シュツットガルトの惨劇

 猪木が3週間にも及ぶヨーロッパ遠征を敢行。連日、当地の強豪と対戦した。中でもシュツットガルトでの「墓堀り人」の異名を持つローラン・ボックとの試合は、連戦による疲れ、慣れない固いマットでの負傷、ラウンド制のルールといった問題はあったものの、猪木はいいところなく判定負けし、日本のファンはボックの異様な雰囲気、異質なファイトスタイルに驚き、「シュッツトガルトの惨劇」と呼ばれた。
 このとき当地で使われたポスターには「KILLER INOKI」と書かれ、アリと闘った男という紹介文がある。ターザン山本元週プロ編集長が所持しており、後に復元された「キラー猪木ポスター」がこれである。このヨーロッパ遠征には藤原喜明が帯同した。
 ローラン・ボックは、その後来日したが、交通事故にあったこともあり、このときに見せたような凄みは失われていた。

猪木の「欧州世界選手権シリーズ」戦績

 7日 西ドイツ・ラーベンスブルグ・オーバーショワルツェン・スタジアム
  ○ 対ウイリエム・ルスカ(4分10R) 5R1分33秒 体固め

 8日 西ドイツ・シュッセルドルフ・フィリップス・ホール
  ○ 対ローラン・ボック(4分5R) 5R3分40秒 反則勝ち

 9日 西ドイツ・フランクフルト・フェストホール
  ○ 対カール・ミルデンバーガー(異種格闘技戦3分15R) 4R1分15秒 逆エビ固め
     *元プロボクシング世界」ヘビー級3位

10日 西ドイツ・ハンブルグ・スポーツホール
  △ 対ジャック・デ・ラサルテーズ(4分10R) 10R引き分け
     *当時ハノーバートーナメント3連覇中の強豪

11日 西ドイツ・ハノーバー市メッセホール
  ○ 対ジャック・デ・ラサルテーズ(4分10R) 5R 逆腕固め

12日 西ドイツ・ベルリン・ドイッチェランド・ホール
  △ 対ローラン・ボック(4分10R) 5R1分11秒 両者リングアウト

13日 西ドイツ・カッセル市エセスホール
  ○ 対ジャック・デ・ラサルテーズ(4分10R) 5R0分53秒 体固め

16日 西ドイツ・キール・コンサート・マネージメント
  ○ 対ウィルフレッド・デートリッヒ(4分10R) 4R2分20秒 腕固め
     *東京オリンピック・グレコローマン・ヘビー級金メダリスト

17日 西ドイツ・ミュンヘン・セベルスメイヤー・スポーツホール
  △ 対ウイリエム・ルスカ(4分10R) 10R引き分け

19日 スイス・バーゼル市セントヤゴス・スポーツホール
  ○ 対ジャック・デ・ラサルテーズ(4分10R) 5R2分35秒 反則勝ち

19日 オーストリア・ウィーン市ウィナー・ホーレン・スタジアム
  ○ 対コーゲン・ウィスバーガー(4分10R) 4R1分32秒 反則勝ち

20日 西ドイツ・ザールブッケン・ザーランドホール
  ○ 対ジャック・デ・ラサルテーズ(4分10R) 4R0分57秒 体固め

21日 西ドイツ・ルートウィフハーフェン・エバートホール
  △ 対ウィルフレッド・デートリッヒ(4分10R) 4R2分51秒 両者リングアウト

23日 オランダ・ロッテルダム・マホイ・スポーツランド
  △ 対ウイリエム・ルスカ(4分10R) 10R引き分け

24日 西ドイツ・ドルトムント・ベスト・フォーレン・ホール
  △ 対オットー・ワンツ(4分10R) 10R引き分け
     *後のAWA王者でヨーロッパの帝王といわれた名レスラー

26日 西ドイツ・シュツットガルト・キーレンスバーグホール 
  × 対ローラン・ボック(欧州世界選手権シリーズ決勝 4分10R) 判定

26日 ベルギー・ルーティッヒ・カントリー・ホール
  ○ 対チャーリー・ベルハルスト(4分10R) 4R1分42秒 逆さ押さえ込み

27日 ベルギー・アントワープ・スポーツパレス
  ○ 対ウイリエム・ルスカ(4分10R) 4R終了 反則勝ち

28日 西ドイツ・シュウェニケン・アルセラング・ホール
  ○ 対ウイリエム・ルスカ(4分10R) 2R終了 反則勝ち

29日 オーストリア・リンツ・スポーツ・ホール
  △ 対ユーゲン・ウィスバーガー(4分10R) 10R引き分け

29日 スイスの国技(山岳レスリング・シューインガム)の横綱
    ルディ・ハンスバーガーと15分間のスパーリング

全20戦12勝1敗7引き分け