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1.花合せ−濱次お役者双六No.1− 2.三悪人 3.緋色からくり−女錠前師謎解き帖No.1− 4.数えからくり−女錠前師謎解き帖No.2− 5.散り残る 6.春疾風−続・三悪人− 7.三人小町の恋−偽陰陽師 拝み屋雨堂−(文庫改題:陰陽師阿部雨堂) 8.とんずら屋弥生請負帖(文庫改題:とんずら屋請負帖) 9.質草破り−濱次お役者双六 二ます目− |
盗人、翔ぶ梅、とうざい、鯖猫長屋ふしぎ草紙、甘いもんでもおひとつ、とんずら屋請負帖−仇討−、半可心中、酔ひもせず、長屋狂言、八万遠(やまと) |
まっさら、彩は匂へど、晴れの日には、錠前破り銀太、恋糸ほぐし、鯖猫長屋ふしぎ草紙(二)、錠前破り銀太−紅蜆、鯖猫長屋ふしぎ草紙(三)、鯖猫長屋ふしぎ草紙(四)、鯖猫長屋ふしぎ草紙(五) |
錠前破り銀太−首魁、あなたのためなら、縁切寺お助け帖、鯖猫長屋ふしぎ草紙(六)、鯖猫長屋ふしぎ草紙(七)、かっぱ先生ないしょ話、縁切寺お助け帖−姉弟ふたり−、鯖猫長屋ふしぎ草紙(八)、鯖猫長屋ふしぎ草紙(九)、大福三つ巴 |
紅きゆめみし、古道具おもかげ屋、想い出すのは、鯖猫長屋ふしぎ草紙(十)、子ごころ親ごころ、鯖猫長屋ふしぎ草紙(十一)、わかれ道の先 |
●「花合せ−濱次お役者双六−」● ★★ |
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2010年12月
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江戸は森田座の大部屋女形、梅村濱次を主人公とする時代小説。 いきずりの町娘から変わった朝顔の鉢を預かってくれと押し付けられた濱次。まさかその朝顔が花合せ(品評会)に勝手に持ち出され、そのうえ盗み出されるという大事になるとは! 平坦で盛り上がりに欠くストーリィと思っていましたが、最後の場面は舞台の上でのことのよう見応え十分。唸らされました。 |
●「三悪人」● ★★ |
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2011年07月
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後に天保の改革をめぐって主役を演じた老中=水野忠邦、北町奉行=遠山景元(遠山の金さん)、南町奉行=鳥居耀蔵の3人を中心に据えた、時代版コン・ゲーム小説。 金さんこと遠山景元は浅草にある蕎麦屋の居候、寺社奉行である水野忠邦に時折手に入れた情報を持ち込んでは小遣い稼ぎしている、という状況です。 表題からすると、悪漢小説、勿論3人とも悪漢という展開を予想するのですが、悪漢小説というより実質コン・ゲーム。 |
●「緋色からくり」● ★☆ |
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2011年10月
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髪結いの志麻が、6歳の息子=孝助の目の前で無残にも惨殺されてから4年。 そのヒロインとなるのが、年の頃24,5歳できりりとした美人ながら、縦縞の小袖をいなせに腰で端折り藍の股引という姿で颯爽と歩き、「緋錠前」で名高かった父親の跡を継いで女錠前師となったお緋名(ひな)。 サスペンスとしては、すぐに怪しい人物が登場するものの、用心棒である榎の正体が中々知れないために、結構スリリング。 ただ、緋名の周辺に賑やかな顔ぶれが揃っている点を考えると、単独ストーリィより、シリーズものとして楽しむのにふさわしい作品と思います。 |
4. | |
●「数えからくり−女錠前師 緋名−」● ★☆ |
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2013年10月
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美人姉妹で評判の大店の妹娘が無残な死体となって発見されたとき、大店夫婦は何故ほっとした表情を見せたのか。 事件はさらに十数年前の神隠し事件にまで及ぶことといい、一見関係なさそうな事件が複雑に絡み合う、かなり趣向を凝らしたミステリです。 本シリーズの良さは、女だてらに一流の錠前職人という緋名、緋名の幼馴染で緋名の心配をせずにはいられないという甚八、その養子の孝助、ちと酔狂という風変わりな隠密同心=榎康三郎の、お互いを思い合ってのチームワークにありますが、本作品ではかれら3人より緋名の飼い猫=大福の隠れた活躍に注目。 |
5. | |
●「散り残る」● ★★☆ |
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名医・小野寺宗俊の弟子である誠之助、ある日師に呼ばれたと思ったら、唐突に薬種問屋・藤屋の薬草園行きを命じられます。 各々胸の内に葛藤を抱えたらしい若い男女3人が、お互いに関わり合い、影響を及ぼし合って葛藤を乗り越えていく姿を描いた、青春成長小説風時代小説。 診療所を追いやられたという失意を抱えながら、早苗に惹かれる想いを堂々と表明してみせる、真っ直ぐな性格の誠之助。 「舞う桜」の主人公は誠之助、「逸れる蛍」は早苗、「隠す雪」は左近と、主人公を順繰りに変え、各々の胸の内を語らせるという構成の妙も、心憎い業です。 ※見習い医者の成長を描いた時代小説というと、山本周五郎「赤ひげ診療譚」の保本登、藤沢周平「獄医立花登手控え」の立花登が思い浮かびますが、闊達な誠之助、立花登に劣らない青年見習い医師像です。 舞う桜/逸れる蛍/隠す雪/結び |
6. | |
●「春疾風(はるはやて)−続・三悪人−」● ★☆ |
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美男で冷酷な野心満々の藩主=水野忠邦、腕が立ち人脈もある上謀も得意という遠山景元(金さん)、狛犬に似た怪異な容貌の鳥居耀蔵という、一癖も二癖もある3人を主役に据えた「三悪人」の続編。前作から2年後という設定です。 今回の騒動は、水野忠邦を浜松藩主の座から引きずり下ろし、藩政を自分たちの手中にしようとする老臣とそれに操られた中下士の策謀。 ただ、前作に比較すると、何となく景元のキレが悪い。 |
7. | |
●「三人小町の恋−偽(いかさま)陰陽師 拝み屋雨堂(うどう)−」● ★★ |
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2016年07月
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安倍晴明の末裔を自称する陰陽師稼業の拝み屋雨堂こと吉次と、その弟子である12歳の娘=おことが活躍する時代物小説。 まず、吉次とおことの師弟コンビがユニークで面白い。 そんな拝み屋の元に、いずれも美人という大店の娘=お栄、大工棟梁の娘=お加奈、料亭の娘=お陸が訪ねてきます。 吉次、おことに加え、吉次の友人である狂言役者=寿屋甲悦という3人が、小町娘3人が抱え込んだ事件解決のために活躍します。 |
8. | |
●「とんずら屋弥生請負帖」● ★☆ |
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2013年10月
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以前TVドラマに「夜逃げ屋本舗」というのがありましたが、本書「とんずら屋」、その江戸時代版というところでしょうか。 借金を抱え、あるいは男女関係絡みで逃げ出すしかなくなった人たちから金で依頼を受け、とんずらを手伝うというのがこの商売。 船宿屋「松波屋」、その裏稼業がとんずら屋。女将のお昌が裏稼業を仕切っているという次第。 そのお昌の姪が、本書主人公の弥生。訳ありで母と共に生まれた時から鎌倉の縁切り寺=東慶寺で育ち、12歳になった時江戸に出て松波屋に入る。今は弥吉という名で男姿に身をやつして船頭を務めている。 前半、とんずら屋稼業の3話が語られますが、それは単なるプロローグのようなもの。真のストーリィは、実はさる小国の藩主の血筋を引くという秘密を抱える弥生、利用しようと弥生を狙う一味、弥生を守ろうとするとんずら屋の仲間たち、その争闘にあります。 後半、息の詰まるようなスリリングな展開は流石ですが、ストーリィ全体を通してやたら引っ掛けが多く、読み終えた後は釈然としない思いが残ります。 いかにもシリーズものになりそうな作品ですが、さて、どうでしょうか。 船宿−始/松岡−駒込/鐘ヶ淵−往還/箱根−夜逃/浅草−出戻/御蔵傍−奪還/高輪−木戸破 |
9. | |
●「質草破り−濱次お役者双六 二ます目−」● ★★ |
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シリーズものになりそうな単品作を次々と惜しみなく送り出してきた田牧さん、ようやくシリーズもの第2弾の登場です。 私が待ち望んでいた“濱次お役者双六”シリーズ、「花合わせ」に続く第2弾。 冒頭、子供の頃から住み慣れた長屋を濱次が追い出され、訳有りの住人ばかりが集う烏鷺入(うろいれ)長屋に引っ越すところから始まります。 新しい長屋の家主は質屋のおるいと佐兵衛という若い姉弟。そのおるい、極め付けの芝居者嫌いだという。それなら何故濱次を長屋の住人に? 何か濱次に期待するところがあるらしい。 折しも姉弟が営む質屋の暖簾を潜ったのは、同じ森田座で三味線を弾く鴫原豊路。その豊路が博打のためとんでもないものを質草に入れたことから、そのとばっちりが濱次にまで及び・・・というストーリィ。 “中二階”と呼ばれる大部屋女形の濱次、人を押しのけても、何が何でもという欲がなく、折角の嵌り役を外されてもあっさり受け入れてしまう。それが濱次の、幾らでもいるような役者の一人という人物像。 こんな濱次を主人公としている限りまぁまぁの面白さ止まりと思うのですが、終盤、濱次を買っている芝居茶屋のやり手女将=お好、森田屋座元の勘弥、濱次の師匠で名脇役女形だった有島仙扇、さらには若くして死去した名女形=有島香風(こうふう)までが次々登場すると、まるで舞台が一転したかのように一気に底しれない味わい深さが生まれるのですから、このシリーズは堪えられません、そんな面白さあり。 のんびり者の濱次、これらの人々の自分にかける期待をどこまで真剣に受け止めているのやら。そんな処に濱次への親近感をもってしまうのですから、本シリーズ、良いなぁ。 味も実もある花形役者が舞台の上に勢揃いし、ただ今将来へ向けて現在成長中という主人公を囲んでいる、という観ある時代小説シリーズ。お薦めです。 |
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