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「誰もが幸せになる 1日3時間しか働かない国」シルヴァーノ・アゴスティ(著)、野村雅夫(訳)(マガジンハウス 2008年6月)

■今の社会に疑問を持つ手始めとして■

イタリアでベストセラーとなった本だそうです。飛行機のトラブルで偶然滞在したキルギシアという国について、イタリアの友人に出した10通の手紙として編集されています。
イタリアの国会議員が報酬ばかり高くて国民のために働いていないことや、労働時間の長さに対する疑問など、日本同じような状況にあることがわかります。

お金のいらない国 』と同様のテーマで、同様の踏み込み方であると考えればよいかと思います。

人間は、言語を捨てて、善悪も含めた観念も捨て、動物に戻る他に、ロボット化・家畜化を逃れる手段はないのではないかと考えはじめた私にとっては物足りない本でした。
人間の本性とからめ、また、『逝きし世の面影』で指摘されているような、工業化にともなって労働時間を売る労働が拡がり、極貧生活が登場した動きなど、歴史を踏まえた上で、新しい生き方を提案して欲しいと私は思います。

農耕によって貧富の差が生まれ、季節変動の大きいサケなどの獲物を保存することによって貧富の差が生まれる人類。この単純な動物が、生産手段の飛躍的な向上や大量輸送手段、情報統制手段を得て、現在のような社会を作り上げることは必然であり、簡単に変えることはできないという事実をぜひ踏まえた上で読むべきであると思います。

本書から


かつて世の中を善と悪とに分けてしまって、悪は善の裏返しとしてやむをえないものだとされていた頃は、たしかに僕も平穏な人生、不安はないが刺激もない人生なんて、うんざりだって思ってました。

でも、僕はみんなの中にものを生み出す力があるんだってことに気づいたんですよ。ちょっとやそっとじゃ消えない激しい力です。この力を今まで見過ごしていたのは、みんな、何かにつけてやらなきゃいけないことに追われていたからなんですよ。来る日も来る日も自分のための時間なんてわずかしかなくて、そのせいで大勢の人が鬱病やときには絶望感に(さいな)まれていたんですから。

この星での人生はたった一度きりで、その機会は一度逃がすと二度と取り戻せないんだっていうことをみんな忘れてたんですよ。

働いて働いて、ただただ働いてなけりゃならない。僕たちはそう信じ込まれされていたんですよね。

そして僕らは自らのはかりしれない価値さえも忘れてしまっていたわけなんです。僕たちは、わずかばかりの金のために、がめつい雇用主に自分を安売りしていました。しかも、そこまでして得るものは将来に対する不安と過去の傷痕としての徒労感だったんですよ。

生きるためにどうしても必要な時間を僕たちから奪い去ってしまう仕事。僕たちはそんなものをありがたいとすら思い。自分自身をどこか遠くへ置き忘れていたんですね。

でも、そんなことはもうないんですよ。

数年の間に、僕たちたくさんの物事を克服してきました。腐敗した政治、ドラッグ、売春、広告、ストレスに起因する精神や肉体の病気、主に自分自身を過小評価することで生じる他人への敵意。幹細胞についての研究が急速に発達したおかげで、今やかなりの数の病気を治せるようになったんです
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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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