Running Edinburgh
( エディンバラばたばた )



ナショナル・トラスト


イギリスを旅行するとあちこちで National Trust の文字を目にします。ナショナル・トラストは1895年に設立された民間非営利団体で、イギリスの歴史的建造物や自然を残すことを目的とし、寄付や会費、入館料、各種イベントの収益で土地や建物を買い取り、本来の姿のままで保管しています。現在ナショナル・トラスト所有の歴史的建造物は約200、英国式庭園は約160あるのだそうです。

今回、エディンバラで訪ねた古い住宅3つのうち2つ(Gladstone's Land、The Georgian House)は The National Trust for Scotland 所有のものでした。イギリスのものとは別組織になっているようで、スコットランド内に 128 の土地や建物を所有しているそうです。

が、英国ナリョナル・トラストの会員ならこの NTS 所有の土地・建物にも無料でアクセスできると書いてありました。入館料そのものは別に高いものではありませんから(3.5〜5ポンド)タダになるのがいいというわけではないのですが、ナショナル・トラストの会員証を持っていて、こういうところですっと入っていけるのってなんだかよくありませんか? 一瞬、会員になろうかと思ってしまいました。(ためしに日本のナショナル・トラストを少し調べてみたら、なんと社団法人日本ナショナル・トラスト協会というのと財団法人日本ナショナル・トラストというのと2種類ありました。どちらも活動内容と掲げている内容は似たようなもので、どうして2つあるのか意味がわかりません。天下り元の管轄違いなのかしら。これですっかり興味をなくしました)

Gladstone's Land(477b Lawnmarket) は旧市街のロイヤル・マイル沿いにあり、裕福な商人の家だったものです。17世紀の建物ですから家具などはもちろん残っていませんが、同時代のものを別のところから運んできて、当時の暮らしぶりを再現してあります。入口にいる豚はもちろん作り物。

すごいと思ったのは各部屋にボランティアの女性(20代〜60代)が待機していて、見学者が何か疑問に思うとすぐに答えてくれること。各国語で書かれた簡単な説明書き(パウチされていて見終わったら元の場所に戻す)も部屋ごとに用意してあるのですが、それだけではわからないごく細かいことまでなんでも教えてくれます。たとえば台所に置いてある変わった形の調理器具の使い方とか。

暖炉のすぐ前に刺繍をほどこしたスクリーン(屏風)のようなものがあったので何だろうと思いながら眺めていると、すーっと寄ってきて「当時の女性は蝋を使ったお化粧を厚く塗っていたので暖炉の熱でそれが溶け出さないようにこのスクリーンを使ったのです」と説明してくれました。おそらく彼女たちは事前に教育を受けてから仕事につくのでしょうね。

これは新市街にある The Georgian House(7 Charlotte Square) も同様でした。こちらはさらに教育的配慮(?)が行き届いていまして、入っていくとまず地下のキッチンの隣りに設けられたビデオ室でビデオを見るように薦められます。このビデオというのが18世紀にこの家に住んでいた裕福な家族とその召使を俳優たちが演じて、当時の上流階級過程の典型的な1日を見せてくれるのです。

髪形も服装も当時のままで撮影場所はこの家の中。セリフとナレーションが交互に出てきて、必要な知識がすんなりと頭に入ってきます。このビデオを見てから実際の家の中を見て回るので、よけいに興味深く見られました。それにしてもあの頃の人たちってレースがひらひらのきれいな服を着ていたくせに、衛生的にはとっても不潔な暮らしだったんですねえ。家の中の匂いってけっこうすごかったんじゃないかと思ってしまいました。まあ日本のように温度も湿度も高い夏がないところだからまだマシだったのでしょうが。

The Georgian House があるシャーロッテ・スクエアは新市街の中でも特にリッチな人たち向けの場所だったようで、スクエアの中心は見事な緑地になっています。私が行ったときにはその緑地でフェスティバルがらみのマーケットが開かれていたため、その看板やらなにやらでいささか景観はそこなわれていましたけれど。落ち着いた時期にはすごくよさそう。The Georgian House の並びのNo28の住宅は同じくナショナル・トラスト所有でカフェ&ビストロとショップになっているので、時間があったらお茶したかったな。

もうひとつの John Knox House(43-45 High Street) だけが個人経営でしたが、そのせいか入館料が安い代わりに内部のインテリアなどはあまり凝ってはいなくて、あくまでも建物そのものを見る、という感じでした。ここと隣りの Moubrey House がエディンバラ最古(15世紀)の建物なのだそうです。

内部は日本人の感覚から言ってもけっこう狭く、かなり細かい小部屋に分かれていて面白かった。私はあまりだだっぴろい大広間のある家というのは好きじゃなくて、小さな部屋がたくさんある迷路みたいな家が好きなものですから。なんとなく探検してるみたいな気分になれるからかな。ここは居間の天井がとてもきれいで、このように天井一面に絵を描くことが当時の富裕な商人の間で流行したのだそうです。

John Knox House もロイヤル・マイルにあります。Gladstone's Land より宮殿寄り。

いずれの家も内部での写真撮影は禁止されているのでアップしている室内の写真は買った絵葉書とパンフレットからのものです。



タータンはむずかしい