週刊墨教組 No.1350 2002.1.8
すみだ春秋32 そして、貨物船は往く
情報公開制度講座
公開の対象となる文書は「組織共用文書」
東吾小の夏季プールの実施期間をめぐる検討経過について「職員会議録」を中心とした情報公開請求およびそれに基づく公開が行われました。この件についての経過と問題点については、「週刊墨教組」一三三〇号に掲載しました。
この公開を契機として、各校で文書整理・管理についての検討が行われています。学校によっては、このことをきっかけとして文書管理強化が行われているところも出てきています。
情報公開の問題については、「週刊墨教組」紙面で逐次扱いますが、今号では情報公開制度の趣旨、公開の対象となる文書はいかなるものかを中心に、整理しておきます。
情報公開ないところに 民主主義は存在しない
情報公開制度の精神は、国や地方公共団体等公的機関が所有する情報を市民の「知る権利」を尊重し、積極的にあるいは市民の情報公開請求権に応じて公開・提供すること、また公的機関がその責務の執行を法令に基づき適正に進めているかを市民に説明する義務(市民の側から言い換えればそれを監視する権利)を果たすことにあります。
主権者たる国民・市民が国政・地方政治に参加するためには選挙権や思想信条の自由、表現の自由や結社の自由を初めとする諸権利がなければなりません。また、これらの諸権利行使の前提として、個々人が政治的意見や意志決定を行うわけですが、そのためには十分な情報・知識が確保されていなければなりません。それらの情報の多くは、国や地方の行政機関が取得・管理しています。一方、行政機関は一貫して「寄らしむべし、知らしむべからず」との態度をとり続けてきました。そうした姿勢を打破し、情報を公開させる制度をつくることは民主主義実現の道です。情報公開制度は、そうした意味・意義を持つものとしてあります。
私たちの持つ二面性
私たちはこうした意味を持つ情報公開制度を活用し、情報公開を求める権利を持つと同時に、情報公開を請求される公務機関の職員としての立場をも合わせ持っています。
そこで、情報公開の対象となる文書(情報)はいかなるものかについて理解しておくことが必要ということになります。
公開対象文書は「組織共用文書」
墨田区の情報公開条例では、公開の対象となる文書を次のように規定しています。
「実施機関(区長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、議会)の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フィルム及び電磁的記録(録音テープ、フロッピーディスク、ビデオテープ等)であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」(情報公開条例第2条)
ここで重要なのは、「実施期間の職員が組織的に用いるものとして・・・保有している文書」ということです。これを「組織共用文書」と言います。
この「組織共用文書」が公開対象となる文書であるということが、決定的なキイワードです。
他の職員が活用できて初めて「共用文書」
「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」が公開対象となる文書ですから、職員が個人的に作成したり受領した文書は、対象とはなりません。
「当該機関の職員が組織的に用いるものとして保有されている文書」の意味は、職員の個人的な検討段階に止まる資料(文書ー例えばメモや私案)は、公開対象文書には当たらないということです。
他の職員との検討に付した場合や、資料として配布された場合は、つまり「組織共用文書」ということになります。
具体的に言えば、職員会議等の会議の際、検討資料として配布された文書はすべて、「組織共用文書」となります。また、「会議記録」のように配布されなくとも、それが作成されていることを参加者が承知しており、他の機会に組織的に活用される文書は、「組織共用文書」ということになります。また、戸棚等にファイルされていて、他の職員が利用可能であったりする文書も「組織共用文書」といえます。
東吾公開文書に関する
同校PTA会長文書を掲載
活発な論議を期待します
裏面に東吾小に関係して情報公開された文書に関し、請求者である同校PTA会長阿部貴明氏が区教委に提出した文書を掲載しました。私たちは、一三三二号で、この問題についての異論・反論を幅広く求めました。その意味で、意義ある文書と思います。
本紙への掲載についての了解を得ていながら、今になったのは、一三三二号では、特に東吾小校長に異論・反論を呼びかけ、それをお待ちしていたことによるものです。しかし、残念ながら現在に至るも出されていません。そこで、それに先行してこの文書の掲載に踏み切りました。
このPTA会長の文書を掲載することにより、「週刊墨教組」紙面でさまざまな議論が展開され、互いに理解を深めるとともに、さまざまな問題を深化させる契機となることを期待しています。
さまざまな方の投稿(異論・反論)をお待ちしています。
墨田区教育長宛て文書 平成十三年八月二十七日 東吾嬬小学校・夏季休業中プール指導に関する 掲題の件、当会より請求致しました区政情報公開に対しまして、迅速なご対応を戴き、八月九日に部分公開決定を戴き、速やかに請求情報の公開を実施されました事、有難く御礼申し上げます。 本件は、既にご高承のように、当校の児童を対象にした夏季休業中の学校教育としてのプール指導に関しまして、当会より学校にお願いして参りました要望に対し、最終的に決定が終業式の当日まで保護者・児童に案内されなかったこと、並びに要望に対する検討の経緯と要望通りにご決定戴けなかった理由について明確な説明が学校より無かったことに対する疑問を解決する方策の一つとして、学校内での検討経緯が具体的かつ客観的に解る職員会議録等資料一式を墨田区の情報公開条例に基づき請求させて戴いたものです。 上述の請求に対し、公開戴いた情報は学校内の議論全てを正確に網羅しているものでは必ずしもないのではないか、又、当然の事として長年の校内事情の流れや、特定の本件に関しても、開示情報にある会議の前後に、公式・非公式の打ち合わせ等があったものと推測いたします。しかしながら、今回、公開戴いた職員会議録等資料一式を拝見する限りにおいて、改めて判明致しましたことを基に、当会としての感想とお願いを纏めさせて戴きましたので、ここにご報告申し上げます。墨田区教育委員会の今後の運営の参考にしていただければ幸いです。 夏季休業中のプール指導の 一、現行制度の趣旨と具体的な運用の原則が学校現場に明確に伝えられ理解されていない。 上記の問題点は夏季休業中のプール指導に限らず、五年生の体験学習、総合的学習の時間に対する支援、T・Tやスクールカウンセラーの配置等々の行政施策にも共通して上げられるもので有ります。特色ある学校作りとの兼ね合いもあるかと存じますが、公立学校としての基準作りの観点から、必要に応じ、再検討・見直しをお願いするところです。 管理職と一般教職員との関係と学校経営 要望に対する基本的理解の欠落 部分開示決定に関して 一、公務員がその本来職務の遂行の段階で職務として行うことに関しては、説明責任と結果責任を本質的に負うものと考えると、案件についての決定権限が有る無しに拘わらず、名前の公表は特に個人情報として保護される特段の理由がない限り公表されて当然と考えます。 職員会議の原則公開に関して |
週刊墨教組1340号 2001.10.15
二〇〇二年度対区予算要求をまとめる
墨田教組執行委員会は、二〇〇二年度の区教委予算に対する要求を次のように整理しました。
近日中に区教委に提出、要求実現に向けて交渉を強化します。
T 重点要求
1、一クラスの子どもの数を区独自に三十人以下にするよう教員を配置すること。
2、夏季プールを早期に社会教育事業に移行させること。
3、「学校選択の自由化」には、墨田教組は基本的に反対である。しかし、導入に際しては次のことを要望する。
@ 施設等教育条件の平等化を実施すること。
A 「教育課程は学校が決める」ことから、各学校が決定した教育課程を円滑に実施するために財政的配慮を行うこと。
4、小学校五年・中学一年を対象とする野外体験学習実施は、教員に対する労働強化につながるとの観点から基本的に反対である。全校に実施を強制するための予算化をしないこと。
5、「総合的な学習」の実施にともなう予算措置を充実すること。その際、現場の要望をとりまとめ、検討すること。
6、児童・生徒用パソコンの数は、要望がある学校には、一人一台配置すること。また機種の更新時にはソフト購入費を増額すること。
7、移動教室における現地行動用のマイクロバスを、各校毎の特色ある計画に従って運行できるものとすること。
8、教職員の休憩室を設置・整備すること。
9、諸外国からの転入者に対する施策を区として行うこと。
・区内小中学校に入学した日本語ができない子どもたちに関わる措置として、「日本語学級」を設置すること。
・「日本語ができない児童・生徒に対する通訳介助」措置の期間は、教育的な配慮から、児童・生徒の実態にあわせて措置すること。
・保護者との意志疎通のため、通訳を区として確保すること。
10 、「障害」児が在級する普通学級にも介助員を要求に応じ配置すること。
11 、バリアフリーの施設(校舎、体育館、校庭)・設備にすること。特に、洋式トイレを早急に設置すること。
12 、小学校高学年児童用に、更衣室の整備を行うこと。
13 、中学校の移動教室を二泊三日にすること。
14 、周年行事の簡素化をはかるよう校長への指導を強め、PTA・町会にも同趣旨を申し入れること。また、五年行事をやめ十年行事一本にすること。
15 、必要、不必要な予算について、現場の意見を吸い上げ、検討すること。
U 墨田の教育の充実に向けて
1、学校給食調理業務の民間委託をただちにやめること。
2、非常勤栄養士を正規職員化すること。
3、子どもの健康維持、環境破壊防止の観点から、プールに温水シャワーを設置すること。
4、移動教室関係ー
・引率補助者制度をその制度化の原点に立ち返り堅持、運用すること。
・引率補助者の日当を引き上げること。
・粟野実施踏査は、二回(前後期実施校の二回)に分けて実施すること。
・榛名移動教室の食事の改善をはかること。
5、授業プール補助者関連ー
・二学級以下の全学年に授業プール補助者を配置すること。
・補助者雇用を臨時職員制度とは異なる制度のもとで行うものに改め、賃金を引き上げ、交通費を支払うこと。
6、文花中夜間部の教育の充実のため、次の措置を早急に行うこと。
・養護教諭を配置すること。
・正規栄養士を配置すること。
・専用図書室を設置すること。
V 学校施設設備の改善充実に向けて
7、施設(校舎、体育館、校庭)・設備の改善にあたっては現場の要求、声を重視すること。そのためにも、安全と教育上の効果に関わる過去の経験を集約、蓄積し、今後に生かす方策を考えること。
W 保護者負担の軽減に向けて
8、小学校演劇教室費用は全額区で負担すること。
9、区教委からの卒業祝いである卒業アルバムの作成費を大幅に増額すること。
10 、中学校修学旅行に補助金を出すこと。
11 、中学校入学祝いのジャージ購入費をクォーターパンツ化に伴い増額すること。
12 、準要保護関係部局に次の申し入れを行い、その実現に向け努力すること。
・準要保護基準を引き下げること。
・補助対象に次のものを加えること
卒業関係費用(文集、卒業製作、
お別れ会費用等)。
修学旅行補助金を実額で支給。
X 墨田で働く教職員の労働条件向上、意欲増進に向けて
、栄養士の超勤手当を区独自に支給すること。
、非常勤職員にも一時金(ボーナス)を支給すること。
、非常勤職員にも交通費を全額支給すること。
、非常勤・区費栄養士の出張旅費枠を拡大すること。
、調査研究補助金を復活すること。
、教師用研修図書費を予算項目上明確にし増額すること。
、中学校課外クラブ指導費を増額すること。
、全同教大会参加費を区独自に予算化すること。
、職員健康診断の内容・方法等について充実・改善すること。
週刊墨教組 No.1330 2001.9.1
東吾小に対する情報公開請求について
経過と問題点
東吾小における夏季プールの実施期間をめぐる検討経過について「職員会議録」を中心とした情報公開請求およびそれに基づく公開が行われました(公開日八月九日)。公開請求者は東吾小PTA、開示決定は区教委教育長によって行われました。
「職員会議録」の公開請求は、初めてのケースであり、公開に至る経過には、さまざまな問題点がありました。以下、経過と問題点、組合としてのとりくみを報告します。
夏季プール日数で議論重ねる
東吾嬬小学校では七月初めから、夏季プール問題、特に実施日数について議論が続けられてきました。校長はPTAから「二十日間実施の要望」が出ていることを挙げ、二十日間を主張しました。これに対して、教職員側は、区教委が示している「十五日を標準とする」等を根拠として反論、何回も検討・議論が重ねられました。結果的には、七月十七日になって「十七日間とする」ことで、合意に達し、十九日に全保護者に通知しました。
PTAによる情報公開請求
開催日数についての議論が行われている最中の七月十六日、東吾嬬小PTA(会長阿部貴明氏)は、「夏季プールの実施について検討経緯が判る職員会議録等資料一式」の情報公開請求を出しました。その後、十六日付け請求では、十七日以降の記録は公開対象とならないことから、東吾小PTAは十六日請求を取り消し、二七日に請求の出し直しを行いました。
この請求は、本年四月から施行された「墨田区情報公開条例」に基づくものであり、そのこと自体は正当な権利行使であり、当然の行為と言えます。
ただし、そうしなければ、検討・討議経過が理解できないようにしか自校PTA代表者に説明できなかった同校校長の責任はきわめて重大です。
校長、公開請求を恫喝道具として使用
この情報公開請求を受けて、校長は、十八日になって「このような形になっては、保護者の混乱や学校への不信感を持たせることになると思うので止めたい」「(十九日に予定されているPTAによる会員への)説明会は回避できると思う」だから「学校教育として二十日やるということにしたい」。「(二十日間実施することにすれば)説明会は避けられると思う。説明会をしたり、公開になった場合は、(校長は)教職員を守れない」等の発言を行い、情報公開請求を脅迫・恫喝の道具として使いました。この発言・行為は、情報公開制度という市民の「知る権利」を保障する制度を、脅迫・恫喝の道具として使用したという点、また自らの説明責任を棚にあげて、「知る権利」を行使して経過を知ろうとした公開請求者に対しても非礼な発言・行為であると言わざるを得ません。
なお、こうした校長の恫喝をも含めて検討した結果、同校は、「十七日間実施」を再確認し、実施予定を十九日終業式の日に文書で保護者に連絡しました。
保護者に対する予定連絡が終業式当日になったことは、その責任が基本的には校長にあるにしても、重大な問題点として残っています。
会議録は、その場で作られていなかった
情報公開請求されたのは、「検討経緯を示す職員会議録等」です。この問題に関する職員会議等は、五回行われています。ところがこの内四回は記録者が確認されておらず、七月十九日現在、記録は存在していませんでした。このことの状況や問題点は、裏面の資料(区教委宛の墨田教組文書)をお読みください。
発言者名は開示しない
こうした経過のなかで、墨田教組は、区教委に対し情報公開請求に対応する基本的な考え方を質すとともに、裏面にあるような問題提起を行いました。
この中で、開示に当たっては、発言者名は、校長・教頭以外は伏せる(発言者名を消して開示する)ことが明らかになりました。
発言者名を消す理由として、区は次の理由を挙げています。
@自由な討論を保障するー「区の内部等の審議、検討または協議に関する情報で、率直な意見交換等が不当に損なわれると認められるものは非公開とする」
A個人の思想信条等プライバシーに関する情報は非公開ー「個人に関する情報また公にすることにより個人の権利利益を侵害する恐れがあるものは非公開」
この態度・運用は、基本的に正しいと言えます。
なお、請求者は、例えば名を伏す、あるいは部分的に消して公開するというような(部分公開)公開の仕方に対し、不服申し立てをする権利をもっており、発言者名も含めて全面公開すべきだと「審査会」に申し立てをすることもできます。
組合として問題提起
今回の公開請求は「知る権利」に基づく正当なものです。しかし、今回の場合、それに応じて公開された文書の種類や作られ方については、重大な問題点があります。そこで、それらについての問題提起を区教委に対して行いました。
一方、開示される側からの不服(異議)申し立てのシステムは情報公開制度(条例)には作られていません。
そこで、最終的に組合の正式文書(裏面に掲載)として八月六日区教委に提出し、同時にこの文書を公にすることを通して、問題提起をしたものです。
公開請求多発する恐れ
今後、今回請求を手初めとして、あちこちの学校で請求が出される事態が想定されます。それに対応するために文書整理・管理についての指導が強められると思われます。また議事録等の記録の仕方についても、改めて整理することが必要となります。
九月以降これらの問題が直ちに浮上してくると思われます。
今回の問題を十分に理解、総括し、また生かしつつ、対応していくことが必要です。
墨田教組の問題提起と区への要請
2001年8月6日 東吾嬬小PTA会長の情報公開請求にかかる東吾嬬小文書についての問題提起と要請 東吾嬬小PTA会長阿部貴明氏が7月27日付けで行った墨田区立東吾嬬小学校の「夏季プールの実施について検討経過を示す職員会議録等一式」の情報公開請求について、墨田区教育委員会は、同校校長に対し、職員会議録等関係書類の提出を求め、それに基づき、公開の有無、公開対象文書の決定手続きを進めようとしています。 情報公開請求されているのは、「夏季プールについての検討経過を示す職員会議録等一式」です。 この問題に関する職員会議等は、7月3日以来7回行われていますが、この内、会議録が存在するのは7月3日の職員会議録(職員会議記録簿に記載)、7月4日、6日、7日、13日の朝会記録(朝会記録簿に記載)のみと同校教職員は理解しています。 以上は、「会議録」に関する疑点・問題点ですが、「(夏季プール実施に関する)起案書」についても、問題を感じざるを得ません。「起案書」は7月29日現在、作られていなかったことは、校長も認めている通りです。建前論から言えば、7月19日に全家庭に配布された「夏季プールのおしらせ」文書は、この「起案書」に基づき出されているはずです。にもかかわらず、7月29日現在「起案書」は不存在でした。これもまた「なければならない文書」として、請求を受けて、あわてて「作られ」、「あったものとして」公開することになります。 当該校教職員が知らないところで、「作られた」文書が公開されることになる問題点と、「作られた文書」は逆に情報公開制度の精神を踏みにじるものとなるのではないかという問題点を指摘し、墨田区教育委員会の調査・検討とその上での見解を、明確に示すように要求いたします。 なお、この文書は、情報公開条例に、公開される側の異議申し立てシステムがないため、こうした形で問題提起をするものです。 |