質問、意見等はこちらへどうぞ。[kyou4-a●ルナドットEメイルドットエヌイードットジェイピー(luna.email.ne.jp)](●を@に)天野 貴司
木村二郎氏から1998年エドガー賞の結果が届きました。
受賞の模様など詳しい内容はThe Gumshoe Siteにて。
1998 Edgar Allan Poe Award Winners
Grand Master Award:
Barbara Mertz (aka Elizabeth Peters and Barbara Michaels)
Best Novel
CIMARRON ROSE by James Lee Burke (Hyperion)
Best First Novel by an American Author
LOS ALAMOS by Joseph Kanon (Broadway Books)
Best Paperback Original
CHARM CITY by Laura Lippman (Avon)
Best Critical/Biographical
"G" IS FOR GRAFTON: THE WORLD OF KINSEY MILLHONE by Natalie Hevener Kaufman
and Carol McGinnis Kay (Henry Holt & Co.)
Best Fact Crime
THE DEATH OF INNOCENTS by Richard Firstman and Jamie Talan (Bantam)
Best Short Story
"KELLER ON THE SPOT" by Lawrence Block (Playboy Magazine/Nov.)
Best Young Adult
GHOST CANOE by Will Hobbs (Morrow Junior Books)
Best Juvenile
SPARROWS IN THE SCULLERY by Barbara Brooks Wallace (Atheneum)
Best Episode in a Television Series
"DOUBLE DOWN" story by Richard Sweren and Shimon Wincelberg, teleplay by EdZuckerman and Shimon Wincelberg (Law & Order/NBC)
Best Television Feature or Miniseries
BLOOD, SWEAT, AND TEARS by John Milne (SILENT WITNESS/A & E)
Best Motion Picture
L.A. CONFIDENTIAL screenplay by Curtis Hanson and Brian Helgeland (Warner Bros.)
Best Play
A RED DEATH, stage adaptation by David Barr
Ellery Queen Award (to honor writing teams and outstanding people in themystery-publishing industry)
Hiroshi Hayakawa, editor of Hayakawa's Mystery Magazine (the major Japanesemystery magazine)
Robert L Fish Award (for the best first short story by an American author)
"If Thine Eye Offend Thee" by Rosalind Roland, in Murder x 13 (Crown ValleyPress)
Raven (for outstanding achievement in the mystery field outside the realmof creative writing)
Sylvia Burack
木村二郎氏経由にて1997年アガサ賞の結果が届きました。
詳しい内容はThe Gumshoe Siteにて。
Malice Domestic announced the winners of the 1997 Agatha Awards given atthe banquet on Saturday, May 02.
Best Novel: THE DEVIL IN MUSIC, by Kate Ross (Viking)
Best First Novel: THE SALARYMAN'S WIFE, by Sujata Massey (Harper Paperbacks)
Best Non-Fiction: DETECTING MEN POCKET GUIDE, by Willetta Heising(PurpleMoon Press)
Best Short Story: "Tea for Two" by M. D. Lake (in FUNNY BONES; Signet)
木村二郎氏から1998年アンソニー賞ノミネート作が届きました。
1997年度MWA最優秀長編賞受賞作。 バウンティ・ハンターを主人公にした新しいシリーズの登場である。 1997年度シルヴァー・ダガー受賞作。 ジャンルがどうのこうのと言うわけではないのだが、本作はミステリーという意味合いが非常に薄い物語である。しかし、犯罪が有り、犯人がいて、謎があればいいという訳ではあるまい。そんな形だけのミステリーよりもはるかに心にしみる何かをこの作品は持っている。 クエンティン・タランティーノ映画化ということでも、話題になっている一作。 なかなか哀しい物語である。
やっと1998年の二号目の第九号です。
詳しい内容はThe Gumshoe Siteにて。
Bouchercon '98 has announced the 1998 Anthony Award Nominees:
Best Novel:
Devil's Food by Anthony Bruno (Tor/Forge)
Deception Pass by Earl Emerson (Ballantine)
The Club Dumas by Arturo Perez-Reverte (Harcourt Brace)
No Colder Place by S.J. Rozan (St. Martin's Press)
Eye of the Cricket by James Sallis (Walker)
Best First Novel:
The Killing Floor (sic) by Lee Child (Putnam)
If I Should Die by Grace Edwards (Doubleday)
Except the Dying by Maureen Jennings (St. Martin's Press)
Bird Dog by Philip Reed (Pocket Books)
Skin Deep, Blood Red by Robert Skinner (Kensington)
Best Paperback Orginal
Charm City by Laura Lippman (Avon)
The Salaryman's Wife by Sujata Massey (Harper Collins)
Big Red Tequila by Rick Riordan (Bantam)
Time Release by Martin J. Smith (Jove)
23 Shades of Black by K.j.a. Wishnia (The Imaginery Press)
Best Short Story:
Ways to Kill a Cat by Simon Brett (Malice Domestic 6/Pocket Books)
A Fog of Many Colors by James DeFilippi (New Mystery Magazine Summer '97)
Paperboxing Art by James Dorr (New Mystery Magazine Summer '97)
Front Row Seat by Jan Grape (Vengeance is Hers/Signet)
One Bag of Coconuts by Edward D. Hoch (Ellery Queen Mystery Magazine 11/97)
Best Cover Art:
Night Dogs by Kent Anderson; Artist: Michael Kellner (Dennis McMillan)
Family Values by K.C. Constantine; Artist: Doug Fraser (Mysterious Press)
The Bum's Rush by G.M. Ford; Artist: Krystyna Skalski (Walker)
Fruitcake by Jane Rubino; Artist: Gail Cross (Write Way Publishing)
Virgin Heat by Laurence Shames; Artist: Victor Weaver (Hyperion)
The winners will be announced at Bouchercon in Philadelphia on Sunday,
October 04.
今月の収穫 By 天野 香介
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トマス・H・クック ( Thomas H. Cook ) ( 鴻巣 友季子 訳 文春文庫 )
明かりの無い暗闇で、本来透明であるはずの水が、黒くそして時として闇を感じさせるように、この物語の行間からも暗闇で見る水のようにいわれようも無い闇を感じさせる何かがにじみ出てきている。
クックの描く作品は、今まで訳出された物を読むかぎり現在から未来へと続く時間軸ではなく、過去から今現在へといたる時間軸で物語が作られている。これはまだ来ぬ未来への何かを感じさせることもあるが、時として現在という時間、あるいは過去のある時間で全てが凍りついてしまう要素を含んでいるのではないだろうか。
訳者あとがきで、アメリカの書評家がしばしば用いる比喩として、「雪崩を精緻なスローモーションで表現するような」という表現が引用されているが、非常にクックの描く物語を的確に表現している気がする。私の勝手な解釈として言わせてもらえば、雪崩という物はそれが起きた時点で、すでにその先がみえているのではないだろうか? おそらく雪崩は全てを飲み込みながら先に進むであろう、そして自分もしくは誰かがその雪崩の進む先にいるのではないだろうか? その光景をスローモーションで正視しなければならないほど恐ろしいことはないような気がする。
マイクル・ストーン ( Michael Stone ) ( 三川 基好 訳 早川ミステリ文庫 )
最近では珍しい性格設定の主人公で目新しさは感じるものの、ちょっと軽すぎルかな?と。あと、自意識過剰ぎみなのがちょっと鼻についてしまうといったところか。
ストーリー自体はあまりぱっとしない本作だが、父親的存在のフランクや彼の住む教会「神の砦」などなど、主人公を取り巻く舞台設定は結構よく出来ているので、あとはこれに見合った物語が出来れば、と次回作以降に期待。
ジャネット・イヴァノヴィッチ ( Janet Evanovich ) ( 細美 遥子 訳 扶桑社文庫 )
前作「あたしにしかできない職業」の解説で、次回作は主人公であるステファニーが窮地におちいってしまうといった表現があり、シリーズ三作目で新たな展開をするのかと想像していたのだが、あっさりかわされたというのが正直な感想。まあ、窮地と言ってもやはりこんなものかと(苦笑)。
ステファニーはじめ、名脇役たちがいつもの持ち味で縦横無尽に物語の中を走り回っている本作。この持ち味をいかに持続させてシリーズが続いてくれるかが今後の興味かもしれない。
グレゴリー・マクドナルド ( Gregory Mcdonald ) ( 安藤 由紀子 訳 新潮文庫 )
極端な見方をすれば、主人公の身勝手な物語なのかもしれないが、自分よりも妻や子供という家族の為に取る「死」への行動。モーガンタウンという、現代社会から切り離された場所に生きる人々。そこに生まれ、そこで死んでゆく生活。現在の文化的生活というものが果して幸せなのかどうかという疑問はある。しかしそれはこちら側に住む人間の勝手な見方でしかないだろう。「ないものねだり」という、自分にない物を追い求めるという人間の性を思えば、自らを犠牲にしてでも家族に幸せになって欲しいと行動する主人公の純真な思いが、とても哀しく輝いて見える気がする。
エルモア・レナード ( Elmore Leonard ) ( 高見 浩 訳 角川文庫 )
レナードの描く悪党は、まあ確かに悪党には違いないのだろうが、どこか憎めないキャラクターが多いように思える。およそ緻密というか、用意周到という言葉など聞いたことがないような人物ばかり出てきているようなのは私に気のせいだろうか?
こう書くと登場人物たちが行き当たりばったりだけに聞こえるかもしれないが(まあ、一部そういう面もあるかもしれない)、悪党、警官などなどのそういったキャラクター物たちが妙で滑稽なかけひきをしながら物語の中を歩いていく。それが予想をさせない展開となり、読者を楽しませてくれる物語になっているのではないか。
キース・アブロウ ( Keith Ablow ) ( 矢島 京子 訳 二見文庫 )
麻薬中毒の精神科医という、一時期のネオ・ハードボイルドを思わせる主人公設定であるが、麻薬中毒というだけではなく主人公の過去から現在にいたるまでのさまざまなエピソード。これらがストーリー展開とうまく融合し、非常によい共和音を奏でている。
猟期的な殺人事件という最近ではありふれたテーマながら、物語がすすむにつれ単なるサイコ・ミステリーという枠を超えた作品に仕上がっており、帯の文句ではないが「心に突き刺さる、、」という表現がぴったりの一冊。
編集後記
また合併号になってしまいました。一年ほどの出張生活が終わり、やっとこれで通常の読書生活に戻れると思っていたのですが、なかなか元の生活パターンが取り戻せず、リハビリ状態となっております。
今月は、木村仁良氏からの提供でアメリカの賞関連の情報をたくさん頂きました。さて、これらの作品は早ければ年内にも訳出されるでしょうから、非常に楽しみであります。(出版社さんに期待)
では、また次号で。
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