Club ARISTO
Maintenance

 アリストV300VEに乗るNO.2007のSOARISTOさんが、JZA80スープラの前後ブレーキシステムをアリストに移植されたので、紹介してくださいました。


VOL.201 JZA80スープラ前後ブレーキシステム移植記  <作成:'00年7月22日>
【はじめに】

 これまで、JZA80スープラのフロントブレーキを移植されたクラブマンさんは多くいらっしゃるようですが、リヤを移植された方はほとんどいらっしゃらないと思います。JZA80のリヤキャリパーは、147はボルトオンで装着可能ですが、16xはキャリパーとナックルのボルト位置が合わず、各部に干渉するため、純正のナックルにボルトオンするためには、キャリパーの大幅な改造が必要でした。
 なんとかリヤキャリパーを移植できないものかと悩んでいたところ、今年の春に、「ナイトペイジャー」さんから、リヤキャリパーの取付キットが発売されました。普段は街乗りと高速が半々ですが、ほどんと「熱い走り」をしないため、純正のブレーキシステムにそれほど不満を抱いている訳では無かったのですが、ごくまれに、首都高速などのブラインドコーナーで、突然渋滞の最後尾が見えた時など、「止まれないのでは!」と、ヒヤッとした経験が何度かありました。そこで、ボルトオンの取付キットが発売されたこともあり、この機会に前後ともJZA80スープラ用のブレーキシステムを移植することにしました。また、これに合わせて、ローター、パット、ラインついてもグレードアップを図りました。
 ブレーキシステムの取り付けにあたっては、信頼でき、かつC.A.のフレンドディーラーさんでもある「ネッツトヨタ東京ハブポート若林」さんにお願いしました。

〈装着パーツ一式(フロント)〉〈装着パーツ一式(リヤ)〉
〈装着パーツ一覧〉
品名メーカー定価重量(純正との差)備考
JZS161アリスト 80ブレーキ取付キット(フロント)Night Pager\92,0006.6kg(-0.4kg)4ポット、カラー: ゴールド、ロゴ: 無し
JZS161アリスト 80ブレーキ取付キット(リヤ)Night Pager\148,0003.0kg(+0.0kg)2ポット、カラー: ゴールド、ロゴ: 無し
スリットブレーキローター JZA80 17インチ車用(フロント)C-ONE MOTORSPORT\40,0009.4kg(+0.2kg)6本スリット入り、ベンチレーテッド、φ323mm(+28mm)
スリットブレーキローター JZA80 17インチ車用(リヤ)C-ONE MOTORSPORT\40,0006.8kg(+0.6kg)4本スリット入り、ベンチレーテッド、φ324mm(+18mm)
トムス ブレーキパット・スポーツ JZA80 17インチ車用(フロント)TOM'S\12,000  
トムス ブレーキパット・スポーツ JZA80 17インチ車用(リヤ)TOM'S\12,000  
トムス ブレーキライン JZS16#用TOM'S\33,000  
【装着パーツ】

 取付キットは、フロントは純正をそのまま流用し、リヤはキャリパーの下半分を切断し、クロモリ鋼製の特製ブラケットを介することで、純正ナックルへのボルトオン装着ができるようにしています。
 今回は、ゴールドペイント済みでロゴ無しのキャリパーを購入しましたが、ペイントの色(ゴールド/ブラック/レッド)およびロゴ(ARISTO)の有無は、自由に選択できるようになっています。また、すでにキャリパーを持っている場合には、オーバーホールした上で、ペイントおよびロゴ入れをしてくれるようです。

 装着の前に、キャリパー部とローターのハブ部を自分でゴールドにペイントしてみました。ハブ部は、このまま放っておくとすぐに錆が発生してしまうため、外見的なアップに加えて実利的な効果があると思います。
 出荷状態では、キャリパーはゴールド、ローターはシルバーの焼き付け塗装がされていましたが、キャリパー部とハブ部の色を合わせるため、いったん色を落とした後、同じ色で再塗装しました。具体的には、剥離剤(アサヒペン「強力塗料はがし液」、非塩素系/生分解性)で塗料を落とし、アルコール等で脱脂をした後、サーフェサー(SOFT99工房「ボデーペン」、プラサフ)できっちり下地を作り、エナメル系塗料のゴールド(ニッペホームペイント「スプレーラッカー」、金色(ゴールド))で2〜3回程度上塗りして仕上げました。
 このエナメル系の塗料ですが、広く使われているアクリル系の塗料と違い、乾きが若干遅いため、塗装面にゴミ・ほこり等が付着しないように細心の注意が必要ですが、乾いた後は、表面の平滑性や光沢感が格段に高いため、このような金属の塗装にはお薦めです。耐熱的にも今のところ問題はありません。
(ちなみに、この剥離剤ですが、VEのフロントグリルのプラックペイントの色落としにも使えます)

 TOM'Sのロゴは、Macintoshでデータを起こし、カッティングしてもらったものを貼り付けました。
 カッティングシートの材質は、「住友3M」さんの「スコッチカル スタンダードシリーズ」(色名: ジェラシー)を使っています。屋外耐候性: 8年、耐熱温度: 107℃なので、極端なハードブレーキングをして高温にさらされない限り、耐久性については問題ないと思います。
 なお、ロゴのデータの作成は、一般的に行われているような、原稿をスキャナーで読み取ってベクタライズする方法ではなく、Windows用のフォント集(約1000書体)の中から同一のフォントを探し出し、寸分の狂いもなく再現したもので、拡大・縮小によるジャギーや歪み等の発生は全くありません。

〈装着前(フロント)〉〈装着前(リヤ)〉
【装着前】

 普段はほとんどハードブレーキングをしないため、ローター部は、フロント・リヤ共にきれいに剥けています。
 ALTEZZAと同じブレーキシステムとのことですが、1.7tオーバーの車重を考えると、ちょっと役不足のようにも見えます。7月のマイナーチェンジでは、ブレーキシステムが若干強化されるようですが、トヨタさんもその辺りのことを認識されてのことでしょうか。

【装着にあたって】

 装着にあたっては、いくつか工夫が必要でした。

1 バックプレートの加工

 ローターの大型化により、ローターがノーマルのバックプレートに干渉するため、バックプレートの加工が必要でした。
 フロントのバックプレートを外すためには、ドライブアクスルの取り外しが必要で、かなり大掛かりな作業となります。また、取り外してしまうと、せっかく調整されているバランスが崩れてしまう心配があります。そこで、ノーマルのバックプレートを無傷で取り外すことは諦め、バックプレートの取付位置のリング状になっている部分を、グラインダーで削り取り、少しずつ押し広げることで取り外すことにしました。
 リヤは、ドライブアクスルに加えて、パーキングブレーキの取り外しが必要になります。また、リヤはフロントと異なり、バックプレートのリング状になっている部分が、グラインダーで削り取れない形状になっていることが分かりました。そこで、金バサミでバックプレートの「耳」の部分とキャリパーに当たる部分とを切り取ることにしました。切り取った部分は、きちんとタッチアップしてもらいました。

2 ブレーキラインの取付の工夫

 今回は、JZS16#用のブレーキラインを使用したのですが、フロントキャリパーへのブレーキラインの取り付け時にひと工夫が必要でした。
 ブレーキラインのキャリパー側の先端はフック状になっており、またキャリパー側のブレーキラインの取付位置は、このフックの先端を逃がすための穴が空いています。キャリパーとブレーキラインを確実に固定するため、このフックを穴に引っかけてブレーキラインをキャリパーに取り付けることにより、サスペンションの動きに関わらず、取付ボルトが緩まないようになっています。
 フロントでは、このブレーキラインのフックの「首」の長さと、キャリパーの取付位置とフックの「逃げ」までの距離が異なるため、そのままでは取り付けができないことが分かりました。また、TOM'Sのブレーキラインは、アルミの削り出しになっているため、そう簡単にフックの先端を削り取るなどの加工はできません。そこで、本来ならばもっときちんと対処すべきですが、取付ボルトの締め方向にフックの先端を逃がすことにより、なんとかブレーキラインをキャリパーに取り付けることができました。
 ブレーキラインは、銅ワッシャーを2枚挟んでキャリパーに取り付けるようになっており、規定トルクできちんと締め込んでさえあれば、特に問題は起きないように思いますが、心配な場合には、JZA80用のブレーキラインを使用した方が良いかも知れません。(ただし、ブレーキラインの長さおよび車体側の取付金具の形状が適合するか、注意が必要です)
 リヤについては、全く問題はありませんでした。

3 ナックルの干渉

 これは車の個体差の問題かと思いますが、リヤの左側のナックルがキャリパー下部に干渉し、きちんと取り付けられないことが分かりました。リヤのナックルは鋳造製のようですが、合わせ目に「バリ」が出ており、これがキャリパーと干渉していました。この問題は、この「バリ」をグラインダーで削り取ることにより、解決することができました。

〈装着後(フロント)〉〈装着後(リヤ)〉
〈装着後(フロント拡大)〉〈装着後(リヤ拡大)〉
【装着後】

 予想はしていましたが、かなり派手になってしまいました...。(笑)
 TOM'Sのパットのレッドと、キャリパーのロゴのレッドがうまくマッチングして、なかなかいい感じです。またゴールドペイントも、自分で塗装した割には、かなりきれいな仕上がりになりました。

 ビッグキャリパーの装着では、ホイールとキャリパーとのクリアランスが気になるところですが、今回のブレーキシステムの移植に合わせて、前車のSOARERからキャリーオーバーしたBBS Super-RS 18インチから、BBS LM 19インチに履き替えました。
 装着後のクリアランスですが、リヤについては全く問題ありません。フロントについても4〜5mm程度の余裕があります。また、ビッグローターの装着によるオフセットの変化も特に無いようです。

(参考)〈装着ホイール&タイヤ一覧〉
 ホイールタイヤ重量(純正との差)
BBS LM DSK-P Tuner ProgramDUNLOP LE MANS LM701
サイズオフセット定価(1本)サイズ外径定価(1本)
フロント9.0×19+38\118,000245/35ZR19654mmOpen Price23.4kg(+1.9kg)
リヤ10.0×19 +40\120,000275/30ZR19652mmOpen Price24.4kg(+2.9kg)
〈ホイール装着後(フロント)〉〈ホイール装着後(リヤ)〉
【ホイール装着後】

 ホイールは、盗難防止のため、BBS純正のロックナットとMcGardのロックナットを二重に取り付けています。また車両本体の盗難防止のため、純正セキュリティーシステムとC.A.のサポーターさんの「加藤電機」さんの「ホーネット700J」を自分で取り付けました。ホーネットには、さらにオプションの「傾斜角センサー」を取り付けることにより、ジャッキアップによる盗難に備えています。
(詳しくは書けませんが、これら以外にも物理的・電気的なトラップをいろいろと仕掛けてあります)

【インプレッション】

 装着後の感想を一言で表すと、
   「止まるのが楽しみになる車」
に変身しました。まさに、「別の車に乗った感じ」です。Advoxを装着した時と同じくらいの感動です!

 心配していた効き過ぎの「カックンブレーキ」になるようなことはなく、足の動きにリニアに反応して、超高速域からも、静かに、沈み込むようにして止まります。ノーマルの「フニャッ」とした感じが無くなり、踏んだ分、きちんと制動のかかるブレーキになりました。鳴きやジャダーもいまのところありません。また、ブレーキダストも思っていたほど多くはありません。
 ただし、制動力が高まったことと、踏みしろが少なくなったことで、静止する直前に「フッ」と力を抜いて静かに止まる技が難しくなりました。(目下練習中です) また、制動力の飛躍的なアップに伴い、追突防止の意味も込めて、リヤブレーキランプの7灯化を行いました。

 今回は、ブレーキ関係を一気に変更してしまったのですが、できることなら、ステップを踏んで変えていき、それぞれのパーツによる変化を確認したかったと思います。「brembo」や「alcon」ほどの強力なストッピングパワーは実現できないかも知れませんが、街乗り+高速クルージングを楽しむ分には、十分なキャパシティーがあると思います。またなによりも、1/3程度のコストでこれだけのストッピングパワーが手に入る訳ですから、かなりお得なブレーキチューンだと思います。お薦めです。

これでやっと「安心して止まれる車」になりましたので、これからはエンジン系のファインチューンに励みたいと思います。

【おわりに】

 最後に、慎重かつ確実な取り付けを行っていただきましたC.A.のフレンドディーラーさんでもある「ネッツトヨタ東京ハブポート若林」の松○さんをはじめとするメカニックの皆さん、またいろいろとご配慮いただきました大○マネージャーに、心からお礼申し上げます。ほぼ半日に渡って、ピット内をちょろちょろ(?)してしまいまして、たいへん申し訳ありませんでした。

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