最高裁判所判事の評価

一票の格差

国民審査に備え、最近の各判事の「一票の格差」に対する考えを整理しているので参考にしてください。「継続は力なり」。9年間このページを維持管理してい ます。

2000/9/6朝日新聞の記事を読んでこのページ を作成したときは弁護士出身は違憲判断をし、判事、行政官、検察官、学者は合憲判断するものであるであると刷り込まれた。しかし違憲判断をする外交官出身 者が行政官という意識はなかった。そしてばくぜんと“一票の格差”に対し違憲判決を出すのは弁護士出身の判事だけであると思い込んでいた。 むろん長野県出身の才口判事も違憲判断をしている。

同期のS.K.から外交官の福田氏は違憲判断をしている。福田博の「世襲政治家がなぜ生まれるのか? −元最高裁判事は考える」 を読めと進められた。なるほどその通り、外交官も行政官ではある。思い込みの恐ろ しさを身にしみた。「多くの人は自分が見たいと欲するものしか見ない」とい言われるが我も例外ではない。

分かるのは意外にも裁判官出身者ががんこである。判例にこだわる彼らのロジックがそうさせるようだ。職業裁判官は一種の奇形児のようであると福田氏の本を 読んで確認した。法理論はむしろマイナスに作用する。

社保庁出身で評判の悪い横尾判事は判事キャリアーの最後に違憲判決を出している。 残念なことは横尾判事の後任で労働省の役人をしていた桜井龍子は合憲論者のようだ。

気がかりなのは長野県出身の弁護士、那須弘平判事が2006年合憲判決を書いていることだ。自民党政府は自らの長期政権維持のためにこのような考えの人を 選んでいる気配がある。ただ2009年には 違憲に転向した。升永英俊弁護士が朝日新聞で指摘しているように、2007年に一票の格差は合憲と判定した判事出身の涌井紀夫判事(2009年12月、現職のままガンで死去)と弁護士出身の那須弘平判事を2009年の国民審査で罷免し て国民の総意を判事に教える必要があると書き、朝日新聞一面に「一人一票実現国民会議」なる団体が一面広告を出したこと。発起人に東京長高会の会長の新井 寿光の名前が見えたことも少しは影響したのか?

2009年には大分風向きが変わってきた。民主党政権がどう応えるか注目してゆこう。

判事 出身 1999年 2004年 2006年 2009年
竹崎 博弁      
桜井 龍子      
竹内 行夫      
金築 誠志      
田原 睦夫       ×
近藤 崇晴       ×
宮川 光治       ×
町田 顯    
上田 豊三    
島田 仁郎    
藤田 宙靖  
甲斐 中辰夫  
横尾 和子   × 退
滝井 繁男   × ×  
泉徳 治   × ×  
那須弘平   ×
津野 修    
堀籠 幸男  
古田 佑紀  
今井 功  
才口 千晴   × 退
中川 了滋   × ×
涌井紀夫  
金谷 利廣 退  
北川 弘治 退  
亀山 継夫 退  
梶谷 玄 × × 退  
濱田 邦夫   × 退  
福田 博 × × 退  
深澤 武久   × 退  
山口 繁 退    
千種 秀夫 退    
井嶋 一友 退    
藤井正雄 退    
町田 顕 退    
大出 峻郎 退    
奥田 昌道 退    
河合 伸一 × 退    
遠藤 光男 × 退    
元原 利文 × 退    

判=裁判官、学=学者、検=検察官、弁=弁護士、政=行政官、外=外交官。

○=合憲、▲=合憲だが違憲の疑い、×=違憲、…当時判事職にあらず、退=退官。

太字は2009年の国民審査対象判事

時間はかかったが、少数意見が次第に多くなりついに違憲判決がでた。そしてボールは政治家に投げられた。しかし2012年になるも国会は定数是正も できず、選挙もできない状態に陥っている。

泉徳治(判)は最高裁判事退任後弁護士となっていたが2013/10/2に6月の東京都議選は最大3倍を超える「一票の差」が生じているので違憲として選挙無効の訴訟を東京高等裁判所に起こしたのは評価できる。

September 6, 2000
Rev. October 3, 2013


もんじゅ控訴審


議員定数裁判のほかに遺憾に思う最高裁にもんじゅ控訴審がある。

原発に反対する市民が国や電力会社を裁判に訴えても、勝った試しがないが、一度だけ国が敗訴したことが2003年の 高速増殖炉原型炉「もん じゅ」 の原子炉設置許可をめぐる行政訴訟の名古屋高裁金沢支部判決であった。その国側敗訴の判決を書いたの当時の川崎和夫裁判官である。初めて国敗訴の判決をだ した手法がユニークであった。原発のような先端的技術に関する訴訟では、専門家の意見が決定的に重要である。日本では専門家はほとんどが推進派で、慎重派 の専門家も一部いましたが、彼らは主要なポストから排除されていた。立派な肩書を持つ権威ある専門家が『日本の原発は安全だ』と言えば、裁判所はそれに反 する判決は出しにくい。そこで川崎さんは、口頭弁論とは別に、非公開の進行協議の場で双方の専門家に質問してレクチャーを受ける方式を採用した。当事者双 方には専門家がついているが、裁判所には専門家がいないので、双方から説明を聞いた方が理解が速いと判断しましたそうである。進行協議にしたのは、非公開 なので自由に質問や議論ができるという点があった。公開の口頭弁論では、発言が慎重にならざるを得ない。月1回、朝から夕方まで丸1日専門家の話を聞くと いうことを約1年続けたので、裁判所も大変だったが、当事者にとっても大きな負担だった。川崎裁判官が採用した手法はオーストラリアの裁判所で生み出さ れ,活用されてい る,コンカレント・エヴィデンス(concurrent evidence)という手法とほぼ同じと思われる。原告側で活躍したのが小林圭二、久米三四郎、石橋克彦らである。高度な科学技術をめぐる裁判では有効 な方法なのだが、その方式はその後、他の原発訴訟では利用されなかった。国側はあれだけ苦労してわかりやすい資料を用意して説明したのに敗訴の結果になっ たので、こんな方法は二度とやりたくないと考えたのだろうと推察している。

「もんじゅ」の上告審で、最高裁判所(最高裁)第1小法 廷(泉徳治裁判長)は、2005年5月30日、国の専門技術的裁量を認め、原子力安全委員会および原子炉安全専門審査会による安 全審査の調査審議 や判断過程に看過し難い過誤や欠落があったといえないとし、高裁の事実認定を覆し「原判決を破棄する。被上告人らの控訴を棄却する。控訴費用および上告費用は被上告人らの負担とする。」と の判決を言い渡し、許可を無効とした名古屋高等裁判所金沢支部の二審(控訴審)判決を破棄し、住民側の請求を棄却した。この最高裁判決で国側の勝訴が確定 し、提訴から確定まで20年にわたる裁判に幕が閉じた。

2011年7月の世界論文「日本の司法 は原発をどのように裁いてきたか」で海渡雄一弁護士(福島みずほの夫)はこの最高裁判決を禁じ手を犯したと告発している。

高校の同期才口弁 護士は2004年1月6日に判事に任命され、 第一小法廷所属でもんじゅ控訴審の原判決を破棄に関与した。その判決文も最高裁アーカイブから取り寄せて読んだ。泉徳治(判)、横尾和子(政)、甲斐中 辰夫(検)、島田仁郎(判)、才口千晴(弁)全員一致とのこと。残念な ことで ある。まさに「日本の政治・経済の不調の原因」そのままの姿だ。才口判事らが折角のこの判決を破棄したのである。その罪は重い。

山下竜北海道大学教授は「本判決は、規制法上の各許認可の審査対象を規制法の仕組みから離れて、極めて融通無碍に理解している傾向がつよい」と厳しく批判 している。その後の進展は2010年9月24日の視察時直前にもんじゅの落下して引き上げられなくなった炉内中継装置の引き 上げが10ヶ月と17億円かけてようやく2011年6月23日に回収できたというていらくで大問題になっている。

1997-2000年にかけて東電の勝俣会長は再処理路線は金がかかるからやめたいと言っていた。ただもし再処理路線を捨てるとなると青森県から使用済燃 料 を持ちかえれといわれるわけで、東電一社の一存では動きがとれなかった。こういうときにエンロン社の圧力で経産省も重い腰をあげて電力の自由化に舵を切 り、再処理路線も見直しかとおもっていたところ、エンロンの倒産で風向きが代わってしまった。たまたまカルフォルニアで電力不足問題が生じ、これも自由化 論 者を追放する口実となった。そうして官僚機構のなかで安政の大獄といわれることが生じ、自由化路線の官僚は粛清され、再処理路線が継続され、原子力立国な るあやしげな妄想が日本を覆うことになった。そのとき、提灯持ちをしたのが京大名誉教授の神田啓治である。

才口判事は退官してから2009年旭日大綬章を受賞している。そして日本でトップ5に入る規模を誇るTMI総合法律事務所に泉徳治、今井功と一緒に天下った。TMIは「読売VS清武」裁判で、読売側の代理人を務めている。読売は原発推進のマスコミのリーダーでもある。

Rev. November 3, 2012



東電OL殺人事件

2000年(平成12年)6月27日,勾留の裁判に対する異議申立て棄却決定に対する特別抗告事件に判決

第一審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡したとしても、控訴審裁判所は、記録等の調査により、第一審の無罪判決理由の検討を行 い、それでもなお罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があるときは、勾留の理由があり、かつ、控訴審における適正、迅速な審理のためにも勾留の必要性 がある場合、その審理の段階を問わず、被告人を勾留することができる。

第一小法廷
裁判長    藤井正雄(判)
陪席裁判官    遠藤光男(弁)、井嶋一友(判)、大出峻郎(政)、町田顕(判)
意見
多数意見    井嶋一友(判) 大出峻郎(政)、町田顕(判)
意見    なし
反対意見    藤井正雄(判事)、遠藤光男(弁)

本判決は検察が真犯人に結びつく証拠(被害者の膣内をふき取ったガーゼ、被害者の爪の付着物、胸、口に付着していた物質、陰毛)を秘匿したことにあり、誤 審の可能性はほぼ確実。外国人差別意識がなかったとはいえない。当時の担当検事はもう時効ではあるが、刑事訴追に値する。

多数意見であった大出峻郎は東大法卒、内閣法制局第一部長上がりではあるが判事としては誤審であったことになる。

殺人犯の刑罰の量刑

最高裁判司法研修所が過去30年間の346件の事件を解析した結果、一人殺せば死刑32%、二人殺せば死刑59%、三人殺せば79%が死刑は常識の範囲 内。ただし一人殺しても無期懲役保釈中、身代金目的、保険目的だと一人殺しても死刑。二人殺しても主犯でなければ無期という。これが職業裁判官の判断。

July 24, 2012

Rev. October 17, 2012


佐藤栄佐久前福島県知事収賄事件

2012年10月15日、最高裁第一小法廷の桜井龍子裁判長は収賄の疑いで起訴されていたプルサーマル計画に反対した佐藤栄佐久前福島県知事に有罪判決を 下した。政府方針にたてつく地方首長を冤罪におとした特捜検察の片棒を担いだ可能性がある。桜井龍子裁判長は九大法卒、労働省の行政官上がりで一票の格差も合憲とした官僚仲 間の利益優先の典型的人間である。このような判事に判断される不幸を思う。行政官上がりの指定席が問題の根源にある。廃止しなければならないだろう。

October 17, 2012

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