|
|
1.タワーリング 2.碧空のカノン−航空自衛隊航空中央音楽隊ノート− 3.天空の救命室 4.群青のカノン−航空自衛隊航空中央音楽隊ノート2− 5.薫風のカノン−航空自衛隊航空中央音楽隊ノート3− 6.空に咲く恋 |
1. | |
「タワーリング」 ★☆ |
|
2014年02月 2011/06/16 |
六本木ヒルズをモデルにしたような地上50階地下 5階建ての高層ビル、“ウインドシア六本木”。そこで突然に起きた事件は、何とビルジャック! しかも犯人一味は、最上階に一人で住むビル所有会社=マーズの社長=川村を人質にとり、現金5億円を要求してきます。 17階の本社に集まった中沢副社長をはじめとするマーズの幹部、事件の端緒に関わった同社企画事業部の船津康介、ビルの周囲を囲む警視庁特殊犯捜査係らが固唾を飲んで見守る中、常識を超える犯罪計画がスリリングに進められていきます。 巨大な高層ビルを如何にして丸ごとジャックするのか。フィクションとはいえ興味あるところです。 出だしこそ、TV局ジャックを描いた五十嵐貴久「TVJ」を彷彿させてくれますが、動機も結末も「TVJ」とは大違い。 最後は予想もしなかったドンデン返しです。 親子の情、新たな目標を描き出し、その一方で誰も傷つくことのない結末は、温かくて、爽快な読後感を読み手に残します。 それもこれも、本作品の型破りな趣向があってこそ。 |
「碧空(あおぞら)のカノン−航空自衛隊航空中央音楽隊ノート−」 ★☆ | |
2015年09月
|
表題から判ることですが、本作品は航空自衛隊の中央音楽隊(吹奏楽)を舞台にした、連作日常ミステリ。 “日常ミステリ”というとどうも北村薫さん、加納朋子さんというイメージが強いのですが、自衛隊絡み、吹奏楽絡みの謎という訳で、本書も間違いなく日常ミステリのひとつです。 主人公は、航空自衛隊立川分屯基地内に本拠を置く「航空中央音楽隊」に属する鳴瀬佳音(かのん)。 八戸高校で吹奏楽部〜東京の音大を卒業して航空自衛隊・音楽隊に入隊。担当パートはアルトサックス。そして階級は現在「士長」。同期の吉川美樹が既に三等空曹に昇格しているというのに佳音が未だ士長であるのは、何度かしくじっているためで、実はこれがかなりヤバイ状況にある。 性格はというと、不器用、色気なし、恋愛事に鈍感である上に、隊舎で同室の先輩=“安西夫人”こと安西庸子三等空曹曰く、トラブルを招き寄せる運命を背負っているのだと。 自衛隊かつ音楽隊という物珍しさと面白さ、主人公である佳音のいつもアタフタ・バタバタしているキャラクターの愉快さ、それに加えて佳音を囲むそれぞれ個性的な仲間たちの楽しさが相まって、軽快で楽しい連作ミステリに仕上がっています。 ハードサスペンスの多い福田和代作品の中にあっては、気軽に楽しめるという点で貴重な存在かもしれません。 ・「ギルガメッシュ交響曲」は、消えた楽譜に関わる謎。 ・「ある愛のうた」は、佳音と音大時の仲間たちが出会った謎。 ・「文明開化の鐘」は、中学校吹奏楽部の中で起きた謎。 ・「インビジブル・メッセージ」は、戦争カメラマンが佳音や美樹の元に持ち込んできた謎。 ・「遠き山に日はおちて−渡会俊彦の場合−」は、渡会三等空曹のままならぬ恋の経緯を描いたユーモラスな中休みと言える篇。 ・「ラッパ吹きの休日」は、佳音に勝るとも劣らないドジな新人=澄川理彩二等空士の不可解な行動の謎。 ギルガメッシュ交響曲/ある愛のうた/文明開化の鐘/インビジブル・メッセージ/遠き山に日は落ちて−渡会俊彦の場合−/ラッパ吹きの休日 *航空自衛隊の音楽隊は、こんなところです! |
「天空の救命室−航空自衛隊航空機動衛生隊−」 ★☆ |
|
2018年02月
|
愛知県の小牧基地に実在する“航空自衛隊航空機動衛生隊”を舞台にしたストーリィ。 てっきり自衛隊ならではのドラマチックなストーリィが展開されるかと思っていたのですが、意外と地味。 というのは機動衛生隊の任務は、重病人の輸送にあり、それでは派手なストーリィにはなりようがないですね。 主人公はその機動衛生隊に配属されてまだ新米という状況にある若い(と言っても30歳)医官=内村彰吾一等空尉。 その彰吾を中心に、同じ機動衛生班に属する他の3人、苦手ながら何故か組むことが多い輸送機C-130Hのパイロット=鰐淵三等空佐らが主な登場人物です。 ・第1章は、移植手術を受ける患者を千歳から岡山へ輸送する途中、当の病人がとんでもないことを言い出して・・・・。 ・第2章は、経験を積むために衛生隊員が週に一度か二度赴いている小牧市民病院の救命救急センターにおける、彰吾の医者らしい奮闘を描く章。 ・第3章は再び青森から伊丹への重病人輸送。患者はまだ7歳の男の子ですが、機内で両親が大喧嘩を始め・・・・。 ・第4章は彰吾の青春模様を描く章。ところが妹の優衣が突然彰吾の元に押しかけてきて・・・・。 ・第5章は任務により機動衛生隊がタイへ出張した時のこと。何ととんでもない事件が発生。さて彰吾は? それなりに楽しめる連作ストーリィ。 ただし、航空自衛隊の任務に興味がないと物足りないかも。 1.高度一万メートルの変心/2.ペガサスとアスクレピオスの杖/3.心の距離/4.救える生命と/5.天翔ける救命室 |
「群青のカノン−航空自衛隊航空中央音楽隊ノート2−」 ★☆ | |
2018年01月
|
航空自衛隊、中央音楽隊を舞台にした青春&日常ミステリ“航空自衛隊航空中央音楽隊ノート”の第2弾。 本巻で嬉しかったのは、本書の半分が沖縄舞台となったこと。 昨年の旅行で沖縄大好きになった所為か、沖縄、那覇、ゆいレール、国際通りという言葉を聞いただけで嬉しくなってきます。 主人公である鳴瀬佳音三等空曹の、高校吹奏楽部での仲間だった渡会俊彦三曹が何と南西音楽隊(那覇)に異動。 そして、南西音楽隊で起きたトラブルから応援要請が中央音楽隊に寄せられ、命じられて佳音が那覇へ駆けつけます。 「恋するダルマ」「行きゅんな加那」の2篇は、その沖縄・南西音楽隊を舞台にした日常ミステリ。 ただ、本シリーズの楽しさはミステリ部分より、天然ボケといった観ある佳音のキャラクターと、佳音&渡会2人の漫才のようなやり取りにあります。 立川を離れて沖縄という舞台、南西音楽隊で渡会を狙う清楚な美少女風=清水絵里空士長に、佳音が憧れの人という新人=松尾光二等空士が絡み、すれ違い恋模様はますます活気づきます。 ・「希望の空」は、中央音楽隊のバス、次いで花束消失の謎。 ・「恋するダルマ」は、南西音楽隊の大事なダルマに絡む謎。 ・「ナンバーワン・カレー」は、吉川美樹夫婦における一幕。 ・「行きゅんな加那」は沖永良部島でのひと騒動。 ・「恋するフォーチュンクッキー」では、松尾光に興味大。 ・「ラ・フィエスタ」では、航空祭での迷子騒動&安西夫人。 佳音&美樹&真弓くんを中心軸にした、賑やかで楽しい“航空中央音楽隊”ストーリィ、本書で終わることなくまだまだ続く様子です。楽しみだなぁ。 希望の空/恋するダルマ/ナンバーワン・カレー−吉川美樹の場合−/行きゅんな加那/恋するフォーチュンクッキー−松尾光の場合−/ラ・フィエスタ |
「薫風のカノン−航空自衛隊航空中央音楽隊ノート3−」 ★☆ |
|
2019年10月
|
航空自衛隊、中央音楽隊を舞台にした青春&日常ミステリ“航空自衛隊航空中央音楽隊ノート”の第3弾。 このシリーズの面白さは、気楽に笑っていられるところにあります。 何でかなーと考えてみると、高校生あたりの部活動のノリと言って良いでしょう。 個性的な面々が繰り広げるドタバタ劇に加え、主人公の鳴瀬佳音三等空曹が余りに鈍感な故に中々進まない渡会俊彦三曹との恋模様、というのがストーリィの主軸。 高校部活と違うのは、卒業といった退場がないことと、そこは大人であるだけに恋愛問題も何かと濃くなること。 南西音楽隊(那覇)に異動した渡会と佳音の関係は進展するのかどうか、佳音の同期である美樹や風格ある先輩=狩野夫人といった仲間だけでなく、読者も気になるところです。さて・・・ ・「サクソフォン協奏曲」:真弓クンこと長澤一等空士に音楽を続けるよう助言してくれた恩人の正体は? ※立川分屯基地での競技会、渡会は何故那覇から参加? ・「ルージュの伝言」:漫画家の朝霧マイカからストーカーについて相談された、“航空中央音楽隊の安楽椅子探偵”たちの推理は? ・「ゲット・イット・オン−室郁子の場合−」:室空士長の悩みを吉川美樹三曹があっさり解決。 ・「空みあげて」:長野のふれあいコンサートのため、皆で温泉旅館に宿泊。そこで佳音たちが出会った謎は? ・「星に願いを−土肥諒子の場合−」:土肥諒子が航空自衛隊の音楽隊に入隊した経緯は・・・。 ・「インデペンデンス・デイ」:合同演奏会の為、中央音楽隊の面々が那覇へ。渡会、一気に勝負に出るか? サクソフォン協奏曲/ルージュの伝言/ゲット・イット・オン−室郁子の場合−/空みあげて/星に願いを−土肥諒子の場合−/インデペンデンス・デイ |
「空に咲く恋」 ★★ |
|
2020年07月
|
花火、花火師を題材にした、時節にぴったりのボーイミーツガール・ストーリィ。 主人公の三輪由紀(よしき)はイケメン男子ですが、極度な女性アレルギーとあって女性に近づくことさえもできない身の上。そのうえ花火師の父親からは長男故のプレッシャー。 家出して自転車旅をしていたところ行きついたのが、新潟県長岡市の山古志。そこで地元の猪貝久造さんの厄介になっていたところ、偶然出会ったのが、同世代でやはり花火師の一人娘であるという清倉ぼたん。 男の子と見間違えるようにボーイッシュで元気者のぼたんに、何故か由紀の女性アレルギーは起こらず。 ぼたんと親しくなる一方、一般観客として花火大会を観た由紀は改めて花火の魅力を感じるようになり・・・。 花火師というお仕事小説要素に、何事にも弱気な由紀と元気溌剌娘のぼたんという清新な青春恋愛ストーリィ。 2人の周囲にいる花火師たちも魅力的ですし、ぼたんに対しても女性アレルギー発生!?という由紀の前途多難ぶりも楽しい。 夏の季節には、こうした爽やかな青春恋愛ストーリィが何よりも似合います。 由紀とぼたんのその後のストーリィも是非読みたいと思うところですが、そういう余韻に浸れるのまた楽しき哉。お薦めです。 (第一部)1.僕が旅に出た理由/2.死ぬ気で花火を見るらか/3.夢にまで見た大曲/(第二部)4.僕の、花火/5.まな板のコイ/6.コイは異なものオツなもの/エピローグ |