WALKING IN MEXICO



Part 50

つまでも座りこんでいるわけにもいかないので、外に出る。

テンプロ・マヨールの遺跡を歩いていると、雨が降ってきた。下痢したうえに風邪までひいてはたまらない。あわてて博物館に駆けこむ。

建物に入ったとたんに大豪雨になった。一面のガラス窓の向こうは雨足で真っ白。何も見えない。地面に叩きつけられた雨が30センチほども跳ね上がっている。これじゃしばらくは出られないわ、と覚悟して、館内をゆっくりと見て回る。

1階ロビー中央にはティノティトランの模型。建造物だけでなく、ピラミッドを登ったり降りたりしている人物のミニチュアまで作って、配置してある。中には、しっかり転んでいる人までいて、見ていてあきない。人類学博物館の市場の模型もそうだったけど、こういうのを作る人って、自分だけのひそかな楽しみがいっぱいあるんだろうな。

時々休憩所の椅子で体を休めながらもひと通り見てしまい、仕方なく外に出た。さっきほどはひどくないけど、まだけっこう降っている。通りには商売上手な連中がビニールの合羽や傘を売りに出ていて、結局私も1ペソで合羽を買ってしまった。

タマヨの壁画があるという自治高校(?)に入る。ここは祝日でもしっかり入場料10ペソをとった。2階の踊り場のようなところに、集合写真を等身大に伸ばしたパネルが置いてあり、ディエゴ・リベラやフリーダ・カーロをはじめ、同時代の芸術家たちが勢ぞろいしている。さっきの美術館で気になったアンヘルもいた。やはりとても若い。

タマヨの壁画も素晴らしいものだったけれど、実のところ私にはもう、芸術鑑賞に向けるだけの気力も体力も残っていなかった。Wも同様だったらしい。

地下鉄に乗るのに入口を間違えてチケットを買い直すなどという、日頃の私たちだったら考えられないようなムダをしながら、ようやくの思いでホテルに帰りついた。中庭のレストランでおとなしく食事をとる。

*MENU*
  • 食前にマルガリータ
  • 私はセロリ、たまねぎ、にんじん、レタス、マッシュルーム、コーン、アボカドが入ったスープ
  • Wはミネストローネ
  • あとはフランスパンにガーリックバターとハーブバターを添えて
  • ゆでたほうれんそうとくるみのサラダだけ
  • 最後にお腹によい(とWが言う)マンサネラ茶を飲んで終わり
  • 明日の出発に備えて早々と寝たのであった。(終)


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