質問、意見等はこちらへどうぞ。[kyou4-a●ルナドットEメイルドットエヌイードットジェイピー(luna.email.ne.jp)](●を@に)天野 貴司
お待たせしました。1998年度ファルコン賞の発表です、と言いたいところですが残念ながら今年度も投票数の少ないため、「該当作品無し」となってしまいました。
投票の集計結果を以下に示します。
1位 「ドッグ・イート・ドッグ」 "Dog Eat Dog"
エドワード・バンカー ( Edward Bunker )
2位 「ザ・ポエット」 "The Poet"
マイクル・コナリー ( Michael Connelly )
2位 「静寂の叫び」 "A Maiden's Grave"
ジェフリー・ディヴァー ( Jeffery Deaver )
4位 「チャイナタウン」 "China Trade"
S・J・ローザン ( S.J. Rozan )
4位 「仏陀の鏡への道」 "The Trail to Buddha's Mirror"
ドン・ウィンズロウ ( Don Winslow )
6位 「闇をつかむ男」 "Evidence of Blood"
トマス・H・クック ( Thomas H. Cook )
6位 「遺言補足書」 "The Codicil"
トム・トポール ( Tom Topor )
6位 「炎の証言」 ""
シェリー・リーベン ( )
6位 「眠りなき狙撃者」 ""
ジャン=パトリック・マンシェット ( J. P. Manchette )
木村仁良氏から、ハメット賞のお便りが届きました。
October 2, 1998
FOR IMMEDIATE RELEASE
Contact: Mary A. Frisque
212/243-8966
WILLIAM DEVERELL NAMED WINNER OF NORTH AMERICAN HAMMETT PRIZE
The North American Branch of the International Association of Crime writers is delighted to announce that Trial of Passion by William Deverell (McClelland & Stewart) has been named the winner of the organization's annual HAMMETT PRIZE for a work of literary excellence in the field of crime writing.
The winning title was chosen by a group of three distinguished outside
judges: Margaret Cannon, Book Reviewer with the Toronto Globe and Mail; Mark Danner, New Yorker staff writer; and Victor Navasky, Publisher and Editorial Director of The Nation. The judges selected from among five finalists nominated from the hundreds of crime books published in 1997. These five were chosen by the organization's nomination committee headed by Peter Robinson.
Other books nominated for the HAMMETT PRIZE were Cimarron Rose by James LeeBurke (Hyperion); Trunk Music by Michael Connelly (Little, Brown); A Wasteland of Strangers by Bill Pronzini (Walker); and Acts of Murder by L.R. Wright (Doubleday Canada)
Deverell, who lives near Vancouver, British Columbia, will receive a bronzetrophy, designed by West Coast sculptor, Peter Boiger, whose falcon-headed thin man is designed to symbolize Dashiell Hammett's literary spirit. The award ceremony will take this evening in Philadelphia during the organization's international conference held in conjunction with Bouchercon29, the World Mystery Convention.
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木村仁良氏から、シェイマス賞のお便りが届きました。
Shamus Awards
These awards were given by the Private Eye Writers of America and were announced on Thursday, October 1st.
Best P.I. Novel
Winner: Come Back Dead by Terrance Faherty (Simon & Schuster)
Other Nominees:
Indigo Slam by Robert Crais (Hyperion)
Deception Pass by Earl Emerson (Ballantine)
Sacred by Dennis LeHane (Morrow)
Down For The Count by Maxine O'Callaghan (SMP)
No Colder Place by S.J. Rozan (SMP)
Best P.I. Paperback Original
Winner: Charm City by Laura Lippman (Avon)
Nominees:
Back Spin by Harlan Coben (Dell)
A Whisper Of Rage by Tim Hemlin (Ballantine)
Father Forgive Me by Randye Lordon (Avon)
Sunset And Santiago by Gloria White (Dell)
Best P.I. First Novel
Winner: Big Red Tequilla by Rick Riordan (Bantam)
Nominees:
Baltimore Blues by Laura Lippman (Avon)
Legwork by Katy Munger (Avon)
Best P.I. Short Story
Winner: "Love Me For My Yellow Hair Alone" by Carolyn Wheat (Marilyn: Shades Of Blonde - Forge)
Nominees:
"Copperhead Run" by Doug Allyn (Ellery Queen - June)
"Lord of Obstacles" by Greg Fallis (Alfred Hitchcock - January)
"A Front-Row Seat" by Jan Grape (Vengeance Is Hers - Signet)
"Nightcrawlers" by John Lutz (Ellery Queen - April)
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木村仁良氏から、マカヴィティ賞のお便りが届きました。
Macavity Award Nominees
Voted on by the members of Mystery Readers International, these awards will be announced on Friday, October 2nd.
Best Mystery Novel
Winner: Dreaming of the Bones by Deborah Crombie (Scribner)
Nominees:
Trunk Music by Michael Connelly (Little Brown)
The Ax by Donald Westlake ( Mysterious Press )
Hocus by Jan Burke (Simon & Schuster)
The Club Dumas by Arturo Perez-Reverte (Harcourt Brace)
Best First Mystery
Winner: Dead Body Language by Penny Warner (Bantam)
Nominees:
Killing Floor by Lee Child (Putnam)
Off the Face of the Earth by Aljean Harmetz (Scribner)
The Salaryman's Wife by Sujata Massey (Harper Paperback)
Best Non-Fiction
Winner: Deadly Women by Jan Grape, Dean James and Ellen Nehr (Carroll & Graf)
Nominees:
"G" is for Grafton by Natalie Kaufman and Carol Kay (Henry Holt)
Guilty Parties: A Mystery Lover's Companion by Ian Ousby (Thames & Hudson)
The Napoleon of Crime: The Life and Times of Adam Worth, Master Thief by Ben Macintyre (Farrar Straus Giroux)
Best Short Story
Winner: "Two Ladies of Rose Cottage" by Peter Robinson (Malice Domestic6/PocketBooks)
Nominees:
"The Corbett Correspondence" by Edward Marston & Peter Lovesey (Malice Domestic 6/Pocket Books)
"Find Miriam" by Stuart Kaminsky (New Mystery Magazine, Summer 1997)
"Etiquette Lesson" by Polly Whitney (Murderous Intent Magazine)
"Real Bullets This Time" by William Bankier (EQMM, July 1997)
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ひさびさ、というにはあまりにも間があきすぎのDKAシリーズ長編4作目。
ジョー・ゴアズといえば、どちらかというと硬派な主人公を据えてどっしりと描く物語が多いが、本DKAシリーズはそれらの作品とはうってかわってコミカルさが売り物のシリーズであろう。(別にダン・カーニーが硬派でないとは言わないが、、、)
コミカルさ、おそらくそれはDKAシリーズが探偵物と銘打っていても回収作業、とくに自動車の回収という通常の探偵物もしくはミステリーの中心となる殺人などなどの刑事事件とは異る物を、捜査対象にしているという点がその要因のひとつにあげられるに違いない。「債務を履行しなかったり、詐欺を働いたり、横領した人間たちを見つけ、彼らがくすねた財産を依頼人に返す」(解説より)という、いわば隙あらばお互いを出し抜こうとする相手と、事務所の探偵達のかけひきがそこに拍車をかけている。特に本作でのジプシー達とDKAのかけひき、それがとても面白おかしく描かれている。
そしてやはりぴかいちなのは、探偵事務所という複数の人物の行動から構成されていながら、場面展開の良さ、そしてその個性豊かな各人の配置が全体にバランスよくまとめあげられているあたりは流石というところか。
ハンフリー・ボガートとローレン・バコールの息子による私立探偵小説。
全体を通してのストーリーの運び方、そして主人公を中心とした登場人物達に関していえば、シンプルながらよく出来ているといえるだろう。ただ、ハリウッドの名優を両親に持つ主人公という設定が著者の生い立ちと切り離して考えられず、ちょっとあざとすぎないか? という題名と共に、どうしても色眼鏡を通して見ざるを得ない。
また、ミステリーとしての出来となるとやはりちょっと首を傾げてしまうところである。メインのミステリー性としてストーカー物を持ってきたのはどうも安易な設定にしか取れず、主人公(そしておそらくは著者自身)の母親に対する心のうち、味わってきたであろう内面の葛藤を私小説的に描いているだけに見えてしまうからである。自ら自身を主人公、または登場人物に投影してというのはよく聞く話しではあるが、本作の場合はただそれだけ、としか感じとれない。
久しぶりにどっしりと重量感のある物語を読んだ気がする。
強盗を生業とする主人公。冒頭はてっきりのこの主人公を強盗という犯罪者の観点でその生きざまを描くかと思いきや、読む側に肩透かしをくらわすように物語は別の方向へと展開していってしまう。
娘の死、そしてその犯人を追い詰めてゆく主人公の姿。おそらくこれが主人公が刑事といった設定であっても、なんら違和感も無く、充分にひとつの物語として描けるであろう気もするが、そこがミッチェル・スミスのミッチェル・スミスたる所以であろうか。骨太とでも言おうか、社会、自分といった物になにかこだわりを持って接している犯罪者を主人公とする事で、物語に独特の味を出させ、単なるシリアル・キラー(サイコパス?)物には終わらせていない。
最近とかく話題のジェイムズ・エルロイである。
さて本作だが、エルロイ作品としては何故か未訳で、今回やっと訳出されたわけだが、呼んでみてなんとなく未訳だった理由が判った気もする。
主人公と、もうひとりのシリアル・キラーの二人の物語が主人公の回想という形で描かれているが、ほとんどが新聞などの記事から構成されており、主人公自身の独白的な部分が逆に色あせて見えてしまっている。主人公の行動と共に新聞など、一般社会の反応を対比させながら展開させるという手法は、その行動の時間的流れを読む側に感じさせ、スピード感やサスペンス性を盛り上げるのに割と効果的であるケースが多いと思うが、本作では逆効果となってしまっている。残念である。
「不夜城」とは異る馳星周の暗黒小説の登場である。
暗黒の社会で生まれ、そこでしか生きざるを得なかった男の物語か、かつては普通の日の当たる世界で生きてきた男の堕ちてゆく物語かが「不夜城」との大きな違いであろう。
野球、それだけを心の糧にして生きてきた男、加倉。そこにしがみつくがゆえに結果的にそこからは遠ざかることに、そして泥沼へと堕ちてゆくさま。本来なら、この過程は読者に同情の念を抱かせて不思議はないくだりとなるのかもしれないが、そんな感情を感じるのをあざ笑うかのように人の心の暗黒さを描き出すあたりは著者の本骨頂というところか。
本作では裏社会だけを描くのではなく、一般の世界と裏社会両方、そしてそこにはさまれて苦しむ主人公という図式、これが今までとは違うパターンであるがより明暗の差という面を強く打ち出しているように思える。
「処刑前夜」、「神の名のもとに」に続く犯罪ライター、モリーシリーズ三作目。
最近のシリーズ物だと、シリーズの3から5作目あたりで過去への回帰とでもいうのか、自らの過去の出来事もしくは肉親、家族とのかかわりかたへの対峙というパターンが流行のような気もする。本作もいつものように事件を追いかけるだけでなく、当然事件と無関係ではないが、平行して父の死の真相というふたつのターゲットが物語の中心となっている。
しかし、いつもながらではあるが主人公にしても他の登場人物にしても読んでいて、常に地面の上をきちんと歩いて行動しているという印象を受ける。どんなに展開、描写がうまい作家でも(まあ、それはそれで良いのだが)、そう感じさせる作家にはなかなか巡り合えないもので、なかなか希有な作家である。次回作にも期待。
八月は、まあ夏休みなのか各社あまり食指が動く本を出版してくれなかったようで、フライヤーも夏休みとさせて頂きました。
しかし、年末のベスト選びに向けてか、九月後半からの各社の出版状況は嬉しい悲鳴をあげつつ、財布の減り具合が心配にもなる日々です。今年もあと三ヶ月、こちらもラストスパートで未読の山に向って来年への持ち越しを極力減らす努力をしないと。
では、また次号で。
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