弁護士も騙された強姦告訴事件

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2015.4.30mf
料金の高い法律事務所
ある年の冬でした。女子高校生を連れたご夫婦が法律事務所を訪れました。紹介者は、大きな法律事務所に事務員として勤めているいる須山(仮名)さんでした。
強姦告訴事件 この法律事務所は、世界的なネットワークをもっているアメリカの法律事務所の日本支社のようです。
須山さんの話によると、料金が高いのです。会社を設立する料金でも、日本の通常の法律事務所の5倍から10倍の料金を請求しているようです。その後の相談料も高く、須山さんの言によれば、「弁護士費用が高すぎるので、顧客は倒産するか、倒産しなくとも、2度と来ない」と言うことでした。
世界的なネットワークにより、顧客が紹介されてきますので、事務所は繁盛しているようでした。事務所も立派なビルの中にあるので、顧客は、初めは高い料金を支払うのです。
須山さんは、自分の知人の事件は、自分が勤務する事務所の料金が高い弁護士に紹介することは避け、他の弁護士を捜して尋ねて来たのです。

告訴の依頼
両親の依頼は、「娘は強姦をされた。告訴してほしい」と言うことでした。
弁護士は、両親の立会いなしに高校生から直接話を聞きました。
高校生(17歳)は小学生の頃からピアノを習っていました。加害者の男性は、41歳のピアノの先生でした。高校生は、この男性と組んで演奏することがよくありました。
事件は渋谷のホテルでありました。なぜ、高校生がホテルに入ったのか、強姦は具体的にはどのようになされたのか、弁護士が突っ込んで聞くと、高校生は泣き出します(後で判明したことですが、高校生は悲しくて泣いたのではありません)。
仕方なく、弁護士は、誘導尋問をしました(これが間違いの始まりでした)。加害者が、どのように洋服を脱がしたか、高校生はどのように抵抗したのか、弁護士は推測の話をして、高校生からイエスか、ノーかを確かめました。
事件が発覚したのは、加害者から高校生の自宅に頻繁に電話があったので、両親が高校生を問いただしたのです。高校生は、「強姦された」と答えたのです。
加害者は、「あなたの声は小鳥のように美しい」との内容の詩を書いて高校生に送っていました。加害者は、度々、高校生を学校の帰りに駅で待っていました。すべて事件の後のことですが、高校生はどう対処していいか戸惑っていました。

弁護士の対処
強姦罪は親告罪です(刑法177条)。告訴がないと警察は強制捜査を控えます。 親告罪の告訴は犯人を知った日から6か月以内にしなければなりませんでした(刑事訴訟法235条)。しかし、平成12年の刑訴法の改正で、現在では、強姦罪については、この制限はありません。
弁護士は、高校生から委任状をもらい、告訴状を作る作業に取りかかりました。着手金として両親は30万円を弁護士に支払いました。 刑事の絵
弁護士は告訴状を持参し、警察に行きました。警察は、普通は告訴を嫌がりますが、この件では興味を示し、弁護士の周りに刑事が集まってきました。ただし、一人の刑事が、「先生、これ大丈夫ですか?」と、尋ねました。振り返って考えると、この刑事は直感的に疑問を感じたのでしょう。
警察は、高校生を、すぐ、事情聴取し、被害者の調書ができた段階で、令状を取り、告訴後1週間で、加害者を逮捕しました。異例のスピードでした。
逮捕の身柄拘束時間は3日間、通常、その後、10日間の勾留(刑事訴訟法208条1項)があります。
逮捕から1週間経過した後、加害者の弁護士から「話をしたい」との電話が(被害者の)高校生の弁護士にありました。加害者の弁護士は「強姦ではない」と言いながらも、「示談にしたい」と申し入れてきました。
加害者と被害者の弁護士は一緒に検察庁に行き、担当検事の話を聞きました。 検事は、「高校生はホテルに入る前に路上で男性と何度も接吻をしている。高校生はこの男性とは何度もホテルに行っている。男性が地方(例えば神戸)で公演するときには、高校生は泊りがけで、ホテルまで訪ね、肉体関係を持っている。強姦罪は成立しない。逆に、この男性から高校生に対して虚偽告訴罪で告訴できるし、損害賠償の請求もできる。しかし、40男が女子高校生と関係を持つのは良くない。示談をし、告訴を取下げてほしい」と言い、示談を勧めました。

示談
男性には21歳の身重の妻がいました。この男性は若い女性が好きなのでしょう。妻の両親が30万円を負担することになりました。男性が高校生に30万円を支払うことで、被害者と加害者の弁護士間で、示談が成立し、告訴は取り下げられ、男性は釈放されました。
高校生の両親は、弁護士に報酬として5万円支払いました。

真相
強姦が存在したかどうか明らかではありません。女子高校生と41歳の男性が愛人関係にあったことは明白です。
高校生は、両親に責められて、苦し紛れに、「乱暴された」と説明し、両親も、それを信じたい一心で、弁護士に告訴を依頼したのです。弁護士も依頼者の説明をもっとチェックする必要がありました。
検事は、警察の誤認、男性の言分を確認せずに逮捕したことから、新たなトラブル(警察、検察に対する損害賠償請求)の発生を阻止するため、示談による解決を勧めたのです。
男性は、身柄を拘束されていて(人質のようなものです:人質捜査と言えるでしょう)、早く釈放されたい一心から示談に応じたのです。関係者の利害が一致したので示談は成立しました。

真実は、常に、薮の中です。41歳の男性と愛人関係にあったにもかかわらず、高校生は男性を告訴したのです。人間のエゴの恐ろしさを示しています。
これは刑法172条の虚偽告訴(改正前の刑法の誣告)に当たる可能性が高いケースでした。弁護士は、高校生の代理人として、示談をせざるを得ませんでした。

登録 June 29,1997 更新 Jan.15,2009