縮刷版96年5月上旬号


【5月10日】 千駄ヶ谷の将棋連盟に、新会社「日本将棋ネットワーク」に関する記者発表を聞きに行く。千駄ヶ谷の駅を降りて、東京体育館の前を通り過ぎてぐにょぐにょ歩くと、「週刊将棋」とか、漫画の「月下の棋士」なんかに出てくる建物が見えて来た。
 2階に上がって受付で名刺を差し出し、着席して始まるのを待っていると、「名刺を出せとはどーゆーことか」と抗議する声が聞こえてきた。普段から将棋連盟に詰めているベテラン記者らしい。ふだんから顔を見合わせている人たちが、今日に限って名刺を寄こせといったのがおかしいと思ったらしく、「私を知っているでしょう?」と、受付の人に食って掛かっていた。企業の記者会見なんかで、普段から見知っている広報が受付にいながら、名刺を要求されることが多々あって、めんどくさいと思いつつ、かといって渡してまずいものでもないので、素直に差し出すことにしている。だが、将棋連盟のような、自分が外様におかれた会見で、取材者と取材先との緊密な関係を目にすると、ある種の特権意識をそこに見てしまい、自分にも同じ意識があったことに気が付かされて、なんとなく居心地の悪い思いをする。
 少しケースは違うが、証券取引所の理事長だった長岡実氏が外出先から帰って来て、証券取引所の入り口を通ろうとしたところ、受付の人に呼び止められて、「僕、ここの理事長」と言ったとゆーことを、前に聞いたことがある。以来、受付のカウンターの裏側には、証券取引所のおエラ方の写真が貼られていたとかいないとか。人の顔を覚えるのが苦手な自分にとって、何とも身に染みる話ではある。
 ソニー・マガジンズから持ち帰った「グースバンプス」を読み継ぐ。子供向けなので、30分もあれば1冊読めてしまい、行きの電車で1冊とか、昼休みに1冊とかいった具合に、たちまちのうちに4冊を読み終えてしまった。章ごとに期待を持たせる「引き」をつけて、次々とページをめくらせるようにしているあたり、さすがに米国でベストセラーになっただけのことがあると感心する。どの話も、大人向けのホラーノベルズのよーな、血みどろのスプラッターな場面はまったく出てこず、人もほとんど死なない。健全といえば健全なのだが、漫画やアニメやゲームの世界で、バタバタと人が死んだり殺されたりする場面を見て育った日本の子供が、「ブースバンプス」を読んで果たして「トリハダ」を立ててくれるのだろーか。どちらが良いとも言えないだけに、なんとも悩ましい。

【5月9日】 ソニー・マガジンズの目黒玲子はニッポンの子供たちをトリハダにする−とまあ、「本の雑誌」のよーな惹句で始まる今日のテーマは「グースバンプス」。知らない? ごもっとも。僕も今日まで知らなかった。R・L・スタインとゆー人が書いている米ヤング・アダルトのメガヒットシリーズで、「グースバンプス(鳥肌)」のシリーズ名が示すとーり、ゾッとトリハダの立つよーな話が、1巻1話でつづられている。昨年夏に日本版が刊行された直後に、SFマガジンに三村美衣さんがレビューを寄せていたのを、積み上げられたバックナンバーの山をひっくり返して見つけた。さすがなり専門家(讃)。
 さて冒頭の目黒玲子さん。ソニー・マガジンズの編集者で、井深大さんや本田宗一郎さん、豊田英二さんといった日本の経営者の語録をまとめた「ビジネスブック」シリーズを担当している人なんだけど、そうした仕事のかたわらで、アメリカで4000万部を売る大ベストセラーになっている「グースバンプス」シリーズの日本版を立ち上げた。米国版の表紙絵と、盛り上がってトリハダ状になったタイトルロゴをそのまま使うことにこだわったとかで、そのお陰で、アメリカで人気になっているシリーズの雰囲気を、そのまま日本でも味わえるようになった。
 実は今日、ソニー・マガジンズに目黒さんを訪ねたのも、「ビジネスブック」シリーズの話を聞くためだったんだけど、たまたま「グースバンプス」シリーズの話になって、こうした本が日本でも出版されていることを、遅まきながら知ることになった。SFマガジンにレビューが載っていたわけだから、不勉強というそしりは免れないが、本屋に日に3度は行く僕が見つけられなかったのも、ひとつには発行部数がまだまだ少ないことが挙げられる。確かに、ゲームや漫画やアニメに囲まれた日本の子供が、活字の本、それもアメリカのホラーを選んで読むとは思えない。
 だがしかし、三村さんのレビューによれば、同じように活字読者の高年齢化が進んでいるアメリカで、このシリーズだけは子供たちに圧倒的な支持を受けているのだから、面白いことは間違いない。とすれば、問題は版元のプロモーション力とゆーことになるが、そこはソニーの名前がついてはいても、中小出版社の悲しさで、本屋へのこまめなセールスも、テレビやラジオや雑誌を駆使したメディアミックス(フジサンケイの十八番だね)もなかなか出来ない。とゆーわけで、ここに「グースバンプス」を大絶賛して、ニッポン男児の心意気を見せよーと思ったわけだ。役にはまったく立たないが。
 ただし、帰りがけに寄った本屋には置いていなかった(結構大きい本屋だぜ)から、街で探すのはなかなか大変そう。大人が読むには苦しいところも多々あるが、そこは童心に帰って、脳ミソを児童レベルに落として、ワクワクドキドキの世界にひたってみるのも悪くない、かも。

【5月8日】 富士通の記者発表に行く。「エデュテインメント事業」への進出がテーマ。会場に付くと、白いTシャツを着たお兄さんとお姉さんがたくさん歩いていて驚く。着席して前を向くと、エライ人たちも同じよーなTシャツを着て座っていたのでもっと驚く。
 エデュテインメントCD−ROMの拡充や、子供向けホームページの開設、ダイエーと組んでのパソコンスクールの展開といった内容の発表が粛々と続き、ちょっとウトウトとしかけた時、パソコンスクールでパソコン疲れした子供たちのための体操を考案したとゆー話が始まって、エッと顔をあげる。「フィンフィン体操をお見せします」。そんなアナウンスとともに、富士通が誇る(?)チアリーダー6人が会場にあらわれ、オヘソの見える格好で、いっせいに体操を始めた。こんな時、いったいどんな表情をすればいいのだろーか。笑ってはいけないが、かといって仏頂面でも相手に失礼だ。目尻が次第に下がり、口元がゆるんでくるのが解ってはいても、そこは精神を集中させて、5分ほどの時間を乗り切る。後になって、正々堂々仕事と称して写真を撮っておけばよかったと後悔する。
 夕方から大日本印刷の「ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)」の展示替えパーティーに行く。今月から始まった「現代ハンガリーのグラフィックス4人展」は、共産主義体制化のハンガリーで強い風刺性を持ったグラフィック作品を発表し続けていた「DOPP」とゆーグループの作品を展示するもので、日本の商業デザインとは違った、強烈なメッセージを発する作品が会場いぱいに並べられていて圧倒された。1時間ほどで会場を出て、銀座7丁目の「ライオン銀座」へと向かい、今度は大日本印刷が「毎日デザイン大賞」の特別賞を受賞したことを記念する会合に出席する。亀倉雄策さん、田中一光さん、浅葉克己さん、青葉益輝さんといった、日本のグラフィックデザイン界を代表するよーなスゴイ人たちが歩いていたよーだが、こっちはお寿司ばっかり食べていたのでよく知らない。
 すぐ近くで開かれていた、岡林課長主催のオフミをこっそりのぞいて、課長ほか日記者の方々のお顔を見てみたいとゆー誘惑もあったが、本の買い過ぎ、ネットのやり過ぎで大赤字の財政事情が許さない。分厚い財布を胸に、正々堂々とオフミに出られる日は来るのだろーか。

【5月7日】 木曜日付けの新聞用に原稿を1本書いて出す。企画原稿(通称「ハコ物」)は締め切りの1日前に出すことが大原則になっていて、出さないと整理の人が帰れない。もちろん引っ張れば切れるまで伸びる、ゴムヒモのよーな締め切りではあるが、デスクが怖いのでちゃんと出す。
 広告代理店のI&Sが運営しているエンターテインメント専門サーバー「J−ENTERTAINMENT」を紹介する内容で、記事を書くために久々に「J−ENTERTAINMENT」のサーバーにアクセスしたら、ベルシステム24とゆー会社のホームページに、「東海道53問クイズ」とゆーコーナーが出来ていた。「お江戸日本橋7つ立ちの7つという時間は何時?」ってな具合に出題される、東海道の宿場にちなんだ問題をクリアしながら、京都までたどり着きましょうって感じの「東海道縦断ウルトラクイズ」なんだけど、それぞれの問題に付いてくる宿場の画像がデカくて、自宅の遅いモデムで見るのは結構シンドイと思った。かといって会社のマックでいつまでも続く(53問はあるってことだ)問題につき合ってるわけにはいかず、戸塚あたりまでクリアして中断。いっそ会社に朝早くいって、誰も来る前にクリアしてしまおーかと考えたが、朝寝坊なので多分やらない。
 それに朝はポンキッキーズを見なくちゃなんないし。特に今週は、東芝EMIの王子様、かの小沢健二がシロクマの着グルミを被って出演しているから、1日だって見逃せない。新年度に入ってから、山田邦子や小堺一機らがいろんな格好で出演するよーになったけど、コメディアンはどうも次の動きが読めてしまって、イマイチはまっていなかった。その点オザケンは次の行動が読めない。着グルミを着ているだけでも驚異なのに、昨日はオナラの歌を歌い、今日は巨大ハンマーを持ってモグラ叩きに興じていた。それも楽しそーに。いつか切れるかもしれない、いつか投げ出すかもしれない。そんな緊張感がたまらない。明日も早起き(って時間でもないが)せねば。

【5月6日】 4連休も最終日とゆーことで、秋葉原に行って最近のコンピューター関連マーケットでもリサーチしようと家を出る。がしかし、秋葉原は人、人、人の洪水で、着いた早々イヤになり、徒歩でお茶の水を経て神田神保町の古本屋街へと移動する。祝日とゆーことで、古本屋は半分開店・半分閉店の状況。10軒ばかりをハシゴするが、これといった本は見つからず、早々に竹橋へと抜けて、地下鉄東西線で家に帰る。最終日にして無為の時間を過ごしてしまった。でもまあ、かのヴァルター・ベンヤミン先生も「もはや閑暇というものを知らない市民社会における無為は、芸術生産の条件となっている」と言ってることだし、なんもせんとゆーのも大切なことかもしれない(手前勝手な解釈に過ぎんが)。
 家に帰って読書。最初の20ページを読んで中断していたキム・スタンリー・ロビンスンの「永遠なる天空の調」(東京創元社、850円)を読了に持ち込む。「音楽が宇宙を救う」ってテーマは、「愛が人類を救う」ってテーマよりはSF的。その証拠に古今東西の小説化・漫画家・アニメーターが似たよーなテーマの作品を発表してる。「オレの歌を聴け」(「マクロス7」)ってなもんだ。「永遠なる天空の調」で、「音楽」が果たして「宇宙」を救っているかは実際に読んで戴くとして、少なくとも「音楽」によって明かされる「宇宙」の摂理に、他にないスケールの大きさを感じた次第。
 ゴールデンウイーク中に読んだ本はこれで5冊くらいか。もっと読めるかと思ったが、ページをめくっているだけで内容が全然頭に入ってこず、何度も何度もページを戻って読み直しているため昔ほど数が片づかない。本棚からあふれだした本は、冷蔵庫と壁の隙間を埋め尽くし、電話台の上を占領し、枕元に1メートルくらいの高さになって積み上がっている。しかし捨てることができない。古本屋に売ることもできない。もう1生読まないだろう本だってあるのに、ずーっと持ち続けていたいと思うこの心理は、知的探求心から発するものか、あるいはただの貧乏性か。ジャンルも作者もバラバラな本の山を見ている限りでは、どうも後者の方が当てはまりそうな気がするなあ。

【5月5日】 「ギンザ・コマツ」に溝口肇さんのミニ・コンサートを観にいく。デビューアルバム「ハーフインチ・デザート」が出た頃からのファン。チェロを使って綺麗な旋律の音楽を奏でる。アルバム制作のほかにCM曲やテレビドラマのサントラも数多く手掛け、最近では「ピュア」のサントラが話題になった、とか。僕は番組を視ていなかったので、どんな音楽が使われていたのか知らない。
 会場には早くから女性ファンを中心に大勢がつめかけ、30分前には用意された椅子は埋まってしまった。100人くらいが見守るなかを、黒いパンツ、黒いシャツ、黒い長髪を後ろで束ねた溝口さんがチェロをかかえて登場。アコースティック・ギターの伴奏というシンプルな構成のなか、「ハーフインチデザート」に入っている「キリンと月」や、カザルスの「鳥の歌」など7曲を演奏した。至福の時間。自費出版とゆーCD付き写真集は売り切れだったが、予約すればポストカードにサインしてくれるとゆーことで1つ所望する。
 たまには脳みそのでんぐり返るような本でも読もうと、鹿島茂さんの「『パサージュ論』熟読玩味」(青土社、2400円)を買う。ヴァルター・ベンヤミンの大著「パサージュ論」の「超ロングな書評」(まえがき)という内容だが、元本が元本だけに本書もまた難しい。「パサージュ論」から引用されていた「一方では、この男は、誰からも注目されていると感じていて、まさにいかがわしさそのもの。他方では、まったく人目に触れない、隠れこもった存在」とゆー1文に、個人ホームページ作りとして妙に惹かれる。
 ついでに下半身もでんぐり返らそうと、喜国雅彦さんの「悪魔のうたたね1」(小学館、1200円)を買う。入れてもらった本屋の袋から透けて見える、ブルマーを履いた後ろ向きの女の子の絵と、「おおきいこと(表)はいいことだ(裏)」の白い文字が恥ずかしい。先に読み終えた本が「悪魔のうたたね」であることはゆーまでもない。

【5月4日】 4連休の2日目にしてすることがなくなってしまった。仕方がないので毎週のごとく西武百貨店の屋上にいって缶コーヒーをすすりながら新聞を読んで時間をつぶす。3K新聞の名物コラム「3K抄」を読んで吹き出す。
 『テレビで「スーパー銭湯という名の新しい大浴場が人気になっていることを教えられた』って、おいおい名古屋じゃ15年も前から「○○健康ランド」とかいった名前の「スーパー銭湯」が結構な賑わいを見せているんだよ。おじいさんやおばあさんが、家に居所がないからって、健康ランドの座敷と仮眠室に住み込んでしまって、何カ月も家に帰らなくなったって、社会問題にもなったしテレビドラマにだってなったじゃないか。清水義範さんの「やっとかめ探偵団危うし」(徳間文庫、440円)にだって出て来るぞ。なになに、『1日入って350円だそうで、新種のレジャーらしい』だって。うーん、ここはちょっと違うなあ。健康ランドは1000円くらいするから。もしかして普通の銭湯が、いわゆる健康ランド化してるってことなのかなあ。少なくとも『新種のレジャーらしい』ってことはないと思うけど。
 昼間は栗本薫さんの「グランドクロス・ベイビー」(角川書店、1400円)を読了に持ち込む。真っ昼間から読む小説じゃないけれど、夜読んでても虚しくなるだけだからいっしょか。スポーツニッポンに連載された、全編性描写でいっぱいの「純ポルノ小説」なのに、同時に「純愛小説」でもある希有な作品。連載当初の主読者だった男性と、単行本で手にとる女性(女子高生)がそれぞれどんな感想を抱くのか、とても興味がある。
 あとはJリーグ中継見て、千葉テレビで再放送中の「Zガンダム」見て、「セーラースターズ」見てって具合のいつもどおりの土曜日の午後。たまっていた洗濯もやっちゃったし、冬物と春物の入れ替えも終わったし、読み残しの本を読むには気力がいりそうだし、風呂掃除は面倒くさい。どっか出かけるにしても出かけるあてなんて全然ない。あーあと2日、電話代ばっかり(それもネット代ばっかり)かかりそう。

【5月3日】 4連休が始まってしまった。予定はまったくたっておらず、初日からヒマを持て余すことになりそう。これでは日記が書けんと、だらけた気持ちを立て直して横浜へと向かう。目当ては横浜美術館で開催中の「森村泰昌展」。レンブラントやクラナーハの絵に入りこんだ作品、マイケル・ジャクソンやマドンナに扮したセルフポートレートで知られる作者が、こんどは「女優」に挑戦した作品が展示されている。ベルナール・フォーコンのマネキン人形を使った写真といい、ジェフ・クーンズがチチョリーナと抱き合った巨大なポートレートといい、どうも僕には、ともすれば「下品」とか「醜悪」とかいわれそうな作品に惹かれる傾向があるようだ。
 1時間ほどで桜木町の駅に着き、ランドマークタワーをくぐって横浜美術館へと向かう。横浜美術館の前庭は、竹橋の国立近代美術館4階北側の首都高を見おろす窓と並んで好きな場所。暑くなったとはいえ日差しはまだまだおだやかで、木の下のベンチに行って昼寝でもしていたら気持ちいーだろーなーと思う。でも周りのベンチはアベックばっかりで、寝ている横でアーだのウーだのやられた日には気持ち悪いだろーなーと思って考えを引っ込める。水蒸気が吹き出してくる噴水を横目に、館内に入って目当ての展覧会へと直行。1時間ほど中を見て図録を買って帰る。
 美術館内のアートギャラリーで開かれていた「ニパン・オランニウェスナ展」が思わぬ拾い物。ヒョウタンとミルクとタイ米を使ったインスタレーションは、単純なようでいて生命への慈しみや消費社会への警鐘などにあふれている。作者はタイ人で、東京芸大院で版画を学んだ新進気鋭のアーティスト。タイ米を敷き詰めた作品を踏んづけた女の子が困った顔をしていたら、会場にいた作者がすぐにかけつけてきて、足跡をならしていた。なんて親切な人なんだろー。さて明日は何をやろう。明後日は。

【5月2日】 連休の谷間で相変わらず仕事が少ない。一般紙と違って休日・祝日には新聞を出さないため、4連休直前の今日は新聞も作らない。仕方がないので溜まっていたリリースを処理したり、インターネットとつながらなくなっていた会社のマックをいじって、再びつながるようにしたりして時間を過ごす。午後は秋葉原に会社のお使いで出向く。インターネット関連のソフトとか雑誌を買ったついでに、ウィンドウズノートの最新型とかをながめると、それらの小さいこと軽いこと。ひとたびマックを選んだ身には、永遠に無縁のウィンドウズマシーンと思っていたが、かくも安くて便利な製品が出回っているのを見ると、ついフラフラとクラガエしてみたくなる。あー、うなるほどお金が欲しい。
 萩尾望都さんの「残酷な神が支配する」(小学館)の最新刊が出ていたので、買い残していた第6巻と合わせて買う。萩尾さんの漫画の中では、正直いっていちばん苦手な作品で、だったら読まなきゃいいと思うのだけど、「百億の昼と千億の夜」以来の20年近い萩尾ファンとしては、例え苦手な作品であっても、読み過ごすことができない。せいぜいが買うのを数カ月送らせるだけだ。
 苦手だった理由は、第1巻の冒頭で主人公が自分を虐待する義父を殺そうとして、実の母親を殺してしまう場面から始まった漫画が、いつまで経ってもその殺人事件へと至る過程の描写に費やされていて、母親への愛情からか、虐待を知られたくないという気持ちからか、自分への虐待を誰にも訴えられずに鬱々悶々としてる主人公に、少し辟易していたからだ。それが買い残していた第6巻の半ばで、ようやく殺人の描写へとたどり着いてから、話が急展開で進みはじめて、がぜん面白くなって来た。プチフラワーでの連載がどこまで進んでいるのかは知らないが、第7巻を経て、いよいよクライマックスへと迫るストーリーに、今は続刊がとても待ち遠しい。あー、うなるほど漫画が読みたい。

【5月1日】 暑くなってきたのでイラストを変えてみた。「ワードパーフェクト」のプレミアムCD−ROMについてきたソフト「ペイントイット」を使って、マウスでぐりぐり描いているのでとてもヘタ。「美少女シリーズ」が続くことに特に意味はない。でもなんとなく夏っぽい。手元に「超人画報」(竹書房)があってサンプルにはことかかないが、数枚しか写真がないので細部はたぶん違っている。ファンの方、ごめんなさい。
 ゴールデンウイークの狭間でどこの会社もやっていない。ソフト関係の会社はとくにそーで、ほとんどが完オフ状態になっている。アポ取りなんかの用件で電話をしても誰も出ない。仕事にならない。仕方がないのでCD−ROM屋をのぞいて最近の売れ筋をチェックしたり、本屋で必要な資料を探す。28日の「SFセミナー」の時に、「コードウエーナー・スミスの『人類補完機構シリーズ』の機構のとこだけ小さくして本屋にバーンと並べると、エヴァ関連だと思って買ってく人がいるよ」ってなことが話されてたが、その本屋ではなぜか、エヴァのイラストや音声なんかを集めたコレクターズCD−ROMが平に詰まれて、すぐ横にスミスの「人類補完機構シリーズ」3冊が並べられていた。「死海文書のひみつ」とかいった本もそばに置かれていて、なんてお茶目な本屋なのと感心した。看板やノボリなんかはいっさいなく、隅のほうにひっそりとまとめて置かれていたあたりが慎ましい。
 本屋いったついでに栗本薫さんの「グランドクロス・ベイビー」(角川書店、1400円)を買う。「スポーツニッポン」に連載された「純粋ポルノ」で、新聞連載だけあってアッチソッチコッチ方面の描写にはことかかない。地下鉄でキレイな女性の前に立って読み始めると、とたんに困ったことになって、足をモゾモゾさせて数字を1から100まで数える必要に迫られた。意味がわからない人は、東京スポーツを必ず買って帰ってくるお父さんに聞いてください。


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