宮崎拓朗著作のページ


1980年生、福岡県福岡市出身、京都大学総合人間学部卒。西日本新聞社北九州本社編集部デスク。
2005年西日本新聞社に入社。長崎総局、社会部、東京支社報道部を経て、18年社会部遊軍に配属され日本郵政グループを巡る取材、報道を始める。「かんぽ生命不正販売問題を巡るキャンペーン報道」にて第20回早稲田ジャーナリズム大賞、「全国郵便局長会による会社経費政治流用のスクープと関連報道」にて第3回ジャーナリズムXアワードのZ賞、第3回調査報道大賞の優秀賞を受賞。

 


       

「ブラック郵便局 ★★   


ブラック郵便局

2024年02月
新潮社

(1600円+税)



2025/02/24



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先日読んだばかりの窪田新之助「対馬の海に沈むと共通する問題点があるだろうと思い読み出しました。

前半、
過大ノルマに苦しみ、自爆営業を強いられ、何人もの自殺者まで生まれているという末端の局員たち。その辺りは「対馬」で暴かれたJAすなわち農業協同組合の問題と共通します。
ただ、郵便局ならではの要因は、その発端に<民営化>の実施があったこと。
民営化の意味は経営の合理化にあった筈ですが、民営化しても郵便局長たちの抵抗により郵便局の統合等の合理化が進まず、そのために収益を増やす必要が生じ、それが原因となって過大ノルマに繋がったという。
命じるだけで済むのが上層部、苦しむのは末端の郵便局員たち、という構図は、郵便局も農協とまるで同じもの。

そして、上記以上に驚き、呆れたのが、<
局長会>という組織の存在。一応<日本郵政>とは別の任意団体という建て前のようですが実質的にイコール。
その局長会が何のために存在するかと言えば、選挙運動。自分たちの代表者たる人物の選挙当選を図ることを目的に、日々、郵便局長たちに指示を与え、集票のノルマを課し、政治運動を約束しかつ自民党に夫婦共々入会しないと局長には昇進させないと、局長の人事権を握るという言語道断ぶり。

保険販売にしろ、局長会にしろ、パワハラやり放題、何と前時代的な有り様かと呆れるばかりです。
下部拠点の数が膨大という難しさもあるのでしょうけれど、局長会といった宿痾を排除できない限り、問題が起きる度にトップの首を挿げ替えても、良くなるわけがない、と思います。

なお、末端の郵便局員たちは頑張っているのでしょう。
だからこそその思いに応え、経営の改善を進めて欲しい。そのためには上位・中位にある中間管理組織をどうにかしないといけない筈。

西日本新聞で最初に郵便局の問題を取り上げて以来、全国津々浦かつ多数の郵便局員たちから、その実情を知ってほしいと、実態を暴く手紙等が届き続けているのだそうです。
それだけ、今の郵便局には根深い問題があるということ。
身近な郵便局の問題だけに、是非、本書を読んでみてください。


はじめに/1.高齢者を喰い物に/2."自爆"を強いられる局員たち/3.局長という闇/4.内部通報者は脅された/5.選挙に溶けた8億円/6.沈黙だけが残った/おわりに

   


  

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