非接触電流計 BSIDE ACM91
による低域パワー実測




サブウーファー KEF Kube 12b導入効果に関連する計測です。

 経験上、所有するCDでもっともパワー的に厳しいのは、バーンスタイン指揮、チャイコフスキー1812年の大砲なので、Kube 12b導入前にピークレベルでどれくらいのパワーがJBL4344の38cmウーファーに入っていたのかを実測したところ、JBL4344にとっても、270W×2のDCPW-240にとっても、かなりぎりぎりであったことが判明しました。

まず、この大砲のピークは、DEQ2496のデジタル出力では何dBになるか、RTAで実測。

左は、Kube 12b導入前のDEQ2496設定での結果。
右は、同、導入後に63Hz以下を下げたの設定での結果



 左では63Hzのピークが-10dBに達しています。
 全帯域レベルメーターの-10dBとは異なり、RTAの周波数バンド毎のレベルでの-10 dBは、ほとんど見かけない大音量といえます。

 プリアンプC1100 のボリウムを、この曲を聴く時と同じ「50」にして、-10dBの信号を63Hz正弦波で入れた時の
パワーアンプの出力電圧を測ると、26.1V でした。
 (-10dBを連続入力するのは危険なので、電圧が1/10になる-30dBで入れて、数字を10倍しています。以下の電流計測でも同様です)。

 スピーカーの実際の負荷インピーダンスは、無響室で測った公称特性(外部サイト)からは予測できないので、入力パワーを知るには、電圧に加え、電流も計測する必要があります。

 しかし、スピーカーケーブルの途中に電流計を直列に入れたくはないので、非接触型の電流計を買いました。BSIDE ACM91 です。


左先のクリップを開いて、電流が流れている線を通すと、周辺の磁場の計測から電流値がわかります。

 閉曲線に沿った磁場の積分値は、その閉曲線の内側を通過する電流で決まるという、よく知られた物理法則を使っています。昨今は、こんなものが7000円以下で買える。しかも、精度はミリアンペアだと・・・。今回の計測以外に用途を思いつかなかったけれど、オーディオ用品からすれば、安すぎる、という錯覚で、つい買ってしまいました。

 100Hz以下用パワーアンプ DCPW-240の出力線をクリップに通します。


プリアンプのボリウムを50、入力は-30dBとしたときの出力電流は、以下の通り0.373アンペア。入力が-10dBだったら、
3.73アンペアです。


40Hz〜80Hzで出力電流を計測し、アンプ出力とスピーカーインピーダンスを計算すると、以下の表のとおりです。(すべて-10dB入力に換算済)。

 周波数(Hz) 電流(A)  出力(W)  スピーカーインピーダンス(Ω)
40
1.25 32.6 20.8
45
1.56 40.7  16.7
50 3.73 82.4 7.00
63 5.01 131 5.21
80 4.26 111 6.13

 インピーダンスが下がる
63Hzでのアンプ出力(スピーカーへの入力)が大きく、131ワット 出ています。

 あと3dB余り入力が大きければ、8オームでのDCPW-240の定格出力270ワットに達するので、63Hzのピーク -10dB は、決して余裕綽々ではない。実際は63Hz単音ではなく、他の周波数も乗るのですから、パワーはさらにぎりぎりでしょう。

 JBL4344のウーファーの許容入力は、ピンクノイズの連続入力で200W。大砲だけなら大丈夫かと思いますが、こちらも余裕綽々ではなさそう


 63Hz以下をKEF Kube 12bで出すことによって、超低域を増強しつつも、DEQ2496によるブーストは3dB下げられたことで、38cmウーファー側のヘッドマージンは6dBに増えました。電圧で2倍、パワーなら4倍のマージンですから、かなり安心感が増しました。

上段:GEQの設定、中段:PEQの設定、下段:周波数特性(PAA3)
はKube 12bによって増えた63Hz以下の部分。


 Kube 12b 導入後は、C1100 のボリウムをレベル「52(50からは+1dB)」まで上げて聞いていてますが、ひずみもまったく感じなくなり、明らかに大砲の音は変わりました。結構、ぎりぎりだったのですね。100Hz以下だけで270ワット×2 もあれば余裕だと思っていました。


     2023年6月2日記
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