週刊墨教組2001年度分

週刊墨教組 No.1350   2002.1.8

すみだ春秋32 そして、貨物船は往く


週刊墨教組1341号 2001.10.18

情報公開制度講座
   公開の対象となる文書は「組織共用文書」

 東吾小の夏季プールの実施期間をめぐる検討経過について「職員会議録」を中心とした情報公開請求およびそれに基づく公開が行われました。この件についての経過と問題点については、「週刊墨教組」一三三〇号に掲載しました。
 この公開を契機として、各校で文書整理・管理についての検討が行われています。学校によっては、このことをきっかけとして文書管理強化が行われているところも出てきています。 
 情報公開の問題については、「週刊墨教組」紙面で逐次扱いますが、今号では情報公開制度の趣旨、公開の対象となる文書はいかなるものかを中心に、整理しておきます。

情報公開ないところに  民主主義は存在しない
 情報公開制度の精神は、国や地方公共団体等公的機関が所有する情報を市民の「知る権利」を尊重し、積極的にあるいは市民の情報公開請求権に応じて公開・提供すること、また公的機関がその責務の執行を法令に基づき適正に進めているかを市民に説明する義務(市民の側から言い換えればそれを監視する権利)を果たすことにあります。
 主権者たる国民・市民が国政・地方政治に参加するためには選挙権や思想信条の自由、表現の自由や結社の自由を初めとする諸権利がなければなりません。また、これらの諸権利行使の前提として、個々人が政治的意見や意志決定を行うわけですが、そのためには十分な情報・知識が確保されていなければなりません。それらの情報の多くは、国や地方の行政機関が取得・管理しています。一方、行政機関は一貫して「寄らしむべし、知らしむべからず」との態度をとり続けてきました。そうした姿勢を打破し、情報を公開させる制度をつくることは民主主義実現の道です。情報公開制度は、そうした意味・意義を持つものとしてあります。

私たちの持つ二面性
 私たちはこうした意味を持つ情報公開制度を活用し、情報公開を求める権利を持つと同時に、情報公開を請求される公務機関の職員としての立場をも合わせ持っています。
 そこで、情報公開の対象となる文書(情報)はいかなるものかについて理解しておくことが必要ということになります。

公開対象文書は「組織共用文書」
 墨田区の情報公開条例では、公開の対象となる文書を次のように規定しています。
「実施機関(区長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、議会)の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フィルム及び電磁的記録(録音テープ、フロッピーディスク、ビデオテープ等)であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」(情報公開条例第2条)
 ここで重要なのは、「実施期間の職員が組織的に用いるものとして・・・保有している文書」ということです。これを「組織共用文書」と言います。
 この「組織共用文書」が公開対象となる文書であるということが、決定的なキイワードです。

他の職員が活用できて初めて「共用文書」
 「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書」が公開対象となる文書ですから、職員が個人的に作成したり受領した文書は、対象とはなりません。
 「当該機関の職員が組織的に用いるものとして保有されている文書」の意味は、職員の個人的な検討段階に止まる資料(文書ー例えばメモや私案)は、公開対象文書には当たらないということです。
 他の職員との検討に付した場合や、資料として配布された場合は、つまり「組織共用文書」ということになります。
 具体的に言えば、職員会議等の会議の際、検討資料として配布された文書はすべて、「組織共用文書」となります。また、「会議記録」のように配布されなくとも、それが作成されていることを参加者が承知しており、他の機会に組織的に活用される文書は、「組織共用文書」ということになります。また、戸棚等にファイルされていて、他の職員が利用可能であったりする文書も「組織共用文書」といえます。

「表簿」の意味
 なお、情報公開との関係でよく言われる「表簿」とは、学校教育法施行規則及び墨田区学校管理運営規則に明確に規定されています。
 「表簿」は、個人的情報に関わるもの(例えば履歴書、人事関係資料)を除き原則として公開対象と言えます。
 
 学校教育法施行規則第十五条
 学校に置いてそなえなければならない「表簿」は、次の通り
一.学校に関係のある法令
二.学則、日課表、教科用図書配当表、学校医・歯科医・薬剤師執務記録簿、学校日誌
三.職員名簿、履歴書、出勤簿、担任学級、担任の教科及び時間表
四.指導要録、出席簿、健康診断票
五.入学者の選抜及び成績考査票
六.資産原簿、出納簿、予算決算帳簿、教具目録
七.往復文書処理簿

 墨田区学校管理規則第二十一条
 小中学校において備えなければならない表簿は、施行規則十五条に規定するもののほか、次のとおり
1.学校沿革史 
2.卒業証書授与台帳 
3.旧職員履歴綴 
4.辞令交付簿 
5.職員の人事に関する書類綴 
6.公文書綴 
7.諸願書届綴 
8.看護日誌 
9.警備日誌 
.統計資料綴

東吾公開文書に関する
    同校PTA会長文書を掲載
 活発な論議を期待します

 裏面に東吾小に関係して情報公開された文書に関し、請求者である同校PTA会長阿部貴明氏が区教委に提出した文書を掲載しました。私たちは、一三三二号で、この問題についての異論・反論を幅広く求めました。その意味で、意義ある文書と思います。
 本紙への掲載についての了解を得ていながら、今になったのは、一三三二号では、特に東吾小校長に異論・反論を呼びかけ、それをお待ちしていたことによるものです。しかし、残念ながら現在に至るも出されていません。そこで、それに先行してこの文書の掲載に踏み切りました。
 このPTA会長の文書を掲載することにより、「週刊墨教組」紙面でさまざまな議論が展開され、互いに理解を深めるとともに、さまざまな問題を深化させる契機となることを期待しています。
 さまざまな方の投稿(異論・反論)をお待ちしています。

墨田区教育長宛て文書 平成十三年八月二十七日  

 東吾嬬小学校・夏季休業中プール指導に関する
   情報公開請求に基づく開示情報に対する感想とお願い
東吾嬬小学校 PTA会長  阿部 貴明

 掲題の件、当会より請求致しました区政情報公開に対しまして、迅速なご対応を戴き、八月九日に部分公開決定を戴き、速やかに請求情報の公開を実施されました事、有難く御礼申し上げます。

 本件は、既にご高承のように、当校の児童を対象にした夏季休業中の学校教育としてのプール指導に関しまして、当会より学校にお願いして参りました要望に対し、最終的に決定が終業式の当日まで保護者・児童に案内されなかったこと、並びに要望に対する検討の経緯と要望通りにご決定戴けなかった理由について明確な説明が学校より無かったことに対する疑問を解決する方策の一つとして、学校内での検討経緯が具体的かつ客観的に解る職員会議録等資料一式を墨田区の情報公開条例に基づき請求させて戴いたものです。

 上述の請求に対し、公開戴いた情報は学校内の議論全てを正確に網羅しているものでは必ずしもないのではないか、又、当然の事として長年の校内事情の流れや、特定の本件に関しても、開示情報にある会議の前後に、公式・非公式の打ち合わせ等があったものと推測いたします。しかしながら、今回、公開戴いた職員会議録等資料一式を拝見する限りにおいて、改めて判明致しましたことを基に、当会としての感想とお願いを纏めさせて戴きましたので、ここにご報告申し上げます。墨田区教育委員会の今後の運営の参考にしていただければ幸いです。

夏季休業中のプール指導の
位置付けに関して

 現在の制度では、将来社会教育に移行する過渡期として現状学校教育の一環として十五日を標準として各校のプール指導を行うものと理解をしております。同時に、学校の判断にて、十五日を超えて指導を実施する場合には、指導員の手当て等の予算的対応を学校の申し出に従い行うとの考えと理解しております。現行制度の下で、改めて今回の開示情報を拝見すると、不必要な混乱を現場の学校に与えているように強く感じました。不必要な混乱の原因として、下記が想定されます。

一、現行制度の趣旨と具体的な運用の原則が学校現場に明確に伝えられ理解されていない。
二、公立学校の原則である教育内容の最低レベル保証が徹底していない。
三、例外的対応を学校判断に任せることにより、学校に不必要な負担がかかっている。
四、例外的対応につき希望学校が多数出たときの予算的裏付けが整備されていない。

 上記の問題点は夏季休業中のプール指導に限らず、五年生の体験学習、総合的学習の時間に対する支援、T・Tやスクールカウンセラーの配置等々の行政施策にも共通して上げられるもので有ります。特色ある学校作りとの兼ね合いもあるかと存じますが、公立学校としての基準作りの観点から、必要に応じ、再検討・見直しをお願いするところです。

管理職と一般教職員との関係と学校経営
 今回の開示資料を見る限りにおいて、大変残念なことは、学校内の議論の中に児童を中心にした問題整理の考え方が基本的に欠如しており、労働環境整備や前述の制度面の不備に関する議論が中心になっている点です。保護者としては、児童に直接的な影響が無い限りにおいては、いわゆる労使間の課題に立ち入るつもりは全くありませんので、開示情報の中で学校経営に関する部分に対してはコメントする立場にありません。しかしながら、今件の場合は、結果的に児童の指導に関すること、それに対する保護者としての願いを検討いただく際に、お願いの本旨とは異質の問題が判断に大きな影響を与えていた事に対し大きな疑問が残ります。健全でスムーズな学校経営が日常的になされるような指導を管理職並びに一般教職員に対して、継続的に行われるようお願いする所です。

要望に対する基本的理解の欠落
 今回の要望は、十五日を標準とする現行制度を充分理解した上で、児童のために学校の理解と協力をお願いする立場から出されたものです。その前提として、昨年のプール指導では先生方の温かいご理解と献身的な協力により二十日間ご指導戴いた事に対する保護者からの感謝の気持ちがあります。けして無理なこと、現行制度ではあくまで例外的対応とされるものを、当然の事として、ましてや高圧的に要望したことでは有りません。あくまでも、昨年の実績に対する感謝を基礎に、児童のためを思いの全てに、伏してお願いした事案であります。しかしながら、今回の開示資料の中には、保護者の思いや気持ちが正確に伝わっているか、基本的な議論の前提に疑問を禁じ得ません。この観点では、当会の責任者として又、学校へのお願い窓口としてのPTA会長の説明不足が有ったものと思い、反省しております。しかしながら、同時に触れておかなければならないことは、制度がいかに変わろうと、保護者の基本的かつ純粋な願いは、夏休み中に子供たちには目標を持って泳力をつけてもらいたい、と言うことです。開示情報の中に散見される「泳げるように指導することが夏休みの水泳指導ではない」との考え方は、根本的に多くの保護者の気持ちと乖離しているのではないかとの懸念が残ります。

部分開示決定に関して
 今件の情報開示につき、職員会議録中の教職員の氏名が、条例に定める個人に関する情報に該当するとの理由で部分削除(黒塗り)されていますが、このことに関し大いに疑問を感じるところです。開示内容に関する不服申し立てを検討させて戴く前に、下記の疑問点につき是非ご検討戴きご解答をいただければ幸いと存じます。

一、公務員がその本来職務の遂行の段階で職務として行うことに関しては、説明責任と結果責任を本質的に負うものと考えると、案件についての決定権限が有る無しに拘わらず、名前の公表は特に個人情報として保護される特段の理由がない限り公表されて当然と考えます。
二、特に、教育公務員に関しては、その職務の特殊性、重要性、専門性を根拠に、一般公務員とは違う身分保障、人事管理制度が法的に整備されています。保護者の立場からすると、児童を預ける先生方であり、お一人お一人の責任と能力を重要視せざるを得ません。そのような観点からも名前の公表は基本的かつ重要な説明責任の一環と考えます。
三、仮に、思想・信条等の個人情報に関することでも、教育公務員が、個人的な思想や信条を基礎にして職務にあたる事は、それ自体が問題であり、個人情報保護以上に重要な社会的責任上の問題であると考えます。
四、職員会議の性格としては学校経営の意思決定機関ではなく、補助的・補完的検討機関であるとの理解をしておりますが、現実的・実質的には、最終決定権をもつ学校長の判断に重大な影響を及ぼす会議であり、又そうあるべきであると思っております。仮にそうであった場合、学校の経営意思に重大な影響を及ぼす発言につき、その発言者の名前を明かすことは当然ではないかと考えます。教職員には意思決定権は全く無く、意思決定権者への影響は認められないとのご判断は、実態並びに理想的学校運営形態からかけ離れているものと考えます。
五、何より、教職員のほとんどは責任と誇りを持って児童の指導に当たっておられることを勘案すると、校内論議での発言について名前を黒塗りにするようなことは、先生方を冒涜することにはならないのか、先生方の自信と誇りを傷つけないような配慮が必要ではないでしょうか。

職員会議の原則公開に関して
 今回、開示決定を受けた情報から、職員会議録・職員朝会録等の学校内での会議・打ち合わせの記録がいわゆる公文書として、整備・保管・管理されるべきものであること、並びに会議録等は公文書として原則公開の対象情報であるとのご判断があったものと理解いたします。会議録の整備が義務付けられており、それが原則公開すべき情報にあたるとの判断であれば、職員会議等の校内会議については原則的に公開会議として、区民、特に直接の当事者である保護者の傍聴を希望に応じて認めるべきではないかと思います。当然、特定の児童や家庭にかかわる個人情報等が会議の進行上必要で、プライバシーの保護の観点から、必要に応じて秘密会議にする場合も少なからず想定されるものと思料いたしますが、原則公開とすることが「開かれた学校」作りの観点からも必要なのではないかと思います。本件に関しましても教育委員会様のお考えをお聞かせ願えれば幸いです。 以上


週刊墨教組1340号 2001.10.15

二〇〇二年度対区予算要求をまとめる
墨田教組執行委員会は、二〇〇二年度の区教委予算に対する要求を次のように整理しました。
 近日中に区教委に提出、要求実現に向けて交渉を強化します。

T 重点要求
1、一クラスの子どもの数を区独自に三十人以下にするよう教員を配置すること。
2、夏季プールを早期に社会教育事業に移行させること。
3、「学校選択の自由化」には、墨田教組は基本的に反対である。しかし、導入に際しては次のことを要望する。
@ 施設等教育条件の平等化を実施すること。
A 「教育課程は学校が決める」ことから、各学校が決定した教育課程を円滑に実施するために財政的配慮を行うこと。
4、小学校五年・中学一年を対象とする野外体験学習実施は、教員に対する労働強化につながるとの観点から基本的に反対である。全校に実施を強制するための予算化をしないこと。
5、「総合的な学習」の実施にともなう予算措置を充実すること。その際、現場の要望をとりまとめ、検討すること。
6、児童・生徒用パソコンの数は、要望がある学校には、一人一台配置すること。また機種の更新時にはソフト購入費を増額すること。
7、移動教室における現地行動用のマイクロバスを、各校毎の特色ある計画に従って運行できるものとすること。
8、教職員の休憩室を設置・整備すること。
9、諸外国からの転入者に対する施策を区として行うこと。
・区内小中学校に入学した日本語ができない子どもたちに関わる措置として、「日本語学級」を設置すること。
・「日本語ができない児童・生徒に対する通訳介助」措置の期間は、教育的な配慮から、児童・生徒の実態にあわせて措置すること。 
・保護者との意志疎通のため、通訳を区として確保すること。
10 、「障害」児が在級する普通学級にも介助員を要求に応じ配置すること。
11 、バリアフリーの施設(校舎、体育館、校庭)・設備にすること。特に、洋式トイレを早急に設置すること。
12 、小学校高学年児童用に、更衣室の整備を行うこと。
13 、中学校の移動教室を二泊三日にすること。
14 、周年行事の簡素化をはかるよう校長への指導を強め、PTA・町会にも同趣旨を申し入れること。また、五年行事をやめ十年行事一本にすること。
15 、必要、不必要な予算について、現場の意見を吸い上げ、検討すること。

U 墨田の教育の充実に向けて
1、学校給食調理業務の民間委託をただちにやめること。
2、非常勤栄養士を正規職員化すること。
3、子どもの健康維持、環境破壊防止の観点から、プールに温水シャワーを設置すること。
4、移動教室関係ー
・引率補助者制度をその制度化の原点に立ち返り堅持、運用すること。
・引率補助者の日当を引き上げること。
・粟野実施踏査は、二回(前後期実施校の二回)に分けて実施すること。
・榛名移動教室の食事の改善をはかること。
5、授業プール補助者関連ー
・二学級以下の全学年に授業プール補助者を配置すること。
・補助者雇用を臨時職員制度とは異なる制度のもとで行うものに改め、賃金を引き上げ、交通費を支払うこと。
6、文花中夜間部の教育の充実のため、次の措置を早急に行うこと。
・養護教諭を配置すること。
・正規栄養士を配置すること。
・専用図書室を設置すること。

V 学校施設設備の改善充実に向けて
7、施設(校舎、体育館、校庭)・設備の改善にあたっては現場の要求、声を重視すること。そのためにも、安全と教育上の効果に関わる過去の経験を集約、蓄積し、今後に生かす方策を考えること。
 
W 保護者負担の軽減に向けて
8、小学校演劇教室費用は全額区で負担すること。
9、区教委からの卒業祝いである卒業アルバムの作成費を大幅に増額すること。
10 、中学校修学旅行に補助金を出すこと。
11 、中学校入学祝いのジャージ購入費をクォーターパンツ化に伴い増額すること。
12 、準要保護関係部局に次の申し入れを行い、その実現に向け努力すること。
・準要保護基準を引き下げること。
・補助対象に次のものを加えること
 卒業関係費用(文集、卒業製作、
 お別れ会費用等)。
修学旅行補助金を実額で支給。

X 墨田で働く教職員の労働条件向上、意欲増進に向けて
、栄養士の超勤手当を区独自に支給すること。
、非常勤職員にも一時金(ボーナス)を支給すること。
、非常勤職員にも交通費を全額支給すること。
、非常勤・区費栄養士の出張旅費枠を拡大すること。
、調査研究補助金を復活すること。
、教師用研修図書費を予算項目上明確にし増額すること。
、中学校課外クラブ指導費を増額すること。
、全同教大会参加費を区独自に予算化すること。
、職員健康診断の内容・方法等について充実・改善すること。


週刊墨教組 No.1330 2001.9.1

東吾小に対する情報公開請求について
経過と問題点

 東吾小における夏季プールの実施期間をめぐる検討経過について「職員会議録」を中心とした情報公開請求およびそれに基づく公開が行われました(公開日八月九日)。公開請求者は東吾小PTA、開示決定は区教委教育長によって行われました。
 「職員会議録」の公開請求は、初めてのケースであり、公開に至る経過には、さまざまな問題点がありました。以下、経過と問題点、組合としてのとりくみを報告します。

夏季プール日数で議論重ねる
 東吾嬬小学校では七月初めから、夏季プール問題、特に実施日数について議論が続けられてきました。校長はPTAから「二十日間実施の要望」が出ていることを挙げ、二十日間を主張しました。これに対して、教職員側は、区教委が示している「十五日を標準とする」等を根拠として反論、何回も検討・議論が重ねられました。結果的には、七月十七日になって「十七日間とする」ことで、合意に達し、十九日に全保護者に通知しました。

PTAによる情報公開請求
 開催日数についての議論が行われている最中の七月十六日、東吾嬬小PTA(会長阿部貴明氏)は、「夏季プールの実施について検討経緯が判る職員会議録等資料一式」の情報公開請求を出しました。その後、十六日付け請求では、十七日以降の記録は公開対象とならないことから、東吾小PTAは十六日請求を取り消し、二七日に請求の出し直しを行いました。
 この請求は、本年四月から施行された「墨田区情報公開条例」に基づくものであり、そのこと自体は正当な権利行使であり、当然の行為と言えます。
 ただし、そうしなければ、検討・討議経過が理解できないようにしか自校PTA代表者に説明できなかった同校校長の責任はきわめて重大です。

校長、公開請求を恫喝道具として使用
 この情報公開請求を受けて、校長は、十八日になって「このような形になっては、保護者の混乱や学校への不信感を持たせることになると思うので止めたい」「(十九日に予定されているPTAによる会員への)説明会は回避できると思う」だから「学校教育として二十日やるということにしたい」。「(二十日間実施することにすれば)説明会は避けられると思う。説明会をしたり、公開になった場合は、(校長は)教職員を守れない」等の発言を行い、情報公開請求を脅迫・恫喝の道具として使いました。この発言・行為は、情報公開制度という市民の「知る権利」を保障する制度を、脅迫・恫喝の道具として使用したという点、また自らの説明責任を棚にあげて、「知る権利」を行使して経過を知ろうとした公開請求者に対しても非礼な発言・行為であると言わざるを得ません。
 なお、こうした校長の恫喝をも含めて検討した結果、同校は、「十七日間実施」を再確認し、実施予定を十九日終業式の日に文書で保護者に連絡しました。
 保護者に対する予定連絡が終業式当日になったことは、その責任が基本的には校長にあるにしても、重大な問題点として残っています。

会議録は、その場で作られていなかった
 情報公開請求されたのは、「検討経緯を示す職員会議録等」です。この問題に関する職員会議等は、五回行われています。ところがこの内四回は記録者が確認されておらず、七月十九日現在、記録は存在していませんでした。このことの状況や問題点は、裏面の資料(区教委宛の墨田教組文書)をお読みください。

発言者名は開示しない
 こうした経過のなかで、墨田教組は、区教委に対し情報公開請求に対応する基本的な考え方を質すとともに、裏面にあるような問題提起を行いました。
 この中で、開示に当たっては、発言者名は、校長・教頭以外は伏せる(発言者名を消して開示する)ことが明らかになりました。
 発言者名を消す理由として、区は次の理由を挙げています。
@自由な討論を保障するー「区の内部等の審議、検討または協議に関する情報で、率直な意見交換等が不当に損なわれると認められるものは非公開とする」
A個人の思想信条等プライバシーに関する情報は非公開ー「個人に関する情報また公にすることにより個人の権利利益を侵害する恐れがあるものは非公開」
 この態度・運用は、基本的に正しいと言えます。
 なお、請求者は、例えば名を伏す、あるいは部分的に消して公開するというような(部分公開)公開の仕方に対し、不服申し立てをする権利をもっており、発言者名も含めて全面公開すべきだと「審査会」に申し立てをすることもできます。

組合として問題提起
 今回の公開請求は「知る権利」に基づく正当なものです。しかし、今回の場合、それに応じて公開された文書の種類や作られ方については、重大な問題点があります。そこで、それらについての問題提起を区教委に対して行いました。
 一方、開示される側からの不服(異議)申し立てのシステムは情報公開制度(条例)には作られていません。
 そこで、最終的に組合の正式文書(裏面に掲載)として八月六日区教委に提出し、同時にこの文書を公にすることを通して、問題提起をしたものです。

公開請求多発する恐れ
 今後、今回請求を手初めとして、あちこちの学校で請求が出される事態が想定されます。それに対応するために文書整理・管理についての指導が強められると思われます。また議事録等の記録の仕方についても、改めて整理することが必要となります。
 九月以降これらの問題が直ちに浮上してくると思われます。
 今回の問題を十分に理解、総括し、また生かしつつ、対応していくことが必要です。

墨田教組の問題提起と区への要請

2001年8月6日
墨田区教育委員会
 委員長 大塚 泰紀様
 教育長 近藤 舜二様                    墨田区教職員組合 
                                 委員長 小山 拓二

東吾嬬小PTA会長の情報公開請求にかかる東吾嬬小文書についての問題提起と要請

 東吾嬬小PTA会長阿部貴明氏が7月27日付けで行った墨田区立東吾嬬小学校の「夏季プールの実施について検討経過を示す職員会議録等一式」の情報公開請求について、墨田区教育委員会は、同校校長に対し、職員会議録等関係書類の提出を求め、それに基づき、公開の有無、公開対象文書の決定手続きを進めようとしています。
区教委の求めに応じて、同校校長が提出している文書について、次の重大な疑点・問題点があると思われます。これらの点について同校校長並びに教職員から詳らかに事情を聴取し、事実関係を明確に把握し、その上で公開の有無及び公開文書の種類について決定すべきだと考え、問題提起を行うものです。

 情報公開請求されているのは、「夏季プールについての検討経過を示す職員会議録等一式」です。 この問題に関する職員会議等は、7月3日以来7回行われていますが、この内、会議録が存在するのは7月3日の職員会議録(職員会議記録簿に記載)、7月4日、6日、7日、13日の朝会記録(朝会記録簿に記載)のみと同校教職員は理解しています。
 この5記録については、以下のように会議の種別も明確であり、司会・記録者及び記録内容について全体の理解と合意があります。したがって、この5記録が情報公開制度の対象となることについて、全教職員間に異論はありません。
 7月3日職員会議は、職員会議として前月から設定・予定され、校長以下参加全教職員がそれと意識していたものでありました。したがって、会議冒頭、司会者、記録者が確認され、その者によって会議の進行、記録が行われたものであり、その記録内容について参加者全員が(慣習的にではありますが)承認・合意しています。 
 7月4日、6日、7日、13日の朝会は、年度当初から定例的に設定・予定された「職員朝会(性格的には連絡・打ち合わせ会)」です。この会の司会者・記録者は、教職員の輪番制によって行われており、その日の司会・記録に当たるものが誰であるかは全教職員にとり、明確になっています。その者によって司会・記録が進められ、また、その記録内容についても、(慣習的にであるにせよ)全教職員間に承認・合意がなりたっています。
 しかし、7月7日(土)午後12時から20分間にわたって行われた会合及び7月13日(金)午後3時50分から5時にわたって行われた会合及びその記録については、重大な疑義があります。
 まず、この2回の会合は、職員会議と銘打って行われてはおらず、打ち合わせ的な性格のものでした。そこで、教職員輪番制による司会ではなく教頭が司会を行い、記録者についての確認も行われていません。教職員の誰もだれが記録者であるか、全く意識なく、事実としてその場における公式の記録はとられていませんでした。
 ところが、7月27日になって校長は、この会合の記録はあると言い出し、「司会・教頭、記録・教頭」という「議事録」を出してきたのでした。しかも、「職員会議記録簿」の中にではなく、「記録簿」の様式の用紙に記載されたものとして。さらに、校長は前日の夜、教職員自宅に、「情報公開請求に基づいて出す文書について見たい人は、27日午前10時から12時間での間に見に来てください」との電話連絡を入れました(注・実際に電話を入れたのは校長の指示により教頭)。この電話連絡に応じ、その2回分(7日分と13日分)の文書を見たのは、伊藤行夫教諭だけです。他の教職員は、7月3日の「職員会議録」のことだと考え、改めて確認するまでもないと考えたものと思われます。27日、2回分の会合記録を見た伊藤教諭は、記録者の確認が行われなかったことを指摘し、「誰も知らず、誰も見ていないものを会議録として認められない」と主張しました。これに対し、校長は「校長のメモしたものをもとに教頭が起こしたものだ」と説明しました。
 さらに7月30日になって、校長は、7月17日(火)午後3時30分から5時、7月18日(水)午後3時からの会合についての「会議録」もあるとして、伊藤教諭の求めに応じて見せました。17日のものは司会・記録ともに「教頭」とあり、18日のものは司会・教頭、記録・校長とあります。この2回の会合の「会議録」についての問題点は、7日、13日の「会議録」と同様ですが、会議参加者がその記録を見たこともないどころか、その存在さえ知りません。さらに「作られた」度合いが深まっていると言えます。
 7日、13日、17日、18日の会合が「職員会議」であったかどうかは議論の余地があるにせよ、全教職員を参加対象として会議が行われたことは事実であり、その会議録は「なければならない」というのは、その通りだと考えます。しかし、その場では記録者が確認ないし指名されず、かなり後日になって、しかも公開請求があってから、校長の個人的なメモをもとに起こされ、さらにその記録が会議参加者に回覧される等の方法で承認ないし合意されていない、それどころか会議参加者が記録の存在さえ知らぬ「会議録文書」、それが公開の対象とされる「(組織共用)文書」と言えるかどうか甚だ疑問です。
 「なければならない文書(議事録)」ではあるが「不存在」ということで請求者に回答すべきではないでしょうか。その結果、請求者から、非難・批判、責任追求されることがあっても、それは止むを得ないことと考えます。それに対しては、責任者が責任をとることと以後の改善を約することによって、解決可能と考えます。
 公開請求によって、「なければならない文書」の「不存在」に気づき、あわてて形を整えるために、「文書」を「作る」ことは、情報公開制度・条例の精神を踏みにじるものでさえあります。
 情報公開制度の精神は、国や地方公共団体等公的機関が所有する情報を市民の「知る権利」を尊重し、積極的にあるいは市民の情報公開請求権に応じて公開・提供すること、また公的機関がその責務の執行を法令に基づき適正に進めているかを市民に説明する義務(市民の側から言い換えればそれを監視する権利)を果たすことにあります。こうした情報公開制度の精神から見た時、「なければならない文書」の「不存在」に気づき、あわてて形を整えるために、文書を「作る」ことは許されないものと考えます。しかも、「会議議事録」をその会議参加者が全く知らないところで、公的機関の責任者が「作りあげる」、そして、それを公開し「このように文書はそろっております」と、姑息な手段をとることは、情報公開制度の精神を汚すものと言わざるを得ません。

 以上は、「会議録」に関する疑点・問題点ですが、「(夏季プール実施に関する)起案書」についても、問題を感じざるを得ません。「起案書」は7月29日現在、作られていなかったことは、校長も認めている通りです。建前論から言えば、7月19日に全家庭に配布された「夏季プールのおしらせ」文書は、この「起案書」に基づき出されているはずです。にもかかわらず、7月29日現在「起案書」は不存在でした。これもまた「なければならない文書」として、請求を受けて、あわてて「作られ」、「あったものとして」公開することになります。
 請求者は27日付で公開請求を行っています。では、その日には「起案書」は「不存在」だったのですから公開対象文書ではないということになります。 

 当該校教職員が知らないところで、「作られた」文書が公開されることになる問題点と、「作られた文書」は逆に情報公開制度の精神を踏みにじるものとなるのではないかという問題点を指摘し、墨田区教育委員会の調査・検討とその上での見解を、明確に示すように要求いたします。

 なお、この文書は、情報公開条例に、公開される側の異議申し立てシステムがないため、こうした形で問題提起をするものです。