■ 車両盗難抑制 ”ガラスエッチング” 施工記 ■ |
固有の車体番号をドアガラスなど6面に刷り込む
”ガラスエッチング” をしました。
本編は、その作業風景と仕上がり具合の紹介です。
このページの構成(もくじ); 1.はじめに 2.トヨタのディーラーにて 3.スバルディーラーでも施工可能に 4.事前打ち合わせの巻 5.作業当日、現場にて 6.エッチング加工の出来映えの巻 7.あとがき 8.余談 |
延べ訪問者数; ●2004-02-18 : 新製 ●2004-03-01 : 校正、仮公開 ●2004-03-01 : 画像追加、正式公開 |
【画像1】 リヤクオーターウィンドウに施工した様子(※車体番号の末尾は伏せ字にしてあります)
( 左 ) :
エッチング処理専用台紙を固定ガラスに位置決めして貼付ける。
(中央) :
エッチング処理前の台紙の様子。印刷部分がガラスと反応する。
( 右 ) :
エッチング処理後のガラスを拡大撮影。ご覧のようにクッキリと。
1.はじめに |
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日本では、無防備な人々が多い上に自己中心的なワルが多いためか、車上荒らしや車両盗難が絶えないという。ある統計によると、「1日あたり173台、約8分に1台の割合で盗難の被害が発生している」
そうだ。最近でこそ、自動車メーカーによるイモビライザが標準装備される車両も増えてきたが、まだまだ一部の高級車やスポーツカーに限られており、軽自動車を含めた一般量産車にまで広く普及しているとは言い難い状況であると思う。
今回、このページで紹介するのは、ガラスのエッチング処理についてである。特種な処理によって車体番号をガラスに刷り込むので、「万が一、車両盗難にあっても発見 (特定) されやすい。」 また、「もし車体番号の入ったガラスを (窃盗団が) 交換しようとしても、交換工賃で十数万円ほどかかるので、そんな手間のかかる車両は最初から盗むのを嫌うのではないか?」 ・・・と言われている処理である。 私が最初にこのガラスエッチング処理について知ったのは、八重洲出版・ドライバー誌に紹介された小さな記事からであった。それは今からちょうど1年ほど前、2003年春ころであったように思う。その後しばらくして、インターネット系のニュースで一部のトヨタディーラーでも施工可能になったと知り、その当時、さっそく調べてみたことがある。確かにトヨタの公式サイトでは、「セーフティ
コード」
という名称で、そのサービスが紹介されていた。その具体的な内容は、現在でもこちらで見ることができる。 以下、そのトヨタの公式サイトからの一部引用 (引用部分は一字一句変えず) である。 「セーフティコードは、自動車固有の車台番号を専用の機器でガラス面に印字して盗難を防止するトヨタの新サービス。印字はガラスを交換しない限り永久に消えないため、クルマの盗難を防止するだけでなく、万が一、盗難にあったときの発見を容易にします。国産車だけでなく輸入車にも施工可能です。」 「プロの窃盗犯の目的は、盗難車を転売して利益を稼ぐことです。そのため転売するにあたり、車検証の偽造等様々な工作をします。セーフティコード施工車の場合、全く別のクルマに仕立てるにはガラス交換(コスト約40万円)が必要なため、その分利益が減り、窃盗犯にとって旨味が少なくなってしまいます。逆に交換しないと盗難車ということがすぐに分かってしまうため、結果として窃盗犯はセーフティコード施工車を避けるようになるのです。」 |
2.トヨタのディーラーにて |
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ふむふむ。「セーフティ
コード」
なるサービスは、「国産車だけでなく輸入車にも施工可能」
とな。ならば、当然レガシィにも施工可能ということだな!
”ガラス交換のコスト約40万円”
というのは、すぐにはレガシィに当てはまらない
(トヨタ車向け?) としても、自衛手段としては確かに有効な対策の一つになりそうだ。・・・こんな感触を得たのであった。 興味が湧いた私は、実際にその処理を施工することを視野に入れ、トヨタのディーラーを直接訪問することにした。昨年 (2003年) の夏頃の話である。 念のため、私は事前にその記事 (トヨタ公式サイト) を印刷してから、サービスを取り扱っているという、とあるトヨタディーラーに打診しに行った。最近リニューアルオープンしたばかりで、広大な敷地内にこれまた広いショウルームを持つ営業所だ。世の中には 「自動車メーカー (製造者) が潤っていても、自動車ディーラー (販売者) は潤っていない」、という構図もままあるのだが、ことトヨタに限っては、そんな不況風はみじんも感じられない。フロントウィンドウ越しにだんだんと近づいてくる立派なショウルームをながめながら、ふと私はトヨタディーラーの潤沢な底力 (財力) を思い浮かべてみた。 【画像2】 立派なショウルームを持つトヨタのディーラー 怪しいレガシィで乗りつけた私を、トヨタのセールスマンは快く迎えてくれた。というより、そのセールスマンの素早い反応に私は驚いた。ディーラーの駐車場にクルマを入れようとするや否や、ショウルームからひとりのセールスマンが飛び出してきて、駐車場所を誘導してくれたのだ。そしてクルマを止め、私が運転席から降りるや否や、そのセールスマンは 「本日はどういったご用でしょうか?」 と尋ねてきたのだ。さすが天下のトヨタ、ディーラーのセールスマンへの教育もぬかりない。これまでは、自由勝手にショウルーム内を散策して下さいというような、スバルやホンダの (いわば) 放任的な接客態度(※1)に慣れていたせいか、こうしたトヨタディーラーで受けた丁寧な態度に、妙な居心地の悪さを感じてしまう私であった。 (※1):スバルやホンダのディーラーでの接客態度が悪いと言っているワケでは 新車の見積もりや下取車の査定といった商談ではないため、そのセールス氏には 「メカニック (サービスフロント) の方に直接お話があります。」 と伝えたところ、「しばらくこちらでお待ち下さい。」 と、ショウルーム内のテーブル席を案内された。しばらくして、サービスフロントの方がやってきた。どうやらチーフメカニックのようであった。他車(レガシィ)で乗り付けた私に、いきなりチーフが対応してくれるトヨタに、懐の深さを感じてしまった。 私は、あらかじめ印刷しておいた 「セーフティコード」 の記事を取り出し、レガシィに施工する場合、どんな手順 (予約手続き方法を含む) を経て施工されるのか、その作業工数はどれくらいか、またその工賃は税込みでいくらになるのか、などについて尋ねてみた。するとそのチーフは、「すみません、(セーフティ コードについては) よく分かりませんので調べてみます。」 と言って奥に消えていった。接客面での社員教育はしっかりとしているトヨタディーラーであっても、新商品や新展開されたサービスの知識教育については、まだまだ不十分なようであった。それでも、分からないものは素直に分からないと言ってもらった方が、ヘタにその場を取り繕(つくろ)うよりも、かえって好感が持てるのは言うまでもない。 本社に問い合わせをしたらしく、しばらく待ったのち、私は次のような説明を受けた。 ◎レガシィへの施工はもちろん可能。ただし、ガラス面の多いワゴン車なので 結局、トヨタでの施工事例もまだほとんど無いこと、今ここで予約を入れたとしても、後日またトヨタディーラーにクルマを持ってこなければならないこと、その際には数日間預けなければならないこと、などが判明したため、とりあえずレガシィへの施工は断念
(延期)
した。施工はトヨタのディーラーに限ったものではなく、専門のプロショップでも同様に施工可能である
(とドライバー誌で紹介されていた)
からだ。私としては、スバル車であっても、天下の ”トヨタディーラー”
で実施してもらうことで、それなりの保証と安心を得られるであろうことを期待したのだが、この時点では、残念ながらまだ期(機?)が熟していない・・・と見るのが正解のようであった。 |
3.スバルディーラーでも施工可能に |
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そうこうしているうちに月日は流れ、私はガラスエッチングのことを忘れかけていたが、ふとしたキッカケでスバルディーラーでもそのようなサービスが展開され始めたことを知ることになった。
2004年1月、この年最初の 「スバルお客様感謝デー」 にて、10ポイント無料点検を受けようとスバルディーラー (※東京スバル) に足を運んだときのことであった。点検整備を待つ間、ショウルームに置いてあった 「ご自由にお読み下さい」 という棚の中から、シックススターマガジンだったかクラブレガシィだったかの雑誌を取り出し、何気なくページを読み流していると、例のガラスエッチング処理についての取材記事が載っていた。「あぁ、1年くらい前に、八重洲出版の記事にも載っていたな・・・最近また流行ってきたのか?」 などと思いつつ、詳しく読んでみる。その記事の中では、車体番号の他に、雑誌名 (か出版社名) までをもガラスに刷り込んでいた。 「あらあら、雑誌名まで刷り込んじゃって・・・。(もしも中古車として市場に流れたとき) さばきにくくなるだろうに。でもまぁ、デモカーだからそういったことも ”アリ” でいいのか。次のオーナーも、(元・雑誌社所有のクルマということで) 案外そのロゴマーク付きのガラス刻印を気に入ったりして?!」 などと思いつつ、たまたま寄ってきた担当セールス氏にその記事を見せたところ、「ウチでも最近、始めたんですよ、その処理を。」 と言うではないか! 「え?本当ですか?」 私は担当セールス氏の言葉に素早く反応していた。 すぐに詳細をサービスフロントに聞いてみたところ、 ◎東京スバルの場合、ガラス6面
(フロント+リヤ+ドア4枚) とのことであった。 それならば、わざわざ外注業者を探して依頼する必要も無い。すぐにその場で施工してもらうことに決め、予約をお願いした。また、どうせお願いするなら・・・ということで、私のレガシィだけでなく家族のインプレッサ (GDA-C型) も含めた2台を同時に施工してもらうことにした。そりゃそうだろう。年式やモデルの人気度から判断すると、私の古い旧型BGレガシィよりも、家族の新しい現行GDAインプレッサ (いわゆる涙目のWRX-AT) の方が、車両としては価値がある (狙われやすい?) ハズである・・・。(^_^;) 【画像3】 旧型BGレガシィ(GT-B)
と 現行GDAインプレッサ(WRX) この車両盗難抑制用のガラスエッチング加工は、今年 (2004年1月) に入ってから東京スバル系ディーラーで始めたばかりのサービスのようで、案内パンフレットも出来立てほやほやのようだった。2004年2月現在、神奈川スバルなど他のディーラーではまだそうしたサービス自体を取り扱っていないようである。しかしトヨタの場合と同様、いずれ全国のディーラーにも展開される方向となるだろう。ちなみにこのディーラーでは、私のレガシィが記念すべき施工第1号車!になる、とのことであった。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ さて、サイトをご覧の読者の方々からは 「KAZさんの怪しいBGレガシィなんか、今さら狙われっこ無いって!」・・・などと言われそうだが、備えあれば憂い無し! 気は心! 私がやりたいと思って実施するぶんには、(目に見えての効果が得られないとしても) 一向に差し支えないのだ。それに、私のクルマが施工第一号車となるということから、もしかすると、それを理由に、施工の様子を (作業に差し支えの無い範囲で) 私自身が見学させていただける余地があるかも知れない。つまり、うまく見学できた暁には、その結果をサイトの記事として公開できる可能性もあるのだ(※2)。 (※2)実際、こうして記事としてサイト内に公開できているのだから、 ディーラーにとっても初めての実作業ということで、何かと下準備が必要になるであろう。そう考えた私は、特に急ぐ必要も無いので、この日は施工の意思表示だけを伝え (予約) 、具体的な入庫の日取りについては、ディーラー側での準備が完了=専用台紙や施工用の薬剤 (エッチング処理液) の取り寄せが済んだ時点で、改めて当方に連絡していただき、調整する。・・・ということで合意し、その場を引き上げることにした。その際、ムリをお願いしたところ、見事に施工作業を特別に見学させていただけることになった! こんなにスムーズに見学の申し出が通るなんて! 普通のディーラーならば、素人が作業中の工場内に立ち入ることを、ひどく嫌うであろうのに・・・。ありがたや〜。東京スバル・様々(さまさま)である。 これは私の勝手な想像だが、ディーラー側にとっても、 私自身、少々大げさな表現をすると、このディーラーさんには過去にいろいろとお世話になっているので
(例:社外触媒装着時における冷態始動時の排気ガス濃度計測
など)、今回は私のクルマを実験台 (施工練習車)
として使っていただいてもいいですよ〜、というくらいに思いながら施工をお願いしたのが、正直なところである。もしかすると、「見学したい」
と言い出した私に対して、結果として逆に気を遣わせてしまった可能性もあるかも知れないが・・・。 |
4.事前打ち合わせの巻 |
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数日後、東京スバルより連絡が来た。「刷り込む文字の書体に種類があります、選んで下さい。」
とのことで、翌日の夜遅く (^^;) 、施工ディーラーに行って 直接
打ち合わせをしてきた。まずここで、施工工程 (作業の流れ)
について簡単に説明を受けた。それによると、おおよそ次のようになるとのことである。
(1)プリンターで車体番号を特種な台紙に印刷する また、「選べる文字の種類がある」 の意味は、次の通り。 ◎書体はゴシック系と明朝系の2種類あり、それぞれ標準と斜体が選べる(つまり4種類)。 要するに、特種な台紙に印字された部分がガラス面と反応 (エッチング) し、台紙のそれ以外の部分はガラス面と反応せず、それ自身がマスキングテープのような働きを兼ねている。また冒頭の 「書体を選んで下さい。」 の意味は、まず最初にプリンターで台紙に印字するので、その車体番号の書体を (プリンター内蔵フォントの中から) 選べるということであった。ディーラーには、急きょ取り寄せた(?)と思われる見本用のガラス板も置いてあった。 【画像4】 エッチング加工の見本用ガラス板 ちなみに、車体で言うと、施工 (印字) 面はガラスの外側になる・・・つまり内側にフィルムを張った車も施工OKということだ (そうでなければ施工可能な台数が限られてしまい、商業的にも採算が取りにくいであろう)。なお、打ち合わせの席上で得られたその他の情報については、以下の通りである。 ◎ガラスに車体番号を刷り込んだことによる、将来の査定落ちは発生しない。 なお、先に紹介したトヨタの 「セーフティコード」 の場合は、「運転席・助手席のサイドガラスには、保安基準上、施工することはできません。」 と公式サイトに明言されているのだが、ここスバルでは、最初から運転席と助手席を含めたガラス6面セットでの施工としてパッケージ化されている。・・・トヨタの説明と矛盾するのではないか? 果たして運転席へのエッチング処理は問題にならないのか?? 私の記憶では、ステッカーの場合・・・例えばセキュリティ装置搭載車に 「盗難防止装置付き」 という警告ステッカーを貼る場合でさえも、「運転席を避けて貼って下さい。」 と指導されているように記憶しているのだが。はて・・・? 早速その点を聞いてみたところ、「ドアミラーへの視界を妨げるような位置でなければOKです。」 とのこと。なるほど、それなら納得がいく。したがって、運転席と助手席の場合は、必然的にエッチング加工の位置は (ドアミラー周辺を避けて) 車両後ろ寄り、となるであろう。もしかするとトヨタでは、めんどうなトラブルを一切避けるため、あえて画一的に 「運転席・助手席のサイドガラスには施工できません。」 と唄っているのであろうか。それならそれで、いかにもトヨタらしい。 あるいは、今年になってからガラスエッチング処理に限っては、位置規制が緩和されたのだろうか。その真偽のほどは不明であるが、スバルのディーラーが大手を振って 「運転席・助手席もOK」 と言っているのだから、たぶん問題ないのだろう。「車検は大丈夫ですね?」 と何度も念押し確認しておいたが、「えぇ、大丈夫ですよ。」 との返答が繰り返されたのであった。 さて、打ち合わせに戻って書体を選ぶことにする。「せっかくガラス面に印字するのに、まったく目立たない程度の小さな文字では、盗難抑制効果も得られないだろう。」 と考え、なるべく大きな文字でお願いすることにした。・・・ところが、プリンター上で印字文字を大きくしていくと、今度は文字と文字の間隔も広がっていくではないか。例えば、「BG5−179XXX」 という文字列を拡大すると 「B G 5 − 1 7 9 X X X」 という感じで、文字と文字の間が間延びしてしまうのだ。 「B G 5 − 1 7 9 X X X」 とはならないようである。プリンターの文字間設定を変えると良いのだろうが、何せ初めてディーラーで行う作業のためか、あいにくそこまで器用には設定できないらしい・・・?! ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 結局私のレガシィには 「ゴシック調+標準体」 で、家族のインプレッサには 「明朝体+斜字体」 でお願いすることにした。もちろん文字の大きさは、パッと見たときに違和感の無い (文字間に間延びが感じられない) 程度で大きめとした (結果として、プリンターの設定可能範囲で、上限よりの中央値となった)。完成見込みとしては、以下のような感じになるであろう。 ◎レガシィ → BG5−179XXX (ゴシック体+標準体+太字) |
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5.作業当日、現場にて |
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いよいよ作業当日を迎えた。朝イチにレガシィを東京スバルのディーラーに搬入したが、この日は
SG型フォレスターのSTi
バージョン
展示試乗会と重なったためか、いつも以上に来場客が多い。サービスフロントも、飛び込み
(予約無し)
で点検整備を依頼する者への対応で忙しいようだ。そこで、その場でしばらく待つことにする。 受付の順番待ちを終え、いざ私の番となり、手続きの確認をしようとしたところ、先方の担当者から 「あの〜、実はですね・・・。 (^^;) 」 と浮かない顔で先に話を切り出してきた・・・。何かトラブルでも生じたのだろうか。聞くと、先日私が指定した通りの書体で試しにガラスにテスト印字 (上記 【画像4】 参照) してみたところ、見事に失敗してしまったという。 どういうことかと尋ねると、単純に太字指定とした場合、例えば 「3」 「4」 「5」 「6」 「8」 「9」 といった文字は、薬品の処理上の理由により 「ダマ」 が出来やすい・・・要するに、文字が潰れてラインが重なり合ってしまいやすい、ということだった。特に、一筆書きで囲まれるような部分を持つ 「6」 「8」 「9」 は、文字が潰れやすい。漫画でいうところの 「ベタを塗った」 ような状態になりやすいのだ。 【画像5】 正常なエッチング処理例(↓) 【画像6】 エッチング処理の失敗例(↓) 「対策として、フォントを (太字指定のまま、太さ加減を調整して) もう少し細身に変更してみますので、どれくらい細身にしても良いのかいっしょに確認して下さい、本番用の台紙はそれから作ります (すぐにできます) 。」・・・ということだった。やはり、施工第一号なので色々と気を遣っていただいたようだ。一度やってしまうと、取り返しのつかない (失敗は許されない) 加工なので、慎重にならざるを得ないのだろう。そうした配慮というか、ディーラー側からの丁寧なフォント変更の申し出に対して、感謝の念が湧いてきた。 結局、急な変更ではあったがその場で文字を適当に細身とし、今度こそ本物の台紙を作成していただいた。ちなみに、文字が潰れて失敗したときの試作台紙の残り (← 今となっては、ディーラーにとって不要なモノ) を記念に分けてもらったので、下に載せる。末尾を伏せ字にするが、これくらいの太さで、すでに文字に ”つぶれ” が生じやすいということである。参考にされたし。 【画像7】 NGとなった書体の例(青色がエッチング用の台紙) 実際に使用する台紙が出来上がると、私のクルマ (レガシィ) もお客様用駐車場から工場内の作業場に移動されてきた。事前に申し込み、お願いしていた通り、作業のじゃまにならないように見学させていただくことにする。・・・というか、台紙を貼る作業までは依頼者はその場にいた方が良い。と言うのも、ガラス面のどのあたりにエッチング加工を希望するのか、印字位置の微妙な調整具合を指示した方が、後のトラブルを防げるからだ。 たとえば、フロントガラスでいうと向かって右下に印字するのか左下に印字するのか。ガラス面の左下に印字するとしても、下端からどれくらい離した位置に印字するのか。ガラスの縁と並行に印字するのか、あるいは黒色接着部と並行に印字するのか、あるいは文字列がボディラインと並行になるよう印字するのか。・・・といった具合だ。 台紙の貼り方ひとつで、仕上がり具合も微妙に・・・いや、思いのほか異なって見えてくる恐れもあるから、ディーラーサイドとしては、台紙をガラスの指定場所に貼りつけて位置決めする段階までは、注文者自身に立ち会ってその目で位置確認して欲しいようだった。・・・まぁ、やり直しが利かない作業なので、なるべくトラブルをさけるためには、こういった措置も必要になるだろう。こうして私とディーラー作業者さんとの間で、台紙の張り付け位置を確認しながら準備を進めたときの様子が、以下に示す画像である。 【画像8】 まず台紙の貼付位置を指定し、次に周辺にテーピングしたときの様子 なおレガシィワゴン (インプレッサワゴンやフォレスターの場合も同様) の場合、標準の6ヶ所 (ガラス6枚ぶんの加工) の他に、リヤクオーターガラス2枚分を追加し、合計8枚のガラスに施工することも可能であったが、私のレガシィはすでに査定下落の激しい旧々型のBG型であるから、ことさら8ヶ所に増やすこともあるまいと考え、標準の6ヶ所での施工とした。 その際、フロントとリヤのウィンドウを除く残り4ヶ所については、「(4枚とも) 前後のドアに施工」 しても良いし、あるいは 「ドア2枚+リヤクオーターウィンドウ2枚、に分けて施工」 してもOK、ということであった。 通常はドアガラスに施工するのが一般的であるが、防犯という観点からは、可動式のガラスよりも固定式のガラスに施工した方が望ましい。つまり、「解体車などから (ガラスを含めた) ドアを丸ごと交換されてしまうと、車両盗難予防効果が薄れてしまうのです・・・。」 とのアドバイスもあり、「運転席+助手席」 以外の2枚をリヤドアのガラス (可動式) ではなく、リヤクオーターウィンドウ (固定式) に施工してもらうことにした。 ”はめ殺し” の窓ならば、ドア窓とは異なり、容易にはガラス交換できないので当初のもくろみ通りの車両盗難抑制効果も得られると考えたのである。 【画像9】 BGレガシィでは、ガラスのこの部分にエッチング加工を依頼 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ここで作業の手順について紹介しておこう。 工場に入ったレガシィは、まずガラス面を清掃される。その後、エッチング台紙・・・いわゆるステンシルのようなものだ・・・を慎重に位置決めしてガラス面に張り付ける。その台紙の周囲にもマスキングテープを貼り、さらに特種な処理液が垂(た)れないよう、ボディにもマスキングシート(紙)を張り付ける。その上に、フェンダーカバーをかぶせて作業していただいた。すぐ下の 【画像10】 に示す通りである。まぁ、マスキングシートと言うと聞こえは良いが、要するにフロアマットを汚さないように足元に敷く、ディーラーでよく用いられる紙シートを流用したのであるが。 【画像10】 助手席ドアガラスへ施工準備した様子 なお、エッチング用の特種な処理液についてであるが、パッと見ただけでは事務用の修正液 (字消しホワイト) と間違えそうなミニボトルに入っていた (【画像11】の左)。フタを開けると、そのフタの内側の先に小さな筆が付いており、例の修正液の容器そのまんまである。いや〜、特種な処理液という言葉の響きからは、およそ想像もできないようなシンプルで少量の容器であることが、少々意外と言えば意外だった。 【画像11】 エッチング処理液の入ったボトルと専用台紙(一部は伏せ字) いよいよ作業者が台紙にエッチング処理液を塗り込んでいく。筆で車体番号が印刷された部分にまんべんなく塗り込み、すかさずその上からセロハンテープを張り付ける。セロハンテープは単なる定着用 (エッチング反応を確実に保護するために使用) で、処理液とは反応しないことが読みとれる。 【画像12】 エッチング処理液を塗り込んだ状態。白い特殊液がガラス面に反応していく。 ここで重要なことは、処理時間の厳守である。今回は1ヶ所につき、正確に10分間を計測してから台紙を剥がしていた。処理時間が短すぎてはエッチング反応が不完全となってダメであろうことは想像に難くないが、逆に長すぎてもダメなようで、どうやら最適な処理時間
(反応待ち時間)
が存在するようである。ただし、その処理時間は、季節・外気温度(雰囲気温度)・湿度などによらず一定のものか、あるいは、たとえば作業時の外気温度などによって微妙に変化させるべき性質のものかは、聞き出せなかった。・・・まぁ私個人が自分で施工するわけではないので、ディーラーの作業者がマニュアルに従って標準的に施工していただくぶんには、何ら問題は無いのだけれど。 |
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6.エッチング加工の出来映えの巻 |
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このようにして作業は所定の時間通りに進められ、今度はいよいよ施工された順番通りに台紙とマスキングテープが剥がされていくことになる。 「フロントウィンドウ → 運転席 → 助手席 → 右クォーター → 左クォーター → リヤウィンドウ」 の順にオンタイムで剥がされていく。剥がし方如何(いかん)によっては、未反応のエッチング処理液が垂れてしまい、クリアな字形が得られない恐れもあり得るので、慎重に剥がすことが要求されるハズだ。私としても、作業を慎重に見守るしかない。 まずはフロントウィンドウから。台紙を剥がした直後のウィンドウは、エッチング処理液が文字の形をしたまま、白く粉状に乾燥してウィンドウにへばりついていた。その状態は、「まるでワックスがけの際、ボディに塗り込んだ余剰分のワックスが、後から乾燥して浮き出てきたかのようである」 ・・・と表現すれば、そのイメージがお分かりいただけるであろうか。 【画像13】 慎重に台紙を剥がていく(赤部は伏せ字) 作業者は、その粉状に乾燥した (反応後の) 処理液跡をウエスで拭(ふ)き取る。果たして、期待通りの外形が形成されているであろうか・・・。前述の 「ダマ(ベタ塗り状の文字の ”潰れ”)」 はうまく避けられているであろうか。緊張の一瞬である。作業者、作業責任者、私、そして家族も現場に加わり、その出来映えを確認する。 ・・・やった、成功だ! 変な欠け・潰れ・漏れなど無く、書体も専用台紙に印刷した当初のプリンターの書体をそのまま転写したように、キレイに仕上がっていた。ここでホッと一息を付いたのも つかの間、今度はすぐに次の台紙を剥がす時間がやってきた。処理時間=10分間のインターバルは守らなければならない。フロントウィンドウに続き、運転席のドアガラスも、同様にキレイにエッチング処理が成功していた。 【画像14】 台紙を剥がした後は、ガラス面を磨く(リヤウィンドウの例、赤部は伏せ字) ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ こうして順次、台紙が作業指示書通りに剥がされていったが、すべてが完璧、とまではいかなかった。惜しいことに、リヤのクォーターウィンドウの印字の一部に (数字の判別が十分可能な、軽微なレベルではあるが) 例の ”ダマ” ができてしまっていたのだ。 やはり、ガラス面の十分な事前清掃 (脱脂) と台紙の慎重な張り付けが何より重要であるようだ。今後は、ディーラーにとってはすべての点において 「完璧な」 作業を求められるだろうが、今回は (施工していただいたディーラーには、大変失礼かつ勝手な私見ながら) 施工第1号車ということであまり多くを期待せずに臨んだため (>いや、こう書くと本当に失礼な感想になってしまうのですが・・・ (^_^;) )、多少の失敗は全然気にならないのであった (オレはクレーマーじゃないし・・・)。 【画像15】 文字が多少つぶれてしまう恐れもあり得るか? ディーラーの作業責任者さんは、その ”ダマ(文字の潰れ)” を見るなり、大変気にされたようで、私に対して謝罪していただいたのであるが、私としてはこうした結果も十分想定範囲内であったし (^_^;) 、また実用上は問題ない出来映えである (^_^)v と思っているため、特に気にしていない。 なお、ディーラーの名誉のために付け加えておくが、私のレガシィの次にエッチング施工した家族のインプレッサについては、ガラス6面ともバッチリ完璧!に仕上げていただいたことを、ここに付け加えさせていただく。・・・さすがである。 |
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7.あとがき |
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今回は、行きつけのディーラーにて施工していただいたため、車両入庫から完成引取まで、ほんの数時間で済むというお手軽さであった。時間に余裕があれば、作業終了まで、ショウルームでカタログを見ながら時間をつぶすということも可能であろう。 私の場合、書体を決めるための事前打ち合わせなどに多少の時間を要したが、これは私もディーラー側もお互いに初めての事例となったためである。施工経験を積み上げていく過程で、ディーラー側の問診方法や事前の段取りも、より効率良く改善されていくであろうと考える。 ガラス6面への施工で15000円という基本料金も、防犯効果を考えると個人的には十分にリーゾナブルであると思う。加工を特に急がない場合は、たとえば12ヶ月点検のタイミングに合わせてエッチング加工を依頼すると、さらに (ガラス1面あたり2000円相当に) 割引されるので狙い目であると言える。 もちろん、防犯効果では本格的なセキュリティシステムにはかなわない。が、こちらはシステムによってはインストールに数日間を要し、またインストール後も、誤作動を避けるための最適なセンサー設定値を探り出すまでが大変だったりすることもある。せっかく高価な工賃をかけて高額なセキュリティシステムを組んでも、誤作動が多いようなら使い物にならないし、誤作動を嫌ってスイッチオフ (非稼働状態) にするようならまったく意味がない。 その点では、今回のガラスエッチング加工はアフターメンテナンスがまったく不要という点でも優れている。当然ながら12V電源は要らないし、加工後のセッティングも不要。もちろん不意に印字が消えてしまうことも無い。欠点と言えば、”鈍感な賊” に対しては、車体番号がガラスに印字されたのみでは、なかなかそれに気づいてもらえない(?) ということかも知れない。 だが、実はそのへんの懸念点に対してもすでに考慮済みであった。ガラスエッチング施工車には、次のような警告ステッカーが配布されるのだ。ユーザーは、エッチング加工を施したガラス面のしかるべき位置に、下の 【画像16】 に示すようなステッカーを貼ることで、エッチング加工済みであることをアピールできるようになっている。これならば、ステッカーだけで終わる 「なんちゃって防犯ステッカー (単なる威嚇用)」 とは異なり、(実際にそのガラス面にエッチングがあると分かるので) それなりの防犯効果が得られるであろう。 【画像16】 ガラスエッチング施工車用に配布される、警告ステッカー ただ、世の中にまったく完璧な防犯システムは無く、またそれぞれのセキュリティシステムには一長一短がある。ここで紹介したガラスエッチング加工についても、その他の防犯システム・・・たとえばディーラー純正オプションのリモコンセキュリティ (リモコンキーで施錠されたドアをリモコン以外の方法で開錠した場合、クラクションが鳴り響く) などと併用することによって、互いの相乗効果で防犯効果を高めるようにするのが良いだろう。 このページが、そういった
「セキュリティの組み合わせ」
を検討する人々にとって、何らかの参考になれば幸いである。 |
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8.余談 |
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一部の施工業者さんのサイトでは、ここに紹介したものと同様な加工のことを、漫然と
「盗難防止ガラス加工」・・・などと表記している場合が見受けられる。が、 ・盗難防止と言っても、一体
「何の」 盗難防止であるのか? という点において、私個人としては少々疑問を感じるので、このページにおいては、 ・盗難とは、車両の盗難についてのことである(車上荒らしは話題の対象外) という認識に立ち、あえて 「盗難防止〜」 という表現を避け、「車両盗難抑制〜」 という表現を用いて統一している。極論すれば (たかだかガラスに車体番号を印字した程度で) 車両盗難そのものを完全に ”防止” できるとは思っていないためであり、そういった意味から、車両盗難 ”抑制” 効果のある・・・という表現にとどめているワケである。「盗難防止」 と言い切るには気が引けるのだ。(^_^;) ということで繰り返しになるが、世の中には 「絶対」 というセキュリティは存在しないと思われるが、今回の 「車体番号をガラスにエッチング処理する」 という手法は、なかなか施工容易性とコストパフォーマンス、さらには施工後のノーメンテ性に優れるものだと思う。個人的には、十分に処理する価値があったと思っており、その出来映えにも満足している次第である。 以上、「車両盗難抑制・ガラスエッチング施工記」 でした。 |
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(デジタル電圧計内蔵
カップホルダー) (MDチェンジャーをコンソール内に設置)