進委員会、民間教育臨調、日本会議国会議員懇談会などが合同総会を開き、与党案に対して、三つの修正をしていくことで一致したといいます。三つとは、「国を愛する態度を養う」の「態度」の文言を「心」に変えること、「宗教的情操の涵養」を明記すること、「教育は不当な支配に服することなく」の「教育」の文言を「教育行政」に改めることというものです。

 国家による教育行政の「不当な支配」を、国の責務として正当化しようというのです。

 この国は、周辺事態法から有事法制へと、「戦争ができる国」へむかって、まっしぐらにつきすすんできました。今も、理不尽なイラク派兵はつづいたままです。そして、在日米軍の再編・強化がおしすすめられています。

 教育基本法改悪のねらいは、「戦争ができる国」にするために、国民の意識を変容させることにあることは明白です。

 決して座視することなどできません。
 何よりも、まず、平和を。

 教育基本法は、戦争の深い反省から生まれた平和憲法の理念を実現するために、英知を結集して制定されたものなのです。

 政府・与党は、今国会への上程に向けて、具体的な準備作業にとりかかりました。まさに、緊迫した正念場をむかえます。

 私たちは、教育基本法改悪に反対します。
 私たちは、全力を尽くして、教育基本法改悪法案の国会上程を阻止します。

二〇〇六年四月二十六日
墨田区教職員組合 第六十一回定期総会  




週刊墨教組 No.1496 2006.4.19

人事考課制度にあくまでも反対する

 二〇〇六年度、改悪「業績評価」で実施

 墨田教組は「不当な措置」、「不当な損害」を 絶対容認しない!

 四月一八日から、二〇〇五年度業績評価結果による昇給延伸者(二〇〇七年四月三号昇給=一号分昇給減)への告知と指導育成対象者に対し、「業績評価結果」と「指導育成計画」が校長から示されます。この制度の主旨は、「職員の人材育成、能力開発」にあることから、今回告知の対象になっている方には、昨年度校長から面接時に「課題の指摘とその解決のためのアドバイス」が本人に当然なされていすはずです。そして、それを受け、該当者が指摘された事柄に対し納得していることが、「人材育成」の前提であることは当然です。該当者が納得していないなら、それは管理職としての職務の怠慢か能力不足と言わざるを得ません。該当者が納得していないなら、今回の告知は不当な措置です。こうしたことを、墨田教組は容認することはできません。

組合が「苦情申し立て」の窓口となる

 「1号分昇給減」は、懲戒処分(戒告)を受けたことと同様の給与措置であり、極めて重い措置です。納得がいかない評価は是正させなければなりません。その際、組合が区へ苦情相談を申し立てる窓口となります。ひとりで悩まず、組合に相談してください。墨田教組は「不当な措置」、「不当な損害」を絶対容認することはありません。

二〇〇六年度、改悪「業績評価」で実施

 昨年度、一般教育職員の業績評価等に基づく昇給延伸数は、都立学校二二人(〇.一五%)、中学校三〇人(〇.二一%)、小学校九一人(〇.三二%)でした。

 墨田教組は、「昇給延伸者」を出さないさまざまなとりくみを行いました。墨田区内では、該当者はゼロだったと推察できます。

 都教委は、「教育系では、人事考課制度は未成熟である」ことから、「教育職員の職務実績記録」を管理職に指示しました。これは、いわゆる評価マニュアルです。マニュアルがなければ、真面な評価ができない管理職が少なからず存在するからです。こうした実体にもかかわらず、都教委は、今年度からの業績評価を五段階(S・A・B・C・D)から四段階(A・B・C・D)に変更しました。A(優秀)B(良好)C(もう一歩)D(奮起を期待)です。絶対評価であるものの、区教委で相対評価がなされることから、分布率が示され、その結果「良と不良」の二種に職員を選別(評価)することを管理職に指示したと言わざるを得ません。

 学校職場で最も大切にされているのが《協力・共働》です。それを破壊しようとしているのがこの人事考課制度です。人事考課制度が強化されれば、同じ職場で働く者の労働条件(昇給)が一人ひとり異なることになり、一人ひとりが孤立分断させられ、管理されることになります。職場が競争の場に変質させられるのです。そういう意味で、人事考課制度との闘いは重要です。

 教育と教員としての誇りを守るためにもあくまでも《協力・共働》が大切にされる職場を維持、発展させなければなりません。





教育基本法改悪を断固阻止する!

 「いったい何のために教員になったんだよう」とは教員を揶揄する時の言葉ですが、「『自公の新教基法の下で教育活動をするため』では絶対にない!」 これだけは絶対に確実なわたし達の返答です。

 情勢は予断を許しません。今後も教基法改悪反対の行動、集会やビラまきなどが次々と提起されますが、即応態勢を整えて、全力で阻止していきましょう。


  教育基本法.憲法の改悪をとめよう! 3・31全国集会アピール

 教育基本法の改悪が行われようとするなか、本日、私たちは組織・団体の枠を超えて全国から集まりました。

 「教育の憲法」とも呼ばれる教育基本法は、天皇制国家主義教育を支えた教育勅語を否定し、個人の尊厳と平和主義を基本理念としています。しかし政府・与党による教育基本法の改悪は、「伝統文化」や「愛国心」といった国家主義を教育現場に強制し、「教育の機会均等」を解体することで、子ども一人ひとりが平等に学ぶ権利を奪い、新自由主義によって生み出される「格差社会」を固定化するものです。これが教育現場や子どもたちのためのものでないことは、「教育は、不当な支配に服することなく」を「教育行政は、不当な支配に服することなく」へと180度転換する教育基本法第十条の改悪に、最もよくあらわれています。

 教育基本法改悪の先取りを示す典型的な例の一つが東京都の教育行政です。東京都教育委員会は2006年3月13日に、「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について」という「通達」を出しました。この「3・13通達」は、手どもに「立て.歌え」と教職員が指導することを事実上強制するものです。「3・13通達」は、教職員に「日の丸・君が代」を強制した2003年の10・23通達」よりも、強制の範囲を子どもたちへの指導と手どもたち自身にまでさらに拡大しています。これは「個人の尊重」や「思想及び良心の自由」を定めた教育基本法・憲法に違反すると同時に、子どもの「内心の自由」や「意見表明権」を否定する点で、「子どもの権利条約」をも無視した暴挙であるといえます。

 侵略戦争のシンボルであった「日の丸・君が代」の強制は・自衛軍の保持を明記した自民党の「新憲法草案」と軌を一にしています。現在進められつつある在日米軍の再編は、日米安保の拡大強化、自衛隊と米軍の一体化を促進し、アジア太平洋地域を中心に日米共同の軍事行動を可能とするものです。在日米軍の再編は、周辺事態法から有事法制へと準備されてきた「戦争する国家」づくりをさらに推し進め・憲法九条の改悪はそれを完成させることに他なりません。

 しかしこうした「戦争する国家」を目差す動きに対して、多くの労働者・市民が立ち上がっています。3月5日には在日米軍再編の日米合意に抗議し,普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設に反対する県民総決起集会が宜野湾市で開かれ、3万5000人が集まりました。また,3月12日には山口県岩国市で、米海軍厚木基地の空母艦載機受け入れの是非を問う住民投票が行われ、有効投票の89%という圧倒的多数の反対で成立しました。在日米軍の再編・強化こ対してNo!が突きつけられているのです。

 そして今年の卒業式においても「日の丸・君が代」強制に対して、多数の教職員が不起立・不伴奏を貫くなどの抵抗を行い,保護者・生徒を含めた強制反対運動が全国各地で様々に展開されています。子どもの権利を守り、人間の尊厳と労働者の権利を新たに獲得しようとする現場教職員と市民のこの粘り強い闘いは、教育基本法・憲法の改悪阻止と深く結びつくものです。私たちはこの闘いに心から連帯します。

 今日,私たちは初めての国会デモを行います。2006年3月,与党は今年の通常国会に教育基本法「改正」法案を上程することを「合意」したという報道がなされました。教育基本法改悪法案が国会に上程される危険性がいよいよ高まっています。今こそ,教育基本法の改悪に反対する私たちの意思を国会に直接届けるべき時です。

 2003年に行われた「教育基本法改悪反対! 12・23全国集会」以降,新たな連帯を生み出しながら広がっていった私たちの運動は中教審答申が出された2003年3月20日以来今日まで、3年以上もの間、教育基本法改悪法案の国会上程を阻んできました。教育基本法が公布・施行されてから59年目の今日の集会を新たな出発点として,私たちはこれまで積み重ねてきた運動と連帯の輪をさらに広げ・在日米軍の再編・強化反対や「日の丸・君が代」強制反対などの反戦平和運動と広く連携することによって、再び「戦争する国家」作りを目指す教育基本法と憲法の改悪を全力で阻止することを、ここに宣言します。

2006年3月31日 集会参加者一同

(教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会ホームページ   http://www.kyokiren.net/ より転載)