質問、意見等はこちらへどうぞ。[kyou4-a●ルナドットEメイルドットエヌイードットジェイピー(luna.email.ne.jp)](●を@に)天野 貴司
恒例になってきました、関西支部でのベストの選出です。
1位 「私が愛したリボルバー」 "One for The Money" ジャネット・イヴァノヴィッチ ( Janet Evanovich )
2位 「ホワイト・ジャズ」 "White Jazz" ジェイムズ・エルロイ ( James Ellroy )
3位 「不夜城」 馳 星周 ( Hase Seisyu )
4位 「喪われた故郷」 "How Town" マイケル・ナーヴァ ( Michael Nava )
5位 「敵手」 "Come to Grief" ディック・フランシス ( Dick Francis )
5位 「奪取」 真保 裕一 ( Shinpo Yuichi )
5位 「バースへの帰還」 "The Summons" ピーター・ラヴゼイ ( Peter Lovesey )
8位 「偽りの契り」 "False Conception" スティーヴン・グリーンリーフ ( Stephen Greenleaf )
9位 「死の蔵書」 "Booked to Die" ジョン・ダニング ( John Dunning )
次点 「ラスト・コヨーテ」 "The Last Coyote" マイクル・コナリー ( Michael Connelly )
次点 「真実の行方」 "Primal Fear" ウィリアム・ディール ( William Diehl )
学生だった頃は歴史系の科目が非常に苦手であった。別段歴史というものに興味が無かったわけではないが、どうやら歴史の中身より、年代等をひたすら覚えなければならないという暗記中心の授業が嫌いだったようだ。日本史でさえろくに覚えられなかったのに、ましてや世界史などは言わずもがなである。それとカリキュラムの都合でか、近代史に関しては大概はしょられてしまうのがいつものパターンだった記憶がある。というのも(最近割と気になってはいたことではあるが)この本を読みおえてみて自分に、1900年代の中国に関する知識というのがほとんど無いのを今更のように実感してしまったからである。
まあ、そんなことはさておき、それほど長いわけではなかったが、非常に読みごたえがある作品であった。物語全体を通して何故か、いつも小雨が振っているような、決して不快ではない湿気ぽさ、しっとりとした印象が強い。こういう印象を受けたのは、ジェイムズ・リー・バーク以来のような気がする。物語自体も、結構理解しにくい中国という国に対し、主人公をアメリカ生まれの二世という設定で、中国人として、また西洋で育った人間として醒めた視点で描くことに成功しているのではないかと思う。もっとも、私はそういった違いが判るほど中国という国を知っているわけではないのだが。
ちらっと、見た限りだと、てっきり犬に執着する人間を描いているのかと思いきや、そこはハイスミス、あっさりとかわされてしまった。
しかし、奇妙な人間と言っても、ハイスミスの場合それほど異常な人間でなく、ごく普通の人の内面にひそむ部分を浮き立たせて描くあたりが逆に、読んでいて恐さを感じるところ。自分に関係の無い物語の中の出来事でなく、下手をすると自分にもあてはまってしまうような登場人物達。普段の生活で、いろいろと感じること、自分の中の偏執的な部分など、一歩間違えると作中の人間と同化してしまっているような錯覚さえ感じるあたり、気をつけなければ(何をだ)と思う今日この頃である。
うーーん。前作「崖の家」は、はっきり言って、なんでしょうね、これ、と、こういう作品が絶賛されているのか、と不思議に思ったものだが、今度の作品もまあ、前作ほどではないが、どうもあまりいただけない。
確かに、読みやすいことは読みやすいのだが、その場限りで読後に残るものがほとんど無い。逆にいえば、読ませるつぼはよく押さえているとは感じるが、どうもテクニックだけで中身が薄っぺらい印象を受ける。売れ筋なのかもしれませんがね、こういう作品。
帯や背表紙の謳い文句というのを、普段はほとんどあてにしないのだが、「アゴタ・クリストフも舌を巻いた、、、」と書かれては、流石に無視するわけにはいかない。
ザンク・ザ・タンク、久しぶりの登場。不器用な主人公ではあるが、逆にそれが魅力でもある。
メイドが見つけた殺人者の日記、そしてメイド自身の日記と、情景描写はほとんどなく、この二つの日記というか、二人の人間の独白といった物を中心に物語が進んでいく。ハラハラといった感じではなく、ごく単純にこの先の展開はどうなっていくんだろうか? という印象が強いのだが、これが意外と途中で休みを入れさせてくれない。多分これがこの作者のもつ力なのか、と。
ラストは、ちょっと肩透かしだったかな、と私には感じられたが、おそらく別の終わり方でも決して納得しなかった気もする。惹きつけるだけ惹きつけておいて、あっさり笑って去っていく、そんな悪女っぽさを感じた一冊である。次作以降も訳出されていくみたいなので、非常に楽しみである。
ジェームズ・N・フライ ( James N.Frey ) (中村 凪子 訳 文春文庫)
今回は、ちょっと合方の女性に振り回されっぱなしで、ちょっと読んでいて苛つく部分が多かったが、その分、ラストに向けての話の収斂の仕方はちょっと安直すぎるかな、と。まあ、決して嫌いじゃないんですが、こういう展開も。
あまり誌面は充実してませんが、やっとこさの第一号です。定期的な連載があとふたつ、みっつあると楽なんですけどね。まあ、おいおい考えていきたいと思っております。あと、イラスト描いてくれる会員の方がいると非常に嬉しいです。
ここを見ている会員の方、何かありましたら、通常のフライヤーと同様にどしどし投稿、およびご意見要望をお願いします。非会員の方の感想もお待ちしております。会員になってくれると、非常に嬉しいのですが、まあ。
ということで、また次号で。