4.プラリア  パート

み:今回はプラリアは無しっ。書けませんでした。
タ:毎回プラリア書くんだって意気込んでたのに〜。
み:しーっ。黙ってればわからないんだから。
シ:あっ。こんな所にプラリアが。
み:あ、そ、それはダメっ。返しなさいってば。
タ:いいじゃない。載せちゃおうよ。
み:だめだって言うに。
た:おっさん、プレイヤーさんを押さえつけといて。
テ:うむ。
み:むぐー、むぐー。


「メディナ・サランディーンのとある午後」

  「ここにするか。」ヴァドホル・アーリンは、酒
場兼宿屋が連なる通りの中の一軒を選ぶと、店に入
った。彼のお目当ては、遥か北方から隊商がメディ
ナ・サランディーンへと運んできた、パジャルメル
産の酒とは比べ物にならないくらい度数の高い酒で
ある。夕方には込み合うであろう店内も、昼飯時を
少しすぎた今は、閑散としていた。席に着こうとし
た彼の目に、階上から降りてきた、宿泊客らしい女
性が目に入った。いかにも魔法使いという感じの黒
いローブをこの真夏の暑い中しっかり着込み、明ら
かに長すぎるそれの裾をずるずると引きずって、遅
い昼食をとりに来たのか、出口には向かわずこちら
の方にやってくる。「魔法使いは変わり者が多いか
らな。」彼は思った。その女性:シャラ・スーン:
は、案の定長い裾を自分でふんづけてよろめく。あ
っ、と思ったときにはすでに彼は行動を起こしてい
た。さすがは女好きなうえに機敏な彼は、シャラが
倒れる前に、彼女を抱き止めることができた。
「大丈夫かい、アンタ?」
「う、うん。ありがとう。」
「これから食事?よかったらご一緒に。」
すかさず誘うとはそつのない奴である。

  「・・・てわけさ。」ヴァドホルは、シャラが食
事をする間に、すでにジョッキを何杯か空けている。
年上のシャラを口説くより好物の酒のほうに楽しみ
を見いだしたらしい。そして、飲むにつれて、世間
話、自慢話などいろいろな話をシャラにした。魔法
士になるための勉強に明け暮れて、世間知らずの彼
女にとって、ヴァドホルの話は新鮮で興味深かった。

「ところで、アンタはギルギットなんて遠い所から
こんな所まで何をしに来たんだい?」食事を終え、
ジュースを飲みながら話を聞いていたシャラは、い
きなりそう聞かれ、あわててしまった。
「えっと、私...あたいは.」
家出してきたとは言いづらくて言いよどむシャラに、
「いや、言いたくなければいいんだ。うん、適当な
事を言われるよりいい。」
何かこだわりでもあるかのようにヴァドホルは強く
そう言った。言っちゃおうかな、シャラは決心して
口を開いた。
「あのね、あたい...家出してきたんだ。うちっ
て代々魔法士として国に仕えてて。あたい一人娘だ
から、親が、将来は魔法士に、ってうるさくて。そ
んなふうに将来を決められるのがやだったから。で
もあたい世間知らずだからじゃあ自分がなにを本当
にやりたいかってわからなくて。だから世界をいろ
いろと見て回ってるの...るんだ。」
「ふうん。ところで、武術大会には出るのかい。」
ヴァドホルは話題を変えた。家族の話題は避けたか
ったからかもしれない。
「ううん。あたい、攻撃用の魔法はまだ覚えてない
から。見るだけってのもつまんないから、明日には
冒険者大会が開かれるっていうラスパスに向かうつ
もり。ヴァドは?」
「オレ?オレはこの街には酒を呑みに来ただけさ。
パジャルメルに戻るんだ。今は言えないけどさ、そ
こででっかい事するんだ。いいか、ヴァドホル・ア
ーリンて名前を覚えとけよ。そのうち、『ヴァドホ
ル・アーリンがパジャルメルでえらいことをやった』
ってうわさをきっと聞くことになるから。」
  
  すっかりできあがったヴァドホルが自分の宿に帰
るべく席を立ったのは、日も暮れて店がにぎわいだ
したころだった。
「じゃーな、えーと、シャラ?」
「うん、シャラ・スーン。ギルギットのシャラ。な
にをするかはしらないけど、がんばりな。」
そういうシャラの肩をポンポンとたたいて、おまえ
は無理しないほうがいいぞとか言いながら彼は出口
に向かった。そして出口の所でもう一度振り返ると、
手をあげた。シャラもつられて手を振りながらいっ
た。
「さよなら、またどこかであえるといいね。」
「おう。」
そう答えると彼は出て行った。

  翌朝、シャラは冒険者大会へ出場すべくメディナ
・サランディーンをあとにする。このラスパスへの
旅の途中で彼女は、彼女が世渡りの師と決めて、つ
きまとう事になる、口達者な魔法使い、ミルミスミ
ーナ・ポーザックと、ミルの道連れで、腕は立つが
貧乏大喰らいの戦士、ヒューマ・グラントと出合う。
3人は「夜のナイフ」というパーティーを組んで、
その後数々の冒険をすることになるのだが、それは
また別の機会に。

                                    (おしまい)

み:ええい、しかたない。ちょっと解説するぞ。
タ:関係ないけど、解説と解脱ってなんとなく似て
    ると思わない?
み:また、どうでもいいことを。これは、シャラを
    登場させた、私のプラリア初挑戦のものです。
    つまり、前の号に書いたものより前に書いたも
    のです。第一回で同じ個別だったヴァドホルさ
    んのプレイヤー、漁野さんから、「ヴァドホル
    はきっとシャラに声をかけてます」というお手
    紙を頂いたので、その出合いを想像して書いて
    みました。
シ:ヴァドホルさんは、小さい頃たちのわるいシュ
    ルタにつかまってつけられたひどい傷跡が特徴
    の盗賊さんです。将来の事を考えて、あと1回
    大きな仕事をしたら足を洗うんですって。でね、
    彼本当に大きな事をしたみたいなの。宮廷絵師
    のカシミアさんから「天上の雫」を盗みだした
    って話が私の耳にも届いたもの。
タ:「天井の滴」?
シ:「天上の雫」!
タ:あれって他の人に濡れ衣かぶせられたって噂を
    聞いたよ。本当に「天上の雫」を持ってったの
    って、ミュティレイナ公女とかいう人だって。
テ:そんなうわさ、いつもどこからしいれるんだ?
タ:あら、たわいのない噂話は女の子の嗜みだよぉ?
シ:でも私、ヴァドホルさんがきっと本当に「天上
    の雫」を盗み出すって信じてる。

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