質問、意見等はこちらへどうぞ。[kyou4-a●ルナドットEメイルドットエヌイードットジェイピー(luna.email.ne.jp)](●を@に)天野 貴司
いつものジョー・ゴアズを想定して読むと、ちょっと肩透かしを受けてしまうかもしれない。と、いってもいつものジョー・ゴアズって何だ? と聞かれても返答に困ってしまうのであるが、、、、、、、。
解説では「野獣の血」との重なりの要素が書かれていたが、私はどちらかというと「インター・フェース」との重なりの要素が大きいかな、と感じた。手元に本がないので、こちらの発表年がいつなのか不明であるが、割と古かった記憶がある。さまざまな作品を発表しつつも、ひとつのこだわったテーマというのを追い続けているのかもしれない。
犯人は誰? といった世界ではなく、何故? この先どういった展開にしていくの? という点で非常に興味深くページがめくれた一冊。
ベン・パーキンズシリーズも、もう六作目。
結構過去に引きずられることの多い主人公であるが、今回は自らのハイスクール時代に端を発した事件の調査である。読み進むうちに、自分のハイスクールいや、高校時代をつい振り返ってしまう。当時何を考え、日々何をしていたのだろうかとしみじみと考えてしまった。主人公自身が、そういった昔へと思いを馳せ、行動していくあたりの描きかたのうまさ、読者をも同じ思いにさせていくあたりがこの作家の魅力なのかもしれない。
解説通りに、確かに本作でひとつの節目なのかもしれない。次作以降で主人公がどう変わっていくかが、興味深いところ。
「レザボア・ドッグス」のミスター・ブルー!! 解説を読んでびっくりしてしまった。タランティーノ好きの私としては、帯に「タランティーノうんたらかんたら」と書いてあると、普段の禁をやぶって安直に本を買ってしまうのであるが、今回はそれが悪い結果ではなくて非常にうれしい。
で、本作であるが、なんというのだろう、ちょっと胸を軽くしめつけられながらページをめくっている感じで、作品を楽しみつつ、また切なさを感じながら読み終わったというところであろうか。一度前科がつくと、それが一生ついてまわる、そしてそれがためにさらに悪の世界へと追いつめていく。
10年程前にエミリオ・エステベス監督・主演、デミ・ムーア出演の、飲酒運転で前科者になり、社会からはじき出されてしまった若者の、破滅的な青春?を描いた映画(題名忘れている)があったが、ちょっとそれを彷彿させた作品。
あまりいつもこういうのを読みたくはないな、と思いつつ、出たら絶対読まずにはいられないという麻薬的な作品ですな。
アラスカの元捜査官ケイトシリーズの三作目。住み慣れた国立公園を離れての活躍であり、前作までのおなじみの脇役達は出てこないものの、シンプルなストーリーとテンポのよい展開で楽しませてくれる。前二作までで主人公ケイトとアラスカという土地の、読者への下ごしらえが終わったところで本作といったところであろうか。なかなか読む側のつぼをよく押さえている。
今後、どういった舞台を用意してくれるかが非常に楽しみである。しかし、読んでいてカニが非常に食べたくなってしまった、これはけっして私だけではないだろうな(苦笑)。
十年ほど前までは、短編集というのには手をあえて出して読もうとしていなかった。理由は簡単、味わえる時間があまりに短すぎるからである。けっして短編が面白くないというわけではなく、良質の作品ほど長く長く、味わっていたいという割と安直な発想だったりする。ただ、最近は知らない作家との出会いの場として、昔とは逆に短編集を読むのが楽しみだったりもする。
さて、今回の短編集二冊だが、目次を見ただけでもう顔馴染みの作家ばかりである。純粋なるオリジナル作品の他に、シリーズ物の主人公の短編などなど、とても盛り沢山。また、長編ではいいのに短編だとあまり面白くない作家などと、当然あたりはずれもあるのだろうが、作品とはまったく違うところで面白さを発見したり出来るのもひとつの面かしら。
でも、やはりひときわ光っているのは表題作にもなっている、ローレンス・ブロックとエド・マクベインの作品であろうか。特にエド・マクベインの作品など1954年作であるにも関らずまったく古さを感じさせないあたりは流石というところ。
月が変わっての、号になってしまいました。 量もちょっと少ないですね。最近あまり、ネットにアクセスしていないものでなかなか新しいねたが見付からないのが悩みの種、というかジレンマになっております。
さて、そろそろいろいろなところで今年のベストなどの特集が始まりつつある季節ですが、あと出版社各社の隠し玉がどのくらい残っているか? 不意打ちぐらいいくらでも受ける覚悟はあるので、どんどん面白い本を出して欲しいものです。
では、また次号で。
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