管理規則改悪は許さない!

区教委、改定「管理規則」の解釈・運用についての見解を表明
  改悪による害毒を抑える歯止めとして活用しよう

 墨田区教育委員会は、十三日の校長会で、改悪された「管理規則」を校長に通知・説明しました。
 改悪「管理規則」は決して容認できるものではありません。これまでの闘いの中で、私たちは後掲のような区教委の見解を組合に表明させ、また、校長に(運用上の)「留意事項」として出させます。これをテコに現場段階で改悪「管理規則」の害悪を抑える闘いを力強く組んでいきましょう。

 墨田区教育委員会は、十月八日午前十時半から開催した臨時教育委員会で「墨田区立学校管理運営規則」の改悪を強行しました。
 私たちはこれに強く抗議するとともに、直ちに改悪管理規則の解釈・運用についての話し合いを墨田教組、都教組墨田支部の二組合共同で区教委と行いました。これは、数回にわたる話し合いの中で、区教委が組合に見解表明した内容を、規則条文の解釈や運用として確認しようというものでした。また、臨時教育委員会において教育委員さんたちから出された疑念や不安に対し、区教委事務局が示した見解を、条文の解釈・運用として確認しようというものでもありました。
 これらにおいて区教委が表明した見解は文書でまとめられました。下記の文書がそれです。この内容は、各校校長には管理規則運用上の「留意事項」として区教委学校教育部長名で出されます。
 区教委の見解表明のポイントは次の諸点です。

@規則改正は、職員会議・主任制・教頭の職務などの位置づけ、性格・役割を文書上明確にしたものであり、今までの学校の在り方を変えるものではない。
A円滑な学校運営を進めていく上で合意形成は重要。
B校長の独断専行・権限の振り回しは許されない。
C合意形成をつくる場として職員会議はあり、運営上重要な機能・役割をもっている。
D主任の位置付けは従来と変わらない。区教委は校長の具申に基づき主任に命ずる形式的行為を行う。
E教頭の権限を拡大したものではない、教頭の職務・仕事は現状と変わらない。
F学校を運営していくためのさまざまな事案については、職員会議等で協議された上で、決定していくことが大切。

 これらの見解は、管理規則改悪強行という愚行と、それによって学校にもたらされるであろう害毒(民主的運営の否定、校長の独断専行等)に対する歯止めになるものと思われます。
 これをテコに、改悪「管理規則」の害毒を押さえていこうではありませんか。 

資料

 墨田区立学校の管理運営規則の改正について(墨田区教委見解)

1998.10.13


 今回の管理規則改正は、従来から今回改正した内容で実施されてきた職員会議、主任制、教頭の職務などの位置づけ、性格、役割を文書上明確にしたものであり、今までの在り方を変えるものではなく、新しく権限を付与するものではない。
 この改正に当たって新たな管理強化を意図したものでもない。
  
 学校におけるさまざまな課題に対応していくためには、校長のリーダーシップを中心として一致協力して事に当たることが必要である。
 学校運営をして行く上で、全く職員の意見を聞かず、合意も得られないでやるのでは、うまくいかない。円滑な学校運営を進めていく上で、合意形成は重要である。
 権限行使、一方的指示命令が、すなわちリーダーシップではない。合意をつくる上でのリーダーシップが重要である。独断専行・権限の振り回しは、教育の場として望ましくない。これらをリーダーシップと勘違いする校長がいれば、十分指導していく。
 
職員会議 
・合意形成をつくる場として職員会議はあり、学校運営上、重要な役割・機能を持っている。
・職員会議は、学校運営の責任者としての校長がその職務を全うするための機能も持っている。したがって、校長の専横によってないがしろにされることがないよう指導していく。
・職員会議は基本的に所属職員で構成されるものである。例えば当該校に配属されているスクールカウンセラーの意見を聞く必要があると思われる場合、それを可能とするために規則上は「所属職員等」としたものである。 
「主任」制 
 ・主任は校務分掌の一環であるという考え方は従来通りであり、教育委員会が主任を命じるといっても、身分上の任命行為を行って中間管理職としての位置づけをするものではない。
 ・「校長の具申により区教委が命ずる」とは、校長の具申に基づき、区教委が主任に命ずる形式的行為を行うものである。
主任の選出については校長に権限がある。 
教頭の職務権限 
 ・校長のラインとしての位置づけ、職務を明確にするだけで、ラインとしての業務は解釈上今までもやってきたことである。その意味で、実態的な職務、仕事は現状と変わらない。今回の規則改正により、新しく権限を拡大したものではない。
・また、教頭の所属職員への監督はあくまでも「校長の命を受けて」行われるものであり、教頭が一方的に校長と別の対応をすることはあり得ない。
事案決定規程 
・規則改正(第12条の2)に伴い、定めることになる「事案決定規程」は、事案の決定手続き、決定にいたる流れを規定するものである。つまり、事案決定の責任者を明確にしたものである。事案決定者が決定するに当たっては、職員会議等の協議を経ることが大切である。

1998.10.13

週刊墨教組1251号 1999.9.13

区教委、「事案決定規程」

    「文書管理規程」を決定

  問題点を把握し、

   必要なチェック、議論、抵抗を!

 墨田区教委は、九月九日の教育委員会で、「墨田区立学校事案決定規程」(以下「事案決定規程」)と「墨田区立学校文書管理に関する規程」(以下「文書管理規程」)を決定しました。
 この二つの規程は基本的に、学校に、上命下服体制、合議ではなく上位者に決定を仰ぐ稟議(りんぎ)制、文書主義を中心とする行政システムを導入するものです。そうしたシステムの導入は、必然的に校長権限を拡大し、学校管理体制を強化することにつながります。また、そこにこそ「規程」整備の真の目的があると言えます。
 したがって、私たちはこの「二規程」制定に基本的に反対してきました。しかし、区教委は強行しました。
 この「二規程」は十月一日から施行されます。それ以後、具体的運用段階に入るわけです。その段階及びその前の段階で、各学校現場において必要な論議を行い、チェックし、抵抗し、また、それらを継続していかなければなりません。

T 事案決定規程


都教委が制定を強要

 「事案決定規程」は、昨年十月八日、区教委が私たちの反対を押し切って改悪を強行した「墨田区立学校管理運営規則」の十一条の2の規定「校長の権限に属する事務及び補助執行する事務に係る事案の決定手続等については、教育委員会が別に定める」に基づき、定められたものです。
 そもそも、「事案決定規程」問題は、都教委が「学校管理運営規則」改悪を区教委に強要し、その改悪内容として、職員会議の補助機関化・教頭の権限強化・主任の区教委命免等と並べて「事案決定規程」を挙げたことから出発しています。それを受けて「管理規則」改悪を行った区教委は、その十一条の2に「事案決定規程」をつくることを盛り込みました。
 さらに、都教委は昨年十一月、「事案決定規程」モデル案を作成し、それに基づき各区教委が規程を作るよう強要しました。今回決定された「墨田区立学校事案決定規程」も、都教委のモデル案とほぼ同じ内容になっています。
 なお、この「二規程」は、「事案」の方が「墨田区教委訓令第一号」、「文書」の方が「訓令第二号」となっています。「訓令」とは、条例・規則の規定に基づく「命令」という意味です。「二規程」は、「管理運営規則」の規定に基づく、校長に対する「命令」ということになります。

「事案決定規程」とは
 「事案決定規程」とは、学校におけるさまざまな事案(決定すべき案件やその事務、処理すべき事務)について、その決定権限を有し、その決定に責任を持つ者は誰か(それを「決定権者」という)、その決定手続きはどのように行うかを定めたものです。 
 
「事案決定規程」の性格・本質
 今回決定された「事案決定規程」はその第一条で「規程」決定の「目的」について次のように規定しています。
 「校長の権限に属する事務に係る権限の合理的配分と決定手続き」と「校長が補助執行する事務(本来は都区教委が権限を有する事務の中で、校長に権限委任されている事務)に係る決定手続き」を定めることにより、「事務執行における権限と責任の所在を明確にし、事案の決定の適正化に資する」(第一条)。
 この部分に「事案決定規程」の性格・本質がはっきりと示されていますので、以下、その意味するところを分析しながら、問題点を明確にしておきます。

校長の権限に属する事務とは
 まず問題になるのは、「校長の権限に属する事務」のなかみです。この問題は、学校教育法二八条3「校長は校務をつかさど(掌)り、所属職員を監督する」と関連してきます。校長がつかさどる「校務」の範囲について、文部省は「@学校教育の内容に関する事務A教職員の人事管理に関する事務B児童・生徒の管理に関する事務C学校の施設・設備の保全管理に関する事務Dその他、学校の運営に関する事務」と五点を挙げ、それらに係る事務について校長に決定権限があるとしています。「事案決定規程」における「事案」との用語は、文部省の言うところのこれらの「校務に属する事務」を指していると思われます。

教師の教育権と矛盾
 ところで、これらの「校務に属する事務」の内、@の「学校教育の内容に関する事務」およびそれにかかわる権限は、教師の教育権を規定している学校教育法二八条6「教諭は児童の教育をつかさどる」から見て、法的にも、その規定がおかれた教育条理の点からも問題があります。
 私たちは、個々の教師や教師集団の教育活動には、校長の「監督権、指揮命令権」は及ばないとの立場をとってきました。このことは、学校教育法の立法趣旨、そのよって立つ教育条理から考えて全く正当なことです。

校長単独では決定できない
 百歩譲って、校長にも教育内容、教育活動に関連しての権限があるとしても、それは校長単独では行えません。教育内容・活動に関し、校長ができることは二つです。一つ目は学校の教師集団の一員として教育課程編成とその具体化等の教育内容・教育活動の大枠についての討議決定に参与すること。二つ目は先輩教師として指導・助言すること。この二つに限定されているとするのが、学校教育法二十八条6の条文及びその教育条理と矛盾せずに解釈できることです。事実、いくつかの判例や教育学者の多く(文部省寄りの学者を含めて)は、この立場に立っています。
 また、@以外の「校務(事務)」も、程度の差こそあれ、何らかの形で教育活動に関連するものですから、「校長単独では行えない」と考えるのが自然、当然です。
 だからこそ、改悪された墨田区の「学校管理運営規則」でも職員会議を必ず置く(必置の)ものと規定しました。また、「管理規則」運用に当たっての留意事項として「事案決定者が決定するに当たっては、事案に応じて職員会議等の協議をへることが大切」と各校校長に通知したわけです。

教頭権限強化をねらう
 次に「事案決定規程」の「目的」の二点目、「校長権限の合理的配分」について見ておきます。この点は、改悪「管理運営規則」が目的とした「教頭の権限強化」と関連しています。 
 「合理的配分」とは、校長の権限の一部を限定して教頭に与えることを意味しています。そして、それにより「教頭は事案の決定権者」(第二条「事案の決定は校長または教頭が行う」、第五条「教頭は校長が不在の時、臨時代行者として事案を決定する」、第七条)となり、「権限と責任」をもつ存在になるというわけです。
 では、どんな事案を教頭が決定権限あるものにしたのか。それを示したものが「事案決定規程」別表(第三条関係)です。この表の内、校長に決定権限があるとした部分は、「例えばこんな事案があるよ」とする「例示列挙」です。教頭に決定権限があるとした部分は「この事案だけよ」という「制限列挙」になっています。つまり、すべての決定権限は校長にあることを前提とした上で、その一部、軽微な事案を教頭が決定できるものとして限定して与えるというわけです。

上命下服体制確立がねらい
 「目的」の三点目の問題点は、「事案の決定の適正化」ということです。ここで言う「適正化」とは、事実上、行政の事案決定システムの学校への導入ということです。
 行政の「事案決定システム」は、合議制ではなく稟議(りんぎ)制システムと徹底した文書主義で特徴づけられています。行政システムは、トップダウンシステムです。「上」の決定それに基づく命令は絶対であり、その命令に従い下位者は、具体化のための計画・企画案を立て(それを「起案」という)、これで事務・事業・そのための支出・人的配置や動きを進めてよいかと「起案書」で、「上」にお伺いを立て、決定権者の承認を得て初めて具体的な事務・事業を進めることができるシステムです。これを稟議制と言います。文字通り「上命下服体制」です。

合議制を否定ー職員会議の形骸化
 また、稟議制は合議を必要とせず、起案を命じられたものが、具体的計画を「起案文書」にまとめ、それを必要に応じて関係者に回して署名または押印を求め、最終的に決定権者が署名または押印して「決定」となるという徹底した文書主義をとっています。こうしたシステムを学校に導入することを「事案決定の適正化」と称しているわけです。
 「事案決定規程」は、第九条(事案の決定方式)、第十条(決定関与の方式)で、学校においても上記の行政システムで事案決定を行うことを規定しています。
 これは、学校における従来の事案決定方式を全面的に否定するものです。学校は、特に学校全体の教育内容・活動にかかわりがあることについて基本的に合議制で進められてきています。これは、先に触れた教師の教育権と、教育という営みの条理から考えて当然のことであり、上命下服の体制は学校にはなじみません。

文書事務の簡素化は容認
 また、徹底した文書主義は、即応しなければならないことが多い学校、子どもの教育にはなじみません。
 また、文書作成等に時間がとられることは、教育活動に向けられるべき時間を、文書事務にとられることを意味します。本末転倒と言うべきことになります。
 さすがの都・区教委も、こうした点を考慮せざるを得ず、「文書管理規程」の十一条5で、「起案用紙に代えて別の起案帳票(特例起案帳票)を用いて行うことができる」と規定しています。この部分は、文書事務の簡素化を図るために、「各学校で『起案書』ではなく『特例起案帳票』を活用してもよい、活用して簡素化を図れ」ということです。

問題点をチェックし、抵抗しよう
 これら三点の問題点の分析、批判から見える「事案決定規程」の性格・本質を考え、さらに学校・教育のありようを見据え、運用段階で必要なチェック、議論、抵抗をしていかなければなりません。
 それに資するため、墨田教組は都教組墨田支部と共同で、「二規程」の解釈・運用にかかわる問題について、区教委との話し合いを進めています。

U 文書管理規程


文書管理規程」とは
 「文書管理規程」は、学校に届いた文書を処理(受領・配布・具体的処理ー指示文書であればその具体化、調査であれば回答等ー・保管・保存)する流れ、「事案決定規程」に基づき決定された事案にかかわる文書を保管・保存する流れを規定したものです。


「文書取扱主任」を設置
 「文書管理規程」は、まず、これらの文書は、「正確、迅速、丁寧に取り扱い、事務が適正かつ能率的に行われるよう処理及び管理をしなければならない」(「文書管理規程」第三条)と規定しました。そして、そのために「学校に文書取扱主任を置く」(同第四条)としています。 「文書取扱主任」は、「校長が所属教職員の中から指定」(同第四条)し、次の職務を行うとなっています。


「文書取扱主任」の厖大な職務内容
 「文書取扱主任」の職務ー
「@文書の収受、配布および処理の促進
A文書の審査
B文書事務の指導及び改善
C文書の整理、保管、保存及び廃棄
Dその他文書事務に関し必要なこと」(同第五条)
 何と厖大な職務内容ではありませんか。
 そのことは、具体的な場面で考えて見ると、よりはっきりします。
・受領ー学校に届いた文書(交換便で送られてくる文書、郵送された文書、あるいは人の手により届けられた文書)、これらの文書はすべて「文書取扱主任が受領」(同第九条)します。
・仕訳ー受領したそれらの文書を仕訳(そのまま名あて人に渡すもの、収受印を押し「文書収受簿」に記載し担当者に渡すもの、確認印を押し担当者にわたすもの等に仕訳)します(同第九条)。
・配布ー文書を、仕訳にしたがってそれぞれの担当者に配布します。
・点検・督促ー配布後は、それが適正に処理されているかどうか把握し、「必要に応じて処理の促進を図らなければならない」(同第十八条)、つまり適切に処理されているかどうか点検し、督促します。
・収受簿、発議簿への記載ー「文書収受簿」に記載した文書について、処理が終了していることが確認できた文書については「文書収受簿」「文書発議簿」に必要事項を記載します(同二二条)。
・審査ー「事案決定規程」に基づき作成される「起案文書」について、
 「@常用漢字、現代かなづかい、送り仮名の付け方などにより平易簡明に書かれているかA発信者、あて先名は適当かB様式が合っているかC実体関係、処理の手続きは適当かD形式と内容が一致しているかE法令の適用に間違いはないかF公益に反していないかG処理が遅れてないかH必要事項に漏れはないか」などの「審査」を「文書取扱主任」が行い、修正・改案の必要がなければ確認印を文書に押します(同第十四条、十五条、十一条)。
・指導ー「修正・改案の必要があると認めたときは、文書を起案者に返し、その旨を指示し、検討させます(同十六条)。
・保管、保存ー文書を分類、整理し、必要なとき直ちに取り出せるよう保管、保存します(同二二条)
・製本、保管ー年度が終わったら、その年度の文書を保存期間及び類別に分類し、それ毎に編集製本し、保管します(同二三条、二四条)。
・廃棄ー保存期間を経過した文書を、毎年八月末日までに廃棄します(同二六条)。


文書取扱は教員の本務ではない
 これらがすべて「文書取扱主任」の職務です。授業その他毎日の教育活動に従事しながら教員がやれる仕事ではありません。しかも、これらの仕事は、教員の本務ではありません。
 では、「文書取扱主任」は、誰に指定するのが適当か。誰がやるのが適当か。答は自ずから明らかです。


「文書取扱主任」は複数でもよい
 なお、区教委としても、これらのことを考慮し、「文書取扱主任」は「複数とすることも良し」としています(同第四条ー人数限定をせず、教頭を含む所属教職員の中から指定としている)。
 各校においては、以上のことを踏まえ、今までの学校内における文書処理のありようを変えず、文書管理が円滑かつ適正に行われることを重視して、「文書取扱主任」を指定させるとりくみが必要です。

 なお、「文書管理規定」は、「起案文書」の書き方、取扱い等についても規定しています(同十一条〜二十条)。その問題点や具体的取扱い(簡素化)については、「事案決定規程」についての項であつかいました。それを参照してください。

 「文書管理規程」を見ても、さまざまな問題点があることがわかります。やはり、運用段階及びその前段階で、チェック、議論、抵抗が必要です。
 それに資するため、墨田教組は都教組墨田支部と共同で、「二規程」の解釈・運用にかかわる問題について、区教委との話し合いを進めています。