休息休憩時間問題


第1312号 2001.2.15


労働条件の改変は労使交渉が前提
労使合意なく決定・変更はすべきでない

 都教委が強行しようとしている勤務時間改悪攻撃は、実態的に休息・休憩時間を剥奪し、教員に長時間連続労働を強制しようとするものに外なりません。
 私たちは、それを断じて認めることはできません。
 この問題に対応する私たちの基本的立場として、まず次の諸点を確認しておきます。

休息・休憩時間は労働者の休息権の構成要素であること
・休憩・休息時間の保障のない労働は、「人たるにふさわしいもの」(労働基準法第一条)とは言えないこと
・だからこそ、使用者は休息・休憩時間を保障する義務を法的に明確に負っていること
・よって、勤務時間の割り振りは、私たちの休息・休憩権を実質的かつ確実に保障するものでなければならないこと
・休息・休憩時間の保障を含む勤務時間の割り振りは労働(勤務)条件そのものであり、明白に労使交渉事項であること
・したがって、労使交渉が前提であり、そこにおける合意なくして決定、変更すべきものではないこと
・勤務時間の割り振り及び週休日の指定、休息・休憩時間の付与等の事務処理は、二〇〇〇年四月一日から区教委が処理することに改められた。その結果、区教委は割り振りについての解釈・運用を独自の判断で行う権限を持っていること
・今回の勤務時間の割り振り問題の交渉当事者は、区教委と組合である。この交渉は間もなく区教委と三組合の間で始められ、この問題の処理についての大枠合意を双方がめざしていること(組合側は、墨田教組・都教組墨田支部・校職組墨田の三組合が統一して交渉にあたる)
・さらに、その合意に基づき、現場における具体的割り振り権限を委任されている校長と組合が交渉を行う。その当事者は、校長と分会であること
・ こうした、交渉手順なくして、またそこにおける合意なくして勤務条件の改変はすべきではないし、それを許さないこと


第1311号 2001.2.8
許すまじ
   八時間四五分もの長時間連続労働強制
   休憩時間の一斉付与原則崩し

長時間連続労働を許してはならない
 都教委が強行しようとしている勤務時間割り振り改悪の内容は、次の通りです。
・従来勤務時間の初めと終わりに置くこともできた休息時間を実勤務時間の中に入れるということ
・休憩時間は同一事業所(職場)の労働者に一斉に与えなればならないという「一斉付与原則」を崩そうということ
・これらを行うことにより、休息・休憩時間をとりにくくすること
この結果、起こることは何か
 八時間四五分もの長時間連続労働です。それを強制すること、そこにこそ都教委のねらいはあります 

運用制度という「知恵
休息・休憩時間は、労働者としての私たちの権利です。一方、使用者にはそれを取ることを保障するとともに確実に取らせる義務があります。そしてまた児童生徒が学ぶ学校という場においては、児童生徒の教育効果面・生活指導や安全管理面を最優先しなければならないという事情もあります。これらの問題をできるだけ矛盾少なく解決しようして考え出された「知恵」が、現行の勤務時間割り振り(運用勤務時間)であるわけです。

無責任に徹し、権力で強圧の都教委
 その「知恵」を出しあった当事者の一人である立場を投げ捨て、権力を持って一方的にひとつの立場を強制する都教委、何たる無責任!運用時間という知恵を出し合った当事者は、それに対して疑問が寄せられたならば、その知恵の意味を現実実態に照らし説明し、理解を求める努力をこそするべきです。その努力をしようとしない無責任!

休息・休憩の権利投げ捨てない
 そんな無責任な都教委の思惑のままに、休息・休憩時間の権利を投げ捨て、長時間連続労働に甘んずるなどということはけっしてできません。またするべきではありません。

 私たちは、休息・休憩時間の権利を確実に確保、行使します。
 休息・休憩時間を保障・確保する義務を管理者に確実に履行させます。
 また、私たちは休憩時間の一斉付与原則、自由使用原則を確実に確保し、保障させます。
 この二点を押さえつつ、この問題に対処していきます。 


週刊墨教組 No.1309 2001.1.24

全教職員で学習、怒りをともに!
合意なくして割り振りなしの確認を!
  休息・休憩時間剥奪攻撃に断固反対して闘おう

「週刊墨教組」一三〇七・一三〇八号の二号にわたって休息・休憩時間剥奪攻撃について、その経過、都教委提案の内容や意味、問題点等について全般的に整理しました。
 それを通じ、この問題は、私たちの労働条件にかかわる重大な変更であり、一人一人の教職員の生活・健康にも大きくかかわる問題であることを明らかにしました。
 また、労働条件の決定・変更は明確に労使交渉事項であり、労使の合意なくして決定・変更は本来的にありえないことも明らかにしました。したがって、今後、区教委と組合、校長と分会の交渉が行われることになります。
 こうした点から、当面、次のとりくみを全校で進めていこうではありませんか。

全教職員で怒りをともに!
 まずは、この問題についての経過・内容・問題点について全教職員が理解し、問題意識を共有することから始めましょう。問題を正確につかむことがどんな交渉でも前提です。また、問題が明らかになればなるほど、必ず怒りをともにすることになるでしょう。怒りをエネルギーに変え、自分たちの人間として、労働者としての権利、生活、健康を守るべく闘いましょう。
 職場の二組合が中心となって、全教職員に呼びかけ、この問題の学習のための職場集会を開催しましょう。

合意なくして割り振りなし
 労働条件にかかわる問題は、明確に労使交渉事項です。そのことについての確認を校長に求め、交渉なくして勤務時間の割り振りを行わないよう申し入れましょう。交渉なくして校長が勝手に勤務時間の割り振りを行うことはありえませんし、それを許してはなりません。
 交渉事項であること自体を否認する校長は、すくなくとも墨田には絶対にいないはずです。


No.1308  2001.1.14

労働条件は労使合意なくば決定・変更できない
  休息・休憩時間剥奪攻撃に断固反対して闘うA

 前号では、次のことを明らかにしました。
・休息・休憩時間は労働者の休息権の構成要素であること、
・休憩・休息時間の保障のない労働は、「人たるにふさわしいもの」とは言えないこと
・だから、使用者は休息・休憩時間を保障する義務を負っていること
・休息・休憩時間は勤務時間の途中におかねばならない。しかし、学校現場においては、勤務の途中に休息・休憩時間をおいても、児童生徒の教育効果面、安全管理面から、現実問題としてとることはできないこと
・そこで、休息・休憩時間を勤務時間の始めと終わりにおいて、その権利を保障する運用を労使が合意して行ってきたこと
・この運用は、過去三七年間にわたって行われ、定着し、社会的理解も得てきていること
・にもかかわらず、都教委はその運用を認めない条例・条例にかかる解釈運用改悪を強行しようとしていること
 今号では、今までの運用の意味・内容、都教委のねらいは何か、都教委提案でいくとどうなるのかを再度はっきりさせます。
 これらを資料とし、私たちの休息・休憩時間の権利を保障させるためにどうしたらよいか考え、具体的なとりくみをしていくことになります。

運用勤務時間の意味
 三七年間にわたって定着してきている運用勤務時間は、下図(例1)のようになっています。この場合、休憩時間(四五分)の後ろに休息時間(十五分)をつける形になっています。これは、「休憩時間は勤務時間の途中におかなければならないので、勤務時間の最後におくことはできない。しかし、学校現場では最後の方におかなければ実態的にとることは不可能。では、休憩時間の次に勤務時間を入れるか。そうした場合、休憩時間の自由利用は保障されず、また実態的にとれなくなるだろう。ところで、休息時間は勤務時間に含まれるものであり、勤務時間と言える。では、午後の休息時間を休憩時間の次において、その矛盾を解消するとともに、休息時間も実態的にとれることを保障しよう」という考え方によったものです。午前の休息時間を勤務時間の前においたのも、この考え方によるものです。

労働条件は労使交渉事項
 この運用は、当時の都教組と都教委の交渉で合意に達し、その合意に基づき都教委が「条例・規則」の「運用・解釈文書」で地教委や校長に通知したものです。
 勤務時間やその割り振りは、勤務条件(労働条件)そのものです。労働条件は労使交渉事項であり、必ず組合と合意した上でなければ決定あるいは変更することはできません。それが、労働法制の基本的な立場であり、その立場で労働法はつくられてます。
 今回の都教委の労働条件変更につながる提案を組合との合意なしに強行する姿勢は、こうした点からも重大な問題をふくんでいます(都教委は、「合意なくとも、明確な合理性があれば一方的な決定・変更は可能だ」との論理を立てています この論理は、戦後の労働法制をなし崩し的にこわしていく目的で政府・資本が立てた論理です)。
 私たちは、労働条件は労使合意のもとで、決定・変更するという労働基本権の立場でこの問題に対処していかなければなりません。

交渉合意を前提に校長に割り振り権
 ところで、勤務の開始・終了時刻、休息・休憩時間をどこにおくか等について、労使合意に基づいて勤務時間の割り振りを行う権限は使用者が持っていることになっています。
 私たちの場合、使用者は都教委です。都教委は、その権限を条例により学校設置者である区教委に委任し、区教委は各校校長に委任しています。
 したがって、勤務時間の割り振りについて、当事者能力(決定し実施する権限)を持っている当局側は、最終的に校長ということになります。労働側で当事者能力を持っているのは、言うまでもなく組合です。
 したがって、校長と分会が勤務時間の割り振りについて交渉し、その合意に基づき割り振りが行われるというのが原則です。

校長に休憩時間の保障義務
 使用者には休息・休憩時間を保障する責務があります。労働基準法には、それを保障しなかった場合の罰則規定までもうけられています。労働者は、休憩時間が保障されなかったり、実態的にとれなかった場合、その救済を求めて使用者を訴えることができます。その実態が認知されれば、使用者は罰則(六ケ月以下の懲役または十万円以下の罰金)を受けることになります。
 この問題をめぐる交渉の中で、都教委は「休憩がとれない場合の責任は、最終的に委任されている校長」にあると述べています。つまり、休憩がとれない場合、私たちがその義務違反を告発し、法的制裁を司法(裁判所)当局に求める相手は校長であることを明らかにしているわけです。これは、「訴えるなら校長を」と言っているのと同じです。今後、状況によっては、そういうことも必要になるかもしれません。

都教委提案は
何を変えようとしているか

休息の権利奪う提案
 まず第一に休息時間のおき方です。条例8条に規定されている「休息時間」についての解釈・運用を、今までは「午後の休息時間を勤務時間の終わりの方で与えることができる」としていたものを、「出勤時間及び退勤時間と連続させることはできない」と変えるというものです。
 例1を見てわかるように、今までは、勤務時間の前と後ろにおきました。今回の都教委提案は、「勤務時間の中に休息時間を入れる」という原則論に立って、「勤務時間の前、後ろにおくことはだめ」ということです。建前はその通りですが、それでは学校現場では休息時間が実態的に取れないということから、勤務時間の前、後ろにおく運用をしてきました。この運用は、休息時間の権利を確保し、同時に児童生徒の教育効果・安全管理面での万全を期すという立場から労使が合意しておこなってきたものです。それを完全に否定するというのです。

休息時間とれるわけなし
 この通りに休息時間を中に入れると例2のようになります。このおき方で実態的に休息時間がとれるでしょうか。
 多くの小学校では、二校時と三校時の間に二十分程度の休み時間を入れています。都教委は、「この時間帯に休息をとればよい」との考え方のようですが、この時間帯に教員が休息をとれますか。この時間帯は、個別的な指導や事故その他による児童との対応、前後の授業の整理や準備、各種打ち合わせ、時によっては会議に追われているのが現実ではありませんか。
 中学校では、ほとんどの学校で授業と授業の間の休み時間は十分程度です。そこで都教委は、「空き時間に休息をとればよい」との考え方のようです。空き時間に教員が休息をとれますか。教員数少なくなっている中で、午前一杯、空き時間がない教員もいます。たとえ空き時間があっても、前後の授業の整理や準備、生徒への対応、諸雑務や校務に追われているのが現実ではありませんか。

休息の保障なく、勤務時間三〇分延長
 つまり、私たちの休息時間の権利は、事実上保障されなくなるではありませんか。そして、実質的な勤務時間が今より三〇分増加することになることは「例2」を見ても明らかです。また、休息時間のおき方によっては、出勤時刻が早まり、あるいは退勤時刻が遅くなります。
 休息の権利が保障されず、結果として事実上勤務時間が長くなり、出退勤時刻も変更させられる、重大な労働条件の改悪です。これを労使合意なしに行うことは許されません。

「休憩は一斉付与が原則」と都教委言明
 都教委の当初提案では、休憩時間について「一斉に与えないことができる」との文言を条例に挿入するとなっていました。
 つまり、休憩時間三原則の内、「一斉付与」原則をはずそうとしたわけです。
 私たちの批判の中で都教委は、最終的に「休憩は一斉付与が原則だ」と明確に言明し、その上で例外的に一斉付与をはずし個人ごとに割り振る場合には、「(校長は)区教委人事担当課長と協議しなければならない」(前号資料2、3)とし、さらに「一斉付与除外基準を(区教委毎に)定める」(前号資料4)との修正案を出しました。
 つまり、原則は一斉付与、それをはずす場合の手続き、基準を明確にし、一斉付与原則をはずすことに歯止めをかけるというわけです。この歯止めを実効性あるものにしていく必要があります。
 休憩は一斉付与が原則であり、個人別に割り振るのは例外であることを明確に認識しておきましょう。

休憩時間、きちんととろう
 ところで、勤務時間の中で時間帯を定めて休憩を一斉にとる形にした場合、確実にそれをとりきることが大切です。休憩は自由使用が保障されており、校外に出て自由に使うことができます。学校現場以外の役所や民間企業の場合、休憩は言わば昼休みであり、職場の外に出て昼食その他に利用しているのは、休憩自由利用原則があるからです。
 休憩をとらない場合、八時間四五分もの長時間・実働拘束労働になります。都教委は、まさにそれをねらっていると言わざるを得ません。「勤務時間の中に一斉付与原則に基づき休憩時間を設定したとしても、教員はとりやしないよ、とれやしないよ」と、高をくくり、にんまりしている人たちの顔を想像してみましょう。

休憩後に勤務では実態的にとれない
 今回の都教委提案では、休憩時間を一斉にとる形で設定したとして、その終了後には勤務時間(拘束時間)をいれなければならないようになっています。今までは、勤務時間の一部である休息を休憩の後にいれて休憩の次に「勤務がある」という形で運用してきたわけですが、それができないことになります。
 例示的に言うと、一斉に休憩をとり、自由使用原則に基づき校外で過ごしたとしても、四五分間の休憩終了後は、また学校に戻り勤務しなければならないということです。
 これではますます休憩時間が実態的にはとれなくなることは明らかです。

休憩後の勤務時間をどうするかが焦点
 休憩時間を一斉にとる形で割り振りする場合、学校においては、当然児童・生徒が下校した後の時間帯に設定することになります。つまり、勤務時間の終わりの方に置くことになります。この点は、条例にも明記されており(前号資料3)、設定すること自体には問題ありません。
 問題は、その後に勤務時間がくることです。この勤務時間をどうするかが休憩時間を確実にとることができるかどうかにかかわってきます。ここが、知恵の使いどころとなります。

「休憩確保が優先」と都教委
 この問題をめぐる交渉の中で都教委は、「休憩は労基法に定められており、一日の内に四五分はとらなければならない。とらせる責任は管理者にある」と、休憩確保が優先することを明らかにしています。
 さらにこのことと関連して、「休憩時間にどうしてもやらなければならない仕事をした場合、休憩の後に割り振った勤務時間を休憩にあて、自由使用にすることは有り得る」との見解を明らかにしています。ただし、同時に「それが常態であっては困る」との指摘もしています。

労使合意なくば決定・変更できない
 今回の都教委提案を具体的場面に適用してみると今までみたような問題点があり、勤務時間延長という都教委の意志が明白に読み取れます。
 私たちは、休息・休憩の権利を守るため、また長時間連続労働攻撃からみずからの生活・健康を守るため、断固として闘い、またさまざまな知恵を働かせていかなければなりません。
 勤務時間の割り振りは、勤務条件(労働条件)そのものであり、労使交渉の合意に基づかなければ決定・変更できないものです。今後、区教委・校長とさまざまな交渉をし、つめていくことになります。

育児時間十五分単位で
 都教委提案の内、育児時間・妊婦通勤時間にかかわる内容は、今までは、三十分単位でしか認めなかったものを十五分単位でとることを認めるということです(前号資料5)。
 育児時間(一回四十五分、一日二回。九十分にまとめてとること、三十分と六十分に分けてとることも可能)、妊婦通勤時間(出勤時と退勤時にそれぞれ三十分ずつ勤務免除。まとめて六十分とすることも可能)の時間数は変えず、これらを単に十五分単位でとることを認めるというのに過ぎません。利用の仕方によって、今までと同様に出勤時間を遅く、退勤時間を早くすることはできます。しかし、他の提案とのからみでみると、実勤務時間は今より長くなることに変わりはありません。
 この問題にかかわる具体的な問題は、さらにつめねばならないことが残されています。

例1 /休息/・・・・・・・・・・・・・・・・/休憩/休息/

例2 ・・・/休息/・・・・・・・/休息/・・/休憩/・・・



No.1307  2001.1.12

休息権は人たるに値する生活を保障する権利
  休息・休憩時間剥奪攻撃に断固反対して闘う@

 都教委は、昨年七月四日、私たちから休息・休憩時間を奪う提案を行いました。私たちは、この提案の撤回を求めて闘い、また、五回にわたる交渉を通じて、さまざまな問題点を指摘するとともに、「勤務時間の割り振りを都教委提案の通りに変更すれば、休憩・休息時間は実態的に取れなくなる。これは、休息・休憩権利の剥奪である」と、提案自体の撤回を求め続けてきました。しかし、都教委は、十二月二〇日、「七月四日提案」の一部を修正したものの、一方的に交渉終了を宣言。また、今後、都教委の提案内容による条例改正等を進めることを宣言しました。
 これにより、今後の交渉の場は区教委、分会へと移ります。私たちは、あくまでも休息・休憩権を確保するとりくみを継続していきます。
 今号では、今後のとりくみを進めるに当たって必要な資料をまとめ、またこの問題にかかわる立場・態度について総括的に整理しておきます。

休息権の三要素
 年休権、休日権、休憩・休息時間

 「働く者の生活と健康にとって、休息権の確立は人間たるにふさわしい最小限度の権利」です。この休息権は、労働者の長年にわたる闘いの歴史の中で確認され、また不断の努力によって確立・確保されるべきものとしてあります。
 この休息権は、三つの権利「年休権、休日権、休憩・休息時間」から成り立っています。年休権は労働から完全に解放され、人間としての自分を取り戻す権利であり、休日は労働から定期的に解放される権利であり、いずれも職場から離れて、人間としての解放をかちとる休息権です。
休憩・休息の権利
 しかし、それだけでは不十分、一労働日の間にも労働を中断して休息することが、労働者の肉体的、精神的休養、疲労の回復に不可欠であるということから、休憩・休息の権利が発生しました。それは、労働の遂行にとって、不可欠であるという認識と体験から出発していました。だから、休憩・休息時間の保障のない労働は、「人たるにふさわしい」ものとはいえないし、また健康を保障するものでもありません。また、この休息権は労働効率という点からみても、使用者にとってはそれを十全に保障すべき義務であると認識されています。
 そこで勤務条例や労働基準法では、休息・休憩時間の権利を次のように規定しています。

休息時間とは何か
 休息時間とは、一定の労働時間を続けた場合の疲労を回復し、職務能率の向上を図ることを目的とし正規の勤務時間中にとることができるいわば「手休め時間」です。だからこれを勤務時間の中に入れる(勤務時間の中で取る)こと、その時間は四時間につき十五分とすること、この二つが勤務条例に規定されています。
 ところで、私たちの場合、学校現場で休息時間を確実にとれるでしょうか。休息時間を勤務時間の中に入れた時、児童・生徒が在校し、さまざまな活動が行われているその時間帯に、学校職員は実際問題として休息をとれません。
休憩時間とは何か
 労働基準法および勤務条例では、休憩時間を次の三原則のもとに与えなければならない(私たちの側からみれば「取る」)ことを規定しています。
@労働時間が六時間を越える場合には少なくとも四十五分、八時間を越える場合には、少なくとも一時間を勤務時間の途中に入れる
A同一事業所(職場)の労働者に対して一斉に
B「自由利用」を保障するものとして(休憩時間をどのように使うかは労働者の自由。休憩の自由利用は休憩時間の本質的内容)
 さて、この原則を私たちに当てはめてみましょう。ABは、学校現場で可能でしょうか。絶対に不可能です。たてまえ的に勤務時間中に時間設定することはできるでしょう。しかし、児童生徒の教育効果面、安全管理面から、児童生徒の在校時間中に、全職員一斉に、「自由利用」を本質とする休憩時間をとることはできません。

なぜ運用勤務時間制をとったのか
 しかし、労働者の休息権である「休息・休憩時間」がなくて良いということにはなりません。だからこそ、それらを勤務時間の始めそして終わりにおいて、その権利を確保することを、労使双方が確認し、そう運用してきました。この運用は既に三十七年間にわたって行われ、職場に定着し、また、社会的な理解も得てきています。

休息を勤務時間の途中に入れる意味
 今回の都教委提案は、「休息時間」については、原則通り勤務時間の途中におき、勤務時間の始めと終わりにおくことは認めないというものです(裏面資料1)。勤務時間の途中において、実際には休息できない私たちの休息時間を奪うため、また実勤務時間を延長するためです(始めと終わりにおけないということは、今までは八時三十分出勤だったものが八時十五分出勤となる)。

職種別、交替制で休憩とれぬ学校現場
 「休憩時間」については、「一斉付与」原則をはずそうとしました。それは、職務(専科、担任、副担任)や職種(事務・栄養士・教員)の違いで別の勤務時間をつくったり、休憩時間を交替制とすることを可能としようとするものでした。
 教育現場は、共同・共働作業によって進行しています。そうした中で、しかも、現実に児童生徒が在校し、さまざまな活動を生き生き展開している時間帯の中で職種・職務別あるいは交替制で休憩時間をとることにしたとしても、実際にはとれないことはあまりにもはっきりしています。

「一斉付与が原則」と都教委言明
 私たちのこうした批判の中で都教委は、最終的に「休憩は一斉付与が原則だ」と明確に言明し、その上で例外的に一斉付与をはずし個人ごとに割り振る場合には、「(校長は)区教委人事担当課長と協議しなければならない」(裏面資料2、3)とし、さらに「一斉付与除外基準を(区教委毎に)定める」(裏面資料4)との修正案を出しました。つまり、原則は一斉付与、それをはずす場合の手続き、基準を明確にし、一斉付与原則をはずすことに歯止めをかけるというわけです。この歯止めを実効性あるものにしていかなければなりません。
(育児時間問題その他は次号につづく)

資料1

1.休息時間の置き方について
 休息時間について、「学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例及び同条例施行規則の解釈及び運用について」を次のとおり改正する。

現  行 一改正案
第6 休息時間(条例第8条関係)
1 休息時間は、職務に支障のない限り、勤務時間 4時間について15分与える。
したがって、例えば、午後の休息時間を勤務時間の終わりの方で与えることもできる。
2(略)
3(略)
第6 休息時間(条例第8条関係)
1 休息時間は、職務に支障のない限り、勤務時間4時間について15分与える。ただし、出勤時間及び退勤時間と連続させることはできない。
2(現行のとおり)
3(現行のとおり)

資料2

2.休憩時間の一斉付与について
 労基法及び地公法の改正により、「条例に特別の定め」がある場合には、休憩時間を一斉に付与しないことができることとなった。この「特別の定め」については、現行の学校職員の勤務時間条例第7条第2項で読み込むことができるが、同条第3項でその旨明確に規定する。

現行 改正案
(休憩時間)
第7条 教育委員会は、勤務時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間、継続して一昼夜にわたる場合は1時間30分以上の休憩時間を、それぞれ勤務時間の途中に置かなければならない。
2 前項に定めるもののほか、教育委員会は、職務の性質により特別の勤務を命ずる場合には、必要な休憩時間を与えることができる。
(休憩時間)
第7条 教育委員会は、勤務時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間、継続して一昼夜にわたる場合は1時間、30分以上の休憩時間を、それぞれ勤務時間の途中に置かなければならない。
2 前項に定めるもののほか、教育委員会は、職務の性質により特別の勤務を命ずる場合には、必要な休憩時間を与えることができる。
3 前2項の休憩時間は、職務の特殊性又は当該学校の特殊の必要がある場合において、教育委員会の定めるところにより、一斉に与えないことができる。

資料3

(2000年12月20日)

「学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例
    及び同条例施行規則の解釈及び運用について」改正案

現行 改正案
第5 休憩時間(条例第7条関係) 【1から5、8から10 略】7 休憩時間は、児童生徒の昼休み時間に一斉に与え、若しくは個人ごとに割り振り(公立学校の場合は、人事委員会の許可を受けて、交代制で休憩させる。)又は勤務時間の終わりの方に置くことができる。 第5 休憩時間(条例第7条関係) 【1から5、8から10 略 下線部分を追加】7 休憩時間は、児童生徒の昼休み時間に一斉に与え、若しくは個人ごとに割り振り又は勤務時間の終わりの方に置くことができる。個人ごとに割り振る場合には、都立学校においては人事部勤労課長、区市町村立学校においては区市町村教育委員会人事担当課長に協議するものとする。なお、協議にあたっては、次の事項を明示するものとする。ア 一斉に与えない職員の範囲イ 一斉に与えない理由ウ 当該職員に対する休憩の与え方

資料4

一斉休憩除外基準について(案)

 「学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」第7条第3項に規定する一斉休憩除外の基準を次のように定める。
一斉休憩除外基準
 学校において勤務の特殊性又は当該学校の特殊の必要から職員を交替によって休息させる場合は、下記に該当しかつ休憩の自由利用が妨げられることなくまた労働強化にわたらない場合に限るものとする。

1 業務の性質上同一の拘束時間内で交替を必要とする場合
2 同一学校内において勤務場所が異なり、業務の運営上交替を必要とする場合
3 時差または交替制で勤務させることを必要とする場合
4 ボイラ、アセチレン溶接装置、揚重機の取り扱い、その他危険な業務に従事する職員で危険防止上交替を必要とする場合
5 職員が著しく少ないときまたは当該学校の特殊性から上記の基準によることが著しく困難なときまたは適当でない場合においても休憩の自由利用及び業務量の公平負担からみて支障がないと認められるときは、上記の基準にかかわらず休憩時間を一斉に与えないことができるものとする。
以上

資料5

(2000年7月4日)

3. 育児時間及び妊婦通勤時間についての学校職員の勤務時間条例施行規則の改正
  @ 育児時間について
     生後1年以上1年3月未満の生児を育てる職員が利用する場合に、15分の取得がで
    きるよう、規則を改正する。
  A 妊婦通勤時間について
     15分の取得ができるよう、規則を改正する。
※ 学校に所属する、学校職員の勤務時間条例適用外の職員についても、上記と同様の扱いとする。
※ 施行時期については別途提案する。


2000.12.20速報版

都教委、交渉打ち切り強行
「休憩時間は一斉付与が原則。都教委の姿勢は変わっていない」
「休息時間は制度、制度である以上当然とれるようにすべき」 都教委の見解

 十二月二十日、勤務時間に関する第五回目の都教委交渉が行われました。冒頭、東京教組別所委員長が東京教組として改めて白紙撤回を要求しました。これまでの論点を確認した後、都教委は、休憩時間に関する条例案(資料1)と「解釈及び運用について」の改定案(資料2)を提示しました。その後、都教委は「論議は尽くした、三項目の提案に対し、東京教組の態度を、一月五日までに求める」として、交渉の打ち切りを宣言し、二〇〇一年四月から実施することを明らかにしました。
 今後、交渉の場が区教委、分会へと移ります。「勤務条例」、「同解釈及び運用」の制約を受けますが、私たちは、あくまでも労働条件の改悪を許さない立場で闘いを継続していきます。

休憩時間の一斉付与を守ろう
 都教委は、これまでの論議を受けて、当初の提案を一部手直しして、休憩時間に関する条例案を提示しました。「一斉休憩除外基準」(資料3)を教育委員会が定めることとしたことが当初提案からの変更点です。労基法が改悪され、「条例で定めれば、一斉に付与しなくてもよい」となったことから条例改正するとともに、一斉付与除外「基準」をつくる趣旨を条例にもりこんだものです。この「基準」の内容は、従来都人事委員会が定めていたものですが、あくまでも、一斉付与の原則に立って作成された「基準」です。
 「学校現場は、共同・共働作業によって進行している。休憩時間が一斉に付与されなければ、学校運営は混乱に陥る」との組合主張を受け、「休憩時間の一斉付与が原則であること」を都教委が明らかにしたのです。今後、各地教委は都教委の指示を受け、一斉付与が原則であることを踏まえつつ、「一斉休憩除外基準」をつくることになります。

一時間十五分勤務時間延長を許さないとりくみ
 今回の勤務時間の改悪の核心は、休息時間の扱いにあります。この問題は、「条例及び施行規則の解釈及び運用」という扱いであり、都教委が一方的に改悪することができる性格のものです。四月から強行実施されることが必至です。実施されると拘束時間が三十分増えることになるだけではなく、休息時間が退勤時間に連続できなくなることから、休憩時間がとりにくくなり、勤務時間が実質一時間十五分増えることになる恐れが強くあります。都教委は必ず実質的にそうなることを読み込んだ上で、この改悪案を出していると思われます。その思惑通りにはさせないとりくみを一月以降、進めていくことになります。

資料1

学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例(案)
(休憩時間)
第七条 【1.2 略 つぎの3を新たに起項 傍線引用者】
3 前二項の休憩時間は、職務の特殊性又は当該学校の特殊の必要がある場合において、教育委員会の定めるところにより、一斉に与えないことができる。

資料2

「学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例
及び同条例施行規則の解釈及び運用について」改正案
現行 改正案
第5 休憩時間(条例第7条関係) 【1から5、8から10 略】7 休憩時間は、児童生徒の昼休み時間に一斉に与え、若しくは個人ごとに割り振り(公立学校の場合は、人事委員会の許可を受けて、交代制で休憩させる。)又は勤務時間の終わりの方に置くことができる。 第5 休憩時間(条例第7条関係) 【1から5、8から10 略 下線部分を追加】7 休憩時間は、児童生徒の昼休み時間に一斉に与え、若しくは個人ごとに割り振り又は勤務時間の終わりの方に置くことができる。個人ごとに割り振る場合には、都立学校においては人事部勤労課長、区市町村立学校においては区市町村教育委員会人事担当課長に協議するものとする。なお、協議にあたっては、次の事項を明示するものとする。ア 一斉に与えない職員の範囲イ 一斉に与えない理由ウ 当該職員に対する休憩の与え方

資料3

一斉休憩除外基準について(案)


「学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」第7条第3項に規定する一斉休憩除外の基準を次のように定める。
一斉休憩除外基準
 学校において勤務の特殊性又は当該学校の特殊の必要から職員を交替によって休息させる場合は、下記に該当しかつ休憩の自由利用が妨げられることなくまた労働強化にわたらない場合に限るものとする。

1 業務の性質上同一の拘束時間内で交替を必要とする場合
2 同一学校内において勤務場所が異なり、業務の運営上交替を必要とする場合
3 時差または交替制で勤務させることを必要とする場合
4 ボイラ、アセチレン溶接装置、揚重機の取り扱い、その他危険な業務に従事する職員で危険防止上交替を必要とする場合
5 職員が著しく少ないときまたは当該学校の特殊性から上記の基準によることが著しく困難なときまたは適当でない場合においても休憩の自由利用及び業務量の公平負担からみて支障がないと認められるときは、上記の基準にかかわらず休憩時間を一斉に与えないことができるものとする。
以上


週刊墨教組 No.1298  2000.11.2

長時間連続労働の強制を許すな
休息・休憩の権利剥奪を許すな
   都教委、日程を区切っての交渉を提案

 七月四日、都教委は東京教組・都教組・都高教等関係組合に対し、「休息・休憩時間等についての条例、規則等の改正について」の案を提示しました。
 この都提案は、「八時間四五分以上の長時間連続労働を強制するもの」であり、また「休息・休憩の権利を剥奪するもの」です。
 私たちは、これに強く反発、提案の白紙撤回を求め続けてきました。
 この問題についての三回目となる交渉が十月二六日に行われました。
 この交渉の中で、都教委は依然として強行姿勢を続け、次の日程を提案しました。
「都教委七月四日提案の
 『第一項休息時間を出勤時刻、退勤時刻と連続させることはできない』 と『第三項「育児時間・妊婦通勤時間について、十五分の取得ができるよう規則改正』については、来年四月実施
 『第二項休憩時間ー一斉に与えないことができると条例改正』については、条件が整い次第、条例改正を行う」
 交渉は、まだ始まったばかりです。にもかかわらず、いきなり日程の提案をしてくる強引さ、強硬姿勢。許せません。
 組合は、この提案についても撤回を要求しました。

教育・安全両面から定着した現行運用
 現在、私たちの勤務時間は、休息時間(午前午後それぞれ十五分ずつ)と休憩時間(四十五分)を、勤務時間の始めと終わりにおいて、実勤務時間七時間三十分(月〜金、土曜日は三時間四十五分)となっています。
 七時間半にわたる連続労働という重大な問題点があるものの、こうした運用は、児童生徒の教育効果面、安全管理面から考えると止むを得ないものとして定着してきました。
 また、この運用は、休息・休憩時間は私たちの権利ですから、それを実質的に確保するためのものでもありました。つまり、休憩時間は、いわゆる「昼食休憩」です。その時間、私たちは給食指導・清掃指導・昼休み指導にあたっているではありませんか。その時間帯に休憩時間をとることは「絵に描いた餅」、つまり実質的に確保できません。そこでこうした運用で確保しようとしたものでもありました。

八時間四五分以上の長時間連続労働
 都教委提案は、休息時間について、勤務時間の初めと終わりにおくことを許さず、勤務時間の中に含めるとしています。
 また、休憩時間については、「一斉に与えないことができる」という形のものとし、例えば交代制でとらせるようにするというものです。
 ところで、教育現場は共同・共働作業によって進行しています。交代制などをとることは、それを不可能とします。また、それを可能とするために休息・休憩時間をとらずに済ませてしまうでしょう。都教委は、それをねらっているのです。
絶対に許してはならない都教委提案
 都教委の思惑どおりの進行を許すならば、私たちは、八時間四十五分以上もの長時間連続労働を強制されるのと同じことになります。また「休息・休憩時間の権利」を実質的に奪われることになります。
 私たちは、都教委提案に断固反対し、その撤回を求めて闘い続けます。


週刊墨教組 No.1288  2000.7.13

休息・休憩権は人たるに値する生活を保障する権利
 都教委は、休息・休憩時間剥奪提案を撤回せよ!

 都教委は、私たちから休息・休憩時間を奪う提案を七月四日に行いました。学校は、基本的に子どもたちの指導、安全管理が優先されるところです。そうした中で、この提案通りにことが進むならば、私たちの勤務時間が実質一時間十五分ふえることになる恐れが強くあります。八時間四十五分もの長時間連続労働を強制されると同じことになります。
 都教委は、この提案を基礎に交渉することを求めていますが、こんな提案を認めることは、断じてできません。
 提案自体の白紙撤回を強く求めます

休息・休憩時間は休息権の重大要素
 「働く者の生活と健康にとって、休息権の確立は人間たるにふさわしい最小限度の権利」といわれます。この休息権は、労働者の長年にわたる闘いの歴史の中で確認され、また不断の努力によって確立・確保されされるべきものとしてあります。
 この休息権は、三つの権利、すなわち「年休権、休日権、休憩・休息時間」から成り立っています。年休権は労働から完全に解放され、人間としての自分を取り戻す権利であり、休日は労働から定期的に解放される権利であり、いずれも職場から離れて、人間としての解放をかちとる休息権です。
 しかし、それだけでは十分でない。一労働日の間にも労働を中断して休息することが、労働者の肉体的、精神的休養、疲労の回復に不可欠であるということから、休憩・休息の権利が発生しました。それは、労働の遂行にとって、不可欠であるという認識と体験から出発していました。だから、休憩・休息時間の保障のない労働は、「人たるにふさわしい」ものとはいえないし、また健康を保障するものでもありません。また、この休息権は労働効率という点からみても、労働者にとって重要な権利であるとともに、使用者にとってはそれを十全に保障すべき義務であると認識されています。

使用者たる都教委の重大な義務違反
 教職員が人たるにふさわしく扱われ、また充実した力を教育に打ち込む条件を保障する、職場の中の休息権ー休憩・休息時間の確保は、教職員労働者にとってはきわめて重要な権利であり、また使用者(都教委)にとっては重要な義務であるものにほかなりません。
 今回の都教委提案は、私たちの権利侵害であるとともに、使用者としての義務違反の提案でもあります。

休息時間を勤務時間の中でとれるか
 こうした労働者が獲得してきた具体的権利内容およびその精神の観点から、今回の都教委提案を検討しなければなりません。
 ひとつは、休息時間を実勤務時間の中に入れるということです。
 休息権の立場からみれば、本来的にはその通りです。休息時間は、一定の労働時間を続けた場合の疲労を回復し、職務能率の向上を図ることを目的とし正規の勤務時間中にとることができるいわば「手休め時間」です。だから、勤務時間の途中に入れることが原則です。
 問題は、そうした時、それが保障されるか、確実にとれるかということです。学校関係者は誰でも知っています。休息時間を勤務時間の中に入れた時、その休息時間を絶対にとれないことを。児童・生徒が在校し、さまざまな活動が行われているその時間帯に、学校教職員は休息をとれないことを。とろうとしないだろうことを。

休息時間を事実上剥奪の提案
 しかし、労働者の休息権である「休息時間」がなくて良いということにはなりません。だからこそ、勤務時間の始めそして終わりにおいてその権利を確保するということを、労使双方が確認し、そう運用してきました。また、社会的な理解も得てきていました。
 それなのに、なぜ今、勤務時間の途中に入れるというのか。 
 勤務時間の途中に入れて、実際には休息できない私たちの休息時間を奪うためです。それ以外にはありません。
 
休憩時間の四原則
 二つ目は、休憩時間です。休憩時間は、労働基準法に定められています。労働基準法には、休憩時間について四つの原則が規定されています。
@時間ー労働時間が六時間を越える場合には少なくとも四十五分、八時 間を越える場合には、少なくとも一時間
Aいつー勤務時間の途中に
B誰に、どのようにー同一事業所(職場)の労働者に対して一斉に
Cどのようなものとしてー「自由利用」を保障するものとして(休憩時間をどのように使うかは労働者の自由。休憩の自由利用は休憩時間の本質的内容)
 この四原則を持つものとして休憩時間は明確に労働者の権利として確立しているわけです。
 労働基準法がこの四原則を掲げて規定しているのは、労働者が人たるにふさわしく扱われ、また充実した力を労働に打ち込む条件を保障する休息権のひとつである休憩時間を保障するためです。

休憩時間を後ろにおく運用の意味
 さて、この原則を私たちに当てはめてみましょう。ABCは、学校現場で可能でしょうか。絶対に不可能です。この通りにたてまえ的に時間設定することはできるでしょう。しかし、事実として、実態としてとれるでしょうか。これまた、学校関係者は誰でも知っています。絶対にとれないと。
 とれない理由ははっきりしています。児童生徒の教育効果面、安全管理面から、児童生徒の在校時間中(それは同時に学校教職員の勤務時間途中でもある)に、全職員一斉に、「自由利用」を本質とする休憩時間をとることはできません。そこで、やむを得ず、教職員労働者の休息権たる休憩時間を勤務時間の終わりの方において、その権利を保障する運用を生み出したのでした。しかし、これには、重大な問題点があることも事実です。七時間三十分もの長時間連続労働になるということです。しかし、私たち教職員は、児童生徒の教育指導面、安全管理面からそれに耐えてきました。その上、事実上の超過勤務にも。

休憩時間を事実上とらせない提案
 都教委の今回の提案は、休憩時間四原則の内、「一斉に」という部分を外すとなっています。それは、職務(専科、担任、副担任)や職種(事務・栄養士・教員)の違いで差別する勤務時間をつくったり、休憩時間を交替制とすることを可能としようとするものです。労働基準法・地方公務員法の改悪によって、条例で定めれば「一斉に」でなくとも良いとされたことに目をつけての攻撃です。
 さて、学校現場において、職種・職務別に、あるいは交替制で休憩時間をとることは可能でしょうか。教育現場は、共同・共働作業によって進行しています。そうした中で、しかも、現実に児童生徒が在校し、さまざまな活動を生き生き展開している時間帯の中で職種・職務別あるいは交替制で休憩時間をとるとしたとしても、実際にはとれないことはあまりにもはっきりしています。
 都教委は、そうしたことを読み込んだ上で、この提案をしているとしか考えられません。つまり、八時間三十分にわたる長時間連続労働の強制です。

 私たちは、こうした都教委提案を絶対に認めません。交渉以前の問題として、提案自体の白紙撤回を強く要求します。

具体的割り振りを校長に押し付け
 ところで都教委は、この提案によって「大枠」を決め、その大枠に基づく「具体的な勤務時間の割り振り権限は、校長にある」として、その実際的運用を校長に責任を負わせるつもりです。
 このような「大枠」で、児童生徒の教育指導、安全管理の確保と教職員の休息・休憩の権利を同意時に確保するような割り振りは絶対に不可能です。当面、校長にそうした問題点を指摘し、校長サイドからも声を挙げさせていくとりくみも重要です。


週刊墨教組 No.1287  2000.7.4

次々とよくもまあ!
今度は勤務時間に手をつける都教委

休息・休憩時間についての条例・規則改正案を提示

 都教委は、七月四日午後五時、東京教組・都教組・都高教等関係組合に対して一斉に左記の「休息・休憩時間等についての条例、規則等の改正について」の案を提示しました。
 これは、「今度は、学校職員の勤務時間に手をつける」との都教委の宣言です。
 次々とよくもまあ、管理強化のための施策を出してくるものです。
 しかし、いくら都教委がさまざまな攻撃を、これでもか、これでもかとかけてこようと、私たちは、倦まずたゆまず闘い続けてきました。
 この提案も絶対に許せません。その撤回を求めて断固闘います。

教育・安全両面から定着した現行運用
 ご承知のように、私たちの勤務時間は、休息時間(午前午後それぞれ十五分ずつ)と休憩時間(四十五分)を、勤務時間の始めと終わりにおいて、実勤務時間七時間三十分(月〜金、土曜日は三時間四十五分)となっています。
 七時間半にわたる連続労働という重大な問題点があるものの、こうした運用は、児童生徒の教育効果面、安全管理面から考えると止むを得ないものとして定着してきました。
 また、この運用は、休息・休憩時間は私たちの権利ですから、それを実質的に確保するためのものでもありました。つまり、休憩時間は、いわゆる「昼食休憩」です。その時間、私たちは給食指導・清掃指導・昼休み指導にあたっているではありませんか。その時間帯に休憩時間をとることは「絵に描いた餅」、つまり実質的に確保できません。そこでこうした運用で確保しようとしたものでもありました。

八時間四五分もの長時間連続労働ねらう
 今回提示された都教委案は、休息時間について、勤務時間の初めと終わりにおくことを許さず、勤務時間の中に含めるというものです。
 また、休憩時間については、「一斉に与えないことができる」という形のものとし、例えば交代制でとらせるようにするというものです(休憩時間は、労働基準法で一斉に与えることが原則とされてきました。しかし、労基法の改悪により、「条例に特別の定め」がある場合には「一斉に付与しないことができる」とされ、今回提案はそのための条例改悪を行おうとするものです)。ところで、教育現場は共同・共働作業によって進行しています。交代制などをとることは、それを不可能とします。また、それを可能とするために休息・休憩時間を取らずに長時間労働をしてしまうことになりかねません。都教委は、それをねらっているといっても過言ではありません。
 かくして、都教委の思惑どおりの進行を許すならば、私たちは、八時間四十五分もの長時間連続労働を強制されると同じことになります。また「休息・休憩時間という権利」を実質的に奪われることになります。
 こうしたことを許すことはできません。
 私たちは、都教委提案に断固として反対し、その撤回を求めて闘います。