週刊墨教組1340号 2001.10.15


都側、定期昇給への成績主義導入、
勤勉手当への成績率導入
  一時金加算制度見直し等を具体的に提案
        十月三日、都労連小委員会交渉

 十月三日、都労連小委員会交渉が行われました。
 この場で、都側は、人事制度の見直しとして、
 ・任用制度の見直し ・級格付の見直し ・定期昇給の見直し
 ・勤勉手当への成績率導入 ・職務段階別加算制度の改正
の五項目について、具体的な案を提示しました。
 また、昨年度・今年度の二年間という限定付で行われている給与の四%減額問題について、「今後の取り扱いについて、厳しい諸状況を総合的に考慮しながら、慎重に検討中」と、検討の結果によってはさらに継続との含みを持たせた発言を行いました。
 これらすべてについて、都労連は厳しく反論、反対の意志を明確にしました。
 今年度の確定闘争・交渉は、これらの問題を軸に展開されることがはっきりしてきています。

任用制度見直しー複線型任用へ
 任用制度の見直しは、都人勧でも触れられている「複線的な任用・育成コース」を整備しようとするものだと都側は説明しています。複線型任用というのは、総合コース(エリートコース、いわば上級幹部候補コース)と専門コース(特定行政分野に専門性を持つ職員コース)の二つのコースを設定しようとするものです。そのコース振り分けを行政職員の場合、最初の昇任選考となる「主任級職選考」から行おうという考え方です。この考え方に基づき、「主任選考」をA、B、Cの三種類で行うよう提案しています。
  
級格付けー昇格は昇任にともなうもの
 任用上の職級(主任、係長、課長補佐、課長等の職)と給与上の給与級(主任ー4級給、係長ー5級給、課長補佐ー6級給等)は、一致するのが原則となっています。教員の場合、教諭ー2級給、教頭ー3級給、校長ー4級給となっているように。しかし、昇任がポスト数等との関係で限られている中で、給与上は処遇改善を図る趣旨で、一定の条件(勤務年数やその給与級年数)で、上位の給与級を適用する制度が行われてきました(一職二級制)。今回の都側の見直し案は、「職務の権限と責任に応じた処遇の実現」「能力業績主義の一層の推進」との立場から、「一職一級」を厳格に行うというものです。「昇任なければ昇格なし」、とは、「良い給与がほしかったら上の職にあがりなさい」ということです。競争をあおる立場です。

加算は役職につけるもの
 同様な考え方で提案されているのが「職務段階別加算制度改正(案)」です。加算制度とは、期末・勤勉手当に職務の等級により加算がされる制度です(九三年度から実施)。教員(2級)の場合、経験十二年以上が5%加算、三十年以上が %、教頭(3級)は %、校長(4級)は %(五八歳以上、七年以上、二校以上の条件を満たす者は %)加算となっています。行政職の場合、4級と5級が5%、6級が %、7級が %となっています。この場合、上記したように4級の人が必ず主任、5級の人が必ず係長とは限りません。今回の都提案は、「役職の職責に応じて支給するという加算制度本来の趣旨」に戻し、役職段階に応じた加算に改めるというものです。提案は、主任・係長5%、課長補佐 %加算にするとなっています。
 これも「加算が欲しけりゃ、成績競争に勝ち、昇格しなさい」ということです。

定期昇給にも成績主義導入
 定期昇給は、「良好な成績で勤務した時」実施となっており、病気等による欠勤などがなく、ごく普通に勤務していれば平等に実施されるものとなっています。今回の都提案は、能力・業績主義の観点から「勤務成績の判定を職務業績を反映させて、より厳格に行う」というものです。
 具体的に、どのように反映させるか明確ではありませんが、業績評定が下位ランクだった者の定期昇給を延伸させるということと思われます。
 
成績率ー3%拠出と下位者減額分が原資
 私たちは、勤勉手当への成績率に激しく反対し、その導入を五年来阻止し続けています。
 今回、都側は、「教員にも業績評定が実施され、導入環境がさらに整った」ことを理由のひとつに挙げ、強硬に導入を主張しています。今回の都提案は昨年度提案したものとほぼ同じです。
・対象は、「主任級職以上及びそれに準ずる者」。
・その原資は、全対象者からの3%拠出(全員から3%取り上げ)分および下位者からの減額分とする。
・成績率の段階は、上位、中位、下位の三段階とする。
・下位者とは、「業績評定の総合評定で最下位に位置づけられた者」。
・原資を上位者に配分する。
 昨年提案では、拠出分が2%となっていたものを3%と変えています。
 成績率導入は、「勤勉手当の支給率を業績評価に連動したものとする」ことで「職員の士気の高揚を図る」ことが目的と、都側は主張しています。「成績主義競争による分捕り合戦」の奨励!それが「士気の高揚」につながる!労働者を、人を、そういうものとしてしか捉えぬ貧困なる精神!

四%減額、さらなる継続の恐れに言及
 明確なる「労使合意」を踏みにじるな
 この交渉の最後に都側は、社会経済情勢や都財政の状況について現状認識を述べ、さらに石原都知事の財政再建に関する所信表明を引用した上で、「給与削減措置の今後の取り扱いについて、厳しい諸状況を総合的に考慮しながら慎重に検討をおこなっている」との発言を行いました。これは、4%減額措置を今後も続ける選択肢が有り得ることを述べたものです。
 これに対し、都労連は、「二年間の時限措置」であることを都知事が明確に約束したにもかかわらず、「今後の取り扱い」を取り上げること自体が問題だと、激しく反発。さらに、「都側には労使合意を守ること以外に選択肢はない」と、一歩たりとも譲れない態度を明確にしました。

 以上の課題を中心に今年の賃金確定闘争・交渉が、これから展開されることになります。
 いずれの問題も、私たちの生活、そして生き方にもかかわる重大な問題です。
 都労連とともに、断固たる闘いを行います。


週刊墨教組1265号 2000.1.20

私たちは、人事考課制度導入にあくまでも反対する
  成績主義がもたらすものは、人間の内面の頽廃

 東京都教育委員会は、私たちの強い反対の声を無視し、十二月十六日、「東京都区市町村立学校教育職員の人事考課に関する規則」の決定を強行しました。その内容は、これまでの「勤務評定」を二〇〇〇年三月三一日に廃止し、四月一日から「自己申告・業績評価制度」という人事考課制度を導入するというものです。このことは、処遇に反映させないという現行の「勤務評定」制度を廃止し、評価結果を直接処遇に反映させる人事考課制度の導入を決定したということです。
 こうした人事考課制度の導入に反対、疑問の声は、組合員のみならず非組合員、校長・教頭を含め、広く、深くあり、ますます大きくなってきていました。都教委はそれらを全く無視しました。さまざまな混乱は必至です。
 私たちは、あくまでも人事考課制度の導入に反対の声を上げ続け、闘い続けます。

考課制度は集団を戦闘化するためのもの
 そもそも、人事考課制度とは、ある組織の目的・方針の実現に向けて、組織を強化するためのものです。その強化を、構成員を評価し、評価結果を処遇(給与、昇任・昇格、異動)に反映させるというアメとムチにより、個々の構成員を競わせることによって実現しようというのが人事考課制度です。その意味で、闘う組織をより戦闘化するための制度だと言われています。

新しさ強調しようと本質は変わらない
人事考課制度は、古くは、天皇中心の中央集権国家の維持・建設のために、天皇の官吏集団をより戦闘化するために採用されました。
 近年は利益第一・金儲け主義の徹底のために民間企業が採り入れ、企業間闘争に勝利するための戦闘集団づくりに活用しています。考課制度そのものは、「科学的な理論に立って」と装いも新たにして採り入れたと言っていますが、その本質ー成績評価によって処遇をかえる競争主義により、集団をより戦闘化させるーは何ら変わっていません。
 この民間の動向をも受けた形で、行政機関においても、行政の効率化の名のもとに成績主義・競争原理の導入が叫ばれ、人事考課制度が強化されています。今回の教員への人事考課制度導入もこうした流れの一環です。

〈なかま〉〈ゆとり〉〈決定権〉の喪失
 働く者個々を競わせて評価し、処遇するという競争原理に基づく人事考課制度は、働く者を限りなく孤立・分断させて、働かせるものとなります。
 また、競争は働く者を追い回し追い回し、余裕・ゆとりを無くさずにはいません。
 さらに、人事考課制度は、民間企業にせよ、行政機関にせよ、上が設定した目標・方針なり、基準なりの範囲内で自己目標を設定し、その達成度を評価するという形をとりますから、個々の働く者あるいはその集団の決定権は確実に制限され、あるいは無視されます。
 熊沢誠氏は「能力主義と企業社会」(岩波新書)の中で、「働き続けていける職場」に必要な三要素として〈ゆとり〉〈なかま〉〈決定権〉を上げています(「週刊墨教組」一二四一、一二四七号参照)。成績主義に基づく人事考課制度は、それがいかなる形をとろうが、働くものにとってもっとも切実なこうした要素をなくすものとして作用します。

考課制度は人間の内心の頽廃を必然とする
 そうしたことがもたらすものは、何か。それは、一言で言えば人間の内面の限りなき頽廃です。人間的な感情、関係、営み、感覚の頽廃です。そして、事実、それが現代社会に反映していると言えないでしょうか。

人事考課制度そのものに反対
 私たちは、そうした観点から、成績主義に基づく人事考課制度そのものに反対せざるを得ません。それが民間企業で行われようが、行政機関で行われようが、学校現場で行われようが・・それは、人間を頽廃させずにはおかないからです。
 現在、この非人間的な考課制度について、企業や社会でも冷静に見つめなおす動きが見られます。充分な議論も尽くさず、いたずらに人事考課制度を導入することは、かえって教育現場の人間的頽廃というさらなる問題を引き起こすことにしかつながりません。

 私たちは、都教委の強行姿勢に強く抗議し、「人事考課規則」を撤回することを要求します。少なくとも、当面その実施を凍結し、組合と十分協議することを要求します。

若き教師よ! 人事考課制度を笑ってやれ

 四月から人事考課制度なるものが実施されるらしい。去年の秋には、事案決定についてのなんとかが、そしてそのちょっと前には、職員会議が補助機関だとか、とにかく「セコイ」ことばかりが強引に押しつけられている。どうせ押し付けるなら、もう少しまともなものを押しつければいいのに。これだけ続いて押しつけられると、矢でも鉄砲でも持ってこい、の心境になる。どうせ、こんなセコイやり方は長続きしない。
 さて、こんな人事考課制度を誰が言い出したか、想像はつく。恐らくは民間会社の労務管理で、労働者の血と汗と涙と自尊心をズタズタにして「売り上げ」を伸ばしたり「コストダウン」に成功したという浅知恵からの借り物だろう。しかし、このプランは、『目先』のことしか眼中にない奴らの考えそうなことだ。相変わらず、「アメ」と「ムチ」だ。鼻っ面に人参をぶら下げれば、都教委の思うように走りだす、と考える奴らの心根が情けない。ぶら下げられた人参―たいして旨そうにも思えないが―を懸命に追いつづける教師がどれだけいるのか。人間が動くのは「アメ」と「ムチ」だけだ、と考えている奴らが教育界で今でも生き長らえているんだ。
 それにしても、どうして彼らの考えることは、『目先』のことばかりなのか。そして、すべてが、文部省→都教委→区教委→校長という、上位下達構造を増長することばかりなのか。うんざりするよ、まったく。
 さて、四月から、教頭や校長と面接があるらしい。そして、管理職は近々そのための研修を受けるのだそうだ。管理職も暇だよな。実は私、密かに面接を楽しみにしている。彼らはどんな顔をして、私と面接をするのだろうか。まずは、私から校長にお尋ねしよう。「あなたは、ご自身をどのように評価なされていらっしゃるのか。」を。「私は、どういう方に評価されるのかぜひ知っておきたい。」そして、「私に対する評価を如何様にされてもかまわないが、必ずオープンにしろ。」と迫るつもりである。まあ、私と面接させられるうちの管理職に気の毒な気もするのだが。
 若者よ、若き教師よ、ビビルな。若いからといって、管理職に文句の一つも言えずして、教師が続けられるか。教育にロマンを見いだせる教師は、今回のこの攻撃に何ら怯むことはない。人事考課制度なる「愚策」を、強引に押しつける側の、なさけない顔をニヤニヤ笑ってやれ。管理職の愚かな「評価」など、気にすることはない。「管理職ににらまれたら…」なんて小さいことに悩むな。「管理職ににらまれたら…」その時こそ、君は立派な教育実践ができるのだよ。私たち教師が―若かろうが、ベテランだろうが―悩まなければならないのは、「子どもたちとの関係のありよう」だけだ。
 この制度は、「目先」しか見えない奴らが考えた「愚策」だ。どうせ、長続きはしない。こんな制度が定着するなら、日本の学校教育は自滅する。そして、こんな制度をつぶすのが教師の仕事だろうが。


1999.1.21

どこまで管理強化すれば気が済むの!

教員に業績評定導入、

それを処遇に反映をと

都教委「研究会」が「中間まとめ

 都教委教育長の私的研究会「教員の人事考課に関する研究会」は、「中間のまとめ(論点整理)」なる文書を、昨年十二月十七日に取りまとめ、発表しました。
 この中で、同研究会は現行の勤務評定にかわり「今日の状況にふさわしい評価制度を構築する必要がある」とし、新たな評価制度確立をめざすことを明確にしています。
 そもそもこの研究会は、発足の際に指摘したように、勤勉手当への「成績率」導入を進めるために、都職員で唯一「自己申告・業績評定制度」が導入されていない一般教員にそれを導入することをめざし、そのための方策の検討、大義名分づくりを進めようとするものでした。
 案の定、今回の「中間まとめ」も、その方向で整理されています。

能力・業績に応じた人事管理を
「中間まとめ」は、一章教員の人事考課についての現状と課題、二章教員の人事考課に関する基本的な考え方、三章これからの教員評価のあり方、四章今後の検討課題の四章構成となっています。
 「中間まとめ」は、その「まえがき」で、「国や民間企業、都における行政系職員等の人事管理の動向を参考にしながら、教員の職務の特性にも十分配慮しつつ、新たな観点からの検討を加えることが必要」と述べ、国・都や民間の動向からこの問題を考えることを明確にしています。 そして、第一章において、国・都および民間企業の動向について、「いずれも評価制度に基づき、能力・業績に応じた人事管理が重視されており、この傾向は強まる」としています。

新評価制度作り、それによる人事管理を
 そうした認識を示した上で、都教員の人事管理について、「給与、人事異動、研修の面から現状と課題を明らかにする」とし、それぞれについて次のような指摘をしています。
給与ー教員の給与体系は管理職にならなければ、生涯同一の級の中で昇給する「極端な年功処遇が特徴」
特昇について「現行勤務評定結果は昇給等に反映させない取り扱いになっているため、その実施のための個別評定が行われている。また、勤務年数によって平等に推薦・措置されるべきといった、制度の趣旨を全くはき違えた意識が残っている」
 人事異動ー「個々人の能力や適性に応じた人事異動を実施する必要がある。そのためには勤務評定等の定期的な記録が基礎になってなければならないが、現行の勤務評定結果を反映させない取り扱いになっている」 
 研修ー「校長の学校経営目標と教員個々の事故目標とが結びついた上で、教員の資質向上・能力開発等を見据えた校内研修の充実、活性化が必要。課題研修等への参加も、個人の資質能力の評価を踏まえた育成策の一環として、校内組織に位置付けられていくべきもの」
 これらの現状分析と課題指摘のめざしている方向は明確です。
 「給与、異動、研修のいずれをとってみても、能力・業績を評価し、それに基づき行うべきである。にもかかわらず、現状はそうなっていない。そうした現状を変えるためには、新たな評価(考課)制度が必要である。新評価制度を早急に作り上げ、それによる、つまり成績(能力・業績)評価に応じた人事管理(給与、昇給、昇格、異動、研修)を進めるべきである」
ということです。

処遇に反映できる新評価制度を
 これに続いて「中間まとめ」は、現行勤務評定について、「@昭和三二年に規則制定、以来四十年間改正されていないA評定結果について導入当時に行われた職員団体(組合)との話し合い等の経緯から人事異動、給与に反映させない取り扱いが現在まで続いている」の二点を問題点として指摘しています。さらに、管理職については「学校経営における業績を正確かつ客観的に把握し、評定し、その結果を任用、給与、千項等に反映させる自己申告制度を含む業績評定が、平成七年から導入されている」ことを指摘しています。
 その上で、現行勤評制度の課題として次の六点をあげています。
@校長の観察内容による評定であり、自己申告や自己評価の制度がない、教頭等を評定補助者とし意見を聞く制度になっていないため評定の客観性、精度に疑問
A 評定結果が本人に告知される制度でなく、校長が教員の育成課題を把握しても、教員に対する指導育成、モラールの向上に生かしきれていない
B評定が三段階の絶対評価で行われ、相対評価が義務づけられていないため、給与面の処遇への反映が行い難い
C評定結果が人事異動や給与に反映させない取り扱いになっている、また日常の指導育成に活用されていないことから、評定作業が形骸化している
D評定期間が九月から翌年の八月であり、年度単位の実績評定ができない。評定項目も見直す時期にきている
E評定者訓練も十分でなく、評定能力の向上が必要
 言うまでもなく、これらの課題指摘のポイントはBCです。他の理由は、BCを何とかするために、もっともらしく挙げているに過ぎません

 「中間まとめ」はこのように現状の分析、課題指摘をおこなった上でどういう評価(考課)制度が必要かの考察を行っています。
 しかし、こうした分析・課題指摘から出てくる結論はただ一つしかありません。いや、そうした結論を導き出すために以上の分析・課題設定を行ったと見た方が正鵠を得ているのでしょう。(以下次号へつづく)
 


教員の人事考課に関する研究会

 都教委が、九八年七月十日に、教育長の私的研究会として発足させた研究会。  

構成メンバー
 この研究会は、蓮見音彦和洋女子大教授を座長とし、つぎのメンバーによって構成されています。
 佐島群巳(東京学芸大学名誉教授)
 久保田武(駒沢大学講師・元都立羽田高校長)
 佐藤全(国立教育研究所・教育経営研究部長)
 高倉翔(明海大学副学長・副座長)
 松野康子(玉川大講師・前台東区立黒門小校長)
 出口純輔(持田製薬常務取締役ー管理担当)
 山脇康子(日本経済新聞社流通経済部次長)
 宮沢嘉夫(拓殖大学客員教授・元都教委指導部長)

人事考課のあり方・活用策検討を依頼
 研究会設置の趣旨について、都教委は「これまでの画一的、年功序列的要素の強い教員の人事管理を見直し、能力と業績に応じた人事管理を通じて、教員一人ひとりの特性や経験に即した人材育成を図って行く必要がある。この観点からすれば、人事考課の役割は一層重要性を増してきているところであるが、都における教員の人事考課については、勤務評定に関する規則が制定され既に四十年が経過しており、社会の変化や動向を踏まえ、今日的視点から、そのあり方や活用策を具体的に検討する必要がある」と述べています。
 そして、研究会への検討依頼事項として、「@教員の人事管理における人事考課に関することA教員の人事考課を活用した人材育成の方策に関すること」の二点を上げています。


(注)
 考課ー「@律令時代の官人の勤務評定。各官庁の朝刊が毎年部下の勤務成績を上上から下下までの九等級に判定し、上申したA軍人・官吏・学生等の功績・操行・学業、または会社などの営業成績を調べて報告すること」(「広辞苑」)
 人事考課ー「従業員の能力や勤務成績を判定すること。給与査定や人事決定の資料となる」(「広辞苑」)



短期間でまとめようとの拙速主義
 「研究会」は、七月十日に発足以来、八月二六日、九月二九日、十月二三日、十一月二七日、十二月十七日と六回の研究会を開催し、十二月十七日の研究会で「中間のまとめ(論点整理)」なる文書をまとめ、発表しました。以後、「各方面からの意見を参考にして論議を深め」今年三月末を目標に「最終的な報告」をとりまとめたいとしています。かなりの拙速主義であり、来年度からの「成績率」導入を視野に入れていることが、このことからもはっきりします。

「成績率」導入を視野に入れた動き
 この研究会設置の目的は、勤勉手当への「成績率」導入を視野に入れ、教員にも現行の勤務評定にかえて、自己申告を含む業績評定制度を導入しようというものであることは明らかです。教員への業績評価制度導入のための準備作業を進めるための研究会と言えます。
 この「研究会」のように、「学識経験者」なる者を集めた第三者機関に諮問した形をとり、あたかも客観性・科学性をもったかのようにして新しい制度の導入を強行するのが、行政の常套手段です。この「研究会」もその例外ではありません。
 「中間まとめ」「最終報告」を錦の御旗として一挙に導入強行をめざす算段とみておかなければなりません。


都教委、教員への業績評価導入に向け検討を開始

許せない!「成績率」導入、

勤評特昇強行への布石

 都教委は、七月十日、教育長の私的研究会として「教員の人事考課に関する研究会」(以下「研究会」)を発足させました。
 この「研究会」設置の目的は、勤勉手当への「成績率」導入を視野に入れ、教員にも現行の勤務評定にかえて、自己申告を含む業績評定制度を導入しようというものです。新たな勤評(勤務評定)の導入です。
 私たちは、「成績率」導入に強く反対してきました。それを視野に入れ、かつさらなる教員管理体制の強化を図る業績評定制度導入に反対し、闘います。


 
構成メンバーは
 この研究会は、蓮見音彦和洋女子大教授を座長とし、つぎのメンバーによって構成されています。
佐島群巳(東京学芸大学名誉教授)、久保田武(駒沢大学講師)、佐藤全(国立教育研究所・教育経営研究部長)、高倉翔(明海大学副学長)、松野康子(玉川大講師)、出口純輔(持田製薬常務取締役)、山脇康子(日本経済新聞社流通経済部次長)、宮沢嘉夫(拓殖大学客員教授)

「新勤評」の内容、活用策を検討
 都教委は、研究会設置の趣旨について「これまでの画一的、年功序列的要素の強い教員の人事管理を見直し、能力と業績に応じた人事管理を通じて、教員一人ひとりの特性や経験に即した人材育成を図って行く必要がある。この観点からすれば、人事考課の役割は一層重要性を増してきているところであるが、都における教員の人事考課については、勤務評定に関する規則が制定され既に四十年が経過しており、社会の変化や動向を踏まえ、今日的視点から、そのあり方や活用策を具体的に検討する必要がある」と述べています。
 また、研究会への検討依頼事項として、「@教員の人事管理における人事考課に関することA教員の人事考課を活用した人材育成の方策に関すること」の二点を上げています。

教員にも業績評定導入が目的
 この研究会設置の目的は、都の教員にも自己申告を含む業績評価制度を導入のための研究・手順を進めようというものです。
 四年前から都当局は、一般職員への勤勉手当に「成績率」を導入することを強く主張し、今年の賃金確定交渉で決着をつけることに執念を燃やしています。  「成績率」導入とは、業績評価制度によって評定されたランクによって勤勉手当を差別支給するものです。具体的には、五段階相対評定の下位者から、勤勉手当の一部を取り上げ、ランク上位者に配分するものです。教員を除く全職員にはすでに業績評価が実施されていますから、「成績率」を導入した場合、直ちに対応できることになります。ところが、教員については業績評価制度は実施されていませんから、「成績率」導入の前後に業績評価制度を導入しようとするのは必至です。今回、都教委が設置した研究会は、教員への業績評価制度導入のための準備作業を進めるためのものです。

来年三月に「最終報告」
 「研究会」は、八月下旬から十一月中旬まで月一回のペースで討議を進め、十二月中旬に「中間報告まとめ」、九九年三月に「最終報告」を行う日程を組んでいます。かなりの拙速主義であり、来年度からの「成績率」導入を視野に入れていることが、このことからもはっきりします。

錦の御旗として「研究会報告」を活用
 この「研究会」のように、「学識経験者」なる者を集めた第三者機関に諮問した形をとり、あたかも客観性・科学性をもったかのようにして新しい制度の導入を強行するのが、行政の常套手段です。この「研究会」もその例外ではありません。「中間報告」を受けた段階で、具体化するための作業に入り、「最終報告」を錦の御旗として一挙に導入強行をめざす算段とみておかなければなりません。

 私たちは、都の一般職員全体への「成績率」導入の布石としての教員への業績評定制度導入、私たちへの新たな管理体制強化である業績評定導入、「新勤評」に断固反対します。