チャールズ・ディケンズ作品のページ No.2



11.荒涼館

12.リトル・ドリット

13.我らが共通の友

14.エドウィン・ドルードの謎


【作家歴】、ボズのスケッチ−短篇小説篇、ピクウィック・クラブ、オリヴァー・トゥイスト、骨董屋、バーナビー・ラッジ、アメリカ紀行、マーティン・チャズルウィット、クリスマス・カロル、炉辺のこおろぎ、ディヴィッド・コパフィールド

ディケンズ作品のページ No.1

 


  

11.

●「荒涼館」● ★☆
 
原題:“BLEAK HOUSE”

 

1852-3年発表



1989年02月
ちくま文庫

(全4巻)




1989/08/21

イギリスにおける訴訟制度を辛辣に風刺した作品。
本ストーリィは、ロンドンの大法官裁判所で40年間も延々と続いている、
ジャーンディス対ジャーンディス事件を中心としています。何の訴訟であるのか、 どこに解決の目処があるのか、最早誰にも判らない、という状態。

作中人物エスタの手記と、作者の視点から書かれた章が交互するため、ちょっと複雑な構成になっています。
作品全体の印象は、とても暗い。また、ジャーンディス事件の中身がよく理解できなかったため、余計に読みにくかったように思います。

ディケンズの場合、どこか欠点のある或いは滑稽さのある人物の描写は上手ですが、善人を書こうとすると余りに“善人だ、善人だ”と言い過ぎて、かえって白々としてしまいます。
本作品では、主人公エスタがそう。その為に説得力を欠き、具体性のない人物となっています。
エスタは、その行動面においても、歯切れが悪い。最後はアレヨアレヨと思う間に、結婚してしまいます。良く判らないストーリィでした。

後期のディケンズ作品は、時代世相を描こうとすることによって、その良さである単純明快さを欠いてしまった気がします。もっとも、本作品でもディケンズらしい面白みのある人物は何人か登場しますし、貧乏アパートの人々の生活ぶりを描いた部分は、やはりディケンズならではのもの。

   

12.

●「リトル・ドリット」● ★★★
 
原題:“LITTLE DORRIT”

 

1855-7年発表



1980年11月
集英社刊
世界文学全集
(第33・34巻)

1991年01月
ちくま文庫
(全4巻)



1980/11/25
1995/03/05

債務者監獄に20年以上も閉じ込められたドリット一家を中心にした物語であり、資本主義社会の矛盾をつくものと評価される作品です。

初めて本書を読んだ時には、債務者監獄という物語の舞台や、登場する人物が老人くさいことから、その陰気さ故あまり好きになれませんでした。ところが、次に読んだ時には、債務者監獄というディケンズならではの舞台、そして主人公エイミーの可憐さからディヴィッド・コパフィールドに並ぶ、好きな作品となりました。

“リトル・ドリット”と呼ばれるエイミーは、債務者監獄で生まれた、ドリット氏の末娘。
もう一方の主人公
アーサー・クレナムは、エイミーがお針子として母の家に出入りしていることから彼女を知り、その縁から債務者監獄を度々訪れるようになります。
つまり、エイミーとアーサーは、一般社会と債務者監獄という2つの世界を行き来する人物となります。

このドリット一家とアーサーを中心に、富の変遷によって如何に人間性が損なわれるものか、という姿が描かれていきます。圧巻は、出獄したドリット氏が過去の事実の暴露に常時怯え、パーティ席上であろうことか監獄に居た時のような虚言をしゃべりだす場面。人間の哀しさをつくづく感じます。

本作品で好感の持てる人物は、監獄門番の息子ジョン・チヴォリー。常に自らの墓碑を創作するところが愉快なのですが、誠実な青年で、エイミーやアーサーへの献身ぶりも男らしい。
なお、本作品の真の主人公は、エイミーやアーサーではなく、資本主義社会そのものだと言うべきでしょう。

  

13.

「我らが共通の友」 ★★★
 
原題:“OUR MUTUAL FRIEND”


我らが共通の友

1864-5年発表

1997年01月
ちくま文庫
(上中下)



1995/03/05



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久々に読んだディケンズ作品なのですけれど、あぁ、こういう小説が読みたかったんだ、というのが第一に感じたこと。あとは、このストーリィから離れ難い思いで、ひたすら読みふけりました。
本作品の魅力は、人間の本質をとことん追求するような、スケールの大きい人間ドラマが展開されることにあります。とくに大きな主題となっているのは、“お金”。

塵芥処理業で築かれた莫大な遺産を相続しにアメリカから帰国したジョン・ハーマンが、テムズ川で死体となって発見されたことから、遺産は使用人だったボッフィン夫婦が引き継ぐことになります。
金によって人間はどう変わるのか、変わらないのか。
生きていたジョン・ハーマンは、
ロークスミスと名を変えてボッフィンの秘書となり、遺言で結婚を指示されていた娘ベラ・ウィルファーの人間を見極めようとします。
ジョンとベラのラブ・ストーリィの一方で、テムズの川底を漁って生活している男(ジョン・ハーマンの死体を発見)の
娘リジー・ヘクサムと、弁護士ユージン・レイバーンのラブ・ストーリィが、テムズ川を舞台に展開します。こちらは社会的身分の差が大きな障害。

この2つのラブ・ストーリィを中心とする一方、側面において様々な人間の欲深い姿、等々が描かれています。
利己主義者、根っからの悪党、詐欺師夫婦、貧しいけれど毅然とした老婆、不幸な環境に負けず健気に生きる人々。
悪人と言っても決して一様ではありません。心の隅に人間らしさを残している人間もいます。そうした一通りではない人間の姿を生々しく描けるところが、社会の底辺を自ら経験したディケンズの、大作家たる所以でしょう。

この作品の素晴らしさは、圧巻とも言うべき場面が幾つもあること。そこでは、深い感動を覚えます。
そして、
リジー・ヘクサムという女性像の素晴らしさが忘れられません。ベラも魅力的な娘なのですが、可憐で健気、献身的であって自立心のある女性として、リジー・ヘクサムの見事さはディケンズ作品の中でも群を抜いています。

ディケンズ作品としては、完成度の高い作品です。そして、現実社会における様々な人間の姿を描いたこの作品は、サスペンス小説以上にスリリングな興奮を呼び起こします。

 

14.

●「エドウィン・ドルードの謎」● ★☆


1869-70年未完

講談社
世界文学全集
(第29巻)

1988年05月
創元推理文庫


1979/11/12

ディケンズ最後の未完かつ推理小説、という作品。
当初、主人公の
エドウィン・ドルードの性格が不明瞭でパッとせず、その他の登場人物も(陰鬱なジャスパーを初めとして)個性が感じられないことから、 つまらないと思いました。

ところが、エドウィンの失踪後はローザの行動が明確になり、クリスパークル師や、ローザの後見人グルージャス、ターター等、如何にもディケンズらしい善良な人物達が活躍し始め、またダチェリーという謎の人物も登場し、面白くなってきます。
しかしながら、これから面白い展開が始まりそうだという段階で未完に終わってしまいました。誠に残念という他ありません。

 

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