遺留分減殺請求/弁護士の法律相談

弁護士(ホーム)法律事務所弁護士による遺言、相続法律相談
2015.7.31mf
弁護士河原崎弘

相談

私の母は7年前に亡くなり、その後、父は再婚しました。その父も本年 3 月に亡くなりましたが、遺言により、遺産は全て義理の母に行くと聞いています。
  1. 遺言は偽造である可能性があります。
  2. 遺言が有効でも、私には遺留分があると聞いています。
父の遺産は、自宅の土地(時価約 7000 万円)、建物(時価約 2000 万円)、リゾートマンション(時価約 2000 万円)、預金 5000 万円です。父の子供は私だけで、私は現在アメリカに住んでいます。どうしたらよいですか。
相談者は、区役所の法律相談室に電話を入れ、予約をして、弁護士に相談しました。

回答

(1)遺言が偽造かの調査
自筆証書遺言 であれば、裁判所で検認手続きをしています。裁判所からあなたにも、その通知がきます。その手続きのため裁判所に出頭しなくとも、裁判所に遺言書の写しがありますから、お父さんの筆跡かどうか調べてください。
公正証書遺言 の場合は、公証役場に原本が保存されていますから、 公証役場 でお父さんの筆跡かどうか調べてください。どこの公証役場で何時作ったがわからないと探すのは難しいです。
遺言書が偽造と判明した場合は、 遺言無効確認訴訟 を提起すべきでしょう。
遺言書を偽造をした者は、相続人になれません(相続人の欠格事由、民法891条5号).

(2)遺留分減殺請求
兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります(兄弟姉妹には遺留分がありません)。 民法 1028 条 二号により、子および配偶者の遺留分は 相続分の 2 分の 1 、直系尊属の遺留分は相続分の 3 分の 1 です。 子の法定相続分 が 2 分の 1 ですから、あなた(子)の遺留分は 4 分の 1 となります。金額的には 合計4000 万円です。
遺留分の減殺請求は、相続の開始および減殺すべき贈与又は遺贈を知ったときから 1 年以内にする必要があります(民法 1042 条)。通常は、内容証明郵便で通知することになります。

判例 では、 1 年以内に遺留分減殺の意思表示をすれば、遺留分権利者は、減殺された財産についての権利を取得します。 取得する権利は、自宅の土地、建物につき各4分の1、リゾートマンションにつき4分の1、預金について4分の1(1000万円)です。
その後訴えを提起すればよいということになっています。訴え提起は 1 年を過ぎても大丈夫です。遺留分減殺請求により所有権(あるいは持分権)を取得した場合は時効消滅しません。もちろん、金銭請求権の場合は異なるでしょう。
アメリカには内容証明郵便の制度はありません。そこで、あなたの場合、日本にいる弁護士に委任状を送り、依頼し、「遺言が有効なら、遺留分減殺請求をする」旨の、 遺留分減殺請求の内容証明郵便 を出し、その後、相手の反応を見て、調停申立、ないし、訴えを提起するとよいでしょう。

遺留分減殺請求があると、不動産などは、共有になってしまいます。そこで、受遺者など請求を受けた側は、遺留分権利者に対して、価額を弁償して、遺留分の目的物の返還を免れることができます(民法1041条)。共有状態を解消するためには、遺留分減殺請求する側からは、共有物分割請求をします。
この価額弁償は、遺留分の目的物の一部についてだけ、例えば、自宅についてだけ、することもできます(最高裁判所平成12年7月11日判決)。

法律

民法 1028 条
1028 条兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、左の額を受ける。
直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1
その他の場合は、被相続人の財産の2分の1

判例

  1. 最高裁第一小法廷昭和41年7月14日判決(出典:判例時報458-33、判例タイムズ196-110)
    遺留分権利者が民法1031条に基づいて行う減殺請求権は形成権であつて、その権利の行使は受贈者または受遺者に対する意思表示によつてなせば足り、必ずしも裁判上の請求による要はなく、また一たん、その意思表示がなされた以上、法律上当然に減殺の効力を生ずるものと解するのを相当とする。・・・・従って、・・・・減殺の意思表示をなした以上、右意思表示により確定的に減殺の効力を生じ、もはや右減殺請求権そのものについて民法1042条による消滅時効を考える余地はないとした原審の判断は首肯できる

  2. 最高裁第一小法廷昭和57年11月12日判決(出典:金融・商事判例669-20)
    1043条にいう「減殺すべき贈与があつたことを知つた時」とは、贈与の事実及びこれが減殺できるものであることを知つた時 と解すべきであるから、遺留分権利者が贈与の無効を信じて訴訟上抗争しているような場合は、贈与の事実を知つただけで直ちに減殺 できる贈与があつたことまでを知つていたものと断定することはできないというべきである(大審院昭和12年(オ)第1709号同 13年2月26日判決・民集17巻275頁参照)。
    しかしながら、民法が遺留分減殺請求権につき特別の短期消滅時効を規定した趣 旨に鑑みれば、遺留分権利者が訴訟上無効の主張をしさえすれば、それが根拠のない言いがかりにすぎない場合であつても時効は進行 を始めないとするのは相当でないから、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されていて遺留分権利者が右事実を認識しているという 場合においては、無効の主張について、一応、事実上及び法律上の根拠があつて、遺留分権利者が右無効を信じているため遺留分減殺 請求権を行使しなかつたことがもつともと首肯しうる特段の事情が認められない限り、右贈与が減殺することのできるものであること を知つていたものと推認するのが相当というべきである。

  3. 最高裁第二小法廷平成7年6月9日判決(出典:判例時報139-68、判例タイムズ885-154 )
    遺留分権利者が特定の不動産の贈与につき減殺請求をした場合には、受贈者が取得し た所有権は遺留分を侵害する限度で当然に右遺留分権利者に帰属することになるから・・・・遺留分権利者が減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記手続請求権は、時効によつて消滅することはないものと解すべきである。

  4. 最高裁第二小法廷平成12年7月11日判決(出典:判例タイムズ1041-149 )
     3 しかし、受贈者又は受遺者は、民法1041条1項に基づき、減殺された贈与又は遺贈の目的たる各個の財産について、価額を弁償して、その返還義務 を免れることができるものと解すべきである。
     なぜならば、遺留分権利者のする返還請求は権利の対象たる各財産について観念されるのであるから、その返還義務を免れるための価額の弁償も返還請求に係る各個の 財産についてなし得るものというべきであり、また、遺留分は遺留分算定の基礎となる財産の一定割合を示すものであり、遺留分権利者が特定の財産を取得することが保 障されているものではなく(民法1028条ないし1035条参照)、受贈者又は受遺者は、当該財産の価額の弁償を現実に履行するか又はその履行の提供をしなければ、 遺留分権利者からの返還請求を拒み得ないのであるから(最高裁昭和53年(オ)第907号同54年7月10日第三小法廷判決・民集33巻5号562頁)、右のよう に解したとしても、遺留分権利者の権利を害することにはならないからである。
    このことは、遺留分減殺の目的がそれぞれ異なる者に贈与又は遺贈された複数の財産であ る場合には、各受贈者又は各受遺者は各別に各財産について価額の弁償をすることができることからも肯認できるところである。そして、相続財産全部の包括遺贈の場合 であっても、個々の財産についてみれば特定遺贈とその性質を異にするものではないから(最高裁平成3年(オ)第1772号同8年1月26日第二小法廷判決・民集50巻1号132頁)、右に説示したことが妥当するのである。
登録 August 26, 2000
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