質問、意見等はこちらへどうぞ。[kyou4-a●ルナドットEメイルドットエヌイードットジェイピー(luna.email.ne.jp)](●を@に)天野 貴司
木村仁良氏から、アンソニー賞のお便りが届きました。
Anthony Awards List
Voted on by the attendees of Bouchercon, these awards was announced on Sunday, October 4th at the Anthony Awards Brunch
BEST NOVEL:
Winner: NO COLDER PLACE -- S. J. Rozan (St. Martin's Press)
Nominees:
DEVIL'S FOOD -- Anthony Bruno (Tor/Forge)
DECEPTION PASS -- Earl Emerson (Ballantine)
THE CLUB DUMAS -- Arturo Perez-Reverte (Harcourt Brace)
NO COLDER PLACE -- S. J. Rozan (St. Martin's Press)
EYE OF THE CRICKET -- James Sallis (Walker)
BEST FIRST NOVEL:
Winner: THE KILLING FLOOR -- Lee Child (Putnam)
Nominees:
THE KILLING FLOOR -- Lee Child (Putnam)
IF I SHOULD DIE -- Grace Edwards (Doubleday)
EXCEPT THE DYING -- Maureen Jennings (St. Martin's Press)
BIRD DOG -- Philip Reed (Pocket Books)
SKIN DEEP, BLOOD RED -- Robert Skinner (Kensington)
BEST PAPERBACK ORIGINAL:
Winner: BIG RED TEQUILA -- Rick Riordan (Bantam)
Nominees:
CHARM CITY -- Laura Lippman (Avon)
THE SALARYMAN'S WIFE -- Sujata Massey (Harper Collins)
BIG RED TEQUILA -- Rick Riordan (Bantam)
TIME RELEASE -- Martin J. Smith (Jove)
23 SHADES OF BLACK --K. J. A. Wishnia (The Imaginary Press)
BEST SHORT STORY: (tie)
Winner: FRONT ROW SEAT -- Jan Grape (Vengeance Is Hers / Signet) and ONE BAG OF COCONUTS -- Edward D. Hoch (EQMM / November '97)
Nominees:
WAYS TO KILL A CAT -- Simon Brett (Malice Domestic 6 / Pocket Books)
A FOG OF MANY COLORS -- James DeFilippi (New Mystery Magazine /Summer '97)
PAPERBOXING ART -- James Dorr (New Mystery Magazine / Summer '97)
FRONT ROW SEAT -- Jan Grape (Vengeance Is Hers / Signet)
ONE BAG OF COCONUTS -- Edward D. Hoch (EQMM / November '97)
BEST COVER ART:
Winner:Michael Kellner (NIGHT DOGS by Kent Anderson / Dennis McMillan)
Nominees:
Michael Kellner (NIGHT DOGS by Kent Anderson/ Dennis McMillan)
Doug Fraser (FAMILY VALUES by K. C. Constantine / Mysterious Press)
Krystyna Skalski (THE BUM'S RUSH by G. M. Ford / Walker)
Gail Cross (FRUITCAKE by Jane Rubino / Write Way Publishing)
Victor Weaver (VIRGIN HEAT by Laurence Shames / Hyperion)
Back To Top
一作目「硝煙に消える」、二作目「友と別れた冬」と続くシリーズ三作目。
シリーズ物ながら一作ごとに趣向をこらした物語設定で楽しませてくれる本シリーズだが、今回の作品にはもうやられた、の一言。今回は前作までの設定から時をさかのぼり、ニック・ステファノスと同名である祖父、そのニックの時代を舞台として物語が展開する。主人公はニックではなく、やはりギリシャ系移民であるピート・カラス、そしてその仲間たちが物語の中心に据えられており、第二次大戦をはさんでかれらの少年時代とその後の生きざまが鮮やかに、そして哀しく描かれている。
解説にも書かれていたが、本当に大化けしたなというのが素直な感想である。確かに今までの作品からすれば、近い将来そうなるだろうとは感じていたものの、こうも早い時期に本作のような作品に出会えるとは予想もつかず、そういう意味での外れならいくらでも、といったところか。
本作を起点に、現代にいたる登場人物たちの子供たちをメインにした作品を発表しているらしいので翻訳が非常に待ち遠しい。まあ、なにはともあれ今年のベスト1はこれに決まり。
ブロックの連作短編集。
奇妙な殺し屋を主人公にすえての本作であるが、ひとつひとつの短編がなかなか良い味を出している。
ブロックと言えば長篇、短編問わない稀有な作家の一人であるが、本作でもその持ち味は十分に発揮されている。もっとも今までの作品群からすると物足りなさを感じる向きもあるかと思われるが、それはあくまでもブロックという作家の中での比較になってしまうのではないかと。勿論良質の作品を提供してくれることに勝るものはないが、そうそうベストな作品ばかりを要求しては作者に対して酷というものではないだろうかと、ふと思ってしまう。
まあ、別にけなしているわけではなく、わりと淡白に描かれ、さらっとしているようでそうでもない辺りが、好みの仕上がり加減で久々のお気に入りの短編集となっている。
「密造人の娘」以降、どうも低調だった本シリーズだが、少し持ち直したかな? と。
今さらながらに思ったのだが、主人公のデボラが判事になったのが物語に面白みがなくなってしまった要因のひとつではないかと。当初、主人公デボラと彼女を取り巻く人々と土地の描き方に魅力を感じたのだが、デボラが判事となることでそういった要素が薄れてゆき、法の執行側とそれ以外という平凡な図式だけの物語になっていってしまった感が強い。
本作ではそういった点でデボラの家族、特に兄弟達と彼等の住む土地というミステリ的要素はともかくとしても、ひとつの物語として本来(?)の面白さが戻ってきているように思える。さて、次回作以降がどうなるかが次の興味どころであろうか。
毛色の変わった警察小説。
まあ、簡単にひとくちで警察小説と言ってもさまざまであろうし、本作品もあくまでも主人公が警官というだけで、その必然性があるのか否かは読者の手にゆだねられる部分であろうか。
さて内容であるが、前作「モータウン・ブルース」と同様作中には音楽があふれ、そのロックのビートと共に小気味良いリズムで物語は進んでいく。解説でも触れられているが、やはり警察小説というよりはクライム・ノヴェルといった印象が強く、主人公のおよそ警察官らしくない行動がそれをより一層強めている。また物語の中心となるバー、モータウン・アンダーグラウンドのマスターに依頼された仕事、そしてそれを時に頑固に突き進めてゆく姿は荒っぽさと同時にハードボイルドの心地よい味をかもしだしている。
アンソニー賞で「ベスト・カバー・アート」賞を授賞した本作。内容が賞を受けていないのが残念ではあるが。
犯罪のあふれる街で生きるひとりの警官。まるで一日一日を手探りしながら生きるかのようなその姿は、ヴェトナム帰還兵、それも特殊部隊出身という背景も手伝い、主人公の孤独感と共にその哀しさ、寂しさをたたえた後ろ姿が目に浮かぶようである。
ミステリとしては特におもだったテーマを打ち出しているわけではなく、まあそこがNV文庫として納められた要因であろうが、ひとりの男の生きるさまが非常に強いインパクトをもって描き出されている。ベスト1という感じではないが、ずっしりとくる読後感。
スポーツ・エージェントのボライターシリーズ三作目。
スポーツ・エージェントとしてメインとなるスポーツもアメリカン・フットボール、テニスに続き今回はバスケット・ボールである。主人公ボライターの軽口は相変わらずであるが、今回はその口も今までとはしばし勝手が違うといったところか。
元プロバスケット・ボール選手として脚光を浴びかけたものの公式試合に出ることなく、怪我で引退を余儀なくされた過去。そんな忘れたはずのバスケットへの思いが調査のためとはいえプロバスケットへ復帰する姿に無意識に現れているのか、いつもはストレートに意見を述べる周囲の友人たちさえもいつもとは異った態度で主人公をとまどわせている。まあ、これも主人公のひとつのステップアップとなるのかもしれない、次回作も期待。
前回からだいぶ間があいてしまいました。(また、ともいう、、、)
本は読めども、整理している時間がなかなかとれない今年の後半ですが、もう気がつけば師走。世の中ではすでに今年のベストが話題になっている時期となりました。あとわずかばかりの今年ですが、その辺りで読み落としがないかをチェックして年末に向って備えようかと思っております。
では、また次号で。
All contents Copyright: 1998 Takashi and Kyousuke Amano
and The Maltese Falcon Society in Japan
All Rights Reserved.