質問、意見等はこちらへどうぞ。[kyou4-a●ルナドットEメイルドットエヌイードットジェイピー(luna.email.ne.jp)](●を@に)天野 貴司
木村二郎氏経由で1999年シェイマス賞受賞作が届きました。
PWA Shamus Award WinnersBack To Top
The Private Eye Writers of America announced the winners of the Shamus Award winners at Eyecon '99 in St. Louis on July 10. The winners are:
Eye (Life Achievement) Award:
Maxine O'Callahan
Best P.I. Novel:
BOOBYTRAP, by Bill Pronzini (Carroll & Graf)
Best P.I. First Novel:
A COLD DAY IN PARADISE, by Steve Hamilton (St. Martin's)
Best P.I. Paperback Original:
MURDER MANUAL, by Steve Womack (Ballantine)
Best P.I. Short Story:
"Another Day, Another Daollar," by Warren Murphy (in MURDER ON THE RUN, Berkley)
「ストリート・キッズ」のドン・ウィンズロウの新作である。まだ全て訳出されていないが、ニール・ケアリーシリーズは5作で完結してしまったようだが、ひとつのシリーズを完了させた後の作品として新たなキャラクターの登場で著者の上手さを感じる一作。
ただ、確かに物語の内容的には新しい境地という印象を受けはするものの、主人公にどうもニールの面影を重ねてしまうのは私だけであろうか? 解説によれば早々と映画化権が売れたそうで、確かに映像にする作品として適しているように思える。持論ではあるが、読んでいて映像を観ているような印象を与える物語というのは大概面白い。もっとも、本当に映像化して成功するか否かは別の問題ではあるが。
次作にも期待の一冊。
シンプルながら新鮮な1作。
ここしばらく(10年程か?)の探偵物の流れとはチーム、それもちょっと強面しそうもない主人公と猛者のペアというのが一種のトレンドのような気がするが、本作品は男性と女性のペア探偵プラス猛者というスリーカード物(意味不明な造語)。
物語自体はオーソドックスな印象を受けるが、これが意外と引きつける力を持っている。本来は、受け身中心である私立探偵物ながら、事件に自らの生活をうまくからませて進む展開は、一気に読ませてくれる。
気まぐれな出版元ではあるが、以降の作品もきちんと訳出して欲しいものである。
「緋色の記憶」のふたつ前に描かれた本作。
フランク・クレモンズシリーズを書きおえた著者の「闇をつかむ男」以降の新たな題材が、”過去”なのかもしれない。このテーマのひとつの頂点が「緋色の記憶」としてあげられるのだろうが、そこに至る過程の一作品という位置づけだけはなく、ひとつの完成された作品として十分な読み応えを持っている。また、それぞれの”過去”とそれに因われる主人公たちの描き方は流石といえる。
ゴーストライター・”ホーギー”シリーズも、はや6作目。
前作「女優志願」がシリーズ中最高の出来だっただけに、その次の作品はどういう展開になるかと期待したのだが、これがまったくの外れでがっかり。さて、何がいけないのか? その理由はいたって簡単である。ホーギーの仕事であるゴーストライター、それはある人物の自伝を事実を基に紡ぎだすことの筈。それが、本作品ではその人物描写がひどく薄っぺらいことに加え、ホーギー自身の物語が主軸となっていることであろう。
別に主人公を中心にした物語が悪いというわけではないが、今までのシリーズと同じ構成でこのパターンというのはどうも失敗作としか思えない。どうも、「女優志願」のおちを描きたかっただけの作品だったように思える。
ニール・ケアリーシリーズ第三弾。
読んでいて、ふと思ったのがニールって年齢設定はどうなっていただろうか? ということ。当然ながら、物語と共に年を重ねているはずなのだが、どうも最初に出会った時のイメージがいまだに続いているような気がする。逆に言えば、そう感じさせるほどニールが新鮮味を保ったままいつも現れてきているということなのかもしれない。
そういうイメージを持って読んでいるだけに、今回のようにラブロマンスがあったりすると、冒頭に書いたような疑問が唐突に頭に湧き出たりする。こういった点もこのシリーズの楽しみのひとつだろうか。
ハードボイルドの新風である。
なんて言ったらいいのだろうか? とらえ所がないという感じ。どこかで読んだような気がするのだが、かと言ってこれといった特定の作品があげられず、妙な後味を残してくれる。ひょっとしたらそう感じるのは単なる錯覚であって、本当に新しい風なのかもしれない。我を強く主張しているように見えて、実はそうでないともいえる主人公の設定。これがなかなか新鮮である。シリーズの今後の訳出に期待。
すでに伝説と化しているジム・トンプスンの訳出である。
長編としては4作目の訳出となる本作だが、今までの作品と同じイメージを持って読むと、かなり肩すかしを受けてしまうかもしれない。だが、人間の奥底に潜む暗黒というものは、本来こういうものかもしれない、といまさらながらジム・トンプスンという作家が恐く感じてくる。
ごく普通の生活を営んでいる人々、内面にあるのはその表面からはうかがいしれない狂気。内と外との大きなギャップ。そして、著者が描き出すその内なる狂気。読んでいるこちらが、ひょっとして登場人物達の悪夢を見せられているだけではないかと感じてしま
う。
1999年もすでに半分を大幅に過ぎておりますが、やっとの2号目です。
年の前半は読みたい! と、思わせる本があまり書店に並んでくれないというのもありますが、やはりひとえに私の怠慢がほとんどの要因でしょう、、、、、。
では、また次号で。
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