ホーム ホタル モリアオガエル 水鳥・野鳥 その他

 山口は西宮市内でホタルが生息する唯一の地域である。山口のホタルの生態について「公民館講座」での報告と、毎年6月初旬に開催されるホタルウォークラリーの模様をレポートした。またホタルマップは「西宮流」の了解を得て、「ホタル舞う有馬川緑道を歩く」の記事から転用させて頂いた。
■永年のホタル観察と保護の取組み
 「山口のホタルの生態」についての公民館講座があった。講師は山口・船坂校区の青愛協会長の本田さんである。13年間にわたってシーズン中の約3ヶ月間、毎晩ホタルの生態を調査してきた人だ。
 「一本の草に多数のホタルが群がり草全体が光っていた」「草叢と空中を100匹以上のホタルが群舞して輝いていた」「小川の両岸を光りの流れができていた」。永年の観察がもたらした数々の感動風景が語られる。この感動こそが永年にわたる観察と保護の取組みの原点なのだろう。
■ホタルの成長物語
 6月頃にメスの光を求めて小さなオスが飛び交い交尾する。産卵、孵化を経て幼虫になり水中生活が始まる。貝の一種のカワニナを食べながら10ヶ月間に6回の脱皮を繰り返して成長する。翌年四月に上陸し、さなぎとなって地中で1ヶ月を過ごす。6月に羽化し成虫となってメスの光を求めて飛び交う。ホタルの一生である。このホタルの成長物語の中に生息のための環境条件がこめられている。
■ホタル生息の環境条件
 オスがメスの光を見つけて交尾するには暗さが必要だ。住宅開発や商業施設オープンで川面を照らす人工の光の拡大が生息エリアを縮小させている。産卵には川辺の草叢が必要だ。水中生活では餌となるカワニナが十分生息していることが条件となる。カワニナの天敵の蛭は多少塩分を含んだ有馬川の水質を苦手としている。成長した幼虫が上陸し地中生活がおくれるための中洲があることも条件だ。飛び交う成虫の休息地となる岸辺の草木も大切だ。こうした条件を備えた有馬川や船坂川だからこそホタルの生息を可能にしている。
■環境条件整備の取組み
 「ホタルは成虫になって、三日から一週間の命しかない。成虫になってからは水以外に何も食べず、幼虫時代に蓄えた養分だけで生きている」と語る本田さんの言葉に、はかない命への限りない愛情がこめられている。本田さんたちのグループによる保護のための環境整備の取組みが続いている。11月の有馬川クリーン作戦を実施している。子供たちに学校で「ホタルを守ろう」のポスターを描いてもらう。市の業者による川中の草刈り時期を8月以降にずらしてもらった。高速道設置に当たっては川面を照らす街灯の光を抑制する仕様に変えてもらった。
■ホタルの鑑賞ポイント
 ホタルの鑑賞ポイントのとっておき情報も語られる。6月第1週がピーク。地中から出やすい雨上がりの夜が狙い目。17度C位の蒸し暑い日が良い。時間帯は8時から9時半頃がピーク。こんな条件に近い日を選んで年1回、青愛協主催の「ホタルウォークラリー」が開催される。 
山口中央公園の開会式
 13回目を数えるホタルウォークラリー会場の山口中央公園には子供連れのファミリーを中心に大勢の参加者の姿があった。7時30分、主催者である青愛協会長の本田さんの挨拶で開会した。子供たちが描いた「ホタルを守ろう」ポスターの優秀作品が表彰された。子供たちはポスターを描くことで自然にホタルが生息できることの大切さを学ぶだろう。我が子のポスターがホタルの保護に一役買っていることを保護者たちも教えられる。いつかこの街を巣立っていくかもしれない子供たちにとっても故郷の自然と思い出の貴重なひとこまとなるだろう。
 プロジェクターを通しての即席ホタル講座が開講される。ラリー途中に設けられた3ヶ所のチェックポイントには四択のクイズが掲示され、全問正解者には賞品が貰える。その解答がこの講座に含まれている。暗闇が広場を覆いだした8時頃、解答用紙を貰う長い行列の先頭から順次、参加者たちが出発する。
川面に無数に点滅するホタルの光
 平成橋たもとから有馬川緑道に入ると、いきなり川面に点滅する多数のホタルが目に入る。一週間前の散策した際には見つけるのに苦労した。永年の蛍の生態観察の成果が、この催しの最適な日程設定を可能にしている。緑道沿い草叢からホタルが飛び出し子供たちの嬌声があがる。川面を飛び交う黄緑の光の幾筋もの流れに鑑賞者のため息が聞こえる。
チェックポイントとクイズ
 最初のチェックポイントにやってきた。「ホタルが住みやすい環境を守っていくには私たちは何をしたら良いでしょうか?」という質問に4つの解答が用意されている。以下、第2ポイントでは「ホタルが最も多く飛び回るのはいつごろですか?」、第3ポイントでは「ゲンジボタルのメスはどんな所に卵を産むでしょうか?」といった具合だ。
 中野高架橋下のゴール地点の人だかりが見える。山口中央公園から約2kmの道のりをチェックポイントをクリアしながら辿り着いた参加者たちだ。解答用紙と引換えに賞品を貰って引換えしてくる。8時45分を示している腕時計を確認しながら折り返した。


9i